この記事の執筆者

石川 聡司
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)
北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。品川美容外科にて美容外科医として3年間の研鑽を積み、2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。
婦人科全般の診療のほか、美容医療では美肌治療、美容整形をはじめ脱毛・アートメイクなど幅広く対応する。
スレッドリフトで使用される糸とは?
スレッドリフトで使用される糸には、いくつかの種類があり、それぞれの特徴と目的によって使い分けられます。
以下に、代表的な糸の種類とその特性について説明します。
スレッドリフトで使用される主な糸の種類
- ポリディオキサノン(PDO)糸
- 素材
合成ポリマーであるポリディオキサノン(PDO) - 特徴
- 安全性が高い
医療用縫合糸として長い歴史があり、安全性が確立されています。 - 吸収期間
約6ヶ月から8ヶ月で体内に吸収されます。 - コラーゲン生成
糸が吸収される過程で、コラーゲンの生成を促進し、長期的に肌のハリや弾力性を改善します。
- 安全性が高い
- 用途
主に軽度から中等度のたるみの改善に使用されます。
- 素材
- ポリ乳酸(PLA)糸
- 素材
生体吸収性のポリマーであるポリ乳酸(PLA) - 特徴
- 持続性が高い
PDOよりもゆっくりと分解され、長期間にわたって効果が持続します。 - 吸収期間
約12ヶ月から18ヶ月で体内に吸収されます。 - コラーゲン生成
持続的にコラーゲン生成を促進し、皮膚のハリを保ちます。
- 持続性が高い
- 用途
より長期間のリフトアップ効果を求める場合に使用されます。
- 素材
- ポリカプロラクトン(PCL)糸
- 素材
生体吸収性のポリマーであるポリカプロラクトン(PCL) - 特徴
- 非常に長い持続性
他の糸に比べてさらに長期間効果が持続します。 - 吸収期間
約2年から3年で体内に吸収されます。 - コラーゲン生成
非常に長期間にわたってコラーゲン生成を促進します。
- 非常に長い持続性
- 用途
長期的なリフトアップ効果と皮膚の質感改善を求める場合に使用されます。
- 素材
糸の形状と種類
- モノフィラメント糸(シンプルな糸)
- 特徴
シンプルな構造で、主にコラーゲン生成を促進するために使用されます。 - 用途
肌のハリや弾力を改善するために使われます。
- 特徴
- コグ糸(トゲ付き糸)
- 特徴
糸にトゲやギザギザがあり、皮膚をしっかりと引き上げるための物理的なサポートを提供します。 - 用途
より強力なリフトアップ効果を求める部位に使用されます。
- 特徴
- ツイスト糸
- 特徴
ねじれた形状をしており、より多くのコラーゲン生成を促進します。 - 用途
特にハリや弾力性を向上させるために使用されます。
- 特徴
選択と使用
- 選択基準
患者の年齢、肌の状態、たるみの程度、期待する効果の持続期間などに基づいて、適切な糸の種類と形状が選ばれます。 - カウンセリング
施術前には医師とのカウンセリングを行い、最適な糸と施術方法を決定します。
スレッドリフトで使用される糸は、患者のニーズや目的に応じて選ばれ、安全で効果的に使用されます。
信頼できる医師と相談し、自分に最適な選択をすることが重要です。
スレッドリフトに利用される溶けない糸とは?
