脱毛についてリサーチしていくなかで毛周期(もうしゅうき)という言葉を初めて知った方も多いのではないでしょうか。
このページでは、部位別の毛周期とベストな全身脱毛の通院ペース、毛周期からずれてしまった場合や脱毛間隔が空いてしまった場合の脱毛効果について解説しています。
- 部位別の毛周期
- 自分の毛周期が分からない!見分け方は?
- 蓄熱式脱毛は毛周期が関係ないと聞いたけど本当?
- 2週間で通えるクリニックは本当に効果があるのか
- 脱毛期間が空きすぎても効果は減らないのか
さらに、蓄熱式脱毛と毛周期の関係や2週間で通えるクリニックの効果についてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
この記事の執筆者
石川 聡司
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)
北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。品川美容外科にて美容外科医として3年間の研鑽を積み、2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。
婦人科全般の診療のほか、美容医療では美肌治療、美容整形をはじめ脱毛・アートメイクなど幅広く対応する。
毛周期とは
毛周期を一言でいうと「毛が生えてから抜け落ちるまでの周期」です。
「ヘアサイクル」というと分かりやすいかと思います。
身体の毛は、すべての毛穴から常に生えている訳ではありません。毛はそれぞれ成長と休止をくり返しています。
毛周期
成長初期 | 新しい毛が準備されてくる。まだ皮膚表面には出てきていない。 |
成長期 | 毛乳頭に栄養が送られ、毛が太く・長く成長する。皮膚の表面に毛が表れる。 |
退行期 | 毛乳頭が萎縮。毛幹が毛乳頭から離れていく。 |
休止期 | 毛幹が押し出される。毛が抜け落ちる、毛のお休み期間。 |
たとえば、ある部位に100個の毛穴があったとしても、すべての毛穴から常に毛が生えているわけではなく、お休みしている毛(毛が生えていない毛穴)があるということです。
部位ごとの毛周期の長さはほぼ同じですが、1本ごとにそれぞれのタイミングで成長と休止の毛周期を繰り返しています。
毛周期に合わせた脱毛が基本
休止期にレーザーを照射しても反応するメラニン色素がないため、毛乳頭・毛母細胞などの発毛組織を破壊できません。そのため、医療脱毛では毛周期に合わせて照射を行うのが基本です。
成長期の毛は20%程度(男性のヒゲや頭髪を除く)。1回の照射で20%の毛がすべて脱毛できたとしても、まだ80%の毛が残っている状態です。
単純計算で5回照射(20%×5回=100%)すればすべての毛を脱毛できる計算ですが、成長期であってもレーザーに上手く反応できなかった毛もあります。
毛周期の乱れなどもあるので、実際はもう少し回数がかかる場合があります。
毛にレーザーを当てたときの反応
毛にレーザーを当てると、以下のいずれかの反応を示します1)。
①なにも起こらない | 与えるエネルギーが小さすぎると、なにも起こらず翌日からまた成長を始めます。 |
②毛の一部が焼ける | レーザーの熱で皮膚の外に出ている毛は焼けてなくなります。毛根部分には変化がないので、1カ月もすれば毛は生えてきます(このような事態を防ぐためにも、脱毛前の自己処理が必須です)。 |
③ショックロス(休止期導入) | 毛根に大きな衝撃を与えると、休止期に入って毛が脱落することがあります(ガンの化学療法などによる脱毛も、このためですが、脱毛レーザーでもショックロスは起こり得ます)。発毛細胞は損傷を受けていないので、6~9カ月ほどすると再び成長期に入ります。 |
④発毛細胞が破壊される | レーザーによる熱で、発毛細胞が破壊されます。毛を生産する能力が失われるので、再び毛が生えてくることはありません。 |
上記「④発毛細胞の破壊」が医療脱毛の目的となるのですが、これは成長期の毛にのみ起こります。
脱毛レーザーを照射した際に、成長期の毛すべてに④(発毛細胞が破壊される)の反応が起これば良いのですが、実際には①~④すべての反応のうちどれか一つが起こります。
