赤ちゃんの神経管閉鎖障害を防ぐために。妊娠前から始めたい「葉酸」の話

妊娠がわかった瞬間から、赤ちゃんのためにできることを始めたい──
多くの人がそう思うはずです。でも実は、赤ちゃんの体のとても大切な部分は妊娠に気づく前に作られ始めていることを知っていますか?

脳や脊髄のもととなる「神経管」は、妊娠4〜5週ごろにほとんど完成します。
つまり、妊娠検査薬で陽性が出て「妊娠してる!」と気づいた頃には、もう赤ちゃんの体の中で大切な形成が進んでいるのです。

だからこそ、妊娠が確定してからでは防げないリスクがあります。
そのひとつが「神経管閉鎖障害」。
そしてそれは、妊娠前から葉酸を摂ることで予防できる可能性が高いことがわかっています。

「妊娠してから気をつければいい」
そう思っていた人ほど知っておいてほしい。
今日から赤ちゃんの未来を守るためにできることがある、という話です。

この記事の執筆者

石川 聡司
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)

北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。品川美容外科にて美容外科医として3年間の研鑽を積み、2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。

婦人科全般の診療のほか、美容医療では美肌治療、美容整形をはじめ脱毛・アートメイクなど幅広く対応する。

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目次

赤ちゃんは妊娠初期に重要な器官を作り始める

妊娠がわかると、「赤ちゃんのためにできることを始めたい」と思う人は多いでしょう。
でも実は、赤ちゃんの体の中で最も重要な器官のひとつである 脳と脊髄のもと(神経管) は、妊娠がわかるよりもはるかに早く作られ始めます。

妊娠に気づく女性が多いのは 妊娠4〜6週ごろ
しかし神経管の形成が始まるのは 妊娠3〜4週で、この頃にはすでに急速な成長が進んでいます。
つまり、「妊娠が確定してから体づくりを始める」では、赤ちゃんにとっての大切なタイミングに間に合わないことがあるのです。

だからこそ 妊娠が分かる前から、未来の赤ちゃんのための準備をしておくことが大切
それが、赤ちゃんの健やかな成長につながる第一歩になります。

患者さん

妊娠がわかったら栄養のことを気をつけようと思ってたんですが、それじゃ遅いってことですか?

Dr.石川

そうなんです。赤ちゃんの脳や脊髄のもとになる神経管は、妊娠3〜4週の間にほぼできあがります。

患者さん

でも妊娠って気づくの、たいてい4〜5週ですよね…。

Dr.石川

その通りです。だから“妊娠に気づく前の準備”が、とても大事なんです。

患者さん

じゃあ、妊娠がまだでも、妊活前でも、いまからできることがあるってことですか?

Dr.石川

はい。早すぎるということはありません。赤ちゃんのための体づくりは、思い立った“今日”から始めてOKです。

神経管閉鎖障害とは?

赤ちゃんの脳や脊髄のもととなる「神経管」は、妊娠初期に形成され、その後しっかり閉じることで正常に機能するようになります。
しかし、何らかの理由で 神経管が完全に閉じない・形成が遅れる などの異常が起きると、神経管閉鎖障害(Neural Tube Defect:NTD) が発生します。

代表的な症状には 二分脊椎無脳症 があります。

  • 二分脊椎
    脊髄が覆われずに露出する、または不完全な状態で生まれる先天異常
    下半身の運動障害や排泄障害など、生涯にわたり医療的サポートが必要になることがある
  • 無脳症
    脳の発達が著しく損なわれる状態
    残念ながら生命の維持が難しいことがほとんど

神経管閉鎖障害が発症してしまうと、根本的な治療は難しく、赤ちゃんと家族の人生に大きな影響を与える可能性があります。
しかし近年の研究により、妊娠前〜妊娠初期の葉酸摂取によって発症リスクを大きく減らせる ことが明らかになっています。
完全に予防できるとは言い切れないものの、「栄養の準備でリスクを下げられる」ことは確かな希望です。

患者さん

神経管閉鎖障害って、どんな病気なんですか?名前だけだとイメージがわかなくて…

Dr.石川

簡単にいうと、赤ちゃんの脳や脊髄を包む“体のトンネル”がきちんと閉じきらない状態のことです。

患者さん

閉じないとどうなるんですか?