スレッドリフトに利用される糸には、一般的に体内で自然に吸収される糸(生体吸収性糸)が多く使用されますが、場合によっては溶けない糸(非吸収性糸)も利用されることがあります。
以下に、溶けない糸について詳しく説明します。
溶けない糸(非吸収性糸)の特徴
- 素材
- 主にポリプロピレン(Polypropylene)やナイロン(Nylon)などの非吸収性の合成素材が使われます。
- 特性
- 長期的効果
吸収されないため、非常に長期間にわたって皮膚のリフトアップ効果を維持できます。 - 安定性
物理的に強度が高く、皮膚をしっかりと支えることができます。
- 長期的効果
- 施術の特性
- リフト効果
トゲやコーン付きのデザインが多く、これにより皮膚をしっかりと引き上げ、固定する効果があります。 - 可逆性
必要に応じて糸を取り除くことが可能です。
これは、糸の位置が不適切だった場合や、リフト効果が不満足な場合に有用です。
- リフト効果
使用される糸の種類
- ポリプロピレン(Polypropylene)糸
- 特徴
強度が高く、長期間にわたってリフトアップ効果を維持できます。 - 用途
主にフェイスリフトやネックリフトなどの大規模なリフトアップ施術に使用されます。
- 特徴
- ナイロン(Nylon)糸
- 特徴
ポリプロピレンよりも柔軟性があり、皮膚への適応性が高い。 - 用途
フェイスリフトだけでなく、体の他の部位にも使用されることがあります。
- 特徴
利点とリスク
利点
- 持続的なリフト効果
溶けないため、長期間にわたってリフトアップ効果を維持できます。 - 強度と安定性
強力な物理的サポートを提供し、しっかりと皮膚を引き上げることができます。 - 可逆性
必要に応じて糸を取り除くことができるため、柔軟な調整が可能です。
リスク
- 感染のリスク
非吸収性のため、長期間にわたって体内に存在することで感染のリスクが増す可能性があります。 - 異物反応
体内に異物として残るため、長期的に炎症や異物反応が発生する可能性があります。 - 外科的介入
糸を取り除くためには再度外科的な処置が必要となることがあります。
適応と選択
- 適応
非吸収性糸は、特に長期間のリフトアップ効果を求める患者や、従来の生体吸収性糸では効果が不十分な場合に適しています。 - 選択基準
患者の年齢、皮膚の状態、たるみの程度、期待する効果の持続期間などに基づいて適切な糸が選ばれます。
非吸収性糸を使用するスレッドリフトは、長期的なリフトアップ効果を求める患者にとって有効な選択肢となりますが、リスクも伴います。
施術を受ける際は、信頼できる医師と十分に相談し、自分に最適な方法を選ぶことが重要です。
溶ける糸と溶けない糸、選ぶならどっち?
スレッドリフトで使用される「溶ける糸(生体吸収性糸)」と「溶けない糸(非吸収性糸)」の選択は、個々のニーズ、目標、および健康状態に大きく依存します。
それぞれの糸には特有の利点と欠点があるため、選択する際には以下のポイントを考慮することが重要です。
溶ける糸(生体吸収性糸)
利点
- 自然なコラーゲン生成
糸が吸収される過程でコラーゲン生成が促進され、肌のハリと弾力が向上します。 - 安全性
糸が体内で自然に分解されるため、長期間異物が体内に残るリスクが低い。 - ダウンタイムの短さ
施術後の回復が比較的早く、軽い腫れや内出血が数日で治まることが多い。
欠点
- 効果の持続期間
吸収されるため、効果の持続期間は1年から2年程度と比較的短い。 - 繰り返しの施術
効果が薄れてきた場合には、定期的に施術を繰り返す必要がある。
溶けない糸(非吸収性糸)
利点
- 長期的なリフト効果
糸が溶けないため、非常に長期間にわたってリフトアップ効果を維持できる。 - 強度と安定性
強力な物理的サポートを提供し、しっかりと皮膚を引き上げることができる。
欠点
- 感染リスク
長期間体内に異物として存在するため、感染のリスクが高まる可能性がある。 - 異物反応のリスク
長期的に炎症や異物反応が発生する可能性がある。 - 外科的介入
必要に応じて糸を取り除くためには再度外科的な処置が必要。
選択基準
- 期待する効果の持続期間
- 短期的なリフトアップや、コラーゲン生成を促進して肌の質感を改善したい場合は、溶ける糸が適しています。
- 長期間にわたるリフトアップ効果を求める場合は、溶けない糸が適しています。
- リスクと安全性
- 感染リスクや異物反応が心配な場合は、体内で自然に吸収される溶ける糸の方が安心です。
- 強力な物理的サポートが必要で、リスクを承知の上で長期的な効果を求める場合は、溶けない糸も選択肢になります。
- 施術の手間とコスト
- 繰り返しの施術が可能で手間がかからない場合は、溶ける糸が良いでしょう。
- 一度の施術で長期間効果を維持したい場合は、溶けない糸が適しています。
選択は個々のニーズや状況に応じて異なります。
例えば、短期的に自然な改善を望む人や安全性を重視する人には溶ける糸が適しています。
一方、より長期間の効果を求め、リスクを理解した上で強力なリフトアップを望む人には溶けない糸が適しているかもしれません。
施術を受ける前に、信頼できる医師と相談し、自分の希望やリスク許容度を含めて最適な選択をすることが重要です。
