セルフケアではなかなかシミを改善できず、クリニックでのレーザー治療を考えている方も多いのではないでしょうか。
短時間で高い効果が期待できるシミ取りレーザーですが、さまざまな種類が存在し、特徴や効果が異なります。
今回は、代表的なシミ取りレーザーの種類や効果・値段・施術後の経過などについてまとめました。
それぞれのレーザーの特徴を理解して、自分のシミに最適な治療法を選択しましょう。
この記事の執筆者
石川 聡司
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)
北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。品川美容外科にて美容外科医として3年間の研鑽を積み、2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。
婦人科全般の診療のほか、美容医療では美肌治療、美容整形をはじめ脱毛・アートメイクなど幅広く対応する。
シミの種類と見分け方
シミは大きく5種類に分けられます。
シミの種類によって適切な治療法が変わってくるため、シミ取りレーザーについて理解する前に、まずは自分のシミがどのタイプなのかを把握しましょう。
以下に、それぞれのシミの主な原因と見分け方をまとめました。
シミの種類 | 主な原因 | 特徴・見分け方 |
老人性色素斑 | 紫外線(メラニンの蓄積) | もっとも多いシミのタイプ・円形で茶褐色のものが多い 数ミリから数センチまで大きさはさまざまで、境界が明確 30代以降の男女に多い・紫外線があたりやすい部分に多く見られる |
そばかす(雀卵斑) | 遺伝的要因・紫外線 | 点々とした小さなシミの集まり・鼻の上辺りに横一線に生じる 幼少期からあらわれ、思春期に色が濃くなりやすい |
肝斑 | ホルモンバランスの乱れ | 境界が不明確のモヤモヤとしたシミ・頬骨〜両頬に左右対称に広がる 30代〜40代の女性に多い |
炎症後色素沈着(PIH) | 物理的刺激 | 炎症後の赤みが引いたあとに茶色くなる 顔だけではなく、体中にできる 肌のターンオーバーによって消失する |
ADM(対称性真皮メラノサイトーシス) | 不明 | あざの一種 頬骨や下まぶたに、斑点状または地図状のシミが左右対称に広がる 褐色や灰褐色、紫褐色など色味はさまざま 20代からあらわれることが多い |
シミ取りレーザーの仕組み
シミ取りレーザーに使われるレーザー光線には、黒い色に反応する特性があります。
そのため肌に照射すると、レーザーの熱エネルギーが肌内部にあるメラニン色素を破壊します。
そして、破壊されたメラニン色素は、肌のターンオーバーに合わせて肌表面に押し出されてカサブタとなり、やがて剥がれ落ちます。
これがレーザーによってシミが改善する仕組みです。
シミの大きさや濃さ・レーザーの種類などによって必要な施術回数は異なりますが、ピンポイントで気になるシミに照射できるため、短期間での改善効果が期待できます。
また、レーザー光線はメラニン色素がある異常細胞のみに反応し、肌表面やほかの細胞を傷つけるリスクはほとんどありません。
シミ取りレーザーの種類を比較
シミ取りレーザーにはさまざまな種類があり、特徴や期待できる効果が異なります。シミのタイプや状態に合わせて、最適なものを選びましょう。
ここでは、代表的な5種類の治療法を紹介します。
レーザーの種類 | 特徴 | 効果的な症状 |
ピコスポット | 高い出力でピンポイントに照射する 1回の照射で高い効果が期待できる | 老人性色素斑 炎症後色素沈着 ADM |
ピコトーニング | 弱い出力のレーザーを、短時間で広範囲に照射する ダウンタイムが短く、さまざまな美肌効果が期待できる | 老人性色素班 そばかす 肝斑 |
レーザートーニング | 真皮層まで届く波長の長いレーザーを、シャワーのように照射する 低出力で照射するため肌への負担が少ない | 老人性色素班 そばかす 肝斑 |
Qスイッチレーザー | 短時間に高エネルギーのレーザーを照射する ピンポイントでシミの改善が可能 | 老人性色素斑 そばかす |
フォトシルクプラス | 複数の波長を持つ光エネルギーを広範囲に照射する レーザーよりも肌への負担が少ない | 老人性色素斑 そばかす 肝斑 炎症後色素沈着 |
ピコスポット
ピコレーザーを用いて、高出力でシミにピンポイント照射する治療法です。
ピコとはレーザーを照射するスピードを表し、一般的なレーザーよりも格段に短いピコ秒(1兆分の1秒)で照射できます。
短時間の照射で済むため、肌への負担や痛みを軽減できるのが特徴です。
シミ・そばかす改善のほか、ホクロやタトゥー除去の治療にもよく用いられます。
ピコトーニング
ピコスポットと同様、ピコレーザーのモードのひとつです。低出力のレーザーを、顔全体に照射。
とくに、薄く広範囲に広がるそばかすや肝斑・くすみの治療に適しています。
肌への負担が少ないため、痛みや照射後の赤み・腫れなどが少なく、ダウンタイムはほとんどありません。
ただし、マイルドなパワーで少しずつシミを改善していく方法のため、ピコスポットに比べると即効性は劣ります。
シミの状態に合わせて、回数を重ねる必要があるでしょう。
レーザートーニング
