低用量ピル(経口避妊薬)とはどのような薬かご存知でしょうか。避妊に使うことができる薬、として聞いたことがある方も多いのではないかと思います。
どのような薬なのかわからないとか、手に入れづらいとか、値段も高いのではないか、などいろいろな理由で興味はあっても使用したことがない、という人も多いのではないかと思います。何よりも、本当に薬を飲むことで避妊できるのか、不安に思いますよね。
避妊方法にはさまざまなものがありますが、その中でも、低用量ピルは正しく服用することで高い避妊効果があることが知られています。もともと避妊を目的として開発されましたが、避妊以外にも多くの効果があることがわかってきました。月経困難症や子宮内膜症を改善させるといった女性の悩みや病気に対しても良い効果をもたらすのです。
今回は、低用量ピルとはどのような薬か、避妊以外の効果について詳しく知りたい、といった方々に向けて、薬の効能や副作用などについて詳しくお伝えします。
この記事の執筆者
石川 聡司 日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)
北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。
- 資格:日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医
- 所属:日本美容外科学会JSAS、日本女性医学学会、日本産婦人科学会、日本周産期新生児学会
低用量ピルとは
ピル(経口避妊薬)とは、女性が避妊の目的で使用する薬剤で、黄体ホルモン(プロゲスチン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)と呼ばれる 2 種類の女性ホルモンを配合した薬です。ピルは経口(oral)の避妊薬(contraceptive)なので、OC と略されることもあります1) 。
エストロゲンの含有量によって、ピルは高用量(50μg超)、中用量(50μg)、低用量(50μg未満)、超低用量(30μg未満)に分類されます。含有量が最も少ないものは、超低用量ピルとよばれます2) 。
1960 年に世界で初めて発売されて以降、ピルの用量や種類には改良が加えられています。ピルの重篤な副作用に、エストロゲン由来の静脈血栓塞栓症や、プロゲステロン由来の脂質代謝への影響ならびにそれに伴う心筋梗塞、などが挙げられます。
このような副作用を避けるために、エストロゲンの含有量を低用量化することや、プロゲスチンの種類を工夫することが必要になりました。日本では1999年から使われ始めていますが、現在は低用量ピルや超低用量ピルが主流になっています3) 。
低用量ピルを正しく服用したときの避妊率は、99.7%と非常に高い効果が得られます。ピルは、女性主体で使うことが出来る有効な避妊方法といえます。
なお、ピルは避妊のためには有効な手段ですが、HIV感染症などの性感染症の予防や治療の効果はないため、性感染症の予防には、コンドームを正しい方法で使う必要があります。
また、ピルには、月経困難症や月経過多などを緩和する作用もあることから、避妊ではなくこれらの治療にも使われることがあります。大腸がんや卵巣がんや子宮体がんの発生リスクを下げる効果もあります4) 。
低用量ピルの避妊の仕組み
低用量ピルは、エストロゲンとプロゲスチンの配合剤です。
低用量ピルを服用することで、エストロゲンとプロゲスチンの血中濃度が高まり、視床下部–下垂体–卵巣系にネガティブフィードバック(分泌を抑制するような作用)がかかり、FSH と LH の分泌が抑えられます。すると、以下のような 3 つの避妊効果のある仕組みが働きだします。
①女性ホルモンの血中濃度を高め、排卵を抑制する
エストロゲンとプロゲスチンの血中濃度が高まり、FSH と LHがの低下することによって、「卵胞が育たないように」「排卵されないように」という指令が、卵巣へ届きます。
②受精卵の着床を抑制する
受精卵が子宮内膜に着床するには、子宮内膜を厚くして準備していることが必要です。また、卵胞が育って排卵されるまで(卵胞期)は、プロゲスチンは血中に多く存在しません。
しかし、低用量ピルの服用によって卵胞期でもプロゲスチンが多く存在するようになるため、子宮内膜を厚くさせるエストロゲンの作用が働かなくなります。その結果、子宮内膜は薄いままの状態のため、受精卵は着床しにくくなります。
③精子と卵子が受精しにくくする