Dr.石川

閉じる場所によって違いますが、背中側が閉じないと二分脊椎、頭の方が閉じないと無脳症といった問題につながります。

患者さん

それって治せるんですか…?

Dr.石川

残念ながら完全な治療は難しいです。でも良いニュースもありますよ。

患者さん

良いニュース…?

Dr.石川

妊娠前から葉酸を十分に摂っておくと、神経管閉鎖障害の発症リスクをかなり減らせることがわかっているんです。

患者さん

栄養で防げる可能性があるんですね。

Dr.石川

はい。“100%防げる”わけではないですが、赤ちゃんを守る大きな力になります。

予防の鍵となる「葉酸」の働き

葉酸は、体の中で DNA合成や細胞分裂を助ける働きを持つビタミンB群の一種 です。
細胞が増える場面、つまり「体が大きく成長する時期」には欠かせない栄養素で、特に妊娠初期に急速に発達する胎児にとっては非常に重要です。

妊娠初期の赤ちゃんの体では、脳・脊髄・心臓・臓器など、生命の基盤となる器官が次々と作られていきます。
その過程では細胞分裂が爆発的に進むため、葉酸の必要量は 妊娠前の約2倍 まで跳ね上がります。

しかし、いくつかの理由から 食事のみで必要量を安定して満たすのが難しい とされています。

  • 食事に含まれる葉酸は吸収率が低く、加熱によって失われやすい
  • 必要量が一時的に大きく増えるため、普段の食事量では不足しがち
  • 妊娠に気づく前から必要なのに、意識して摂り始めるのは多くの場合「妊娠発覚後」

このため多くの国や医療機関で、食事に加えてサプリメント(モノグルタミン酸型葉酸)で不足分を補うこと が推奨されています。
葉酸は「妊娠がわかってから」ではなく、妊娠前から摂り続けておくことで最大の力を発揮する栄養素 です。

患者さん

葉酸ってよく聞きますけど…赤ちゃんにとって何がそんなに大事なんですか?

Dr.石川

葉酸は、細胞が増える時に働く栄養なんです。赤ちゃんは妊娠初期に細胞がものすごい勢いで増えるので、葉酸がたくさん必要になります。

患者さん

なるほど。でも食事から取ればOKなんですよね?

Dr.石川

もちろん食事も大事です。ただ、葉酸は熱に弱かったり吸収されにくかったりして、必要量に届きにくいんです。

患者さん

じゃあ、妊娠しているかもしれない時期でも足りないことが多いってことですか?

Dr.石川

そうなんです。だから妊娠がわかる前から、食事に加えてサプリなどでしっかり補うことがすすめられています。

患者さん

妊娠前から摂っておくことで、赤ちゃんに必要な葉酸を確保できるんですね。

Dr.石川

そのとおり。“備え”が赤ちゃんの成長をサポートします。

いつから、どれくらい必要?

妊娠初期(特に妊娠0〜3ヶ月)は、胎児の神経管(脳や脊髄のもと)が形成される非常に重要な時期です。
この神経管は、妊娠に気づくより前の段階である 受精後 2〜4週間頃 に急速に閉鎖するため、妊娠が確定してから葉酸を摂り始めても、必要なタイミングに間に合わないことがあります。

そのため厚生労働省は、妊娠を希望する女性に対して

食事+サプリで合計 400μg/日 の葉酸摂取を、妊娠1ヶ月前から妊娠3ヶ月まで継続すること

を推奨しています。
これは、先天性の神経管閉鎖障害(無脳症・二分脊椎など)のリスク低減に有効であることが、複数の研究で確認されているためです。

つまり葉酸は、妊娠が決まってから必要になるのではなく
「妊娠する前から体に準備しておく栄養素」 と言えます。

患者さん

あの…妊活をしているんですが、葉酸って妊娠してから飲めばいいんでしょうか?

Dr.石川

葉酸はすごく大事な栄養ですね。ただ、妊娠が分かってからだと間に合わないことがあるんです。

患者さん

間に合わない…ですか?

