肥満治療薬として保険適用可能な「ゼップバウンド」はどれくらい効果があるのか

皆さん、日本で保険適用可能な肥満治療薬(痩せ薬)があるのはご存知でしょうか。
ダイエット外来で出されている治療薬としては、「リベルサス」「オゼンピック」、最近では「マンジャロ」などがありますが、どれも2型糖尿病に対しての治療薬として承認されているため、処方してもらう場合は、自由診療(保険が適用されない診療)となっています。
自由診療でお薬をもらう場合、保険診療でのお薬がもらえなかったり(混合診療)、価格が高かったり(相場を調べる手間がある)と、色々不便に感じる方も多いのではないでしょうか。

肥満治療薬として日本で承認されている「ゼップバウンド」というお薬があります。
この薬は肥満治療薬として承認されているため、適応外処方にならない。つまり、肥満治療薬として保険適用が可能なお薬となります。
では、ゼップバウンドは一体、どういう薬なんでしょうか、また、肥満治療薬として保険適用で出してもらうにはどのようにすれば良いのでしょうか。
今回は、その辺りを深掘りしていこうと思います。

この記事の執筆者

石川 聡司
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)

北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。品川美容外科にて美容外科医として3年間の研鑽を積み、2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。

婦人科全般の診療のほか、美容医療では美肌治療、美容整形をはじめ脱毛・アートメイクなど幅広く対応する。

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目次

ゼップバウンドとは?

ゼップバウンド(Zepbound)」は、2023年にアメリカ食品医薬品局(FDA)により肥満症治療薬として承認された医薬品です。
そして日本でもゼップバウンドが2025年3月19日に薬価収載され注目を集めています。

ゼップバウンドは「GIP/GLP-1受容体作動薬」と呼ばれる新しいタイプの薬です。

Dr.石川

このフレーズ、どこかで聞いたことありませんか?
そうです。ゼップバウンドの成分は「チルゼパチド」という成分でして、用量、用法が、今SNSで話題の「マンジャロ」と全く同じ成分となっております。

なぜゼップバウンドは保険適用可能でマンジャロは自由診療になるのか

ゼップバウンドとマンジャロの唯一の違いは「適応症と目的」です。
マンジャロは「2型糖尿病」の治療薬である一方、ゼップバウンドは「肥満症」に対して使える薬剤として承認されています。

Dr.石川

お薬を保険適用させる場合、適応症が合致していないといけません。これは保険診療の鉄則です。

ゼップバウンドとマンジャロの価格差

マンジャロとゼップバウンドの薬価収載価格(税込)を比較してみます。

用量ゼップバウンドマンジャロ
2.5mg3,067円1,924円
5.0mg5,797円3,848円
7.5mg7,721円5,772円
10mg8,999円7,696円
12.5mg10,180円9,620円
15mg11,242円11,544円
Dr.石川

この表を見て、おや?っと思いませんか?
なんと、薬価はマンジャロの方が安いんです。
同じ成分のお薬なのに、適応症が違うだけでこんなに価格差が出てしまうんですね。
保険適用する薬の場合、適応対象が非常に多すぎる問題(太っている人が沢山いる)と生活習慣病=自己責任」的な思想が背景にあることが価格決定因子に含まれているものと思われます。

ゼップバウンドとマンジャロに価格差があるのはこんな理由

適応対象が非常に多すぎる問題(財政インパクト)

  • 肥満の人口は膨大(BMI 25超の人は日本人でも約2,000万人以上)
  • もし薬での「肥満治療」が保険適用されると、一気に何百万人単位が治療対象になる可能性
  • → 医療財政がパンクするリスクが現実的にある

「生活習慣病=自己責任」的な思想が背景にある

  • 日本では、肥満は「生活習慣の問題」=自己責任とされがち
  • → そのため、「薬で治す」ことに税金(保険財源)を使うことに国民の理解が得にくい
  • 糖尿病や高血圧などは「病気」として認知されているが、「肥満」はまだそのレベルにないと扱われやすい

