アフターピル(緊急避妊薬)を服用する時間・タイミングと避妊率

アフターピル 指さし

院長の石川(産婦人科専門医)です。

アフターピルという緊急避妊方法をご存じでしょうか?望まない妊娠を避けるために無防備な性交渉を行ってしまった場合、事後に飲む薬です。

今回はアフターピルの種類、服用する時間・タイミング、注意すべき点などについてご説明します。

この記事の執筆者

石川 聡司 日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)

北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。

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目次

アフターピルの種類

アフターピルには次の3つの種類があります。

  • レボノルゲストレル法
  • エラワン
  • ヤッペ法

いずれも、避妊を目的としたアフターピルの処方は自費診療となります。

ノルレボ®錠(NORLEVO)、レボノルゲストレル錠

レボノルゲストレルという黄体ホルモンを内服する方法です。主に排卵を抑制したり、遅延させるという仕組みによって避妊効果が得られます。

避妊に失敗した性交渉後から72時間以内に、レボノルゲストレル単剤1.5mg錠を1回1錠服用します。できるだけ速やかに服用したほうが、成功率は高くなります。

避妊効果が高く、48時間以内の避妊率は99.3%、72時間以内の避妊率は97.5%、妊娠阻止率は85%です。副作用も少ないという研究結果が得られています1)

また、日本では唯一緊急避妊薬として承認されており、一番多く使われているアフターピルです。

妊娠阻止率とは? 

簡単に説明すると、“危険日に緊急避妊薬を飲むことで避妊できる確率”のことです。以下の計算式で求められます。

(妊娠予定数-緊急避妊薬服用後の実際の妊娠例数)/ 妊娠予定数 x 100(%)

避妊率は緊急避妊薬を飲んだ全体の数のうち、妊娠しなかった人の割合ですので、排卵日(いわゆる危険日)などの妊娠しやすい日以外の日の内服が多数含まれています。そのため避妊率は妊娠阻止率よりも高く計算されます。

現在日本で発売されているレボノルゲストレルには2種類あります。

  • ノルレボ®(一般名:レボノルゲストレル):日本初の緊急避妊薬
  • レボノルゲストレル(一般名:レボノルゲストレル):ノルレボの後発医薬品(ジェネリック医薬品)
スクロールできます
服用回数1回
避妊率97.5%(72時間以内)
妊娠阻止率85%
費用10000円(当院の場合)
ノルレボ®錠、レボノルゲストレル錠

副作用

ノルレボ®錠やレボノルゲストレル錠の副作用としては、以下のようなものがあります2)

  • 消退出血・不正出血
  • 頭痛
  • 悪心・嘔吐
  • 倦怠感・傾眠
  • 下腹部痛
  • めまい
  • 乳房痛

副作用には個人差がありますが、ノルレボ®錠・レボノルゲストレル錠の副作用は比較的少ないといわれています1) 。多くの人は服用からだいたい24時間以内には症状がおさまります。

エラワン(ella one)

エラワンは、主成分がウリプリスタール酢酸エステルであるアフターピルです。

ウリプリスタール酢酸エステルは、選択的プロゲステロン受容体調節剤であり、排卵を送らせたり抑制する効果があります3) 。日本では子宮筋腫の治療薬として製造販売申請中です。海外ではアフターピルとしても使用されています。

避妊に失敗した性交渉後から120時間以内に、エラワン30mg錠を1回1錠服用します。

最大の特徴として、性交渉から120時間以内に服用をすれば高い避妊の効果を得ることができる4) 、という点が挙げられます。一刻を争う緊急避妊法にとって、レボノルゲストレル法では72時間であったタイムリミットが120時間まで延びるのはとても大きな利点になります。

避妊効果が高く、120時間以内の避妊率は98.7%、72時間以内の避妊率は97.7%、妊娠阻止率は95%です。

日本ではまだ未承認の薬ですが、欧米では主流のアフターピルになっています。アフターピルとしての使用は未承認であるため、取り扱いのあるクリニックはまだ少数となっています。

