皮膚の浅い部分に染料を注入し染色するアートメイク。コンプレックスや悩み解消のために施術を受ける方が多いメイク方法ですが、施術を受けると基本的に1~3年は消えずに残るので、
「失敗したら、外出できなくなっちゃう」
「失敗が怖くて踏み切れない」
という方もいらっしゃると思います。
当ページでは、アートメイクの失敗リスクを最小限にするため、部位別のアートメイク失敗事例や失敗回避の方法、返金・修正・除去について解説しています。
失敗例から失敗を回避する方法を学び、「アートメイクをして良かった」「コンプレックスが解消して、自分に自信がもてるようになった」と思えるように、リスク回避をしましょう。
この記事の執筆者
石川 聡司
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)
北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。品川美容外科にて美容外科医として3年間の研鑽を積み、2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。
婦人科全般の診療のほか、美容医療では美肌治療、美容整形をはじめ脱毛・アートメイクなど幅広く対応する。
アートメイクで失敗することはある?
消費者庁・国民生活センターの事故情報データバンクシステムに寄せられた、アートメイクに関する相談は2002年~2021年4月までの間で206件にのぼります。
「毎日のメイクの手間が省ける」「コンプレックスを解消できる」と、美容に敏感な方に注目されているアートメイクですが、中には「失敗した」と感じた方がいることは事実です。
(アートメイクの失敗がすべて国民センターに相談されるわけではないので、実際の失敗数は、もっとたくさんあると考えられます)
皮膚に医療用の針を刺して着色するアートメイクは、れっきとした医療行為です。しかし、サロンなどで、医師免許や看護師免許をもたない人が施術しているケースが見られることも事実。
そして、皮膚障害のほかに、とくに多いのがデザインの失敗です。アートメイクは、細かな作業であることから、高い技術力と知識が必要になります。
資格のある人施術を受けることは前提ですが、「クリニックで受けるから失敗しない」というわけではないことも認識しておきましょう。
アートメイクの失敗事例
どんな点について失敗と感じたかどうかは、施術を受ける部位によっても異なります。実際にあった、部位別のアートメイク失敗事例について下記にまとめました。
眉アートメイクの失敗例
- 左右の眉が非対称になった
- 変色した
- 施術箇所ではないところに針を刺し、色が残った
- やけどのようになった
- 希望どおりのデザインにならなかった
- 施術後すぐに色が全部消えた
アートメイクの施術部位のなかで、もっとも受ける方が多いのが眉です。
もともとの左右の違いを調整したり、メイクをしなくても整った眉を手に入れるための眉アートメイクですが、アートメイクによって左右の眉が非対称な形になってしまった、変色してしまった、というケースがあります。
眉アートメイクは、基本的に手彫りまたは手彫りと医療マシンの組み合わせで行われ、より自然な眉に仕上げるために1本1本ていねいに書きあげるクリニックがほとんど。
ただ、クリニックの中には医療マシンのみを使用した事例があり、医療マシンのみでの施術だと色が均一に濃く入り、海苔を貼ったような眉になってしまうケースがあります。
また、手作業での施術となるので、経験の浅い技術者や技術力の低い施術者の場合、施術箇所とは関係のない場所(鼻の頭など)に医療用針があたり、シミのような着色が消えなくなったケースもあります。
そのほか、「眉が2本になった」という事例や「施術後数日で消えた」という事例もみられます。
唇アートメイクの失敗例
- 施術後、腫れや痛みが消えない
- 色ムラができた
- 紫色になった
- 想像していた仕上がりと違う
- 鮮やすぎる色なので、すっぴんのときに不自然
「マスクにつかない」「食事をしても落ちない」「華やかな印象の顔になる」という理由で、唇アートメイクをする方も増えています。
唇は眉とくらべて皮膚も薄いので、施術時に強く痛みを感じやすい場所でもあり麻酔を施しての施術が基本ですが、施術中に痛みを感じたり施術が終わったあとでも腫れや痛みが消えないケースもみられます。