肌の奥深くにある真皮上層まで届く波長の長いレーザーを、シャワーのように照射する方法です。
シミやくすみ改善に加えて、コラーゲンの生成を促すため、毛穴の引き締めやハリ・弾力アップなどさまざまな美肌効果も期待できます。
従来のレーザートーニングは、肝斑へ照射するとメラノサイトが刺激されて、逆に悪化してしまうリスクがありました。
しかし近年では、QスイッチYAGレーザーなどを用いてより低出力で照射が可能となり、肝斑へも効果的にアプローチできます。
Qスイッチモード
QスイッチYAGレーザーやQスイッチルビーレーザーなどの機器に備わっているモードのひとつです。
短い照射時間で高いエネルギーを与え、部分的にシミを改善します。
深達度の高い波長を持つため、皮膚の深い部分にあるシミにも効果を発揮する点がメリットです。
ピンポイントのシミやそばかすを取り除きたい方に適しています。
フォトシルクプラス
広域の波長を持つ「光治療」のひとつです。
従来のIPLと呼ばれる光エネルギーよりもメラニン粒子の分解作用に優れた、UPLを用いてシミやそばかす・色素沈着を改善します。
また、真皮層に働きかけてコラーゲンを生成するため、肌質改善効果も期待できます。
光治療は、レーザー治療よりも肌への負担やダウンタイムが少ない点が特徴です。
治療後すぐにメイクが可能で、日常生活にも支障をきたしません。リスクを抑えながら、シミだけではなく総合的な美肌効果を得たい方におすすめです。
最新の光治療機器「ルクセア(LUXEA)」について
新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニックでは、シミ取り治療として、フォトシルクプラスをさらに進化させた美白治療器「ルクセア(LUXEA)」を導入しています。
ルクセアは、優れたメラニン粒子分解作用を持ち、従来の光治療では反応しにくかった薄いシミにも高い効果を発揮。
また、シミ・そばかす改善のほか、ニキビやニキビ跡・赤ら顔の改善、毛穴の引き締め、肌全体のトーンアップなど、さまざまな美肌効果が期待できます。
肌へのダメージが大幅に軽減され、やけどのリスクもほどんどありません。レーザー治療後のダウンタイムが心配な方にも最適な治療法です。
施術の主な副作用・リスク
・弱いかゆみを感じることがあります
・施術後一次的な反応として赤みがでることがあります
・肌質、日焼けの具合などによっては、火傷状態になることがあります
シミ取りレーザーの費用・料金相場
上記で紹介したレーザー5種類の費用相場は、以下の通りです。
レーザーの種類 | 費用相場(1回) |
ピコスポット(1スポット) | 1万〜5万円 |
ピコトーニング(顔全体) | 1万〜3万円 |
レーザートーニング(顔全体) | 1万〜3万円 |
Qスイッチレーザー(1スポット) | 1万〜3万円 |
フォトシルクプラス(顔全体) | 2万〜5万円 |
シミ取りレーザーにかかる費用は、クリニックやレーザーの種類ごとに異なります。シミ取り治療は基本的に美容目的となるため、保険の適用がありません。
また、シミの種類や大きさ・数などによっても、費用に大きな差が出てきます。
さらに、1回でシミが取れる方もいれば、一定のペースで5回〜10回ほど施術を受ける必要がある方もいます。
とくに顔全体に照射を行う「ピコトーニング」「レーザートーニング」「フォトシルクプラス」は、複数回照射を重ねる必要があるでしょう。
詳しい費用と施術回数については、カウンセリングで確認してください。
経過とアフターケア
シミ取りレーザーの経過は、レーザーの種類やシミの状態により異なります。以下は、レーザー照射後の経過の一例です。
- 治療直後:照射部位に赤みや腫れがでる
- 2〜3日後:かさぶたができる
- 1週間〜2週間後:かさぶたが剥がれ落ち、新しくピンク色の皮膚ができてシミが薄くなる
多くの場合、レーザー照射から数日でシミ部分がかさぶたになります。高出力のレーザーほど、赤みやかさぶたは目立ちやすいです。
かさぶたができたら、できるだけ触らないようにして、自然に剥がれ落ちるのを待ちましょう。
また、紫外線や摩擦は色素沈着を招く原因となります。十分な紫外線対策に加えて、肌に刺激を与えないように注意してください。
通常かさぶたが取れると、ピンクや赤みがかった皮膚が新しくあらわれ、肌のターンオーバーとともに、3ヶ月ほどかけて徐々に正常な肌に戻っていきます。
照射した部位が赤いままだと不安に感じるかもしれませんが、しばらくは様子をみましょう。
レーザー照射後に炎症性色素沈着が生じる場合も
炎症後色素沈着は、皮膚がケガややけどなどによってダメージを受け、炎症が起こった後、一時的に生じるシミです。
シミ取りレーザーを受けた2週間~3週間後に、この炎症性色素沈着ができる場合があります。
レーザー照射後の炎症により、メラノサイトが活性化することが原因です。
レーザーの出力が高すぎたり、施術後のアフターケアが不十分であったりすると、炎症後色素沈着が起こりやすいと言われています。
ただし、十分なアフターケアや適切な出力であったとしても一定確率では起こります。
炎症性色素沈着が生じると、治療前よりもシミが濃く見える可能性がありますが、多くの場合は約3ヶ月~6ヶ月で自然に消え、通常の肌に戻っていきます。
シミ取りレーザーのデメリットはある?