現時点では肥満治療の「標準治療」にまだ組み込まれていない

  • 日本の医療制度では、「標準治療」に組み込まれたものだけが保険適用されやすい
  • 肥満治療はまだ「まずは食事・運動療法」が第一選択で、薬物療法は最終手段という位置づけ
  • → 「ゼップバウンド」のような強力な薬は、最終手段であるにもかかわらず魅力が強すぎる(=使いたい人が多すぎる)

美容目的との線引きが難しい

  • 医学的な肥満(BMI ≥ 30 など)と、美容的なダイエット目的との境界があいまい
  • 「本当に医療目的か?」の判断が難しいため、不適切な使用を制御できないリスクがある
  • 保険適用になれば、「美容目的だけど保険で痩せたい人」が急増する可能性

⑤(医療側視点)「本当に安全か?」という慎重な姿勢

  • チルゼパチドのような薬はまだ新しく、長期安全性のエビデンスが不十分
  • 特に、肥満治療では健康な人(合併症がない)にも使われる可能性がある
  • 「病気じゃない人」に新薬を投与するリスクが高いという考え方

ゼップバウンドの保険適用の基準とは?

ゼップバウンドは適応症となる「肥満症の基準等」を満たしていれば保険(一般的に3割負担)で処方が可能ですが・・

単なるダイエット目的では使えない他、肥満症の基準がかなり厳しいのが現実です。

ゼップバウンドの保険適用条件

高血圧症、脂質異常症、または2型糖尿病のいずれかを有する肥満症がある
 +食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない
 +BMIが35 kg/m2以上

肥満に関連する以下の健康障害が2つ以上ある
 +BMIが27 kg/m2以上

・耐糖能障害 (2型糖尿病、耐糖能異常)
・脂質異常症(高脂血症)
・高血圧症
・高尿酸血症(痛風も含む)
・冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)
・脳梗塞または一過性脳虚血発作
・非アルコール性脂肪性肝疾患
・月経異常または女性不妊
・閉塞性睡眠時無呼吸症候群または肥満低換気症候群
・運動器疾患(変形性関節症:膝・股関節・手指関節、変形性脊椎症)
・肥満関連腎臓病

Dr.石川

そもそも、2型糖尿病であれば、薬価の安いマンジャロが保険適用されます。
高脂質症と高血圧症は肥満の方であればなんとかクリアできるレベルの適応条件です。

肥満症治療に関連する学会(日本内分泌学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会)の専門医が常勤している教育研修施設であること

Dr.石川

私たちクリニックにとっては、この「教育研修施設であること」の適応条件が致命傷となっています。

教育研修施設まである病院となるとほとんどが「大学病院」や「中~大規模の医療機関」に限られますので、個人開業での小さなクリニックで保険適用としての取り扱うにはまだまだ高いハードルがあります。

結局のところ、肥満治療薬として使用するには自由診療になるのか

現時点(2025年7月)では、肥満治療薬としてマンジャロやゼップバウンドを使うには「自由診療」扱いになると思っていただいた方がよろしいです。

マンジャロとゼップバウンドは成分が全く同じのため、薬価の安いマンジャロを自由診療で処方してもらうのが一番の近道だと思います。
ただ、治療が難しいとされる「肥満症」に対し、GIP・GLP-1受容体作動薬の「ゼップバウンド」が新しい治療の選択肢として加わることは肥満による健康障害や合併症の予防という観点でもいいことだと思います。 

特に、高い体重減少効果は、ゼップバウンドの臨床試験において明確に証明されております。

ゼップバウンドの効果

ゼップバウンドは、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体だけでなく、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)受容体にも作用する二重作動薬です。この作用により、単一のGLP-1作動薬よりも強力な体重減少効果を示します。

