医療脱毛は永久なのか – また生えてくるって本当?

近年、年齢や性別を問わず身だしなみとして注目を浴びている医療脱毛は、「永久脱毛」とも呼ばれています。

この言葉の意味だけ捉えれば、医療脱毛完了後は永久的に毛が生えないと思ってしまいますが、実際はどうなのでしょうか。

ここでは、医療脱毛で得られる永久脱毛の効果や、永久脱毛に必要な通院回数・期間かかる値段使用する機械について解説しました。

この記事の執筆者

石川 聡司
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)

北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。品川美容外科にて美容外科医として3年間の研鑽を積み、2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。

婦人科全般の診療のほか、美容医療では美肌治療、美容整形をはじめ脱毛・アートメイクなど幅広く対応する。

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目次

医療脱毛は永久じゃないって本当?

Dr.石川

医療脱毛の効果は、完全なる「永久」ではありません。

医療脱毛は、いちど脱毛が完了してツルツルになったとしても、経年で毛がまた生えてくる可能性がゼロではありません

医療脱毛が完了してから数年後、数十年後に毛がまた生えてきたとしたら、どのような理由が考えられるのでしょうか。

再び毛が生える理由を下記にあげました。

医療脱毛後に毛がまた生えてくる理由

  • 毛周期の乱れ(脱毛中に長期間お休みしていた毛がある)
  • 照射出力が適切ではなかった
  • ホルモンバランスの変化(妊娠・出産・加齢など)

毛抜きの使用や生活習慣など、何らかの原因で毛周期が乱れて休止期に入っていた毛は発毛組織が破壊されていませんので、成長期に突入した段階で再び毛が生えてきます。

また、脱毛レーザーの照射出力が適切でなかった場合も同様です。

さらに、妊娠・出産・加齢などでホルモンバランスが変化した場合、見かけ上薄くなった毛が再び濃くなることも考えられます。

医療脱毛完了後から1~2年ほどで毛がまた生えてきた場合は、脱毛期間中にしっかりと脱毛しきれていなかった可能性が考えられます。

永久脱毛の定義

「医療脱毛が永久じゃないとしたら、どういった脱毛を永久脱毛と言うの?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

日本には永久脱毛の定義がなく、「永久脱毛であるか否か」は、AEA(米国電気脱毛協会)やアメリカの政府機関であるFDA(米国食品医薬品局)の定義によって判断されているのが現状です。

AEA(米国電気脱毛協会)の定義

「最終脱毛から1カ月後の毛の再生率が20%以下であれば永久脱毛と認める」

FDA(米国食品医薬品局)の定義

「一定の脱毛施術を行ったあとに再発毛する本数が長期間において減少し、その状態が長期間に渡って維持されること」

「脱毛施術3回を行った6カ月後に67%(2/3)以上の毛が減っていること」

つまり、「ほとんど毛の生えない状態が長期間続く」のが永久脱毛といえます。

Dr.石川

医療脱毛は永久ではなく「半永久」と言いかえたほうが正確な表現に近づくかと思います。

医療脱毛は永久脱毛ではなく、長期的な減毛

医療脱毛と永久脱毛は同じものと考えて問題ありませんが、厚生労働省では「長期的な減毛」と表されています。

日本臨床医療レーザー協会では、「クリニックによる電気針脱毛と医療レーザー脱毛が永久脱毛と呼ばれる脱毛法」としています1)

ただ、下記のような理由から、厚生労働省では「長期的な減毛」と表現しています。

  • 「永久脱毛」と言うと永久的に毛が生えないといったイメージを抱きやすい
  • 脱毛(毛が1本もない)状態が永久的に続くのを現時点では証明できない

同じような理由で、患者さんに「脱毛後は毛が1本も生えてこない」と誤解を与えないよう、永久脱毛という言葉を使わない方針のクリニックもあります。

とはいえ、これは言葉の定義の問題であり、医療脱毛は基本的にAEAやFDAが定義する永久脱毛が可能ですので、医療脱毛=永久脱毛といった認識で良いでしょう。

エステサロンでは永久脱毛できない

永久脱毛は医療機関(クリニック)でしか行えません。

永久脱毛は、医療レーザーの熱によって発毛組織を破壊し、毛が再び生えないようにするのが目的です。

毛を生成する組織を破壊する行為ですので、医療脱毛は医師または看護師の免許を有した者でなければ施術できない決まりとなっています2)

