水に濡れても消えず、すっぴんに自信がもてると幅広い年齢層の方から人気のアートメイク。
コンプレックスの解消やメイク時間の短縮が大きなメリットではありますが、デメリットを確認せずに施術してしまうと、後悔する可能性もあります。
当ページでは、すべてのアートメイクに共通するデメリットや部位別のデメリットについてまとめました。事前のリサーチや施術後の過ごし方で解消できるものもありますので、ぜひ参考にしてください。
この記事の執筆者
石川 聡司
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)
北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。品川美容外科にて美容外科医として3年間の研鑽を積み、2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。
婦人科全般の診療のほか、美容医療では美肌治療、美容整形をはじめ脱毛・アートメイクなど幅広く対応する。
すべてのアートメイクに共通するデメリット
眉毛・アイライン・リップ・ヘアラインなど、施術部位は異なっても「皮膚の浅い部分にインクで着色していく」方法は同じなので、共通するデメリットがあります。
- MRIが受けられない可能性がある
- 失敗するリスクもある
- 失敗しても数年は消えない
- ダウンタイムがある
- 数回の施術が必要
- 定期的なメンテナンスが必要
MRIが受けられない可能性がある
アートメイクに使用するインクには金属が多く含まれているものもあり、その場合はMRI(磁気共鳴画像診断)を受けられない可能性があります。
金属を多く含んだアートメイクをしている方は、MRIを受ける際にやけどの危険性や検査画像の欠損が起きる場合があり、検査が受けられない可能性があります。
ただし、アメリカFDA(食品医薬品局)の認可を受けた原料を使用したインクや、MRI SAFEの表記があるインクは金属が含まれていない、または含有量がごく微量であるため、MRIを受けられます。
- アメリカFDAの認可を受けた原料を使用しているもの
- EMA(欧州医薬品庁)の認可を受けたもの
- MRI SAFEの表記があるもの
最近のクリニックはそのほとんどがMRI対応のインクを扱っていますが、念の為、契約を検討する際にはインクにも着目しましょう。
- クリニックで使用しているインクを確認する
- アートメイクをしたあとMRIを受ける際は、検査前に必ず申告する
アートメイク後のMRIについて詳しく見る
失敗するリスクもある
思ったようなデザインにならない、肌トラブル・外傷が起きるなど、アートメイクには失敗リスクがあります。
2002年~2021年4月までの間に、国民生活センターには206件のアートメイクについての相談が寄せられていますが、なかには無資格者による施術も多く、クリニックや施術者選びの重要性を物語っています。※1
※1 事故情報データバンクシステム/国民生活センター
アートメイクの施術は医師や看護師の免許を持った人しか行えず、経験が少なく技術力の低い施術者の場合はデザインの失敗や肌トラブルにつながる可能性も。
エステサロンではなくクリニックで契約する、カウンセリングをしっかり受ける、安さだけで決めない、といった基本を押さえれば失敗するリスクを減らせます。
- アートメイクの施術は必ず医療機関・クリニックで受ける
- 二回以上の施術を受ける
- カウンセリングはしっかり
- 安さで決めない
- 疑問や不安があればやめる
失敗例と回避方法を詳しく見る
失敗しても数年は消えない
一度入れたアートメイクは簡単には消えません。
水に濡れてもクレンジングをしても消えないのはアートメイクの素晴らしいメリットですが、イメージと違った・失敗したと感じたときでも数年間消えずに残るため、”簡単に消えない”はデメリットでもあります。
年月がたつと徐々に薄くなっていきますが、皮膚のなかにインクを注入して着色するので1~3年は消えず、どうしても消したい場合はレーザーでの除去、切除、除去液を使う方法があります。
除去について詳しく見る
着色する施術よりも除去の方が肌への負担が大きく、肌トラブルのリスクも高くなるため、アートメイクの除去はあまりおすすめできません。
施術を受けると数年は消えない点を理解し、よく考えてから施術を受けるようにしましょう。
- アートメイクは簡単には消えない点を理解して施術を受ける
- 除去は肌へのダメージが大きくおすすめできない
- 失敗しないように施術者とデザインの相談、仕上がりイメージ共有を丁寧にする
ダウンタイムがある
アートメイク施術後は1週間程度のダウンタイムがあります。
