葉酸サプリはいつからいつまで飲むのか？妊娠中だけではないって本当？必要な時期と摂取量

今や「妊婦さんにとって葉酸が大切」「妊娠したら葉酸を摂取しよう」ということは常識になりつつあり、妊娠経験のある数多くの方は妊娠時に葉酸サプリを摂取しています¹⁾。

ただ、具体的に「葉酸サプリはいつからいつまで必要なのか？」という問いに対して正確に答えられる方はずっと少ないのではないでしょうか。

このページでは、葉酸サプリの適切な摂取時期や摂取量について解説しています。

解説にあたっては、厚生労働省が提示している資料や医学的根拠に基づいて作成された論文や書籍を引用・参考にしています。

必要に応じて資料を提示するなどし、正確かつ分かりやすい解説を心がけております。妊活中や妊活中の方の葉酸サプリの予習や情報収集にお役立て頂ければ幸いです。

葉酸サプリはいつからいつまで飲むのか

厚生労働省からの案内によりますと、葉酸サプリは「妊娠1ヵ月前から妊娠3ヵ月まで」の方に推奨されています²⁾。

妊娠の1ヵ月以上前から3ヵ月までは、食事からの葉酸摂取に加えて、サプリメントなどから１日に400μgの葉酸摂取がすすめられています。

出典：厚生労働省/平成29年度子ども・子育て支援推進調査研究事業発行「ママのための食事BOOK」

ところが、2012年に行われた妊娠経験のある方を対象に行われたアンケート調査結果³⁾によると、妊娠中のfolic acid サプリメントの利用率は約70％と高い割合に対し、いつからいつまで飲むのか、特に適切な摂り終わりの時期を正しく認識されている方は非常に少なかったのです。

妊娠時の葉酸サプリ使用率	摂り始めの適切な時期を知っている人の割合	摂り終わりの適切な時期を知っている人の割合
約70％	60.7％	19.3％

調査対象者：調査会社の登録モニターである20～40代の妊婦2,367人を対象とし，1,236人から回答を得た
調査実施時期：2012年1月

また、摂り始めの適切な時期を知ってはいるものの、実際に葉酸を妊娠前に意識的に摂取した者は461人（37.3％）と正しい時期に葉酸摂取を開始できている人は少ない結果となっていました。

また、この調査によると50.6％の妊婦は妊娠 4～7 か月時点でもサプリメントを利用していたことがわかっています。

厚生労働省では葉酸サプリの摂取を推奨する時期を明確に提示してはいるものの、葉酸の適切な摂取時期については未だ広く認知されていないのが現状です。

葉酸サプリは妊娠1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までを推奨

厚生労働省では、妊娠1ヶ月以上前から3ヶ月の方へ向け、食事から摂取する葉酸に加えサプリメントなどの栄養補助食品から1日あたり400㎍の葉酸摂取を推奨しています。

妊娠の1ヵ月以上前から3ヵ月までは、食事からの葉酸摂取に加えて、サプリメントなどから１日に400μgの葉酸摂取がすすめられています。

出典：厚生労働省/平成29年度子ども・子育て支援推進調査研究事業発行「ママのための食事BOOK」

妊娠前・妊娠中の葉酸摂取量

	1日あたりの目標摂取値
妊娠の計画・可能性がある女性 (妊娠1ヵ月以上前から)	食品から240㎍＋サプリメントから400㎍
妊娠初期の妊婦 (妊娠直後から3ヵ月まで)	食品から240㎍＋サプリメントから400㎍
妊娠中期・後期の妊婦	食品から480㎍
授乳婦	食品から340㎍

サプリメントから400㎍というのは、モノグルタミン酸型葉酸での摂取が推奨されています。

葉酸サプリを飲み始めるタイミング

葉酸サプリを飲み終えるタイミング

葉酸サプリを詳しく見る

妊娠中期・後期・産後も葉酸サプリを飲んでもいい？

厚生労働省では妊娠1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月の期間に葉酸サプリを摂取することを推奨しているものの、妊娠中期・後期・産後には葉酸サプリ摂取してはいけないのかというと、そんなことはありません。

葉酸はお腹の中の赤ちゃんにとって重要な役割を担う成分であり、とりわけ妊娠直後から妊娠初期までには葉酸の力が必要になる時期だと言われています^{1) 6)}。

そのため、この時期には特に集中的に葉酸を摂取しようということなのです。

細胞や器官を作る働きを持ち、お腹の赤ちゃんだけでなく、母体にとっても重要である葉酸は、日ごろから積極的に摂取したい栄養素です。

また、妊娠中期・後期には葉酸が分解や排泄が促進されやすく、食品からの葉酸摂取量の目標が＋240㎍とされていますし、授乳中も母乳に含まれる葉酸量を考慮し＋100㎍となっています。

