妊娠前から葉酸を積極的に摂取することで、胎児異常発生を予防しましょう!

この記事の執筆者

石川 聡司
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)

北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。品川美容外科にて美容外科医として3年間の研鑽を積み、2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。

婦人科全般の診療のほか、美容医療では美肌治療、美容整形をはじめ脱毛・アートメイクなど幅広く対応する。

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目次

胎児異常とは?

妊娠前に葉酸を摂取することで防げる胎児異常の代表的なものは、「神経管閉鎖障害(neural tube defects, NTDs)」です。
これは、胎児の脳や脊髄が適切に発育しない先天性の異常です。
神経管閉鎖障害の主な例として、無脳症や二分脊椎(spina bifida)があります。

無脳症や二分脊椎と聞いても、あまりピンとこないかもしれません。無脳症とは言葉の通り、大脳がない状態のことであり、赤ちゃんは生まれたとしても生きていくことが出来ません。出産直後に亡くなってしまいます。

二分脊椎とは背骨の後ろ側がくっついていない状態です。背骨がくっついていないので、背骨の中を通っている神経がむき出しになってしまいます。その状態の何が問題なのかというと、出産の際に神経を傷つけてしまう可能性が非常に高いのです。傷つけられた神経は治ることはなく、下半身不随となってしまうケースが多々あります。それらを予防するためには葉酸が非常に重要なのです。

葉酸は、細胞の成長や分裂に必要なビタミンB群の一種であり、神経管の形成が進む妊娠初期に非常に重要です。
特に、神経管は妊娠の3~4週目、つまり妊娠に気づく前に形成され始めるため、妊娠を希望する女性が事前に十分な量の葉酸を摂取していることが重要です。

Dr.石川

日本産婦人科学会でも妊娠前の葉酸摂取が推奨されています。
葉酸摂取による胎児異常発生予防

葉酸摂取のメリットとデメリット

葉酸(フォル酸)は、特に妊娠前後において、胎児の健康と女性の体に非常に重要な役割を果たしますが、摂取におけるメリットとデメリットも理解しておくことが大切です。
以下に、葉酸摂取の詳細なメリットとデメリットをまとめます。

葉酸摂取のメリット

  1. 神経管閉鎖障害(NTDs)のリスク軽減
    妊娠初期の神経管形成の過程で、葉酸は胎児の脳や脊髄の正しい発達を促進します。
    十分な葉酸摂取によって、神経管閉鎖障害(無脳症や二分脊椎など)のリスクを大幅に低減することができます。
    妊娠前からの葉酸補給が特に重要です。
  2. 口唇口蓋裂や心臓奇形のリスク軽減
    一部の研究では、葉酸が口唇口蓋裂や心臓奇形といった他の先天性異常のリスクも軽減する可能性が示唆されています。
  3. 母体の健康をサポート
    葉酸は赤血球の生成に関与し、妊娠中の貧血予防にも役立ちます。
    妊娠中は血液量が増えるため、葉酸の必要量も増加します。
    また、免疫機能やDNA合成、細胞分裂にも葉酸が不可欠です。
  4. 精神的健康のサポート
    葉酸は神経伝達物質の生成にも関わっており、うつ症状の予防や改善に寄与する可能性があります。
    妊娠中や産後に起こるメンタルヘルスの問題にも有益とされています。
  5. 胎盤機能の向上
    葉酸は、妊娠中に胎盤が正常に機能するために必要な栄養素の一つで、妊娠合併症(流産や早産など)のリスクを減少させる働きがあります。

葉酸摂取のデメリット・注意点

  1. 過剰摂取のリスク
    サプリメントなどで葉酸を過剰に摂取すると、ビタミンB12の欠乏を隠す恐れがあります。
    ビタミンB12が不足すると、神経障害や貧血のリスクが増加するため、葉酸だけでなく、バランスの取れた栄養摂取が必要です。
    また、過剰摂取により、消化不良、吐き気、腹痛などの副作用が起こることもあります。
  2. サプリメントへの依存
    自然食品から葉酸を摂取することが理想的です。
    しかし、サプリメントに依存しすぎると、他の栄養素(特にビタミンB12や鉄分)を十分に摂取できないリスクがあります。
    バランスの取れた食事を心がけることが重要です。
  3. 効果が限定される場合
    葉酸は、すべての先天性異常を防ぐわけではありません。
    神経管閉鎖障害以外の先天異常については、その予防効果はまだ明確には証明されていない部分もあります。
Dr.石川