安全性にすぐれ、高い効果が期待できるシミ取りレーザーですが、以下のような副作用やリスクがあることも把握しておきましょう。
ダウンタイムがある
レーザー照射後は肌がやけどした状態であり、赤みやかさぶたができるなど一定期間のダウンタイムが生じます。
シミの種類によっては、保護テープを患部に貼る必要があるため、見た目が気になってしまうかもしれません。
日常生活に支障をきたすケースは少ないですが、炎症が治まるまでは、違和感があることを理解しておきましょう。
痛みを伴う
レーザーの種類によっては、照射時に多少の痛みを伴います。痛みの感じ方は人によってさまざまですが、一般的には「ゴムで弾かれたようなパチンとした痛み」と表現されます。
また、照射後も数時間〜数日は、ヒリヒリとした痛みが残る場合もあるでしょう。
耐えられないほどの痛みを感じるケースは滅多にありませんが、辛いと感じるときは医師に相談してください。
よくある質問Q&A
シミ取りレーザーの治療に関して、よくある質問をまとめました。
- 効果実感までに何回施術が必要ですか。
- 「レーザー後、シミが濃くなった」という声があり心配です。
- 妊娠中・授乳中にシミ取りレーザーを受けられますか。
- 皮膚科でのシミ取りレーザーは保険適用ですか。
- またシミが出てくる可能性はありますか。
効果実感までに何回施術が必要ですか。
1スポットに対して照射するレーザーは基本的に一度の治療で終わります。一方、顔全体に照射するタイプの治療は5~10回程度、複数回の照射が必要です。
効果のあらわれ方は個人差が大きく、何回施術が必要かは一概には言えません。
シミ取りレーザーの種類によっても必要な施術回数は変わってくるため、カウンセリングで診断を受けたうえで確認してください。
「レーザー後、シミが濃くなった」という声があり心配です。
シミが濃くなる主な原因としては、炎症後色素沈着が考えられます。
レーザー照射によってメラニンを生成する細胞が活性化し、治療前よりもシミが濃くなってしまうのです。
レーザー照射後の炎症後色素沈着は、ほとんどの場合、時間の経過とともに消失していきます。
もし炎症後色素沈着によりシミが濃くなってしまった場合、以下のような対策を行うことで、悪化を防ぎ、回復を早められる可能性があります。
- 紫外線対策
- 保湿
- 食生活の改善
- 適度な運動
- 十分な睡眠
シミのある部分に刺激を与えないよう十分に注意するとともに、生活習慣を見直してみましょう。
妊娠中・授乳中にシミ取りレーザーを受けられますか。
妊娠中や授乳中は、ホルモンバランスが大きく変化しています。
そのためレーザーを照射すると、肌トラブルが生じたり、シミが濃くなったりするおそれが。
また、レーザー照射時の痛みやストレスによる身体への影響も心配です。
シミ取りレーザーの治療は、ホルモンバランスが安定する授乳後に開始しましょう。
皮膚科でのシミ取りレーザーは保険適用ですか。
ただし、以下のような症状に当てはまる場合は、保険治療が認められる可能性があります。
- 太田母斑(おおたぼはん)
- 扁平母斑(へんぺいぼはん)
- 異所性蒙古斑(いしょせいもうこはん)
- 外傷性色素沈着
これらは、シミというよりはアザに分類されます。通常のシミと似ているものもあり、判断が難しいため、まずは専門医の診断を受けてください。
またシミが出てくる可能性はありますか。
シミ取りレーザーの治療では、メラニン色素を破壊してシミを改善していきますが、メラニンの生成元であるメラノサイトを破壊することはできません。
そのため、外部刺激やホルモンバランスの乱れなどによって、メラノサイトが刺激されれば、新たにメラニンが生成されてシミができてしまいます。
できるだけ再発を防ぐためにも、普段から紫外線や肌の乾燥に気をつけて、アフターケアを心がけましょう。