これらを踏まえると、推奨期間以外の時期であっても葉酸サプリを摂取する試みは有効と考えられます。

なぜ葉酸が必要なのか

厚生労働省では葉酸サプリは「妊婦1ヶ月前から3ヶ月」の方へ摂取を推奨していますが、これは、葉酸に赤ちゃんの先天性異常のリスクを低減する効果があるためです。

先天性異常には、脳や脊髄に重い障害をもたらす神経管閉鎖障害やダウン症と呼ばれる21トリソミーなどがあり、いずれも葉酸を摂取することでそのリスクを低減する効果が見込まれています⁷⁾。

〔※ 神経管閉鎖障害児出産経験と 21-トリソミー児（ダウン症候群児）出産経験　にて言及〕

先天異常の多くは妊娠直後から妊娠１０週以前に発生しており、特に中枢神経系は妊娠７週未満に発生することが知られている。このため、多くの妊婦が妊娠して又は妊娠の疑いを持って産婦人科の外来に訪れてからの対応では遅いと考えられることから、多くの研究報告と諸外国の対応では、葉酸の摂取時期を少なくとも妊娠の１か月以上前から妊娠３か月までとしている。一方、妊娠が判明してからの摂取でも効果がみられたとする報告もある。

出典：神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に関する情報提供要領

葉酸をサプリで摂取するメリット

妊娠されている方の中には、サプリメントを摂取することに抵抗を感じる方や、できれば葉酸は全て食品で摂取したいという方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、葉酸をサプリメントで摂取することには数々のメリットがあるため、国からも適切な時期の葉酸サプリ摂取が促されています。

葉酸をサプリで摂取するメリットについては次のようなものがあります。

効率よく葉酸を摂取できる

葉酸とはビタミンB群に含まれる水溶性ビタミンです。葉酸サプリはもちろんのこと、野菜や果物をはじめとする食品にも豊富に含まれているものです。

食品に含まれる葉酸を食事性葉酸（ポリグルタミン酸型葉酸）、葉酸サプリなどに含まれる人為的に作られた葉酸を狭義の葉酸（モノグルタミン酸型葉酸）と呼びます。

両者は働きや効果に違いはないものの、その特徴が少し異なっています⁵⁾。

葉酸の種類

	食品に含まれる葉酸 (野菜や果物など)	人為的に作られた葉酸 (葉酸サプリなど)
名称	食事性葉酸 ポリグルタミン酸型葉酸	狭義の葉酸 モノグルタミン酸型葉酸
体内での利用率	50％	85％
葉酸の流失	水や熱に弱いため、調理過程で葉酸が流失しやすい	そのままの摂取が可能、葉酸が流失しにくい

大半の葉酸サプリにはモノグルタミン酸型葉酸が利用されていますが、最近では食事性葉酸を利用した葉酸サプリも登場しています。

食事性葉酸は調理過程で葉酸が流失しやすく、体内に無事に取り入れられたとしても、その利用率は50％ほどになってしまいます¹⁾。

対して葉酸サプリは調理が必要ないため、葉酸が流失する心配がなく、体内利用率も85％と高い基準をキープできます。

摂取できる葉酸量を把握しやすい

今や野菜や果物に含まれる質量あたりの栄養素量を誰もがリサーチできる時代になりました。葉酸も例外ではなく、自分が食べる食物に含まれる葉酸量を調べることは比較的容易ではあります。

しかし、食事性葉酸は調理過程で葉酸が流失してしまいます。流失してしまう量を考慮しながら調理をすることは難しく、調理方法や食物の保存や取扱方法によっても葉酸量に差が生まれます。

そのため、食事性葉酸から摂取する葉酸量を正確に把握することは難しくなります。

1粒あたりに含まれてる葉酸の量が決まっていて調理する必要がない葉酸サプリは、摂取できる葉酸量の把握が簡単にできます。

つわりが辛い時期でも摂取しやすい

妊娠初期にはつわりに悩まされる方が少なくありません。今までは当たり前に食べられていたものが食べられなくなったり、食べ物の匂いを嗅ぐだけで吐き気を催したりと、食事をとるのも大変になります。