プロゲスチンの作用によって頸管粘液が濃くなり、精子が子宮内へ入りにくくなります。
これに加えて、子宮・卵管の運動性の変化による卵子と精子の輸送を阻害することも考えられています。
低用量ピルの避妊効果
低用量ピルを正しい服用方法で服用していくと、このような薬の作用が働き、なんと 99.7%もの高い確率で避妊の効果を得ることができるのです。
低用量ピルの副効果
- 避妊効果
- PMS(月経前症候群)の緩和
- 月経周期を調節できる
- 生理不順・生理痛の改善
- ニキビ・肌荒れを防ぐ
- 卵巣がん・子宮内膜がんの予防
低用量ピルの主な効果は、避妊ですが、避妊以外にもたらされる良い効果があり、これを副効果と言います。
代表的な副効果として、月経に関するトラブルや肌に関するトラブルについて改善するといったものが挙げられます。また、卵巣がんや子宮体がんの予防効果もあります。まさに女性の味方になる薬、と言えます。さっそく低用量ピルの副効果をみていきましょう。
PMS(月経前症候群)の緩和
月経前症候群(PMS)は、月経の約 1 週間前から出現する身体症状と精神症状が、月経開始とともに変動することを特徴とする病気です。
イライラやうつ状態などの精神症状、乳房の痛みや下腹部の痛みなどの身体症状が現れます。主に精神症状がひどい場合には、月経前不快気分障害(PMDD)と呼ばれ、これはうつ病の 1 つの種類であると考えられています。
PMS も PMDD も原因ははっきりとはわかっていませんが、月経周期に応じた女性ホルモンの変動が関わっていると考えられています。
十分な睡眠や食生活の改善、有酸素運動などの生活習慣の改善だけで効果が得られない場合や、症状が重い場合には漢方薬や低用量ピルなどを用いた薬物療法が勧められます3, 5) 。
排卵が起こり女性ホルモンの大きな変動があることがそもそもの原因なので、低用量ピルにより排卵を止め、女性ホルモンの変動をなくすことで症状が軽快します6) 。
生理不順・生理痛の改善
低用量ピルを服用することで、生理不順や生理痛などを改善することができます。
生理痛の主な原因は、月経期に子宮内膜で産生されるプロスタグランジンなどの内因性生理活性物質による子宮筋の過剰収縮です。
通常の周期では、排卵まではエストロゲンが単独刺激状態で、子宮内膜を厚くさせます。排卵するとプロゲスチンも作用することで子宮内膜は受精卵が着床する準備を整い始めます。
そして月経期に内膜が剥がれて出血するというホルモン変動があります。ホルモン変動に伴い支給金が過剰収縮することが生理痛につながります。
そこで、低用量ピルを服用すると、どうなるでしょうか。
低用量ピルに含まれるエストロゲンとプロゲスチンは子宮内膜が厚くならないように作用します。そのため、プロスタグランジンの量も増えません。
低用量ピルを服用することで、排卵周期にみられるようなホルモン変動が無くなるため、生理痛を和らげる効果が生まれるのです3, 5) 。
また、低用量ピルでホルモンを調節することで、生理周期も安定し、生理不順が改善します。
月経周期を調節できる
結婚式や旅行、仕事、スポーツ、受験などで月経の時期をずらしたい、ということがあると思います。
月経はエストロゲンとプロゲスチンという2種類のホルモンの変動によって起こるため、OC/LEP(経口避妊薬/低用量エストロゲン・プロゲスチン療法) を計画的に一定期間に服用することで、一時的に月経をずらすことが可能です。
- 生理を遅らせたいとき
-
月経の始まる少なくとも 3-5日前からピルを飲み始めると、服用を続けている間は月経が来なくなります。月経になってもいい日まで服用を続けることで生理を遅らせます。
なお、月経を 1 週間以上遅らせる場合には、途中で出血が始まることがあります。その場合は服用量を2倍量に増量して服用します。
ピルの服用を終えると、2-5 日程度で月経が起こります。その次の月経周期は出血開始を第 1 日として通常通り卵胞発育、排卵、月経が起こります。
- 生理を早めたいとき
-
月経開始日の 5 日目から開始して少なくとも 10 日間以上続けて服用します。月経が来て欲しい日の 3-5 日前まで続けると、服用終了後にいつもの周期より早く月経が来ます。
病院を受診して服用開始のタイミングや中止するタイミングなどを医師から聞いて、適切に服用することが大事です。
なお、受診の際には、最終月経の開始日、最近数ヶ月間の月経周期、月経持続日数、月経を避けたい期間などを医師に伝えましょう8) 。
