院長の石川(産婦人科専門医)です。
生理予定日になったのに、生理が来ないことってありますよね。「避妊の対策はしているのに…」「最近体調が悪かったからかな?」など、いろいろな思いが巡るのではないかと思います。
生理がこない理由として、真っ先に気になるのは妊娠だと思いますが、妊娠以外にも多くの要因が考えられます。「これまでの経験から、きっと大丈夫かな」と過ごしてきたこともあるかもしれません。
しかし、なかには早めに病院に行って検査や治療を進めた方が良いものもあります。異常があるならば、早めから対策した方が回復しやすいのです。
今回の記事では、生理が来ない・遅れる原因について、説明していきたいと思います。
この記事の執筆者
石川 聡司
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)
北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。品川美容外科にて美容外科医として3年間の研鑽を積み、2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。
婦人科全般の診療のほか、美容医療では美肌治療、美容整形をはじめ脱毛・アートメイクなど幅広く対応する。
生理が遅れる原因
いつも生理周期が規則的にきている方にとっては、生理が遅れることはとても不安になりますよね。
実は、生理周期には、個人差や体調の問題などさまざまな状況による変動があります。
生理が来ないことをきっかけに妊娠に気づく女性は少なくありません。しかし、生理が遅れる原因は、必ずしも妊娠であるとは限りません。
女性ホルモンの変動によって生理は起こります。そのため、ホルモンの変動に影響を与えるものであれば、生理の遅れる原因になる可能性があるのです。
原因としては主に以下のようなものが考えられます。
- 生理不順
- 妊娠
- 無月経
- 過剰なストレス
- 無理なダイエット
- 早発閉経
- 甲状腺の病気
- 肥満
それぞれ原因別に説明していきます。
生理不順
体調が思わしくなかった場合などに、予定の生理日からずれてしまうことがありますよね。
このように生理が規則正しくこない状態のことを、生理不順といいます。いつも同じような周期日数で来ている方は、少しでもずれると不安になると思いますが、個人差も多いため正常範囲が設定されています。
周期の日数は、28-30日であることが最も多いといわれますが、正常範囲は25-38日とされています。この日数の変動は1週間くらいであるといわれています。また、生理の続く日数は3-7日間が正常範囲といわれています1) 。
生理不順で悩む女性は多く、初潮から次の生理が来ないといったように生理不順が続いている場合や、一時的に生理不順に陥る場合、更年期の症状で40代頃から生理が減っていく場合など、さまざまあります。
生理不順の原因によりますが、治療によって改善することも期待できます。病院で低用量ピルを処方してもらったり、ホルモン療法を行ったりと対応策はたくさんあります。また、早めに治療を行ったほうがいい病気が見つかる場合もあります。
生理が数か月来ない場合や、生理が早すぎる場合、遅すぎる場合などは一度検査をしておくことをおすすめいたします。
妊娠
それまで定期的にきていた生理がこなくなること(無月経)が、妊娠の兆候です。妊娠の可能性のある性交渉を行った場合には、まずは検査をしましょう。
妊娠検査薬(尿妊娠反応薬)はドラッグストアで購入できます。料金は500円から2000円程度です。
妊娠検査薬は、生理予定日の1週間後から使用できます。それより前だと、妊娠していても陰性になってしまう可能性があります。妊娠検査薬で陽性が出た場合には、すぐにクリニックを受診しましょう。
なお、着床出血(月経様出血)といって、生理予定日付近に少量の出血が見られることがあります。これを生理だと思いこむと、妊娠に気づくのが遅れることがあります。
また、妊娠の場合には、生理がこないこと以外に、体調面の変化が起こります。基礎体温をつけている場合には、妊娠すると高温期が2週間以上続くようになります。
そして、生理予定日から1週間程度経過すると、吐き気や嘔吐、だるさなど、いわゆるつわりの症状が出てきます。つわり症状の程度やはじまる時期などには個人差があります。しかし、これは妊娠に特有の症状ではありませんので、症状だけで判断することはできません。