スクロールできます
服用回数1回
避妊率98.7%(120時間以内)
97.7%(72時間以内)
妊娠阻止率95%
費用10000円(当院の場合)
エラワン

副作用

吐き気 女性

エラワンの副作用としては、以下のようなものがあります。

  • 吐き気・嘔吐
  • 頭痛
  • めまい
  • 倦怠感
  • 腹痛

副作用には個人差がありますが、エラワンも副作用は比較的少ないといわれています。多くの人は服用からだいたい24時間以内には症状がおさまります。

ヤッペ法

ヤッペ法とは1970年代からある古い緊急避妊法です。かつては日本で最も一般的なアフターピルでした。

卵胞ホルモンと黄体ホルモンを含む中用量経口避妊薬(ノルゲストレル+エチニルエストラジオール)を、性交渉があったタイミングから72時間以内に2錠服用し、さらにその 12 時間後に2錠服用する方法です。

ヤッペ法は副作用が強く、避妊率もほかの方法に比べて低くなってしまいます。

WHOの比較試験により、レボノルゲストレルのほうが避妊率も安全性も優れているという結果がでています1)

日本産婦人科学会の「緊急避妊法の適正使用に関する指針」でも、レボノルゲストレルを第1選択とすることが推奨されており、ヤッペ法は他の緊急避妊法が利用できない場合に限って使用すること、とされています1)

スクロールできます
服用回数2回
避妊率96.8%(72時間以内)
妊娠阻止率57%
費用3000円~6000円前後(当院での取り扱いはありません)
ヤッペ法

副作用

ヤッペ法の副作用としては、以下のようなものがあります。

  • 吐き気・嘔吐
  • 食欲不振
  • 不正出血
  • 頭痛
  • 下腹部痛
  • めまい

ヤッペ法は副作用が強く、約50%の人に吐き気が出現し、嘔吐するかたもいらっしゃいます。

多くは服用から24時間程度で症状がおさまりますが、ヤッペ法は薬を2回服用する必要があるため、その分副作用が出現する時間も長くなってしまいます。

副作用の嘔吐には注意

吐く 女性

いずれの方法でも、起こりやすい副作用として、嘔吐がありますが、服用後2時間以内に吐き戻してしまった場合は再度受診し、できるだけ速やかにもう一度服用する必要があります2)

嘔吐を繰り返してしまう場合は、別の緊急避妊法として銅付加子宮内避妊具(Cu-IUD)による避妊を考慮します。

服用後2時間以降に嘔吐してしまった場合は、十分に薬剤が吸収されているため、追加投与は不要です2)

また、アフターピルはその後の避妊を保証するものではありません。「アフターピルを飲んだから大丈夫だ」と思って避妊を行わない性交渉をすると、服用後に妊娠する可能性が出てきます。アフターピル服用後も次の生理まで効果的な避妊方法を使用するか、性行為を避ける必要があります。

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時間の計算方法

アフターピルのタイムリミットは性交渉後72時間以内(エラワンの場合は120時間以内)です。

早く服用すればするほど避妊率は高くなり、妊娠する可能性が下がりますので、なるべく早く薬を飲むことをおすすめします。

推奨時間を超えてピルを服用した場合

時間 時計

病院が時間外であった、どうしてもアフターピルを手に入れることができなかった、という場合に推奨時間をこえてしまっても、すぐにアフターピルの避妊効果が無くなるわけではありません。

レボノルゲストレル法の場合、72時間をこえてから服用しても、妊娠率を低下させる効果はあるという研究結果がでています5) 。ただし、この場合でも、120時間以内が目安です。

エラワンでは120時間以内の避妊率が比較的高いため、72時間から120時間の間であれば、エラワンの服用が選択肢にあがります。ただし、処方に対応しているクリニックはまだ少ないため、事前に確認が必要です。

また、妊娠経験がある女性であれば、性交渉から120時間以内ならばCu-IUD(銅付加子宮内避妊具)という緊急避妊方法もあります。

院長

このような場合も、必ず担当医にご相談ください。

避妊に成功したかわかるまでの期間

アフターピルを服用して3週間程度で、次の生理による十分な量の出血がみられれば避妊に成功したということになります。

アフターピルは女性ホルモンの薬ですので、服用したことにより、生理が通常の周期より早くなったり遅くなったりすることがあります。数日前後し、ずれることはありますが、おおむね次の生理予定日1週間後までには生理が来ます。