妊娠を希望する女性や妊娠可能な女性は、1日400μgの葉酸を摂取することが推奨されています。
妊娠後は600μgまで増やすことが推奨されます。

葉酸を多く含む食品

葉酸は食品から摂取することもできます。
特に以下の食品に多く含まれています。

  • 緑黄色野菜(ほうれん草、ブロッコリー、アスパラガスなど)
  • 豆類(レンズ豆、ひよこ豆など)
  • 果物(オレンジ、バナナなど)
  • レバーや卵黄
  • 強化されたシリアルやパン
Dr.石川

葉酸は意識しないとなかなか日常的に摂取することが難しいです。サプリメントで補うことを推奨しています。

摂取方法と推奨量

妊娠を希望する女性や妊娠可能な女性は、1日400μgの葉酸を摂取することが推奨されています。
妊娠後は600μgまで増やすことが推奨されます。

葉酸のメリットは特に胎児の健康において非常に重要ですが、過剰摂取のリスクやバランスの取れた栄養摂取の必要性も忘れないようにすることが大切です。

Dr.石川

食品だけでなく、葉酸サプリメントを利用して必要量を満たすことが一般的です。

葉酸を1日400μg摂取するには、どれだけの食物を食べる必要がある?

葉酸を食物から1日400μg摂取するためには、さまざまな食品をバランスよく取り入れる必要があります。
以下に、葉酸を多く含む食品と、その含有量の目安を示し、どの程度食べれば400μgを達成できるか解説します。

葉酸を多く含む食品の例と摂取量

  1. ほうれん草(生)
    • 含有量: 約100gあたり約194μg
    • 必要量: 約200g(ほうれん草2~3束ほど)で約400μg
  2. ブロッコリー(ゆで)
    • 含有量: 100gあたり約120μg
    • 必要量: 約333g(中サイズのブロッコリー2個ほど)で約400μg
  3. アスパラガス(ゆで)
    • 含有量: 100gあたり約150μg
    • 必要量: 約267g(アスパラガスの茎12本ほど)で約400μg
  4. レンズ豆(ゆで)
    • 含有量: 100gあたり約180μg
    • 必要量: 約222g(レンズ豆1カップ強)で約400μg
  5. アボカド
    • 含有量: 1個あたり約90μg
    • 必要量: アボカド約4.5個で400μg
  6. 卵黄
    • 含有量: 1個あたり約25μg
    • 必要量: 約16個で400μg
  7. オレンジ
    • 含有量: 1個あたり約30μg
    • 必要量: 約13個で400μg
  8. 枝豆(ゆで)
    • 含有量: 100gあたり約320μg
    • 必要量: 約125g(小さな一皿分)で400μg
  9. レバー(鶏)
    • 含有量: 100gあたり約1,300μg
    • 必要量: 約31gで400μg(少量で十分)

具体的なメニューの例

たとえば、次のような食事で1日400μgの葉酸を摂取することが可能です。

  • 朝食: オレンジ1個(30μg)+強化シリアル1杯(100μg)
  • 昼食: ほうれん草サラダ200g(194μg)+アスパラガス4本(60μg)
  • 夕食: ブロッコリー150g(180μg)

このように、複数の葉酸を含む食品を組み合わせることで、無理なく1日400μgの摂取が可能です。
ただし、葉酸は調理によって減少することがあるため、できるだけ生や軽い調理法を選ぶことが推奨されます。

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旦那様も一緒に妊活を考える

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    葉酸を効率よく摂取するためのおすすめレシピ!