一方、エステサロンで行えるのは、減毛・抑毛・制毛を目的とした光脱毛(IPL脱毛・美容脱毛)のみです。

エステサロンでは、クリニックで使用するレーザー脱毛機よりも弱いエネルギーを発する機械しか扱えませんので、通い続けなければ数年後に再び毛が生えてきます。

脱毛に通い続けたくない方、少ない回数で効果を実感したい方は、医療機関で行える永久脱毛を選択しましょう

医療機関なのかエステサロンなのか分かりづらい広告や公式サイトもありますし、医療脱毛クリニックを紹介しているWebページでもエステサロンが紛れ込んでいるケースがあります。

医療機関か否かを見分けるポイントは「〇〇クリニック」「〇〇美容外科」「〇〇皮膚科」といった医院名です。

さらに、医療機関であれば必ず医師が常駐していますので、判断に迷ったら医師が在籍しているかをチェックすれば間違いありません。

医療機関での永久脱毛に使用する機械

レーザー脱毛機

医療機関で行われる永久脱毛では、医療レーザー脱毛機を使用した脱毛が主流です。この医療レーザー脱毛機には、大きくわけて「熱破壊式脱毛機」「蓄熱式脱毛機」の2つがあります。

その他、施術できるクリニックは限られますが、ニードル(絶縁針)脱毛を扱う方法もあります。

医療レーザー脱毛機 – 熱破壊式

Dr.石川

熱破壊式脱毛機は、日本で医療レーザー脱毛が始まった当初から使われている機械です。

高出力のレーザーを1発ずつ照射して、毛乳頭・毛母細胞・バルジ領域といった発毛に関わる組織を熱破壊します。

毛乳頭や毛母細胞は毛を生成している組織ですので、熱破壊式脱毛機のレーザーで破壊すると毛が生えてこなくなる仕組みです。

熱破壊式脱毛機の特徴
  • 1ショットで強いエネルギーを照射
  • 剛毛や太い毛が得意
  • 照射後1~2週間ほどで毛が抜け落ちる
  • 痛みを感じやすい傾向がある

熱破壊式脱毛機が得意とするのは、剛毛や太い毛です。部位でいえば脇やVIO、ひざ下や男性のヒゲなどが挙げられます。

照射後に毛が抜け落ちるまでの期間が早く、目に見えて効果を実感しやすいですが、やや痛みを感じやすい点がデメリットです。

医療レーザー脱毛機 – 蓄熱式

Dr.石川

蓄熱式脱毛機は、2000年以降に出てきた比較的新しい脱毛方式の機械です。

蓄熱式の医療レーザー脱毛機では、低出力のレーザーを複数回に渡って連続で照射し、熱を蓄熱させ温度を上げていき、発毛組織を破壊します。

熱破壊式と同様に、発毛組織が熱により破壊されると、結果として毛が生えてこなくなる仕組みです。

蓄熱式脱毛機の特徴
  • 弱いエネルギーを連続で照射
  • 産毛や細い毛にも反応しやすい
  • 照射後3~4週間ほどで毛が抜け落ちる
  • 痛みを感じにくい傾向がある

蓄熱式脱毛機は、熱破壊式脱毛機が苦手な産毛や細い毛でも反応しやすいとされる機械です。部位でいえば、顔や胸、二の腕や太ももなどがそれにあたります。

弱いパワーでのじわじわと熱を溜めこむので、痛みを感じにくいメリットがある一方で、毛が抜け落ちるまでの期間が3~4週間と長いのがデメリットです。

絶縁針脱毛器(ニードル脱毛)