とはいえ、クリニックではきちんと発毛細胞が破壊されるように、レーザーのパワーや照射時間(パルス幅)を調節しています。
脱毛効果を十分に得るには、成長期の毛への照射と、その人の毛質に合ったパワーでの照射が重要です。
成長期の毛の見分け方
繰り返しとなりますが、医療脱毛の効果を実感するためには、毛周期に合わせた照射が重要です。
「成長期の毛を見極めて、一番効果があるときに施術を受けたい」というのが率直な意見ではないでしょうか。
ただ、医療用の機器を使用してどの毛が成長期であるかを完全に見分ける、といったことはできません。
- 生え変わるタイミングは、それぞれの毛穴でバラバラ
- 見た目での判断は100%正しいとはいえない(皮膚表面に表れている毛であっても、退行期の可能性がある)
カミソリなどで自己処理した翌日にすぐに伸びてチクチクする毛があるかと思いますが、そのような毛が成長期の毛です。
成長期の毛を1本ずつ明確に見分けるのは困難ですが、医療脱毛の効果が一番期待できる時期は「毛が生えそろったとき」です。
一回目の照射が終わり徐々に毛が抜け落ちますが、その後また新たに毛が生えそろったタイミングでの照射が、一番効果的な間隔といえます。
【部位別】毛周期の期間一覧
部位によって毛周期の長さはそれぞれに異なります。下記は、部位ごとの毛周期です1)。
部位 | 成長期 | 成長期にある毛包 | 休止期 |
---|---|---|---|
頭髪 | 2~6年 | 85% | 3~4か月 |
まつげ | 1~2カ月 | 10% | 3カ月 |
ヒゲ | 1年 | 50~70% | 2.5カ月 |
口ひげ | 4カ月 | 65% | 1.5カ月 |
ワキ | 4カ月 | 30% | 3カ月 |
腕 | 3カ月 | 20% | 4.5カ月 |
VIO | 1カ月 | 30% | 3カ月 |
※毛周期には部位ごとの差もありますが、人によっても違いがありますので、上記の表はあくまでも目安としてお考えください。
成長期の長い頭髪やヒゲは長く伸ばすことができますが、まつげやワキ、VIOなどの毛は長く伸びることはありません。
同じ「毛」でも部位によって伸ばせる長さが違うのは、毛周期による違いによるものです。
- 部位の違い
- 個人差
- 毛抜きを使用したお手入れ
- 加齢
脱毛に大きく影響するため、とくに注意していただきたいのが、毛抜きを使用したお手入れです。
毛抜きなどを使用して毛を引き抜くお手入れは、毛周期が乱れる原因となります。脱毛を検討し始めた段階から、毛抜きを使用したお手入れは避けましょう。
全身脱毛の最適な通院間隔・タイミング
毛周期に合わせた通院が基本とはいえ、一つの部位だけの脱毛ではなく全身脱毛を行う際は部位ごとに毛周期が違うため、通院間隔に悩む方もいらっしゃると思います。
医療脱毛では、確かにそれぞれの部位に合わせて、顔は1~2カ月ごと・VIOは2~3カ月ごと・脚は2カ月ごと・・・のように照射すれば、効果を最大限に発揮できます。
ただ、部位ごとの毛周期に合わせて何度も通院していたのでは効率が悪いですよね。
また、全身脱毛をクリニックで受ける場合5回コース・8回コースなどの契約が主なため、部分的に時期をずらして施術を受けるのは実質不可能なケースも多いです。
そのため、全身の毛が生えそろう2~4カ月半ごとの照射が最適な間隔といえます。
全身脱毛の最適な通院間隔・タイミング
1~3回目 | 2~3カ月間隔 |
4~5回目 | 3カ月~3カ月半間隔 |
6~8回目 | 4カ月間隔 |
9回目以上 | 4カ月~4カ月半間隔 |
※クリニックや使用機器によって通院間隔も異なるので、目安として考えておきましょう。
一般的に、最初は2~3カ月あけて、4回目くらいから3カ月以上あけて通院するのが最適な間隔です。
回数を重ねるごとに、毛の量も少なく・毛が生える速度もゆっくりになってくるため、間隔を空けての通院が益々重要になります。
毛が抜け落ちたあと、眠っていた毛が生え揃ったタイミングで次の予約日がくるのがベストです。焦って早く通院してしまわないようにしましょう。
蓄熱式脱毛は毛周期が関係ないってホント?