  • GLP-1受容体作動効果:食欲抑制、胃排出遅延、血糖値改善
  • GIP受容体作動効果:インスリン分泌補助、脂肪代謝促進、エネルギー消費増加

週1回の皮下注射

長時間作用型であるため、1週間に1回の自己注射で効果が持続します。

肥満関連疾患への多面的効果

体重減少に加え、糖尿病予防、脂肪肝の改善、心血管リスクの低減など多面的な効果が期待されています。

臨床試験結果と体重減少効果

ゼップバウンドの体重減少効果は、複数の大規模臨床試験(SURMOUNT試験)で検証されました。

SURMOUNT-1試験(肥満患者対象)
試験期間:72週間(約1年4か月)
被験者:BMI30以上の肥満患者およびBMI27以上で肥満関連疾患を有する患者

結果
5mg投与群:体重が平均約15%減少
10mg投与群:体重が平均約20%減少
15mg投与群:体重が平均約22.5%減少

SURMOUNT-OSA試験(肥満を伴う睡眠時無呼吸症候群患者対象)
試験期間:52週間

結果
体重減少:平均18%
無呼吸低呼吸指数(AHI)の大幅な改善が確認され、睡眠の質が向上しました。

Dr.石川

これらの結果から、ゼップバウンドは従来のGLP-1受容体作動薬(例:セマグルチドの約15%減)を上回る強力な体重減少効果を持つことが示されました。

ゼップバウンドの主な副作用

  • 主な副作用
    • 消化器症状(吐き気、嘔吐、下痢、便秘):初期に多く見られますが、継続することで軽減します。
    • 食欲不振:効果の一環ですが、過度な摂食制限には注意が必要です。
    • 低血糖:糖尿病治療薬との併用時に発生する可能性があります。
  • 重篤な副作用(稀)
    • 急性膵炎

今回はGLP-1注射薬についての解説記事ですが、注射薬と同じ効果が見込まれる「内服薬」をオンライン診療で処方してもらえるクリニックをご紹介させていただきます。
注射薬を始める前に、手軽で安価な内服薬からダイエットを始めてみるのはいかがでしょうか?

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ゼップバウンドの使用方法

ゼップバウンドは、週1回、皮下注射で投与する肥満症治療薬です。
2.5mgから開始し、4週間ごとに2.5mgずつ増量し、最大15mgまで調整可能です。
投与曜日は毎週同じにし、注射部位は腹部(おへそから5cm以上離れた左右側腹部や下腹部)が推奨されています。

使用方法の詳細

  1. 初回投与:週1回、2.5mgから開始します。
  2. 増量:4週間ごとに2.5mgずつ増量し、最大15mgまで調整します。
  3. 投与頻度:週に1回、同じ曜日に注射します。
  4. 注射部位:腹部(おへそから5cm以上離れた左右側腹部や下腹部)に注射します。
  5. 注射方法:ペン型注入器を肌に当て、ボタンを押すだけで投与が完了します。
  6. 注射忘れ:次回投与までの期間が3日間以上であれば、気づいた時点で直ちに投与します。3日間未満であれば、次のあらかじめ決めた曜日に投与します。
  7. 減量:副作用が強い場合は、医師の指示に従い、減量することも可能です。

その他

  • 必ず医師の指示と添付文書に従って使用してください。
  • 自己注射が不安な場合は、医師や看護師に相談してください。
  • オンライン診療でも処方を受けることが可能です。

注意点

  • 注射部位は毎回変えるようにしましょう。
  • 2回分を一度に注射してはいけません。
  • 医師の指示なしに、注射を止めないでください。
  • 副作用が気になる場合は、医師に相談してください。

ゼップバウンドのよくある質問

ゼップバウンドとは何ですか?

ゼップバウンドは、GLP-1とGIPという2つのホルモンに作用する新しいタイプの肥満症治療薬です。体重減少効果が期待でき、2024年に日本でも承認されました。

ゼップバウンドはどのような人が使えますか?