無月経
無月経は、妊娠以外で3ヵ月以上生理がこない状態のことをいいます2) 。
病的な無月経は、原因によって、原発性無月経と続発性無月経の2種類があります。
- <原発性無月経>
-
18歳以上になっても一度も生理がこない状態です。非常に珍しく、無月経全体の0.3-0.4%程度に見られます2, 3) 。
初めての月経を初潮(初経)といいます。初経がくる平均年齢は12歳ですが、18歳になっても初経がなければ診断されます。
原因としては、遺伝的要素が多くを占めており、生殖器の奇形や染色体異常が見つかる可能性があります2) 。
- <続発性無月経>
-
他の要因(妊娠以外)のために3ヶ月以上生理がこない状態です。無月経のほとんどは続発性です。
多くの場合、ストレスや過剰な運動、過度なダイエットなどが原因になります。
初潮から次の生理がこない、というような若い女性のケースも見られることがあります。
決して珍しい症状ではありません。
無月経の症状が長期に渡ると、回復が難しくなることが多くなります。原発性無月経の疑いも考えて、高校生になるあたり(16歳頃)まで初潮がない場合や、これまで来ていた月経が3ヵ月以上来なくなった場合には、クリニックを受診してください。
なお、無月経でも病的ではない場合があります。
例えば、下記のような場合も無月経になります。
- 初経が来る前
- 閉経後
- 妊娠中
- 産褥期(出産後からの回復期)
- 授乳期
これらの場合は、自然な体の反応である(続発性無月経には分類されない)ため、心配する必要はありません1) 。
過剰なストレス
過剰なストレスを感じると、ストレスホルモン(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が分泌されます。このストレスホルモンによって、女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲスチンの産生が抑えられてしまうため、生理不順の原因になります3) 。
過剰なストレスがあると、それまで何気なく過ごしていた日常生活を送れなくなるようになります。
原因として、具体的にどんなものが考えられるか、例を挙げておきましょう。
- 解決したい難しい問題を抱えているが、未解決のままである
- 思いがけず、自分あるいは家族に何らかの病気が判明した
- 大変な治療を受けている
- 極端にやせた、体重が減った
- 疲労感がひどい
- 眠れない、寝不足が続いている
- 身の危険を感じたエピソードがあった
などでしょうか。これらのいずれかに該当するようならば、ストレスによる影響も考えておいた方が良いでしょう。
ただし、これらに該当しないからといって、ストレスではないというものでもありません。ストレスは、個々人の状況などによって、感じたり気にならなかったりするものです。
ストレスによって生理が来なくなってしまった場合は、ストレスを解消することで、いつも通りの生理周期の回復が期待できます。とはいっても、ストレスはすぐに解決できるものではないかもしれません。少しずつでも良いので、気分転換を図ることや十分な休息を取る時間を増やして、バランスの良い食事を心がけて、環境調整をおこなうと良いでしょう。
もし、ストレスを解消してもまだ生理が来ないという状況がある場合、下腹部痛があるなどの場合は、ほかの原因も検討しなければいけませんので、早めに受診をしてください。
無理なダイエット
無理なダイエットを行うことは、生理がこない原因になります。必要な栄養分を取れない状態が続くと、卵巣の機能が正常に働かなくなってしまうからです。
女性の性機能は体重や体脂肪と深く関わっています。思春期にはエストロゲンの作用により乳房や腰部に体脂肪が増加し、女性らしい丸みをおびた体型に発達します。内分泌機能や生殖機能が正常に働くためには、適量の体脂肪が必要なのです。
痩せ願望が強く、美容を目的に、たとえ適正体重であっても、食事量を減らしてしまうと、無月経や生理不順を引き起こしてしまうことがあります。
急激なダイエットによって栄養が足りなくなると、飢餓状態だと脳が判断し、身体が妊娠しないように反応します。