アートメイクは、肌に細かな傷をつけながら施術するので、傷が修復する期間があります。これを「ダウンタイム」と呼び、さまざまな注意点を守りながら過ごす期間です。
具体的には、水に濡らさないようにする、むやみに触れない、クリニックで渡されたワセリンを塗る、といった注意点を守ります。
また、汗をかくような激しいスポーツやプールなども我慢。施術部位へのメイクもかさぶたが取れるまではしないようにしましょう。
ダウンタイムの過ごし方については、各クリニックでも詳しく説明があります(洗顔やお化粧ができるようになるまでの日数はクリニックによって若干異なります)。
1週間程度のダウンタイム期間をゼロにする方法はありませんが、施術後にクーリング(保冷剤などで冷やす)を行うと腫れや赤みが早くおさまりやすくなります。
- ダウンタイムは傷が修復する期間
- 濡らさない、触らない、保湿を意識するとアートメイクの持ちが良くなる
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・眉毛アートメイクの経過とダウンタイム
・リップアートメイクの術後の経過
・アイラインアートメイク後の経過・ダウンタイム
数回の施術が必要
アートメイクは二回施術を繰り返すとインクが定着しやすくなり、デザインの仕上がりも自然になります。
アートメイクは、一般的に完成までに数回の施術が必要なため、一度の来院では終了しません。
この理由は、ターンオーバーの影響を受ける肌の浅い部分にインクを注入するためです。特に初めてアートメイクを受ける方の1回目の施術は、インクが排出されやすく、色が定着しにくい傾向があります。
必要回数は個人差があり、基本的には2回で完成となりますが、新陳代謝が良くインクが定着しづらい方は3回以上の施術が必要になるケースもあります。
ダウンタイムを安静に過ごすとインクの定着が良くなります。※持続期間の目安である「1~3年」は、数回の施術をした場合の期間です。
- 最低でも2回以上の施術を受けると失敗しづらい
- 1回目の施術は色が定着しにくい
定期的なメンテナンスが必要
アートメイクは数年間消えずに残りますが、永久的に持続するものではありません。
アートメイクの整ったデザインを維持するためには、定期的なメンテナンスが必要です。
メンテナンスの頻度には個人差がありますが、1年~2年ほどでメンテナンスを受ける方が多い傾向にあります。
色が薄くなったら、今まで通りにメイクする方法に戻る場合は別ですが、アートメイクを持続させたい場合はメンテナンスのための費用がかかります。
- 整ったデザイン維持にはメンテナンスが必須
- メンテナンスの頻度には個人差がある
以上がアートメイク共通のデメリットです。下記には部位別(眉毛・リップ・アイライン)アートメイクのデメリットをそれぞれまとめました。
眉毛アートメイクのデメリット
一番人気のある眉毛アートメイク。デザインもプロに提案してもらえるため、自分に合った眉毛を叶えられます。
メリットばかりのように見える眉毛アートメイクですが、デメリットも。ここからは、眉毛アートメイクのデメリットを一つずつ確認していきましょう。
眉毛アートメイクのデメリット
- 施術方法によってはムラになりやすい
- 流行に左右されがち
- 施術後の眉毛脱毛ができない
施術方法によってはムラになりやすい
眉毛アートメイクは、施術方法によってムラになりやすい特徴があります。
眉毛アートメイクの施術方法
2D | 医療マシンにより均一に色を入れていく(パウダー状) |
3D | 手彫りで1本ずつ毛並みを再現 |
4D | 2Dと3Dを合わせた手法 |
体質によっても定着具合いは異なりますが、特に毛並みを一本ずつ描いていく3Dによる施術は色が消えてしまったり、ムラになりやすい傾向があります。
3Dは素顔でも浮かない・ナチュラルな眉毛を再現できる方法ではありますが、線で眉毛を描いていくため色素が定着しづらいのが理由です。
体質によっては避けられない場合もありますが、下記2点でムラを軽減できます。
- 必ず2回以上の施術を受ける
- よりムラになりにくくするためには、4D(2Dと3Dのミックス)で施術する
流行に左右されがち
デザインが流行に左右されがちな点も、眉毛アートメイクのデメリットです。
極細眉や太眉、アーチ眉や平行眉など、時代によって眉毛のデザインには流行があります。眉毛は顔の印象を大きく左右する部分でもあるので、流行が反映されるのも納得できますね。
アートメイクは数年間消えずに同じデザインで過ごすことになるので、場合によっては後悔するケースも。
デメリットを解消するためには、ベースメイク感覚で眉毛アートメイクをして、メイクで書き足せるデザインにする方法や、流行に影響されにくいデザイン(アーチ眉など)にする方法があります。
- 書き足しOKのデザインにする