ニキビ・肌荒れを防ぐ
低用量ピルを服用することで、ニキビや肌荒れの予防など、美肌効果も期待できます。ニキビは、毛嚢や脂腺での脂質代謝異常、角化異常、細菌増殖が関与する炎症疾患です。
これにはアンドロゲンという男性ホルモンが関与しており、テストステロンの代謝物が皮質腺のアンドロゲン受容体に結合することも要因といわれています。
低用量ピルは卵巣や副腎でのテストステロンが増えることを防ぎ、性ホルモン結合グロブリンを増やすため、テストステロンが減ります。また低用量ピルはアンドロゲン受容体へ結合させない作用もあり、アンドロゲンが低下します。
このような機序で、ニキビ発生が減り、肌の状態が改善する効果があります8) 。
卵巣がん・子宮内膜がんの予防
卵巣がんの発生原因として、遺伝的要因以外では、持続する排卵や内分泌的因子であるゴナドトロピンの過剰刺激、炎症などの関与が考えられています。
低用量ピルを服用中は、排卵が起こらないため、排卵による卵巣上皮の損傷やゴナドトロピンによる刺激が減るため、卵巣がん発症リスクが下がるといわれています6) 。
子宮体がん(子宮内膜がん)は、子宮内膜がものすごく厚くなるために起こります。エストロゲンは子宮内膜を厚くさせる効果がありますが、低用量ピルに含まれるプロゲスチンの作用によって子宮内膜は厚くならずに済むため、低用量ピルを服用することで子宮体がん(子宮内膜がん)の発生リスクや死亡リスクが低下すると考えられています3) 。
低用量ピルの副作用
ここまで低用量ピルの効果、副効果という良い面について紹介してきましたが、薬であることから当然副作用という悪い面も存在します。
副作用の程度によっては服用を続けられない方もいますし、副作用を考えると体調の問題でピルを服用しないほうが良い方もいます。服用にあたって注意するべき事柄をご紹介します。
低用量ピルの副作用は、飲み始めてから数日間ないし3ヶ月頃の時期に出やすいといわれており、主に以下のようなものがあります。
- 血栓症
- 吐き気・悪心
- 不正出血
血栓症
命の危険に関わる可能性のある重篤な副作用として、血栓症があげられます。
血栓症とは、血液が固まって、血液の塊(血栓)が血管を詰まらせてしまう病気です。血栓から先への血流が途絶えてしまい、臓器が正常に機能しなくなりさまざまな障害を引き起こします。
通常、若い女性では血栓症をほとんど発症しませんが、低用量ピルを服用することで血栓症を起こす人は、1 万人あたり3-9人になるといわれています。この確率は、妊娠や分娩による血栓のリスクよりも低いため、比較的安全な薬といえます。
しかし、肥満や喫煙者、40 歳以上の女性、炎症性腸疾患患者、親戚内に血栓症を発症したことのある人がいる場合などは発症リスクが高まるといわれています。
血栓症の予防としては、日頃からこまめに水分を補給することや、長時間にわたって座ったままでいないこと、アルコールを飲み過ぎない、などの対策が挙げられます。足首の運動や背伸び、膝の屈伸運動なども足の血流を良くするため効果的です6) 。
吐き気・悪心
女性ホルモンの薬であるため、吐き気やむかつき、頭痛、むくみ、乳房の痛みなど、妊娠の初期に似た症状が起こることがあります。発生頻度は1.2~29.2%であり、よく見られる症状といえます。
多くの場合、服用継続とともに次第に減少することが多いといわれます。3 ヶ月間程度は服用を継続して様子をみていても良いといわれていますが、吐き気の症状が続く場合は医師に相談してください。
不正出血
正常な生理時期以外で起こる女性器からの出血を不正出血といいます。不正出血も低用量ピルを服用するかたの 20%程度にみられる副作用です。20%程度の方が経験するといわれます。
この症状は、服用継続とともに次第に減少することが多いといわれます。3 ヶ月間程度は服用を継続して様子をみていても良いといわれていますが、不正出血症状が続く場合は医師に相談してください。
ピルの使用を控えたほうがいい人
低用量ピルによる副作用で最も注意しなければいけないのが血栓症です。
低用量ピル服用による血栓症のリスクは、妊娠や分娩による血栓のリスクよりも低いため、比較的安全な薬といえますが、まれにその血栓症を発症して重症になったり、亡くなってしまったりする方もいます。
特に血栓症を発症しやすい人の特徴を持つ以下のようなかたは、低用量ピルの服用を控えたほうがいいと言われています。以下の条件にあてはまるかたは、服用について、医師とよく相談する必要があります。