Dr.石川

はい。赤ちゃんの脳や脊髄のもとになる部分は、妊娠初期、とくに妊娠0〜3ヶ月の間に作られます。
しかもその形成が始まるのは、妊娠が分かるよりも前の 受精後2〜4週間ごろ なんですね。

患者さん

そんなに早くなんですか…!

Dr.石川

そうなんです。だから厚生労働省は
「妊娠1ヶ月前から、妊娠3ヶ月まで 1日400μg の葉酸を摂りましょう」 と推奨しています。

患者さん

妊娠が確定してから飲み始めても、遅いことがあるってことですね。

Dr.石川

そうですね。“遅い”と言うより、せっかくの予防効果が十分に発揮できない可能性がある、というイメージです。
葉酸は赤ちゃんの神経管閉鎖障害(無脳症・二分脊椎など)のリスクを下げることが分かっています。だから妊娠する前から、体に蓄えて準備しておくことが大切なんです。

患者さん

なるほど…。妊活中の今から始めるのが一番安心なんですね。

Dr.石川

はい。その方が赤ちゃんをしっかり守れるタイミングに栄養が届きますからね。
「備えておく」ことはお母さんの優しさそのものです。無理なく続けていきましょう。

食事で摂れる葉酸 vs サプリの違い

葉酸は食品からも摂取できますが、妊娠前〜妊娠初期に必要な量を安定して摂るのは難しいことが多いです。

  • 食事の葉酸(天然葉酸)
    • ほうれん草、ブロッコリー、アスパラガス、大豆製品などに含まれる
    • 熱や水に弱く、調理によって失われやすい
    • 吸収率も比較的低いため、必要量を食事だけで確保するのは困難
  • サプリメントの葉酸(Folic Acid / モノグルタミン酸型)
    • 吸収率が高く、体内で効率的に利用される
    • 食事と組み合わせることで、必要な1日400μgを安定して摂取できる
    • 過剰摂取のリスクはサプリメントでもあるが、通常の推奨量(400〜800μg程度)であれば安全とされている

つまり、赤ちゃんを守るためには 食事+サプリの併用が最も安心 です。

患者さん

葉酸って、食事だけじゃダメなんですか?

Dr.石川

食事だけでもある程度は摂れます。でも妊娠前〜初期に必要な量を安定して確保するのは難しいんです。

患者さん

どうしてですか?

Dr.石川

葉酸は熱や水に弱く、調理で減ってしまいます。また、体への吸収率も食事由来だと少し低めなんですね。

患者さん

じゃあサプリが必要ってことですか?

Dr.石川

そうです。サプリに含まれる葉酸(Folic Acid/モノグルタミン酸型)は吸収率が高く、体にしっかり届きます。
食事とサプリを組み合わせると、必要な1日400μgを安定して摂取できます。

患者さん

でもサプリって飲みすぎると危ないんじゃ…?

Dr.石川

通常の推奨量内であれば問題ありません。
ただし、極端に多く摂ると健康に影響が出る可能性があるので、表示通りの量を守ることが大切です。

患者さん

なるほど、食事+サプリで安心ですね。

Dr.石川

はい。赤ちゃんのためにも、無理なく毎日続けられる方法で摂るのが一番です。

今日から始められる「葉酸の習慣」

妊娠前〜妊娠初期に必要な葉酸は、食事とサプリの併用で効率的に摂ることが推奨されます。

その
食事から摂る葉酸の例

・緑黄色野菜:ほうれん草、ブロッコリー、アスパラガス

・豆類:大豆、枝豆

・動物性食品:レバー(鶏・豚・牛)

・その他:アボカド、オレンジなど

その
サプリメントを選ぶときのポイント

葉酸の量:1日あたり400μg(厚生労働省推奨)を目安に

ビタミンB群の有無:体内で葉酸の働きをサポート

鉄・カルシウムなどの追加成分:妊娠初期に不足しやすい栄養素を補える

その
習慣化のポイント

毎日決まった時間に摂取する

食事と組み合わせて続ける

妊娠前から始めることで、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスク低減に寄与

患者さん

葉酸って、今日からでも始められますか?