- 流行に影響されないデザインにする
施術後の眉毛脱毛ができない
眉毛アートメイクの施術後は、眉毛の脱毛ができません。
施術箇所への脱毛ができないのは、「レーザーが色素に反応しやけどの恐れがある」「インクの色が消えてしまう」といった理由があげられます。
とはいえ、脱毛できないのはアートメイクをした部分のみですので、施術していない箇所や眉まわりの脱毛は可能です。
施術箇所への脱毛を希望の方は、アートメイクを行う1カ月前には脱毛を済ませておきましょう。
- 施術箇所への脱毛は、1カ月以上前に済ませる
- 必要ない部分の眉毛脱毛ができるクリニックもある
リップ(唇)アートメイクのデメリット
唇の色を変えて血色を良く見せたり、人中短縮(鼻と唇の距離の短縮、リップリフトとも)などの効果も期待できるリップアートメイク。意外に見落としがちな唇のシミやくすみも解消できると人気です。
ただし、リップアートメイクにも特有のデメリットがあります。
リップアートメイクのデメリット
- 口唇ヘルペスを発症するリスクがある
- 定着・持続期間に個人差が出やすい
- 痛みを感じやすい・腫れやすい
口唇ヘルペスを発症するリスクがある
もともと口唇ヘルペスを発症しやすい方は、アートメイク施術の刺激により再発しやすい傾向があります。
今まで一度も口唇ヘルペスを発症した経験がない方でも、リップアーメイクを機に発症するケースもあります。
施術に成功しても、ヘルペスを発症するとその部分にインクが定着しないので、発症は避けたいところです。発症予防のために、多くのクリニックでは抗ウイルスの飲み薬を使用して対策をしています。
- 発症を繰り返しやすい方は事前に申告する
- クリニックから渡される抗ウイルス薬をきちんと飲む
定着・持続期間に個人差が出やすい
唇はほかの部位に比べ、色素が定着しづらく色が消えやすい傾向があります。
基本的には1年以上もちますが、予想以上に早く消えてしまう方も。これはターンオーバーの周期が影響し、肌のターンオーバーの周期に対して、唇は4~10倍の早さがあるからです。
肌の生まれ変わりが早い方は、インクが排出されるのも早くなりますので消えやすさは避けられません。
そのため、リップアートメイクは3回以上の施術が必要になるケースや、メンテナンスの頻度が高い傾向も見られます。
皮膚・唇のターンオーバー周期の違い
皮膚 | 40~50日程度 |
唇 | 4~10日程度 |
定着のしやすさや持続期間には個人差が大きく、繰り返しの施術やダウンタイム中の過ごし方によって持ちが良くなります。
痛みを感じやすい・腫れやすい
リップアートメイクは施術中だけでなく、施術後1~2日ほど持続して痛みを感じる方もいらっしゃいます。
唇は「粘膜の延長」や「皮膚と粘膜の間」と呼ばれる部位であり、手のひらの次に感覚が優れた場所です。
多くのクリニックでは、施術前にしっかり麻酔を使用しますが、痛みがゼロになる訳ではありません。
また、デリケートな場所のため腫れやすい特徴も。腫れや赤みに関しては個人差もありますが、施術後にクーリングを行うと落ち着きやすい傾向があります。
- 痛みが苦手な方は事前に申告を。施術中に追加の麻酔をしてくれるクリニックもあります
- 施術後はしっかりクーリングを行う
アイラインアートメイクのデメリット
アイラインアートメイクは、上のまぶただけでなく、下まぶたにも施術が可能です。
まつ毛の間を埋め目を大きく見せ、印象的な目元を演出できるメリットがありますが、ここではアイラインアートメイクのデメリットをまとめました。
アイラインアートメイクのデメリット
- デザインによっては素顔のとき不自然に見える
- 粘膜や眼球に近い場所なのでリスクが高い
- 施術できる時期が限られる(花粉症の方の場合)
デザインによっては素顔のときに不自然に見える
アイラインの施術は、デザインによってはメイクしていないときに不自然に見えてしまう可能性があります。
- ロングテイル(目尻)
- 太いライン
- 目尻の跳ね上げ
目を強調したいがために、テイル(目尻)部分が長めのデザインや、太すぎるラインのデザインにすると素顔になったとき不自然になりがちです。
アイラインのデザインは2回目以降の施術でラインを太くしたり長くしたりできるため、特に初めてアイラインアートメイクをする方は、太め・長めのデザインを好む方でも、短く細いデザインからスタートすると失敗しづらくなります。
まつ毛の間を埋めるだけのシンプルなデザインであれば不自然にならず、ナチュラルに目元を強調できます。
- まずはシンプルなデザインから始める
- デザインの仕上がりイメージを施術担当者と共有する
粘膜や眼球に近い場所なのでリスクが高い
アイラインアートメイクは施術部位が粘膜や眼球に近い場所なので、外傷を伴う可能性があります。