    葉酸を効果的に摂取できる、おいしくて簡単なおすすめレシピをいくつか紹介します。
    これらのレシピは、葉酸を豊富に含む食材をバランスよく取り入れたものです。

    ほうれん草とアボカドのサラダ

    材料(2人分)

    • ほうれん草(生):100g
    • アボカド:1/2個
    • レモン汁:大さじ1
    • オリーブオイル:大さじ1
    • トマト:1個
    • クルミ:10g
    • 塩・こしょう:少々

    作り方

    1. ほうれん草をよく洗い、水気を切って適当な大きさにちぎります。
    2. アボカドを食べやすい大きさにカットし、レモン汁をかけておきます。
    3. トマトも一口サイズにカットします。
    4. すべての材料をボウルに入れ、オリーブオイル、塩、こしょうで味付けします。
    5. クルミを粗く砕いて、最後にトッピングして完成。

    栄養ポイント
    ほうれん草とアボカドはどちらも葉酸を豊富に含んでおり、クルミにはビタミンEも含まれているため、栄養バランスの取れたサラダです。

    レンズ豆のスープ

    材料(2~3人分)

    • レンズ豆:100g
    • 玉ねぎ:1/2個
    • 人参:1/2本
    • にんにく:1片
    • トマト缶:200g
    • コンソメ:1個
    • 水:500ml
    • オリーブオイル:大さじ1
    • 塩・こしょう:少々

    作り方

    1. 玉ねぎ、人参、にんにくをみじん切りにします。
    2. 鍋にオリーブオイルを熱し、にんにくを炒めて香りを出します。次に玉ねぎと人参を加え、柔らかくなるまで炒めます。
    3. レンズ豆とトマト缶を加え、軽く炒め合わせます。
    4. 水とコンソメを加えて中火で煮込みます。レンズ豆が柔らかくなるまで約20分ほど煮ます。
    5. 塩・こしょうで味を調え、完成です。

    栄養ポイント
    レンズ豆は非常に葉酸が豊富で、さらに食物繊維やタンパク質も含まれているため、体に優しいスープです。

    アスパラガスとブロッコリーの炒め物

    材料(2人分)

    • アスパラガス:5本
    • ブロッコリー:100g
    • にんにく:1片
    • オリーブオイル:大さじ1
    • 塩・こしょう:少々
    • 醤油:小さじ1

    作り方

    1. アスパラガスは根元の硬い部分を切り落とし、食べやすい長さにカットします。ブロッコリーは小房に分けます。
    2. フライパンにオリーブオイルを熱し、スライスしたにんにくを香りが立つまで炒めます。
    3. アスパラガスとブロッコリーを加えて、全体にオイルを絡ませるように炒めます。
    4. 塩・こしょうで味を調え、最後に醤油を加えてサッと炒め合わせて完成。

    栄養ポイント
    アスパラガスとブロッコリーの組み合わせは、葉酸だけでなくビタミンCや食物繊維もたっぷり摂れる一品です。

    枝豆と卵の和風オムレツ

    材料(2人分)

    • 枝豆(冷凍でも可):100g
    • 卵:3個
    • 鰹節:5g
    • 醤油:小さじ1
    • 砂糖:小さじ1
    • サラダ油:大さじ1

    作り方

    1. 枝豆は塩ゆでして中身を取り出しておきます。
    2. 卵を溶き、鰹節、醤油、砂糖を混ぜます。
    3. フライパンにサラダ油を熱し、卵液を流し入れて中火で半熟になるまで焼きます。
    4. 枝豆を均等に散らし、オムレツの形にまとめて焼き上げます。

    栄養ポイント
    枝豆は葉酸が豊富で、卵にはビタミンB12やタンパク質も含まれているため、栄養価が高い和風オムレツです。

    Dr.石川

    これらのレシピは手軽に作れるだけでなく、葉酸をバランスよく摂取できるメニューなので、日常の食事に取り入れてみてください。

    胎児異常の発生率

    胎児異常の発生率は母親の年齢に依存することが多く、特に高齢出産(一般的には35歳以上)になると、そのリスクが増加します。
    胎児異常には多くの種類がありますが、主に染色体異常と神経管閉鎖障害が代表的なものです。

    通常の発生率

    若年の女性での胎児異常の発生率は比較的低いです。
    例として、以下に染色体異常と神経管閉鎖障害の一般的な発生率を示します。

    染色体異常(ダウン症など)

    • ダウン症候群(21トリソミー)は染色体異常の一例です。
    • 20歳代の母親の場合、ダウン症の発生率はおよそ1,000人に1人(0.1%)と言われています。