Dr.石川

絶縁針脱毛器は、熱破壊式・蓄熱式といったレーザー脱毛機が広まる前に主流だった脱毛器です。

絶縁針脱毛器を導入しているクリニックは現在6%以下(今回調査した147院中8院のみ)ですので、施術を受けられる医療機関は極めて少ないといえます。

絶縁針脱毛器を使用したニードル脱毛では、細い針を毛穴に挿入して電流による熱で毛乳頭・毛母細胞・バルジ領域を直接破壊します。

絶縁針脱毛器は名前の通り、肌に触れる部分の針は電流が流れないような仕組みになっていますので、肌を傷つけずに施術が可能です。

絶縁針脱毛器の特徴
  • 毛穴に針を挿して電流を流す
  • 白髪や硬毛化した毛でも脱毛できる
  • その場で毛が抜け落ちる
  • 痛みが強い

ニードル脱毛は、レーザー脱毛ができない白髪や硬毛化した毛(脱毛したら逆に太くなった毛)であっても脱毛可能です。

ただし、施術時間が長い、技術力が必要、痛みが強いことがデメリットとなります。

そのため、始めから使用するのではなく、レーザー脱毛後に数本残ってしまった毛や白髪などに使用するクリニックが多いです。

医療脱毛で得られる実際の永久脱毛の効果

先に解説したように医療脱毛ですべての人が100%無毛になるわけではありませんが、とくに毛が太い部位では効果を充分に実感できます。

医療脱毛で得られる永久脱毛の効果には、どうしても限界があります。

レーザー脱毛機はメラニン色素にしか反応しないため、産毛などのメラニン色素が少ない毛は脱毛が比較的難しいことが原因の一つです。

さらに、毛質・肌質・毛周期(毛の生まれ変わるサイクル)には個人差がありますので、ある程度の照射回数を重ねても脱毛効果が頭打ちになる方もいます3)

ただ、通常の場合は医療脱毛で正しく照射すれば、発毛細胞が破壊されて毛が脱毛されます。いちど破壊された発毛細胞は再び復活しないので、その毛穴からは毛が生えてきません。

とくに、脇・VIO・ひざ下などの太い毛が生えている部位は脱毛がしやすいので、目に見えて永久脱毛の効果を実感できます。

そのため、お手入れの手間が省ける、自己処理による肌荒れがなくなる、などの効果が得られます。

永久脱毛の持続期間

永久脱毛の持続期間は、10年以上といわれています。

なぜ「以上」といった曖昧な言い方になるのかというと、医療レーザー脱毛の歴史がまだ浅いことが理由として挙げられます。

医療レーザー脱毛機が日本で導入され始めてからまだ30年も経っておらず、脱毛完了後の経過を一生に渡って追ったデータがないため、「10年以上」としか言えないのが現状です。

永久脱毛の効果を確実に得るためには、毛周期に合わせた通院や正しい出力で照射をしてくれるクリニック選びが重要です。脱毛をする際は、複数のクリニックでカウンセリングを受けて、信頼できるクリニックを選びましょう。

永久脱毛に必要な通院回数・期間

永久脱毛に必要な通院回数と期間
通院回数:5~8回
期間:1年半~2年

メラニン色素に反応して脱毛する医療脱毛では、成長期の毛にしか反応しないので最低でも5~3回ほどの通院が必要です。

さらに、毛周期に合わせた通院が必須条件ですので、部位によって1~4カ月ごとに通い、1年半~2年ほどで脱毛が完了します。

毛周期:毛が成長するサイクル。成長期・退行期・休止期を繰り返し、同じ時期に成長期である毛は全体の20%程度。

通院回数・期間は脱毛する部位や希望する仕上がりにもよりますので、事前にクリニックで相談しておくと脱毛の予定が立てやすくなります。

かかる値段はどのくらい?