Dr.石川

もちろんです。食事でもサプリでも、今日から始めることに早すぎることはありません。

患者さん

食事だけじゃダメですか?

Dr.石川

食事でも摂れますが、調理で減ったり吸収されにくかったりするので、サプリと併用するのがおすすめです。

患者さん

サプリってどれを選べばいいんでしょう?

Dr.石川

ポイントは3つです。
①葉酸の量が1日400μg入っていること
②ビタミンB群が含まれていること
③鉄やカルシウムなど、妊娠初期に不足しやすい栄養素が入っていること

患者さん

なるほど。毎日飲み続けるのが大事なんですね。

Dr.石川

そうです。葉酸は“今日からの積み重ね”が赤ちゃんを守る力になります。
妊活中でも妊娠初期でも、無理なく続けられる方法で始めることが一番大切ですよ。

ここでお勧めの葉酸サプリメントのご紹介をさせてください!

まとめ:赤ちゃんの未来は今日から守れる

赤ちゃんの神経管閉鎖障害などのリスクは、妊娠前から葉酸を取り入れることで予防できる可能性があります
重要なのは、妊娠が確定してからではなく、妊娠前から準備しておくことです。

葉酸は食事だけでも摂れますが、吸収率や調理による損失を考えるとサプリで補うのが安心。
今日から始めることに早すぎることはありません。小さな積み重ねが、赤ちゃんの未来を守る力になります。

患者さん

今日から葉酸を始めることで、赤ちゃんのリスクを減らせるんですね。

Dr.石川

はい。その通りです。早く始めるほど、赤ちゃんの神経管が作られる大切な時期に備えることができます。

患者さん

妊娠がまだ分からなくても、準備しておくことが大事なんですね。

Dr.石川

そうです。葉酸は「未来の赤ちゃんへの優しい贈り物」だと思ってください。
始めるのに早すぎることはありません。今日から少しずつでも積み重ねていきましょう。

患者さん

わかりました。今日からできることを始めてみます。

Dr.石川

その気持ちが大切です。赤ちゃんの未来は、あなたの行動で守ることができますよ。

最後までお読みくださり、ありがとうございました!

参考文献

  1. ママのための食事BOOK 厚生労働省 平成29年度子ども・子育て支援推進調査研究事業 https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/pdf/180331_ninsanpu_recipe1.pdf
  2. 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
  3. 葉酸卵、ほうれん草およびアスパラガスの葉酸量に及ぼす加熱調理操作の影響 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kasei/64/0/64_166/_article/-char/ja
  4. 大井静雄(2008)「赤ちゃんの元気にする栄養の話」 ㈱保健同人社/発行
  5. 妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくりを~解説要領 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/000776926.pdf
  6. 神経管閉鎖不全と二分脊椎 – 23. 小児の健康上の問題 – MSDマニュアル家庭版
  7. 葉酸摂取のすすめIncreased Folate Intake isRecommended https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcam/6/2/6_2_53/_pdf/-char/ja
  8. 令和元年国民健康・栄養調査結果の概要 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf
  9. 国民生活センター 葉酸を摂取できるとうたった健康食品について https://www.jsog.or.jp/news/pdf/information20110527_NCAC.pdf
  10. 健康食品の手引き https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dl/kenkou_shokuhin00.pdf
  11. 医薬品との併用に注意のいる健康食品 | 薬事情報センター | 一般社団法人 愛知県薬剤師会 https://www.apha.jp/medicine_room/entry-3755.html
  12. GMPマークを目印に健康食品を選びましょう!厚生労働省 https://www.jhnfa.org/kenshoku_gmp.pdf
  13. 健康食品の手引き https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dl/kenkou_shokuhin00.pdf
  14. 医薬品との併用に注意のいる健康食品 | 薬事情報センター | 一般社団法人 愛知県薬剤師会 https://www.apha.jp/medicine_room/entry-3755.html
  15. 健康食品の摂取により薬物性肝障害を発症することがあります-「医師からの事故情報受付窓口」から- https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20170803_1.pdf
  16. 乳糖不耐症 – 03. 消化器系の病気 – MSDマニュアル家庭版
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