- 40 代以上の方
- 喫煙者
- 高血圧と診断されている方
- 肥満
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
40 代以上の方
一般的に、40 歳以降は血管が細くなり、心筋梗塞などの心血管系障害が発生しやすくなるといわれています。低用量ピルを服用することで、血栓症のリスクも若年者より高まるといわれます。
ただし、40 歳を過ぎても、月経困難症や子宮内膜症などに対して、低用量ピルを服用することによって治療効果のメリットが大きい方もいます。もちろん、この場合は血栓症のリスクを考慮した上での治療になるので、医師と十分に相談する必要があります。
なお、閉経までは投与可能ですが、50 歳以降は禁忌になっています3) 。
喫煙者
喫煙は、動脈硬化といって血管が細くて硬い状態になりやすい病気の因子といわれています。動脈硬化は血の塊(血栓)を作りやすいため、心筋梗塞や脳卒中などの心血管系の病気を引き起こす原因になります。
喫煙者は、低用量ピルの服用によって、これらの心筋梗塞などの病気を起こす危険性が高まることが知られています。そのため、35 歳以上で 1 日 15 本以上の喫煙している場合、低用量ピルの服用は控えるようにいわれています3, 4) 。
喫煙は血管の病気以外にも、発がんの危険性や妊娠や出産に伴う合併症の発症率も高めてしまうため、禁煙することが勧められます。
高血圧と診断されている方
高血圧は、喫煙と同様に動脈硬化といって血管が細くて硬い状態になりやすい因子といわれています。
動脈硬化は血の塊(血栓)を作りやすいため、心筋梗塞や脳卒中などの心血管系の病気を引き起こす原因になります。
重症の高血圧である場合は、低用量ピルの服用によって、これらの心筋梗塞などの病気を起こす危険性が高まることが知られています。血圧が160mmHg/100mmHg を超える場合には、低用量ピルの服用を控えるようにしてください4) 。
肥満の方
肥満や低体重(やせ)の判定には、Body mass index(BMI)が用いられます。BMI は体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算できます。BMI が、18.5 未満であれば「低体重(やせ)」、18.5-24.9 が「普通体重」、25 以上が「肥満」とされています。BMI が 22 になるときの体重が標準体重で、最も病気になりにくい状態です。
BMI が 25 を超えると脂質異常症や糖尿病、高血圧などの生活習慣病のリスクが 2 倍以上になり、30を超えると高度な肥満としてより積極的な減量治療を要するとされています9) 。
BMI が 30 以上である場合には、経口避妊薬の投与は控える必要があります。というのも、肥満は 血栓症の発症リスクと関連し、BMI の上昇とともに発症リスクが増大するといわれているからです。1 万人あたりの静脈血栓症の発症率は、BMI20 未満の場合 5.8 人/年、20-24.9 の場合 8 人/年、25-29.9 の場合 16.8 人/年、30-34.9 の場合 22 人/年、35 以上の場合 36.8 人/年と報告されています3) 。
それに加えて、低用量ピルを服用すると血栓症のリスクがあがるため、肥満者の場合はさらに危ないのです。
BMI 20-24.9 の人と比べたときに、BMI 25-29.9 の場合 2.4 倍、30.0 以上の場合 5.5 倍といったように、低用量ピル投与による 静脈血栓症の 発症リスクは上昇します3) 。
したがって、BMI30以上の方の低用量ピルの服用は慎重投与となっています。
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低用量ピルの種類と違い
ピルが開発されてから 50 年以上経過します。現在流通している低用量ピルは、改良に改良を重ねて開発された薬がほとんどです。さまざまな種類があり、それぞれメリットとデメリットが異なります。ここでは、ピルの種類や効果、副作用、服用方法などについてご紹介します。
一口にピルといっても、いろいろな薬があります。主な分類の方法に「世代」と「相性」の2種類があります。
薬に含まれるプロゲスチンの種類や開発順で 4 つの「世代」に分類されます。また、エストロゲンとプロゲスチンの量により、2つの「相性」にわけられています。以下、表で説明していきます。
- 第一世代
-