葉酸サプリの効果はいつから得られるの？

葉酸サプリの葉酸は、身体の中にどのようなタイミングで吸収されるのでしょうか。

ビタミンには水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンがありますが、葉酸はビタミンB群に属する水溶性ビタミンです。

水溶性ビタミンは水に溶けやすい特徴を持ち、体内に蓄積されることはなく排出される特徴を持ちます。

葉酸も例外ではなく、葉酸を摂取したとしても数時間で身体の外へ排出されてしまうため、毎日一定量を摂取し続ける必要があります⁵⁾。

葉酸サプリの摂取を途中でやめたらどうなる？

中には葉酸サプリの摂取を途中でやめてしまった方や飲み忘れてしまった方もいらしゃることと思います。葉酸サプリを飲むのを途中でやめると、何か問題はあるのでしょうか。

葉酸サプリは途中でやめても問題はない

葉酸サプリの摂取を途中でやめてたとしても、大きな問題にはなりません。

また、葉酸サプリを途中でやめてしまったからといって、それが直接的な原因となって何か重大な疾患や問題が起こる例は報告されていません。

葉酸はサプリだけでなく、身近な食品にも豊富に含まれている栄養素です。何らかの事情があり、サプリでの葉酸摂取が難しい場合は、より食品からの摂取を心がけるとよいでしょう。

また、葉酸サプリを摂取しなかったからといってお腹の赤ちゃんに先天性の異常が必ずしも起こってしまうということはありません。

ただし、葉酸サプリを摂取したことで先天性異常を持つ赤ちゃんの出生率が低下することは医学的に認められている事実です。

ただし、過剰摂取には要注意

葉酸サプリを途中でやめてしまった方が摂取を再開する際の注意点としては、やめた期間の分を取り返そうとして、1日の目標摂取量を越えて過度に摂取しようとしないことです。

葉酸は水溶性ビタミンのため、身体に蓄積しておくことができません。一度に過度に摂取したとしてもそれだけ有益に働くということはありません。

食事性葉酸については体内利用率の低さや調理過程で葉酸が流失しやすいため上限量はないものの、身体にダイレクトに届く人為的に作られた葉酸が含まれる葉酸サプリは、過剰摂取による副作用が懸念されます。

葉酸サプリの使用で必ず守りたいこと

人が摂取する食物や栄養素は、節度を守って利用すれば有益に働いてくれるもの。ただ、取り扱い方法を誤ることで思わぬトラブルに発展してしまうことがあります。もちろん、葉酸サプリも例外ではありません。

葉酸サプリを使用するときには、次の点は必ず守るようにしましょう。

過剰摂取に注意

葉酸そのものにアレルギーや毒性は報告されていないものの、狭義の葉酸（モノグルタミン酸型葉酸）の過剰摂取による副作用例はいくつか報告されています。

過剰摂取による副作用には、ビタミンB12欠乏症の見落としや、神経症状の発現や悪化などがあります。

いずれも狭義の葉酸を5㎎など非常に大量に摂取したケースで、市販の葉酸サプリの摂取目安に気を付けていれば、過度に気にする必要はありません⁵⁾。

「日本人の食事摂取基準（2020年版）」では、葉酸サプリによる葉酸（モノグルタミン酸型葉酸）の1日の耐容上限量が定められています。

葉酸サプリの耐用上限量

年齢 男女共	1日あたり耐容上限量 ※狭義の葉酸
12～14歳	900㎍
15～17歳	900㎍
18～29歳	900㎍
30～49歳	1000㎍
50～64歳	1000㎍
65～74歳	900㎍

薬との飲み合わせに注意

葉酸は薬との飲み合わせにより、効果の増減が起こることがあります。次のような薬を服用されている方が葉酸サプリを摂取する際には、主治医に相談するようにしてください。

葉酸と飲み合わせることで相互作用が予想されるもの

フェニトイン製剤(抗てんかん薬)	効薬の減弱
葉酸代謝拮抗薬（抗がん剤）	効薬の減弱
フルオロウラシル、 カペシタビンなど（抗がん剤）	効薬の増強

まとめ

今や「妊婦に葉酸」という知識は定着しつつあるものの、葉酸摂取が推奨されている正確な時期や摂取量に関してご存じの方は未だ少ない現状があります。

赤ちゃんの健やかな成長のために最も葉酸が必要な時期を逃さないよう、妊婦を予定・希望されている方は妊娠1ヵ月以上前からの葉酸サプリの摂取を心がけましょう。