    神経管閉鎖障害

    • 神経管閉鎖障害(無脳症、二分脊椎など)の発生率は、1,000人に1人から2人(0.1〜0.2%)程度です。
    • 葉酸を適切に摂取することで、これらのリスクを大幅に減少させることが可能です。

    高齢出産(35歳以上)の発生率

    高齢出産の場合、特に染色体異常の発生率が上昇します。
    以下は年齢ごとの発生率の目安です。

    染色体異常(ダウン症など)

    • 35歳の母親の場合
      ダウン症の発生率は約350人に1人(約0.3%)です。
    • 40歳の母親の場合
      ダウン症の発生率は約100人に1人(約1%)です。
    • 45歳の母親の場合
      ダウン症の発生率は約30人に1人(約3.3%)です。

    年齢が上がるにつれて、他の染色体異常(エドワーズ症候群、パトウ症候群など)の発生率も増加します。

    神経管閉鎖障害

    高齢出産自体が神経管閉鎖障害のリスクを顕著に増加させるとはされていませんが、栄養バランスや体調管理の難しさから、リスクは若干高まる可能性があります。

    高齢出産における他のリスク

    高齢出産では、胎児異常以外にもさまざまなリスクが増加します。

    • 流産のリスク
      35歳以上では、流産のリスクが20代の女性よりも高くなります。
      40歳以上になると、そのリスクは約30~40%に達することがあります。
    • 早産や低体重児のリスクも増加します。
    Dr.石川

    葉酸やその他の栄養素を適切に摂取し、医療機関での適切なフォローアップが重要です。

    まとめ

    1. 葉酸の摂取で防げる胎児異常として、主に神経管閉鎖障害が挙げられ、葉酸がこのリスクを軽減することが確認されました。
    2. 葉酸摂取のメリットとデメリットについて詳しく解説しました。
      メリットは胎児の健康に役立ち、特に妊娠初期の神経管形成に重要で、デメリットは過剰摂取による副作用のリスクがある点です。
    3. 葉酸400μgを食事で摂取するために必要な食材の量と、具体的な食品例(ほうれん草、ブロッコリー、アボカドなど)を提示し、1日400μgを達成するためのメニューも紹介しました。
    4. 葉酸を含むおすすめレシピを紹介し、葉酸が豊富な食材を使った簡単な料理(ほうれん草サラダ、レンズ豆スープ、枝豆オムレツなど)を提案しました。
    5. 胎児異常の発生率について、通常の若年出産時と高齢出産時のリスク比較を行い、年齢が上がるほど染色体異常の発生率が高まることを説明しました。
    Dr.石川

    妊娠と葉酸摂取の重要性に関する情報について解説させていただきました。
    最後までお読みくださり、ありがとうございました!

    参考文献

    葉酸と胎児異常の関連

    • World Health Organization (WHO). “Folic acid supplementation during pregnancy to prevent neural tube defects.” 2023.
      葉酸の補給が妊娠中に神経管閉鎖障害の予防にどのように役立つか、WHOが推奨している基準です。 URL: https://www.who.int/publications/i/item/9789241550367
    • National Institutes of Health (NIH), Office of Dietary Supplements. “Folate.” 2021.
      葉酸の役割、必要量、過剰摂取のリスク、食品の例が詳しく説明されています。 URL: https://ods.od.nih.gov/factsheets/Folate-Consumer/

    高齢出産と胎児異常の発生率

    葉酸を含む食材と栄養摂取

    妊娠における葉酸の重要性と摂取量のガイドライン

    • 日本産婦人科学会 (The Japan Society of Obstetrics and Gynecology). 「葉酸サプリメントの重要性について」2021年
      日本国内で推奨されている葉酸の摂取ガイドラインや、胎児の健康に与える影響についての詳細な説明。 URL: https://www.jsog.or.jp/
    • 厚生労働省 (Ministry of Health, Labour and Welfare). 「妊娠を希望する女性への葉酸の摂取について」
      妊娠前や妊娠中の女性に向けた葉酸の摂取推奨量やその根拠に関する資料。 URL: https://www.mhlw.go.jp/
    目次