具体的には、性腺刺激ホルモン(女性ホルモンを分泌するホルモン)は、体重の減少によって分泌が低下してしまうのです。また、体重減少によって脂肪細胞から分泌されるレプチンも低下します。レプチンが低下すると、エストロゲンの分泌の低下につながるため、女性ホルモンのバランスの乱れを生じます3) 。
体重減少の程度が激しいほど卵巣機能は低下するため、無月経から正常な周期に回復する時間も長くかかってしまいます。
無理なダイエットが原因で、生理がこない場合には、性機能以外に栄養状態など体調面全体が危険な状況に陥っている可能性もあります。早めにクリニックを受診しましょう。
また、摂食障害である神経性食欲不振症も、無月経をきたすため注意が必要です。神経性食欲不振症は、若年女性の500人に1人の頻度で見られます。摂食障害は、心身症の代表的疾患の一つであるため、このような精神的背景がある場合には、精神科や心療内科での治療も一緒に行いながら対応する必要があります4) 。
早発閉経
閉経は、1年間以上生理が来ないことをいいます。卵巣の機能が完全に停止している状態です。
いつ閉経がくるのか、というのはわからないため、過去1年間生理が来なかったことを振り返って、閉経と診断されます5) 。
多くの方は45歳から55歳の間に閉経するといわれており、生理周期の間隔が徐々に長くなっていき、最終的に生理が来なくなります。
早発閉経は早発卵巣不全ともいいますが、40歳未満で閉経することをいいます。
20代では1000人に1人、30代では100人に1人の割合で発症し、無月経患者の10-20人に1人が早発閉経であるといわれています6) 。
閉経による影響は、妊娠・出産ができなくなることだけでありません。骨密度が低下して骨粗しょう症になったり、生活習慣病のリスクが増えたりするなど、全身に影響が出てくるようになります。
また、早発閉経になると女性ホルモンの分泌が少なくなるため、疲れやすい、頭痛、だるい、肩や腰が痛い、憂うつになる、焦りを感じる、ほてり感など、更年期障害のような症状が見られます。
早発閉経と無月経は、生理がこないということでは共通していますが、異なる病態です。
無月経は卵巣機能が一時的に停止している状態で、今後回復する可能性があります。
一方で、早発閉経は、卵巣機能が完全に止まっている状態で、その後も生理が来ることはありません。そのため、卵巣機能が回復することはありません。
ただし、無月経の場合でも、1年以上生理が来ない状態が続くと閉経と見なされるようになります。
早発閉経の原因が特定できることは少数例であり、ほとんどは原因不明です。
可能性のある原因は、以下のものが挙げられます。
- 卵巣の機能が低下する外的な因子がある:卵巣の手術や抗がん剤治療、放射線治療の影響など
- 染色体や遺伝子の異常など先天的な影響
- 喫煙
- 自己免疫疾患(甲状腺機能障害、糖尿病、全身性エリテマトーデスなど)
- ストレス
早発閉経になってしまう前に、早めに病院を受診して治療を開始することが必要です。
甲状腺の病気
バセドウ病や橋本病といった、甲状腺ホルモンの分泌が過剰であったり不足したりする病気も、生理が来なくなる原因になります。甲状腺機能障害に伴う月経異常は12%にみられ、続発性無月経の患者の58%に甲状腺機能異常が認められた、という報告もあります。
また、甲状腺機能低下症の患者の75%には、生理が来なくなる(無月経)、生理がくる間隔が伸びる(稀発月経)症状が認められています6) 。
バセドウ病をはじめとした甲状腺機能亢進症の場合には、暑がる、指が震える、体重減少、動悸、イライラする、目が閉じづらいなどの症状が見られます7) 。
一方で、橋本病をはじめとした甲状腺機能低下症の場合には、無気力、低血圧、疲労感、むくみ、寒気、体重増加、動作緩慢、記憶力低下、便秘、体温が低いなどの症状が見られます8) 。
甲状腺の病気は20-40歳の女性に多く、不妊や流産の原因にもなります。
生理がこないことに加え、上記のような症状がある場合には、早めに病院を受診しましょう。
肥満
痩せることが無月経の原因になる一方で、肥満も無月経になることがあります。
ダイエットの項で説明したように、一定の体重や体脂肪が女性の性機能を維持する上で必要になりますが、太り過ぎもよくないのです。ただし、元の体重に戻せば、生理がくるようになることが多く、痩せすぎよりも性機能の回復は早いといわれます。
肥満には、単純性肥満と症候性(二次性)肥満の2種類があります。