高血圧、脂質異常症、または2型糖尿病のいずれかを有する肥満症で、食事・運動療法を行っても十分な効果が得られない20歳以上のうち、高度肥満症(BMI≧35 kg/m2)、もしくはBMI≧27 kg/m2で肥満に関連する健康障害を2つ以上有する方が対象となります。

ゼップバウンドの効果はどれくらいで現れますか?

個人差はありますが、早い方では数週間で食欲の変化や体重減少が現れ始めます。臨床研究では、約1年で体重の15~20%減少が期待できるという結果が出ています。

ゼップバウンドの副作用はありますか?

最も多いのは吐き気、下痢、便秘などの消化器系の副作用です。多くの場合、治療開始直後や用量を増やす段階で出やすい傾向がありますが、徐々に慣れていくことが多いです。

ゼップバウンドは保険適用ですか?

ゼップバウンドは2025年より、一定の適応症に限り保険適用となりました。

ゼップバウンドの注射は痛いですか?

注射針は非常に細いため、慣れた方は「ほとんど痛くなかった」と話されています。

ゼップバウンドの注射は自分でできますか?

はい、ご自身で注射できます。注射器は使い切りタイプで、操作も比較的簡単です。

ゼップバウンドを途中でやめるとリバウンドしますか?

急にやめると一時的に体重が戻る可能性はあります。薬だけでなく、生活習慣の見直しと並行して続けることがリバウンド防止のカギとなります。

ゼップバウンドとウゴービの違いは何ですか?

ウゴービはGLP-1というホルモンのみに作用する薬ですが、ゼップバウンドはGLP-1とGIPという2種類のホルモンに作用する点が大きな違いです。

ゼップバウンドとマンジャロの違いは何ですか?

ゼップバウンドは肥満症患者の体重管理を目的として承認されており、マンジャロは2型糖尿病治療を主な目的としています。

まとめ

ゼップバウンドとは何か――新たな肥満治療薬の登場とその意味

現代において、肥満は単なる見た目の問題にとどまらず、高血圧や糖尿病、脂質異常症、さらには心疾患や脳血管疾患といった命に関わる病気の大きなリスク要因であることが知られています。これまで肥満に対しては、食事療法や運動療法といった生活習慣の改善が中心的な治療として推奨されてきましたが、現実にはなかなか効果を得ることが難しい人も多く、減量が長続きしない、あるいはリバウンドを繰り返すといった悩みを抱える人が後を絶ちません。そうした中、医療の現場では「薬で痩せる」という新たなアプローチが注目されるようになってきました。

その最前線にあるのが、「ゼップバウンド(Zepbound)」と呼ばれる新しい肥満治療薬です。アメリカの製薬会社イーライリリー社が開発したこの薬は、2023年11月に米国食品医薬品局(FDA)によって、成人の肥満症治療薬として正式に承認されました。従来の糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬を発展させた「GIP/GLP-1デュアル受容体作動薬」という新しいカテゴリーに属するゼップバウンドは、これまでの肥満治療薬とは一線を画す大きな体重減少効果を持つとされています。

ゼップバウンドの主成分は「チルゼパチド(tirzepatide)」という物質で、これはもともと糖尿病治療薬として開発され、すでに「マンジャロ(Mounjaro)」という製品名で世界各国で使用されています。チルゼパチドは、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)とGIP(胃抑制ポリペプチド)という2種類の消化管ホルモンに同時に作用する特徴を持っています。GLP-1は、食後に分泌されてインスリンの分泌を促進し、同時に胃の動きを遅らせて満腹感を長く維持させるホルモンです。一方、GIPも同様にインスリン分泌を助け、脂質代謝に影響を与えることが知られています。

これら二つのホルモンに同時に働きかけることで、ゼップバウンドは単一のGLP-1製剤よりも高い体重減少効果を発揮すると考えられています。実際、米国で行われた臨床試験(SURMOUNT-1試験)では、ゼップバウンド15mgを週1回投与された患者群で、平均して体重の22.5%の減少が確認されました。これは従来の肥満治療薬であるGLP-1製剤(例:セマグルチド製剤のウゴービ)よりも明らかに高い効果です。