「蓄熱式脱毛は毛周期が関係ない」は、間違いです。どんな脱毛方式であっても、毛周期に合わせて脱毛に通いましょう。
従来の熱破壊式(ショット式)脱毛機とは違い、弱い熱を何度もあてて温度を徐々に上昇させ、発毛組織の破壊を目指す蓄熱式脱毛を行うクリニックが増えてきています。
熱破壊式(ショット式)脱毛 | 一度に強いエネルギーを照射。毛根の毛乳頭や毛母細胞を一気に破壊します。 |
蓄熱式脱毛 | 数発に分けて弱いエネルギーをじっくりと照射。熱破壊式と比べると、痛みを感じにくいメリットがあります。 |
熱破壊式脱毛と蓄熱式脱毛では、照射方法が異なります。蓄熱式脱毛では脱毛部位に対して何回、どのくらいの熱を与えられるかが効果を左右するため、照射する人の技術力頼みなところがあります。
ただ、蓄熱式脱毛は熱破壊式脱毛よりも痛みを感じにくく、うぶ毛にも反応しやすい、ある程度の色黒肌にも照射できる、照射時間が短いため価格が安い、などメリットが多いため、導入するクリニックが増加しています。
蓄熱式は2週間で通えると説明されたけれどどうなの?
蓄熱式は弱いエネルギーをじわじわ照射するため温度が低く、肌へのダメージも少ないです。2週間で通える理由は、熱破壊式脱毛にくらべて肌への負担が少ないためです。
実際、クリニックから「2週間で通える理由」について、下記のように説明があるケースが多いです。
- 肌への負担が少ないため、短い間隔で通える
- バルジ領域に反応させるから、毛周期が関係ない
確かに肌への負担が少ない点は合っていますが、「バルジ領域に反応させるから、毛周期が関係ない」との説明は厳密にいうと間違いです。
「蓄熱式はバルジ」のイメージが強いのですが、熱破壊式であっても、蓄熱式であっても、メラニン色素に反応させ熱を出し、脱毛効果を出す方法は共に同じです。
メラニン色素とは、毛の黒い色素。医療レーザー機器は、どんな方式であってもこのメラニン色素に反応しますので、毛がない状態(休止期の毛)では効果が期待できません。
肌ダメージが少ないため理論上は2週間で通えますが、実際はムダな照射(脱毛効果を感じられない照射)になりかねないことを理解しておきましょう。
どんな脱毛方式であっても、毛周期を無視して通わない
医療脱毛は、毛周期を無視して通っても意味がありません。毛周期に合わせて通院すると、5回コースでは完了までにはどんなに急いでも8カ月~1年ほどの期間がかかります。
より早く脱毛を完了したいと思い、毛周期を無視して通っても充分な効果は得られませんので、成長期の毛が生えそろうタイミングまで待ってからの照射が大切です。
毛周期より短い間隔で通院した場合、毛周期に合わせた場合よりも脱毛完了までの回数がかかってしまいます。
短い期間で通えるとされている蓄熱式脱毛であっても、毛周期を無視して通院するのはおすすめできません。
毛周期からずれた・過ぎた場合、効果は落ちる?