生理予定日を1週間過ぎても生理がこない場合には、妊娠している可能性があるため、病院を受診するか、市販の妊娠検査薬でチェックすることをおすすめします。

また、女性ホルモンの影響で子宮内膜がはがれて、生理よりも前に「消退出血」が起こることもあります。この消退出血の場合は、通常の生理よりも出血量が少なく期間も短くなります。

アフターピルはあくまでも避妊のための薬です。性病や性感染症を防ぐ効果はありません。性病等の心配があるかたは、受診の際に担当医に相談してください。

アフターピル処方までの時間

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問診・診察後に処方し、特別な検査等は必要ないため、病院でのアフターピル処方までの時間はそれほどかかりません。

当院でのアフターピル処方までの流れは以下の通りになります。(服用まで72時間というタイムリミットがありますので、ご予約がない場合でもご来院ください。)

STEP
問診

来院後、問診票(最終月経や性交渉のあった日時、既往歴、服薬歴など)を記入していただきます。

STEP
診察

診察にて、アフターピルの飲み方、注意点や副作用についてご説明します。今後の避妊方法についてのご相談も受け付けています。

STEP
処方・お会計

受付にてお会計後、アフターピルをお渡しします。なるべく早く服用する必要がありますので、その場でお飲みください。

病院やクリニックでアフターピルを処方してもらうメリットは、薬をその場でもらい、服用することができるという点です。

また、医師に直接診察や説明をしてもらうことができるため、より安心感があると思います。どうしても来院が難しい場合は、ピルのオンライン診療という手もあります。診察後、薬を即日発送してくれるところも多いです。

通販でのアフターピル購入はさまざまなデメリットが考えられるため、積極的におすすめはできません。

アフターピルを服用して妊娠した場合

女性 赤ちゃん

アフターピルを服用した後に、万一妊娠が発覚しても赤ちゃんに影響はありません。

妊娠初期に経口避妊薬を服用していた妊婦に関する複数の調査から、奇形などのリスクの上昇は認められないといわれています6,7)。アフターピルを使って避妊に失敗してしまい、万一妊娠しても胎児への悪影響はないと考えられています。

また、アフターピルを服用したことによる後遺症として不妊症になることも、まずないと考えて良いでしょう。

まとめ

アフターピルについて、知っておくべき知識を簡潔にご紹介させていただきました。

より詳しく知りたいかたは、以下の記事もご参照ください。

参考文献

  1. Task Force on Postovulatory Methods of Fertility Regulation. Randomised controlled trial of levonorgestrel versus the Yuzpe regimen of combined oral contraceptives for emergency contraception. Lancet 1998; 352: 428-433. doi:10.1016/S0140-6736(98)05145-9
  2. 日本産婦人科学会. 緊急避妊法の適正使用に関する指針(平成28年度改訂版). http://www.jsog.or.jp/uploads/files/medical/about/kinkyuhinin_shishin_H28.pdf
  3. Brache V, Cochon L, Jesam C, et al. Immediate preovulatory administration of 30 mg ulipristal acetate significantly delays follicular rupture. Hum Reprod. 2010; 25(9):2256–2263. doi: 10.1093/humrep/deq157 
  4. Glasier AF, Cameron ST, Fine PM, et al. Ulipristal acetate versus levonorgestrel for emergency contraception: a randomised non-inferiority trial and meta-analysis. Lancet. 2010;375(9714):555–562. doi: 10.1016/s0140-6736(10)60101-8 
  5. von Hertzen H, Piaggio G, Ding J, Chen J, Song Si, Bartfai G, et al. Low-dose mifepristone and two regimens of levonorgestrel for emergency contraception: a WHO multicentre randomised trial. Lancet 2002; 360: 1803-1810. doi: 10.1016/S0140-6736(02)11767-3
  6. Bracken, MB. Oral contraception and congenital malformations in offspring: a review and meta-analysis of the prospective studies. Obstet. Gynecol. 76(3 Pt 2), 1990, 552-7.
  7. Raman-Wilms, L. et al. Fetal genital effects of first-trimester sex hormone exposure: a meta-analysis. Obstet. Gynecol. 85(1), 1995, 141-9. doi: 10.1016/0029-7844(94)00341-a 
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