単純性肥満は、基礎疾患がなくて、食べ過ぎが原因による肥満です。肥満の90%以上は、この単純性肥満です。
症候性(二次性)肥満は、何らかの基礎疾患がある場合です9) 。
症候性(二次性)肥満の原因としては、以下のものが考えられます。
- Cushing 症候群
- 糖尿病
- 甲状腺機能低下症
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
- Laurence-Moon-Biedl 症候群
- Frohlich 症候群
それぞれの疾患に対しては、適切な治療が必要になります。
太りすぎたなと感じた場合には、体調の良かった時期の体重に戻すように、食べ過ぎないようにするのが良いでしょう。食習慣をあらためてもあまり体重が戻らない場合には、一度クリニックで相談してみてください。
生理不順と妊娠の見分け方
避妊をしたはずなのに生理が来ない場合は、妊娠しているかどうかを見分けるために、検査をするのが良いでしょう。
さまざまな避妊法がありますが、例えば、低用量ピルを理想的に使うと、妊娠が成立する確率は0.3%まで下げることができます10) 。しかし、性交渉をする以上、0%にすることはできません。
どんな避妊法も、100%避妊を成功する保証はないので、不安が続くようであれば、念のために妊娠検査薬を使ったほうが良いでしょう。
クリニックを受診しなくても、市販の妊娠検査薬(尿妊娠反応薬)で調べることができます。
妊娠が成立すると、妊娠の部位からヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)が分泌されるようになります。妊娠検査薬は、尿の中に、このhCGが分泌されているかどうかを確認しています11) 。妊娠であれば尿中hCGが陽性になりますが、生理不順だけでは陽性になることはありません。
妊娠検査が陽性であった場合には、ほぼ妊娠であると言えます。しかし、妊娠の全てが正常妊娠であるとは限りません。
頻度は低いのですが、異常妊娠(子宮外妊娠や流産、胎盤の腫瘍)でも妊娠検査薬は陽性になります。
そのため、妊娠検査薬が陽性である場合には、クリニックを受診することが望まれるのです。
生理がきそうでこない場合
そろそろ生理予定日かな、という時期に、下腹部痛を感じても出血がないな…など、生理が来なくて不安になることもあると思います。
生理が来ない場合は、単なる生理不順の可能性だけではありません。妊娠や、無月経、服用している薬の影響なども考えられます。
<妊娠の場合>
妊娠の初期症状である場合、具体的には、以下のような症状がみられます。
- おりものが増える、水っぽい
- 少量の出血がある(着床出血)
- 胃のむかつき、吐き気
- 頭痛、熱っぽさ
- 胸の張り
- お腹の違和感、下腹部痛
- 眠気がひどい
- 腰痛
- 便秘がち
これらは個人差があるので、全く感じない人もいますし、月経困難症かもしれない、と思う人もいるようです。
妊娠かもしれないと思ったら、喫煙や飲酒はやめましょう。
妊娠でないことが判明するまでは、症状だけではなく、基礎体温を確認して高温期が続いていないか、あるいは妊娠検査薬を使った確認も必要になるでしょう。
下腹部痛は、チクチクするようなものであれば様子を見ていても問題ありません。しかし、我慢できない痛みを感じる、痛みが徐々に強くなるなどの重いものは、正常な妊娠の場合にはみられないため、すぐに病院を受診しましょう。
<閉経の場合>
40代の方の場合には、生理が来なくなると、閉経を意識してくることもあるかと思います。多くの場合は、45−55歳頃に閉経が起こります。前の項でも述べましたが、20代や30代のかたでも早期閉経が起こることがあるため、年齢だけで決めるものでもありません。
妊娠や出産を今後考えている場合には、卵巣機能が完全に停止してしまうのは避けなければいけません。
これまで来ていた生理が、来ない状態のままであることをいち早く解消するためにも、クリニックで相談することをオススメします。
<服用している薬による影響の場合>
内服薬も生理周期に影響が出ることがあります。特に、ホルモン剤を服用している場合には生理が早まったり遅くなったりすることがあります。
例えば、ルトラールのような黄体ホルモン(プロゲスチン)製剤は、黄体機能不全などの不妊治療に対して使われることがあります。体内に不足しているプロゲスチンを補充することで、子宮内膜の環境を整えて着床しやすくする、という効果があります12) 。