また、施術後に雑菌が入り、炎症・化膿・腫れ・発疹を引き起こしてしまった事例もあります。
本来であれば、均一に色が入ってほしい唇のアートメイクですが、色ムラができてしまったり紫色に変色してしまったケースも。
さらに、理想のリップラインや似合う色は人によって違いますが、想像していたデザインと違っていたり、鮮やかすぎる色になりすっぴんのときに不自然に浮いてしまうことで「失敗」と感じた方もいました。
アイラインアートメイクの失敗例
- 角膜に傷が入り、視力が低下
- 目じりが青っぽく変色、アザのようになって消えない
- 色がにじんだ
- 一部の色が消えて、まだらになった
- 数日で消えた
アイラインのアートメイクは自然に目元を強調したり、目を大きくみせることから眉に続いて施術を受ける人が多い部位です。
アイラインアートメイクは、まぶたのキワに施術を行います。唇同様、皮膚が薄く痛みを感じやすい部位であると同時に、眼球に近い場所でもあります。
そのことから、アイラインへの施術の失敗事例では、「施術中に、痛みを強く感じた」「角膜に傷がついた」「視力が低下した」というものが多くあります。
また、施術前の麻酔が目に入ることによって、角膜化学熱傷を起こしてしまったケースも。アイラインのアートメイクは、眼球に近い場所への施術なので、外傷をともなう失敗が多くみられることが特徴です。
そのほか、染料がにじんでしまう場合や、青っぽく変色しアザのようになって消えないという事例や、数日で消えたり、一部の色が消えてまだらになったケースがみられます。
アートメイク失敗例の共通点
アートメイクの失敗例をみていくと、共通して「デザイン」「肌トラブル・外傷」のどちらかに分類できます。失敗を回避するため、それぞれ確認していきましょう。
共通点1.デザインの失敗
- すぐに消える
- 濃すぎて浮く
- 色ムラ
- 希望のデザインではない
上記のようなアートメイクの失敗は、施術者の技術が未熟なことや使用している染料が安価なものであること、施術を受ける方の体質などが原因として挙げられます。
共通点2.失敗による肌トラブル・外傷
- アレルギー反応
- 肉芽腫
- 腫れ
- 化膿
- 赤み
- ただれ
- ケロイド
- C型肝炎
腫れや化膿、ただれや赤みなどの肌トラブルも多く、なかにはC型肝炎を発症したケースも。
上記のような失敗は、衛生管理や施術者の技術力・経験に影響されるほかに、施術を受ける方の体質にも関係があります。
アートメイクで失敗しないための回避方法5つ
対策をしっかりとることで、アートメイクの失敗リスクを最小限にできます。アートメイクで後悔しない、失敗を回避するための方法5つについて、詳しく説明します。
クリニックで施術を受ける
繰り返しになりますが、アートメイクは医師免許または看護師免許をもつ人でないと施術できません。しかし、エステサロンや個人サロン、アートメイク専門店や美容院での施術がおこなわれていることも事実です。
ここで、国民生活センターに寄せられた相談206件(2002年~2021年4月まで)における、施術者の医師免許または看護師免許の有無について調査したものを表で確認しましょう。
失敗事例における施術者の資格の有無
資格あり | 10件 |
資格なし | 116件 |
記載なし | 80件 |
資格についての記載がない事例も多くありますが、無資格での施術の多さが目立ちます。医師・看護師以外の施術は違法行為であり、衛生管理にも疑問が残りますし、失敗のリスクが高くなります。
アートメイクをする時は必ずクリニックを選び、医師または看護師による施術であることを確認しましょう。
二回以上の施術を受ける
アートメイクは、タトゥーと異なり「一回色を入れたらOK」でありません。1回だけの施術も可能ではありますが、二回以上の施術がデザインの失敗リスクを減らします。
アートメイクは、皮膚の表面から0.02~0.03mmのところに染料を注入するので、ターンオーバーの影響を受けやすいことが特徴です。
さらに、施術直後は肌に細かな傷がついているという理由もあり、施術から1週間は色が抜けやすい状態となります。
傷が完全に回復した状態(約1カ月後~)に二回目の施術を受けることで、より色が定着しやすくなります。そして、デザインの細かな調整ができるので、より自然なアートメイクに仕上がるのです。
体質には個人差があり、パーマがかかりやすい方とかかりにくい方がいるように、アートメイクの色素にも定着しやすい方と定着しにくい方がいらっしゃいます。