ノルエチステロンというプロゲスチンが含まれ、月経の出血量が減りやすく、月経困難症のコントロールに優れ、子宮内膜症の治療効果も高い特徴があります。また、ニキビや肌荒れの改善効果もあります。
主な副作用は、不正性器出血、悪心、頭痛、浮腫、過敏症、発疹などです。
- 第二世代
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レボノルゲストレルノというプロゲスチンが含まれます。第一世代に比べてエストロゲンの総容量が少なく、子宮内膜が安定するため、不正出血の頻度が低く、休薬期間中の月経もきちんと起こることが多いという特徴があります。
主な副作用は、頭痛、下腹部痛、乳房緊満感、悪心、嘔吐、息切れ、過敏症、発疹、じん麻疹、肝機能異常、浮腫、不正性器出血、体重増加、血栓症などです。
- 第三世代
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デソゲストレルというプロゲスチンが含まれます。その影響で、男性ホルモン(アンドロゲン)の作用が抑えられて、にきびや多毛症の改善効果が期待できます。
主な副作用は、頭痛、乳房痛、悪心、視力障害、過敏症、発疹、肝機能異常などです。
- 第四世代
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ドロスピレノンというホルモン変動の少ないプロゲスチンが含まれています。超低用量化されているため、卵胞ホルモンによる吐き気、頭痛が起こりにくく、軽度の利尿作用があるので、生理の前の浮腫や月経前症候群に対しても効果が期待できます。
主な副作用は、頭痛、悪心、不正子宮出血、凝固検査異常、性器出血、月経痛、下腹部痛、トロンビン・アンチトロンビンⅢ複合体上昇、トリグリセリド上昇、プラスミノーゲン上昇などです。
-
1相性ピル -
1相性ピルは、1 回の服用周期(21 錠)に含まれるエストロゲンとプロゲスチンの量が変化することなく同じ配合量である薬です。
3相性ピル-
3相性ピルは、1 回の服用周期(21 錠)に含まれるエストロゲンとプロゲスチンの配合量が数日間ごとに3段階に変化された容量である薬です。服用する女性のホルモン環境にあったものを選ぶことになります。
薬剤名 | 世代 | 相性 | 主な効用 | 主な副作用 |
---|---|---|---|---|
ルナベル®︎ 配合錠 LD | 第一世代 | 1相性 | 月経困難症 | 不正性器出血、希発月経、過多月経、下腹部痛、過少月経、頻発月経、頭痛、乳房痛、乳房不快感、悪心、上腹部痛 |
フリウェル®︎ 配合錠 LD | 第一世代 | 1相性 | 月経困難症 | 血栓症、アナフィラキシー |
ルナベル®︎ 配合錠 ULD | 第一世代 | 1相性 | 月経困難症 | 不正性器出血、希発月経、過多月経、下腹部痛、過少月経、頻発月経、頭痛、乳房痛、乳房不快感、悪心、上腹部痛 |
フリウェル®︎ 配合錠 ULD | 第一世代 | 1相性 | 月経困難症 | 血栓症、アナフィラキシー |
シンフェーズ®︎ T28 錠 | 第一世代 | 3相性 | 避妊 | 不正性器出血、子宮破綻出血、子宮点状出血、悪心 |
アンジュ®︎ 21/28 錠 | 第二世代 | 3相性 | 避妊 | 頭痛、悪心、嘔吐、血栓症 |
トリキュラー®︎ 錠 21/28 | 第二世代 | 3相性 | 避妊 | 悪心、乳房痛、頭痛 |
ラベルフィーユ®︎ 21/28 錠 | 第二世代 | 3相性 | 避妊 | 血栓症 |
ジェミーナ®︎ 配合錠 | 第二世代 | 1相性 | 月経困難症 | 頭痛、悪心、下腹部痛、無月経、月経過多、不正子宮出血、希発月経 |
マーベロン®︎ 21/28 | 第三世代 | 1相性 | 避妊 | 頭痛、乳房痛、悪心 |
ファボワール®︎ 錠21/28 | 第三世代 | 1相性 | 避妊 | 血栓症 |
ヤーズ®︎ 配合錠 | 第四世代 | 1相性 | 月経困難症 | 悪心、頭痛、凝固検査異常、性器出血、月経痛、不正子宮出血、下腹部痛、トロンビン・アンチトロンビンIII複合体上昇、プラスミノーゲン上昇、トリグリセリド上昇 |
ヤーズフレックス®︎ 配合錠 | 第四世代 | 1相性 | 月経困難症 子宮内膜症の疼痛改善 | 頭痛、性器出血、不規則な子宮出血、月経痛、下腹部痛、悪心、凝固検査異常、プラスミノーゲン上昇、トロンビン・アンチトロンビン III複合体上昇、血栓症 |
低用量ピルの値段