来院間隔が毛周期を過ぎてしまっても、大きく効果が落ちることはありません。
- 通院予定の日と生理がかぶってしまった
- 急用や体調不良で予約日に行けなくなった
- 予約がなかなか取れなくてベストなタイミングを過ぎてしまった
医療脱毛に通う期間は最低でも8カ月と長いため、途中で上記のような理由から、通院日が毛周期からずれてしまう可能性も出てきます。
とくにVIO脱毛の場合、生理のときは施術を受けられないクリニックが多いため、毛周期を過ぎてしまうケースも多いです。
ただ、施術を行う日が毛周期を過ぎてしまっても、基本的には問題ありません。
脱毛から間隔が大きく空くと、毛もたくさん生えそろってきます。そして、メラニン色素が多ければ、それだけレーザーが反応しやすくなります。
ただし、毛の量が多いとレーザーのエネルギーが分散してしまって一部の毛への効果が薄れる場合があります。毛周期を多少過ぎても問題はありませんが、なるべく早めに予定を調整し通院しましょう。
脱毛間隔が大きく空いても大丈夫?
「脱毛間隔が空き過ぎたら元通りになる?」「今までの脱毛がムダになる?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
さいごに、脱毛間隔が空いてしまったケースについてまとめました。
多忙でクリニックで空いている予約日とスケジュールが合わなかったり、妊娠や転勤、引っ越しなどにより脱毛を一時中断せざるを得ないケースもあるかと思いますので、頭に入れておくと安心です。
いちど得た脱毛効果はムダにはならない
レーザーで発毛細胞を破壊した部分から毛が生えるのは、毛のないところから毛を生やすのと同じように困難です。
ですので、医療脱毛で得た効果は、次の照射まで間隔が空いてしまってもムダにはなりません。
ただ、あまりにも大きく脱毛間隔が空いてしまった場合は、正しい間隔で脱毛に通院したときと比べると、効果の現れ方に差が出る可能性が高くなります。
半年・1年など大きく脱毛間隔が空いてしまった場合、以前レーザーを照射した際に効果のあった毛が抜け落ちたあと、眠っていた毛がよりしっかりと生えそろってきます。
このとき、レーザーのエネルギーが分散して一部の毛に対して効果が落ちる可能性があります。とくにワキやVIOなどの毛量が多い箇所ではエネルギーの分散も起きやすいので、差が生まれやすいです。
また、間隔が空き過ぎてしまった場合、どのタイミングで毛が生え揃ったのかがわかりにくくなり、毛周期に合わせた通院が難しくなります。
正しい脱毛効果が得られない可能性や、脱毛に通う期間が長引いてしまう恐れを考えると、2~4カ月ごとの毛周期に合わせた通院がおすすめです。
医療レーザー脱毛は、レーザーをメラニン(黒い色)に反応させることで発生する熱により、発毛組織を破壊し脱毛します。
レーザー照射後は、以下のような副作用があらわれる可能性があります。
- 赤み、腫れ
- やけど
- 毛嚢炎
- 硬毛化、増毛化
- 埋没毛(埋もれ毛)
- 皮膚や毛の状態によっては、赤いブツブツが出ることがありますが、数時間~数日で消失します。
- 脱毛部分に赤みがある時は日焼けを避けてください。通常脱毛3週間は外出の際、脱毛部を露出する服装を控えていただくか、日焼け止めクリームなどをご使用ください。それでも稀に色素沈着が生じたり、逆に色素が抜けたりすることがあります。
- 脱毛部位にあるホクロ・シミ・あざなどは、レーザー脱毛に伴い取れてしまったり薄くなったり、あるいは濃くなることがあります。
- 毛穴に残った毛が黒く見えることがありますが、徐々に外に出て行きます。毛抜きで抵抗感なく抜けるものは抜いて構いませんが、無理に取ろうとして先の尖ったピンセットなどで掘ったりしないでください。
参考文献
1)『Dr葛西の基礎から学ぼう医療レーザー脱毛入門』葛西健一郎