このような結果から、ゼップバウンドは「薬でここまで痩せられるのか」という驚きを持って受け入れられ、多くの医療関係者や肥満症患者から期待を集めています。実際、BMIが30以上の肥満の人にとって、10%以上の体重減少は糖尿病の発症予防や脂質異常、高血圧の改善に明確な効果をもたらすとされており、ゼップバウンドの22%という数値はまさに画期的といえるものです。

しかし、こうした効果の裏で、いくつかの課題や懸念も存在しています。特に注目されるのが、日本での保険適用の問題です。ゼップバウンドは、アメリカでは「肥満症」を適応症として正式に保険適用が認められていますが、日本ではまだ未承認であり、使用するには「自由診療」扱いとなるのが現状です。一方、同じチルゼパチドを成分とする「マンジャロ」は2024年に日本で承認されており、2型糖尿病治療薬として保険適用されています。つまり、日本国内で同じ成分を使った薬であっても、使用目的が「糖尿病」であれば保険が使えますが、「肥満治療」であれば全額自己負担になるという不均衡が存在しているのです。

なぜこのような違いが生まれるのでしょうか。その背景には、医療制度や国の財政、そして肥満に対する社会的な見方の問題が複雑に絡んでいます。

まず、最大の理由は「対象患者数の多さ」です。日本においてBMI25以上の「過体重」や「肥満」に分類される人は、約2,000万人以上いるとされており、もしこの層のうちのごく一部でもゼップバウンドを保険で使用するようになれば、医療費が爆発的に膨れ上がる可能性があります。たとえば、月に1万円以上かかる薬を数百万人が保険で使うとなれば、それだけで年間数千億円規模の支出が増えることになり、国の医療財政への影響は計り知れません。

次に、肥満という状態に対する「自己責任論」も根強くあります。日本では、「肥満は食べ過ぎや運動不足が原因」「生活習慣の改善で治すべき」という考え方が根強く、医療として扱うことに対して否定的な意見も少なくありません。たとえ医学的には「肥満症」という明確な病気として定義されていても、それを「薬で治す」という行為にはまだ社会的な理解が追いついていないのが現実です。

さらに、美容目的と医療目的の線引きの難しさもあります。仮にゼップバウンドが保険適用されると、「本当に肥満症の人」だけでなく、「美容的に痩せたいだけの人」も対象に含まれてしまうリスクが出てきます。こうした事態を防ぐために、厳格な使用条件や医師の判断が求められますが、現場での対応には限界もあります。

また、チルゼパチドという成分は比較的新しい薬であり、その長期的な安全性については、今後さらにデータが蓄積されていく必要があります。特に健康な人(糖尿病がない人や重篤な合併症のない人)に対して長期間使用した際の副作用や体への影響については、まだ十分な知見が得られているとはいえません。吐き気や嘔吐、下痢といった消化器症状は比較的よく見られますし、まれに膵炎や胆嚢障害などの重篤な副作用の報告もあります。こうしたリスクをしっかりと説明し、納得を得たうえでの使用が求められるのは言うまでもありません。

このように、ゼップバウンドは非常に魅力的で効果の高い肥満治療薬である一方、制度面・倫理面・医療経済面の課題を抱えています。それでも、肥満症が医療介入の必要な疾患であることを多くの人が理解し、薬物治療の選択肢を正しく活用していくことができれば、将来的に日本でも保険適用への道が開けてくるかもしれません。

今後は、肥満という疾患に対して社会がどう向き合うのか、そして医療制度がどう変化していくのかが重要なテーマになります。生活習慣の改善だけでは限界がある人にとって、ゼップバウンドのような治療薬は大きな希望となる可能性を秘めています。薬に頼ることを批判するのではなく、医療の一つの手段として適切に評価し、活用する姿勢が今求められているのです。

Dr.石川

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

参考文献

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