低用量ピルは 1 シート(28日分)あたり、2,000円 ー 3,000円で購入することができます。ただし、薬の種類によって値段が細かく異なってきます。以下にそれぞれの平均の値段をご紹介します。
薬品名 | 1シート(28日分)あたりの値段 | 備考 |
---|---|---|
ルナベル®︎ 配合錠LD | 1500円 ー 2000円 | |
フリウェル®︎ 配合錠LD | 820円 ー 1940円 | ルナベル®︎ 配合錠LDのジェネリック |
ルナベル®︎ 配合錠ULD | 1600円 ー 11000円 | |
フリウェル®︎ 配合錠ULD | 760円 ー 7000円 | ルナベル®︎ 配合錠ULDのジェネリック |
シンフェーズ®︎ T28錠 | 2200円 ー 2500円 | |
アンジュ®︎ 28 | 2200円 ー 2500円 | |
トリキュラー®︎ 錠28 | 2300円 − 3000円 | |
ラベルフィーユ®︎ 28錠 | 2000円 ー 2500円 | トリキュラー®︎ 錠28のジェネリック |
ジェミーナ®︎ 配合錠 | 1960円 ー 3600円 | 77日までの連続投与が可能 |
マーベロン®︎ 28 | 2300円 ー 2700円 | |
ファボワール®︎ 錠28 | 2000円 ー 3980円 | マーベロン®︎ 28のジェネリック |
ヤーズ®︎ 配合錠 | 2000円 ー 3000円 | |
ヤーズフレックス®︎ 配合錠 | 2000円 ー 12000円 | 120日までの連続服用が可能 |
低用量ピルは自費と保険適用がある
低用量ピルは、自由診療でも保険診療でもどちらも処方されています。その違いは投薬目的の差です。
日本では、1999 年に低容量ピル(OC)の発売が開始され、2008 年には月経困難症や子宮内膜症などの治療を目的とした低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)の発売が開始されました。
OC と LEP はどちらも低容量のエストロゲン・プロゲスチン配合薬で、作用機序も同じものなのですが、使用目的が異なることで呼び方が区別されています。
また、保険適応の有無にも違いがあり、OC は自費診療(保険適応外)ですが、LEP は保険適用で処方される薬になっています1) 。低用量ピルを保険適用で処方してもらう場合には、医療機関で医師の診察や検査を受けて、その保険適応の病気であると診断を受ける必要があります。
OC | LEP | |
---|---|---|
低用量経口避妊薬 | 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬 | |
主な使用目的 | 避妊 | 月経トラブルの治療 |
健康保険 | 適用されない(自費診療) | 適用される ※オンライン診療は自費 |
使用される薬剤 | シンフェーズ® トリキュラー® ラベルフィーユ® アンジュ® マーベロン® ファボワール® | ルナベル® フリウェル® ジェミーナ® ヤーズ® ヤーズフレックス® |
低用量ピルの飲み方
低用量ピルの服用方法は、1 日 1 回 1 錠を毎日決まった時間に飲むことが基本です。
月経周期 5 日までに服用を開始することが望まれます3) 。
低用量ピルの服用方法には、周期服用と連続服用の2種類があります。
周期服用
周期服用は、主に避妊目的で使われます。
月経開始 1 日目から 5 日目より 1 日 1 錠を 21 日間経口投与します。7 日間の休薬の後に、消退出血が終わっているか続いているかにかかわらず再び 21 日間服用する、という周期を繰り返します。
休薬期間を忘れないために、この期間にプラセボを服用させるようにしたシートも販売されています。FSHの立ち上がりを抑制して不正出血を防ぐために、月経周期 1 日目から服用開始して、24 日間の実薬、4 日間のプラセボの組み合わせをしている薬剤もあります。
連続服用
連続処方は、主に月経困難症の治療に使われる LEP で行われる方法です。
周期服用では、出血量が少なくなったとしても生理痛が軽くならない可能性があります。そのため、最大4か月間の連続服用をして数日間の休薬を挟んで、再度服用開始するという飲み方で、痛みが軽くなることを期待します1) 。
ピルに関するよくある質問
ここからは、多く寄せられる低用量ピルについての質問に回答していきます。
長期間服用すると不妊になる?