ただし、黄体ホルモン製剤を継続して服用していると、排卵しなくなるという特徴があります。排卵しないと子宮内膜が厚くならず、生理出血量が減って、生理痛が軽減できるという効果があるのです。
低用量ピルでも同様の効能がありますが、血栓症のリスクなどから低用量ピルを服用することを避けた方が良い場合に、ホルモン剤の治療が行われることがあります。
つまり、ホルモン剤内服によっても生理が来なくなる場合もありますので、服用している薬の影響であるのかどうか、担当医に確認していただくのが良いと思います。
生理をこさせる方法
生理が来ない場合に、生理を起こさせる方法はあるでしょうか。
ここまで説明してきたように、生理が来ない原因はいろいろなものが考えられます。
薬物療法など、クリニックで治療を受けなければ解決できないものもありますし、まずは生活習慣を改めるなど自分で解決できるものもあります。
自分で解決できる範囲のものは、主に生活環境の見直しになると思います。
- 適切な体重を維持する(目安は、体格指数BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)=18.5-24.9 程度)
- ストレスを溜め込まない
- 禁煙する
- バランスよく食事をとる
- 体を温める食べ物を食べる
などに尽きると思います。
生活習慣だけでは、変わらないのでは?と感じて、民間療法に頼りたいと思う方もいるかもしれません。
しかし、まずはクリニックで生理が来なくなる原因の検査を受けて、治療が必要な病気がないかどうかを確認するべきです。
クリニックでは、まず妊娠でないことを確認します。その上で、生理がこない原因を突き止め、治療を行なっていくことになります。
前述したように、無月経のうちほとんどは続発性無月経と呼ばれる一時的に生理が来なくなった状態です。
血液検査で、各種ホルモン値を測定し、排卵がなくなる原因を探します。
黄体ホルモン(プロゲスチン)を投与してホルモン分泌量を推定して無月経の重症度判定を行います。
また、挙児希望(今後子どもが欲しいかどうか)の有無によって治療法も異なっていきます1) 。
なお、若年者では、生理が来なくなる原因として、減食による体重減少による影響が最も多いといわれています6) 。 スポーツ選手の場合も、生理が来なくなるときがあり、栄養士や競技指導者と連携して、運動量に見合った適切なカロリーを摂取するようにしてもらうことがあります2) 。
生理予定日より遅れている場合の対処法
生理予定日よりも1週間くらい待っても生理が来ないため、心配になって妊娠検査薬で確認したら、陽性だった!というケースは、これまで比較的周期が乱れないで生理が来ていた人に多いのではないでしょうか。
一方で、もともと生理不順である人や、出産後で生理の再開がない人の場合には、妊娠に気づくのに時間がかかる場合があります。
妊娠の可能性のある性交渉を行った場合には、適切な時期に妊娠検査薬を使用して確認するのが良いでしょう。妊娠検査薬での判断が可能なのは、生理予定日より1週間後以降であるため、それまでの間は、喫煙や飲酒、ダイエットや過食など、身体の負担になるようなことをやめて過ごしてください。
現在市販されている妊娠検査薬は、診断精度が高いといわれています。陽性であれば妊娠である可能性がとても高いのですが、正常な妊娠であるのかどうか、お腹の中の状態を確認する必要があるため、早めにクリニックの受診をすることが大切です。
1週間
生理予定日より1週間遅れている場合は、心配になってくる時期だと思います。
ただし、この時期では、妊娠したかどうかがはっきりしない場合もあります。
妊娠の可能性のある性交渉を行った場合には、まずは妊娠検査薬を使用してみても良いのですが、フライング検査になってしまう可能性があります。
一般的には、妊娠検査薬は生理予定日の1週間後以降から使用するものです。待ちきれない気持ちもわかりますが、仮に陰性であっても妊娠していないとは言い切れず、後日にもう一度確認が必要になります。
2週間
生理周期は25−38日間が正常範囲で、この日数の変動は1週間くらいといわれています1) 。
そのため、生理不順気味である場合には、そういうこともあるかな?と考えてしまうこともあるかもしれません。