色が定着しやすい方でも、一回の施術で完璧な仕上がりになるわけではありませんが、色が定着しにくい方は三回・四回の施術が必要な場合があります。
アートメイクは一回で終わらせずに二回以上の施術を受けて、「色が消えた」「まだらになった」「変色した」などのリスクを回避しましょう。
カウンセリングはしっかり
アートメイクの失敗を回避するために、事前のカウンセリングをしっかり受けましょう。
より安全にアートメイクをするために、アレルギーや体質、服用中の薬や治療中の病気などの確認はかかせません。また、どのように施術がおこなわれるかの説明や注意点の確認、疑問解消やデザインイメージのすり合わせも必須です。
「これからアートメイクの施術を受ける」と思うと、カウンセリングで緊張してしまう方もたくさんいらっしゃいますが、ささいな疑問や不安でも遠慮なく話しましょう。
また、希望のデザインをしっかり伝えるために、理想の眉やアイライン、リップラインの画像を用意していくのもいいでしょう。
カウンセリングをしっかりおこなうクリニックは、失敗を回避できるとともに、ユーザーの声にしっかり耳をかたむける信頼できるクリニックであるともいえます。
安さで決めない
アートメイクの施術を受けるクリニックを、安さで決めてしまうのはおすすめできません。施術料金の安いクリニックには、それなりの理由があります。
具体的には、金属の多い安価な染料をつかっている可能性もありますし、施術者の経験や実績が少ないため、料金設定を安くしている場合も。
東京でアートメイクができる有名なクリニック8院をもとに、部位別のアートメイク料金相場を調査し下記にまとめました。
(二回施術を受けたときの価格です)
施術部位 | 料金相場(二回施術) |
眉 | ¥113,725 |
唇 | ¥140,038 |
アイライン(上) | ¥80,575 |
料金設定には幅があり、より価格を抑えてサービスを提供できるように努力しているクリニックもありますが、上記の価格を大幅に下回る(半値以下など)クリニックは選ばないほうが無難です。
「安いから」という理由でのクリニック選びは、失敗してさらに治療費が必要になったり、お金に変えられないあなたの大切な顔にアザが残ったり、肌トラブルを引き起こしてしまうかもしれません。
料金を基準に選ぶことはリスクを高める危険性があるので、安さで選ぶのは避けましょう。
アートメイクの相場を見る
疑問や不安があればやめる
アートメイクへの不安や疑問があれば、アートメイクをやめることも必要です。
「カウンセリングまで受けちゃったし…」「友達にすすめられているし…」という理由で、不安をもちながらも施術を受ける方がいらっしゃいます。
しかし、途中で「やっぱり、やめた」「もう少し先延ばしにしよう」「ほかのクリニックを改めて探そう」という決断もアリです。
多くのクリニックでは、カウンセリングを無料で行っているので「カウンセリングを受けてから、施術を受けるかの最終決定をする」というつもりで大丈夫です。
失敗を回避する方法を選びリスクを極力減らすのは、あなた自身なのです。しっかりリサーチして、疑問や不安をなくしてから施術を受けましょう。
失敗したときの返金はある?
失敗しないようにリサーチをして細心の注意をはらっていたとしても、失敗してしまったときに、返金をしてもらうことは可能なのでしょうか。
例外がないとは言い切れませんが、アートメイク失敗時の返金は、どのクリニックでも基本的にありません。
まれに、エステサロンなどで「満足できなければ全額返金」というサロンもありますが、医師や看護師による施術ではないので違法行為にあたります。
- 患者側の事情により解約する場合、返金は一切不可
- 肌トラブルが生じても治療費の請求はできない
- 施術後の返金や修正はおこなっていない
- 数回の施術の場合、原則的に途中解約できない(やむを得ない場合や医師が継続困難と判断した場合を除く)
施術前の説明書や同意書、公式サイトなどに上記のような注意書きが明記してあるクリニックが多くあります。
二回の施術コースを契約した場合、一回目の施術後、二回目を施術せずに解約しても返金に対応していないクリニックが大半です。
だからこそクリニック選びはとても重要。安さや雰囲気、カウンセリング時にその場の流れですぐに決めないことをおすすめします。
失敗したアートメイクの修正・除去は可能?