低用量ピルの服用によって将来の妊娠の可能性には影響を及ぼさないことが知られています。
妊娠の希望があって、低用量ピルの服用を中止した人たちのうち妊娠が認められたのは、最初の1周期目で 21.1%、3 周期目で 45.7%、1 年後で 79.4%、2 年後で 88.3%という報告や、1 年以内に84-88%が妊娠できたという報告もあります。この割合は、低用量ピルを服用していない女性の妊娠成立率と変わらないといわれています。
また、低用量ピルの使用期間と妊娠率とは関連がないということもいわれています。
このように、低用量ピルの服用によって、将来不妊になりやすいということはありません。不妊が心配でためらっているのであれば、必要な場面で低用量ピルの服用を検討するのが良いと思います。
飲み忘れがあった場合はどうすれば良い?
飲み忘れがあった場合は、飲み忘れた長さと周期によって対応が変わってきます。以下にそれぞれの場合に分けてまとめてみます3) 。
- 1 日(1 錠)分の服用を忘れた(直前の実薬服用から 24-48 時間未満経過した)場合
-
気づいた時点で飲み忘れた 1 錠を服用してください。いつも服用する時間に近い場合は 2 錠をまとめて服用してください。残りの錠数は予定通りに服用してください。緊急避妊(アフターピル)は通常必要ありません。しかし、シートの最初もしくは最後の錠剤を飲み忘れた場合には、排卵日の前後の可能性が高くなるので、アフターピルの使用を検討してもよいです。
- 2 日(2 錠)分以上の服用を忘れた(直前の実薬服用から 48 時間以上経過した)場合
-
気づいた時点で 2 錠まとめて服用してください。その後は、いつも通りの時間に服用するようにしてください。2 日分以上の服用を忘れた場合は、妊娠の可能性が高くなるので、7 錠以上連続して服用するまでコンドームを使用するか、性交渉を避けてください。
なお、服用を忘れた時期によって妊娠確率を下げるための方法が異なります。
- 第 1 週に飲み忘れた場合
-
休薬期間または第 1 週に性交渉を行った場合には、アフターピルの使用を検討します。
- 第 2 週に飲み忘れた場合
-
直前 7 日間に連続して正しく服用していた場合にはアフターピルの使用は必要ありません。
- 第 3 週に飲み忘れた場合
-
休薬期間を設けず、現在のシートの実薬を服用したら、すぐ次のシートの服用を開始してください。
通販で購入できる?