国民生活センターの「アートメイクの危害」によると、アイライン部位は眉毛に並び被害事例が多い部位。中には角膜が傷ついた危害事例もあります。
また、まぶたの内側には「マイボーム腺」と呼ばれるものがあり、この部分への施術はドライアイになる懸念があります。
無資格者による施術はもちろん論外ですが、クリニックでの施術でも経験豊富・技術力が高い施術者を選ぶと、眼球に傷がついたり、別の箇所へ誤って針が刺さったりする失敗リスクを減らせます。
- クリニックの症例数、施術担当者の経験、技術を確認する
- 値段で決めず、信頼できるクリニックを選ぶ
粘膜や目頭への施術はリスクが高い理由から、施術ができないクリニックもありますので、希望する場合は事前に確認しておきましょう。
施術できる時期が限られる(花粉症の方の場合)
花粉アレルギーの方は、花粉が飛散している時期の施術はできません。
花粉アレルギーを持つ方の場合、目の充血やまぶたの腫れ、目がかゆくなるケースが多くみられますので、花粉が飛散している時期はアイラインアートメイクは行なえません。
これは、無意識に目をこすってしまうと感染症の危険があり、インクが消えてしまったりまだらになってしまう可能性があるからです。
花粉症の方は、花粉が飛び始める2月ごろまでには二回の施術を終わらせる必要があります。
- 11月~2月頃まで
※花粉の種類によって異なる
スギやヒノキ、イネ科など、花粉の種類によって飛散時期が異なります。ご自身のアレルギーの種類を確認して、花粉が飛ぶ時期を避け一回目の施術をスタートさせましょう。
ヘアライン(生え際)アートメイクのデメリット
髪の生え際にアートメイクで毛並みを再現するヘアラインアートメイク。毛髪に溶け込む自然な毛並みを描けるため、おでこを狭くする、生え際の形を整えるといった理想が叶い、小顔効果も期待できます。
メリットがある一方で、ほかのアートメイクや植毛にくらべるとデメリットもあります。
ヘアラインアートメイクのデメリット
- 髪色の大きな変更ができない
- 植毛と比べて持続性がない
- 他の施術を比べて施術時間が長め
髪色の大きな変更ができない
髪色の変更をお考えの場合は、ヘアラインアートメイクの施術を受ける前に希望の色にヘアカラーしておきましょう。
アートメイクに使用できるインクの種類は豊富にあり、混ぜ合わせて希望の色を作れます。
ただし、施術後の色の大きな変更はできませんので、アートメイクをしたあとは髪色の急激な変更は困難です(少し明るめにする・少し暗めにする・赤みや黄色みを足すくらいの変更であれば、リタッチで対応可能)。
アートメイクの持続期間である1~3年ほどは、大きな髪色の変更ができない点を考慮してインクの色を選びます。
- ヘアカラーする場合は、事前に済ませておく
- 施術後はヘアカラーの大きな変更はしない
植毛と比べて持続性がない
成功すると半永久的に持続するといわれる自毛植毛にくらべると、アートメイクには持続性がありません。
また、頭皮はほかの部位にくらべて油分が多く、色が落ちやすい傾向があります。
持続期間の違い
自毛植毛 | 半永久的 |
ヘアラインアートメイク | 3年ほど |
植毛とくらべてしまうと、どうしても持続期間は劣るので、持ちを良くするためにはダウンタイムの過ごし方とメンテナンスが大切になります。
- ダウンタイムの注意点を守る
- 定期的なメンテナンスを行う
定期的なメンテナンスが必須となりますので、通いやすさや予約の取りやすさ、料金なども考慮してクリニックを選びましょう。
他の施術にくらべて施術時間が長め
ヘアラインへの施術は、他の部位に比べて施術時間が長めになる傾向があります。
ヘアラインアートメイクは施術範囲が広く、施術者が手作業によって1本1本の髪を描いていくため、施術時間が長めです。
平均2~3時間半程度かかり、短縮する方法はありません。時間のない中で急いで施術してしまうと失敗にもつながりかねないので、時間に余裕のある日にちに予約するのがおすすめです。
- 施術したい範囲を事前に確認しておく
- 余裕をもったスケジュールを立てる
また、施術範囲の広さや時間の長さから、痛みを感じやすい傾向も。麻酔をしてからの施術となりますが、痛みが強い場合には遠慮せず申告するようにしましょう。
アートメイクは皮膚表皮層から0.02~0.03mmの部分にニードル(針)を用いて人体に安全な色素を注入する医療美容技術です。日本では、アートメイクは医療機関で行わなければならない医療行為とされています。
アートメイク施術後および施術の1~2日後に以下のような副作用があらわれる可能性がございます。
- 腫れ、痛み
- アレルギー
- 出血、内出血
- かさぶた、赤み、熱感
- 色素のムラや変色、にじみ
- ケロイド
- ヘルペス、感染症、ケロイド
- 角膜損傷