「失敗したら消せないの?」「修正することはできる?」と、お考えの方もいらっしゃると思います。
アートメイクは、修正や除去が可能です。しかし、すべてにおいて問題なくできるわけではありません。
アートメイクの修正
アートメイクの修正ができるケースとできないケースについて、下記にまとめました。
- 細い眉を太くする
- 薄めの眉に毛並みを足す
- 小さめなリップラインを広くする
- 短いアイラインなど長くする
- 変色したアートメイクに濃い色を足す
- まだらになったアートメイクを均一にする
- 眉山を削る
- アイラインの跳ね上げをなくす
- はみ出しすぎたリップラインを小さくする
- 濃いリップを薄くする
- はっきりした黒の眉を茶色にする
アートメイクの修正は、足し算はできますが、引き算はできません。
「より太く」「より長く」「より濃く」という修正は可能ですが、長くしすぎたアイラインを短くしたり、赤が濃すぎて不自然すぎるリップラインを薄いピンクにしたりは難しくなります。
アートメイク4つの除去方法
アートメイクの修正ができないような失敗は、除去をおこなうことで解消するケースもあります。アートメイクを除去する方法を下記にまとめました。
ただし、アートメイクの除去には、ケロイド・色素沈着・肥厚性瘢痕・皮膚感染症・色素脱失などのリスクもあることを念頭においていただきたいです。
どのような方法をとったとしても、除去を行うにはアートメイクの施術から最短で1カ月あける必要があります。
また、傷跡が残る可能性もありアートメイクの施術より肌への負担が大きいので、失敗しないことが一番いい方法であることは言うまでもありません。
レーザーで除去する
⇒クリニックでおこなう除去の最もポピュラーな方法
黒系・青系の色を除去できる(赤系は除去が困難なケースも)
肌へのダメージが少ない
一度では除去しきれない可能性が高い
一番使用されることの多いレーザー除去ですが、眉毛やまつ毛が生えなくなる可能性もあります。また、一回のレーザー除去では全部消えず、何度もおこなわなければならないことが多いのも事実です。
切除
⇒レーザー除去の次におこなわれることが多い方法
レーザーでの除去が困難なケースに用いられる
失敗箇所を切り除く方法
一度で除去できるということがメリット
カモフラージュ
⇒失敗箇所を取り去るのではなく、新たに色を入れて目立たなくする
肌と同じ色の染料を注入する方法
肌色はレーザーで除去できないので、最終手段として使うことが多い
除去液
⇒レーザーが使用できないケースで用いるクリニックもある
アートメイク同様、医療用の針で除去液を注入する
黒系・青系だけでなく、赤系の色も除去できる
薬剤を注入することから、肌へのダメージが大きい
アートメイクをしないほうが良い方の特徴
アートメイクで失敗して「外に出られなくなった」「コンプレックスを解消しようと思ったのに、逆に外見にストレスを感じるようになった」という状態を避けるために、アートメイクをしないほうが良い方の特徴を紹介します。
重度の金属アレルギー
アートメイクの染料には微量ながら金属が含まれるので、染料に含まれる金属に反応し、アレルギー症状がでてしまう可能性があります。
「自分のアレルギー度合いが分からない」という方は、アートメイクのパッチテストを受けることをおすすめします。
ケロイド体質
アートメイクは、肌に細かな傷をつけて染料を入れていきます。
通常であれば傷がそのまま回復していきますが、ケロイド体質の方は、しばらく炎症がつづき、施術箇所が赤く盛り上がったり、みみず腫れのようになってしまう可能性があります。
施術箇所に発疹
施術箇所に発疹や肌荒れがある場合も、アートメイクを見合わせましょう。麻酔・消毒液・施術などの刺激で、発疹や肌荒れが悪化する可能性があります。
肌の調子をととのえ、発疹や肌荒れがない状態で施術に望みましょう。
病気で通院・服薬中
病気で通院・服薬中の方は、アートメイクをすることができません。
とくに血液をサラサラにする薬を服用している方は、施術中に出血した場合、出血が止まらなくなってしまう可能性があります。
美容整形したばかり
美容整形をしたばかりの方も、アートメイクの施術を見合わせるようにしましょう。美容整形後の腫れが落ち着くまでの約半年間は、施術できません。
妊娠中・授乳中
アートメイクに使用する麻酔は、胎児や乳児に大きく影響するものではありません。しかし、リスクが0とも言い切れないので、施術をおすすめできません。
また、妊娠中はつわりがある状態や妊娠後期に仰向けの状態のまま、1時間程度体勢を維持するのが困難なことから、アートメイクをしないほうが良いといえるでしょう。
アートメイクは皮膚表皮層から0.02~0.03mmの部分にニードル(針)を用いて人体に安全な色素を注入する医療美容技術です。日本では、アートメイクは医療機関で行わなければならない医療行為とされています。
アートメイク施術後および施術の1~2日後に以下のような副作用があらわれる可能性がございます。
- 腫れ、痛み
- アレルギー
- 出血、内出血
- かさぶた、赤み、熱感
- 色素のムラや変色、にじみ
- ケロイド
- ヘルペス、感染症、ケロイド
- 角膜損傷