低用量ピルは薬なので、医療機関を受診して処方してもらうというのが王道です。しかし、インターネットで検索すると、通販も可能であり、処方以外の入手方法もあることに気がつかれると思います。そこには注意点もありますので、入手方法をまとめてご紹介します。
①通院して購入
低用量ピルを入手するには、医師の処方箋が必要となります。基本的には医療機関を受診して、服用に問題がないかどうかのチェックを医師から受けた後に処方をしてもらうことをお勧めします。
受診した際に、低用量ピルの服用に関する不安点などについても、医師へ相談することが望ましいと思います。
②オンライン診療で購入
基本的には医療機関を受診するのがお勧めである、といいましたが、現在はオンライン診療でも低用量ピルを処方してもらうことが可能です。近年オンライン診療が普及しつつあります。通院時間や待ち時間の短縮が可能で、院内での二次感染を防ぐこともでき、人目を気にする必要がない、などのメリットがあります。
緊急避妊薬(アフターピル)の処方については、初診でもオンライン診療が認められます。これは、性交渉後 72 時間以内の服用が必要な薬であること、迅速な受診が難しいケース、レイプなどの犯罪が絡むことで受診しづらいという状況がある、などの理由があるからです。
緊急避妊薬以外の処方については、当初オンライン診療といえども、初診については対面診療(医療機関の受診)が必要といわれていました。しかし、新型コロナ感染症の感染拡大の影響で、時限的・特例的措置として初診でもオンライン診療が受けられるようになりました。
ただし、低用量ピルについて、初回の処方を行うときには、服用を控えるべき項目に当てはまらないかどうかなどを詳しく確認しなければいけません。全ての医療機関で初診からピルを処方することができるとは限りません。
対面診療であれば、血液検査や必要に応じて内診や超音波検査などの検査を行う場合もできるのですが、オンライン診療だと検査などができないため、得られる情報が限られているというデメリットもあるのです。初診でも処方可能かどうかオンライン診療を受ける予定の医療機関へ事前に確認が必要です11, 12, 13) 。
③通販で購入
なお、通販でも低用量ピルを入手することは可能ですが、基本的にはお勧めできません。なぜなら大きなリスクがあるからです。
通販の低用量ピルのほとんどは、個人輸入で販売されているものとなります。有効成分を十分に配合していない薬や、日本では認可が下りない成分が含まれている薬、など健康被害を及ぼす可能性もあるのです。また、違法薬物や偽薬であること、仮に偽薬でなくても薬が破損している場合もあるといわれています。
また、個人輸入した医薬品については補償制度の問題もあります。日本国内において、正規ルートで流通している医薬品については、医療機関などで処方された結果として健康被害が生じた場合に、被害者の救済をする仕組み(医薬品副作用被害救済制度)があります。
しかし、個人輸入された医薬品による健康被害は、救済対象とならないのです。このようなことから、いくら値段が安くて入手しやすそうに思えても、医療機関から処方される以外の入手方法には、リスクが大きいのです14) 。
また、低用量ピルは医薬品であることから、自己判断で服用することはよくありません。高血圧症や肥満以外にも、肝臓や心臓の機能低下がある場合には低用量ピルを服用することで副作用のリスクが高まる可能性があります。
値段は安く手に入れられるとしても、本来の避妊の目的が達成できないことや、健康被害を被ってしまう可能性を考えると、国内の医療機関で処方してもらう必要があります。
- 有効成分が含まれていない可能性
- 日本で未認可の薬である可能性
- 違法薬物や偽薬である可能性
- 薬の破損の可能性
- 副作用救済制度の対象外
低用量ピルを服用すると太る?
低用量ピルを服用してから太ったなと感じる方がいます。体重増加や見た目の変化を感じるからだろうと思われますが、低用量ピルを飲んだことで体重増加するという副作用はありません。これは、大規模な臨床試験でも証明されていて、低用量ピルを服用した人と服用していない人とでは、体重変化には差がなかったという報告が複数あります。
では、他に何が原因として考えられるのかといえば、低用量ピルの副作用の一つであるむくみ(浮腫)や食欲増進が挙げられるでしょう。
低用量ピルの主成分の一つであるエストロゲンは、腎尿細管に作用しナトリウムを貯留する働きがあります。そのため、下腿や顔面に浮腫を起こして体重が増加することもあります。
また、もう一つの主成分であるプロゲスチンは、食欲が増進する作用があるため、結果的に体重が増加することも考えられます。
ただ、体重増加はもともと高用量ピルや中用量ピルの副作用に挙げられていたもので、低用量ピルが主流になっている現在ではピルが直接的に体重を増加させることはほとんどみられません。
まとめ
低用量ピルの効果、副作用などを中心に解説してきましたが、いかがだったでしょうか。低容量ピルがどのような薬なのか、イメージがついたでしょうか。
低用量ピルの主な効果は避妊です。そろそろ妊娠したいと思えば、飲むのをやめることで妊娠できるようになります。また、月経困難症や子宮内膜症の改善など、女性の病気への治療効果もあります。
低用量ピルを安全に正しく活用するためにも、医師に体調を相談し、適切な検査を受けながら、服用していくことをおすすめします。
参考文献
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- 厚労省 健康食品や医薬品、化粧品、医療機器等を海外から購入される方へ. https://www.mhlw.go.jp/topics/0104/dl/tp0401-1b.pdf