生理予定日から2週間経過していると、妊娠検査薬で問題なく判定できる時期です。
また、基礎体温をつけている場合には、妊娠すると高温相が2週間以上継続するので、確認材料になるでしょう。
妊娠の可能性がなくて生理がこない状態が続いているのであれば、何らかの別の原因が隠れていることも考えられます。
不規則な生活習慣であれば、ある程度自分自身で直す努力が可能かもしれませんが、子宮内膜症や子宮筋腫といった婦人科系の病気が見つかる可能性もあります。
生理予定日より2週間以上遅れている場合には、早めにクリニックを受診した方が良いでしょう。
3週間
生理予定日より3週間遅れていて、妊娠の可能性がある場合には、妊娠検査薬で確認してみましょう。
仮に妊娠している場合には、水っぽいおりものが増える、胃のむかつきや吐き気、胸の張りなど、いわゆる妊娠初期症状も出現しているかもしれません。
妊娠検査薬が陽性と出ていても、ときおり、すぐにクリニックを受診しない方がいます。
しかし、正常な妊娠であるかどうかを確認することが重要なので、クリニックでの検査が必要なのです。最も問題になるのは、子宮外妊娠です。全妊娠の1%前後であるといわれているため頻度は低いのですが、適切に治療しない場合、大出血して命に関わる可能性のある病気です。
子宮外妊娠のうち、最も頻度の高い卵管妊娠では、出血する時期が、妊娠7−8週といわれています。そのため、生理予定日より3週間程度経ったところで、まだクリニックを受診していない場合には、すぐに受診して検査を受けてください13) 。
1カ月ー2カ月
生理予定日から1-2ヶ月程度経っても生理が来ない場合は、妊娠していなくて生理が来ない状態が続いているか、すでに妊娠検査薬で陽性が判明していたけれど信じられなくて受診していないケースなどが考えられます。
妊娠していなくて生理が来ない状態である場合には、ストレスや食習慣、生活習慣での乱れのような原因として考えられるものはないか、確認してください。何らかの病気が見つかる場合もありますので、早めに対応すべき状態です。
妊娠の可能性があるのに、この段階でまだ妊娠検査薬を一度も使用していなければ確認してください、
前の項でも記載しましたが、妊娠検査薬で陽性と出ても、すぐにクリニックに来ないで様子を見ている患者さんがいます。「もしかしたら生理が来るかもしれない」と期待して様子を見ていることもあるようですが、専門医の立場からすると、妊娠過程には注意しなければいけないことがたくさんあるため、早めに受診していただきたいと思います。
3カ月
生理予定日から3ヶ月程度経っても生理が来なくて、妊娠検査薬も陰性である場合には、無月経と判断される状態です。
多くの場合は、続発性無月経といって、ストレスや過剰な運動、過度なダイエットなどが原因として考えられます。
何か思い当たるものはないか、今一度確認してください。
他の可能性としては、40代の方であると、閉経に差し掛かった兆候であることも考えられます。
なお、20代でも30代だからといって、閉経は他人事ということでもありません。早発閉経といって、40歳未満に発症することもあるので、注意が必要です。
生理が一時的に来ない無月経という状態は、卵巣機能の一時的な停止状態で、今後回復する可能性があります。
一方で、早発閉経は、卵巣機能が完全に停止した状態で、今後回復することはありません。
今後子供が欲しいなと考えている方であれば、特に、早めの対応が必要になるのです。
生理が3ヶ月以上来ない場合には、クリニックで相談されることをオススメいたします。
まとめ
生理がこない・遅れるということから、いろいろな体調面の変化が考えられることを説明しましたが、いかがだったでしょうか。
女性にとって、生理は周期的に来るもので、やっかいに感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、見方を変えれば、健康が維持できているかどうかを、定期的に教えてくれるヒントにもなり得ます。
妊娠が気になれば、タイミングをみて妊娠検査薬を使ってみましょう。また、いつも生理不順気味であれば、それは何らかの問題を抱えている可能性があります。
気になる症状があれば、お早めに婦人科へご相談ください。
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