以前の医療脱毛はサロン脱毛にくらべて高額でしたが、2019年頃より価格がグンと下がり、ここ最近ではサロン脱毛と変わらない値段で医療脱毛が利用できるようになりました。

むしろ、サロン脱毛よりも通院回数が少ないので、安く済ませられるケースも多いです。

医療脱毛(レーザー脱毛)の平均価格は以下の通りです。

医療脱毛5回コースの平均価格

全身脱毛24万3125円
VIO9万5516円
9万1823円
2万2156円
※147院の価格をもとに算出

全身脱毛であれば20~25万円、全身脱毛にVIOをプラスすると25~30万円、全身+VIO+顔脱毛であれば30~40万円が相場価格です。

安いクリニックでは全身脱毛であっても10万円以下で利用できたり、脇脱毛のみであれば数千円で完了が目指せたりと、ここ最近の医療脱毛の値段低下は顕著です。

コース契約を組まずに都度払いで通えるクリニックもあり、選択肢が広がったため予算や希望する支払い方法に合わせてクリニックを選べるようになってきています。

医療脱毛の相場を見る

永久保証の医療脱毛ってある?

永久保証ではなく、無制限コースのある医療脱毛クリニックであれば存在します。

エステサロンでは無制限プランがあるため、「医療脱毛は永久メンテナンスしてもらえる?」「脱毛完了後も永久保証してもらえるクリニックはある?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

残念ながら現在のところ永久保証の医療脱毛はありません

毛周期の乱れやホルモンバランスの変化などから、再び毛が生えてくる可能性が否定できないためです。

通い放題・無制限とはいえ肌への負担や毛周期を考慮すると、最低でも1カ月以上は期間を空けなければなりませんので注意が必要です(実質1年間で通える回数に上限があります)。

また、途中で満足した場合「8回コースや10回コースを契約したほうが結果的に安く脱毛できた」となってしまう可能性もあります

さらに、数年・数十年後に追加で何回か照射をしても通い放題より安く済むケースもありますので、通い放題のクリニックを契約する際は慎重に検討しましょう。

まとめ

医療脱毛は永久脱毛なのか?まとめ

  • 医療脱毛後、時間が経つとまた毛が生えてくる可能性はゼロではない。
  • 「ほとんど毛の生えない状態が長期間続く」のを永久脱毛と定義している。
  • 医療脱毛は、永久脱毛というよりは「長期的な減毛」と表現したほうが正しい。
  • 「長期的な減毛」が永久脱毛とすれば、医療脱毛で永久脱毛が目指せる。
  • 永久脱毛が目指せるのは医療脱毛のみ。エステサロンでは不可。
  • 永久脱毛の持続期間は10年以上ということまでしか現在は言えない。

永久脱毛をどう定義するかによりますが、永久脱毛を「長期的な減毛」と定義するのであれば、医療脱毛は永久脱毛と言えます。

ただし、「一切ムダ毛が生えない状態を、永久的に持続できる可能性は100%ではない」点を理解した上で医療脱毛に臨むようにしたいですね。

医療レーザー脱毛のリスク・副作用

医療レーザー脱毛は、レーザーをメラニン(黒い色)に反応させることで発生する熱により、発毛組織を破壊し脱毛します。

レーザー照射後は、以下のような副作用があらわれる可能性があります。

  • 赤み、腫れ
  • やけど
  • 毛嚢炎
  • 硬毛化、増毛化
  • 埋没毛(埋もれ毛)
  • 皮膚や毛の状態によっては、赤いブツブツが出ることがありますが、数時間~数日で消失します。
  • 脱毛部分に赤みがある時は日焼けを避けてください。通常脱毛3週間は外出の際、脱毛部を露出する服装を控えていただくか、日焼け止めクリームなどをご使用ください。それでも稀に色素沈着が生じたり、逆に色素が抜けたりすることがあります。
  • 脱毛部位にあるホクロ・シミ・あざなどは、レーザー脱毛に伴い取れてしまったり薄くなったり、あるいは濃くなることがあります。
  • 毛穴に残った毛が黒く見えることがありますが、徐々に外に出て行きます。毛抜きで抵抗感なく抜けるものは抜いて構いませんが、無理に取ろうとして先の尖ったピンセットなどで掘ったりしないでください。

参考文献

  1. 永久脱毛(医療レーザー脱毛)/日本臨床医療レーザー協会
  2. 医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて/厚生労働省(医政医発第105号)
  3. 塚原孝浩(2021)よくわかる医療脱毛―テクニックとトラブル対策―(克誠堂出版)pp31.
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