「マンジャロ」と「リベルサス」。どちらもダイエットに効果がある薬として注目されていますが、その違いをご存知でしょうか?
※今回はダイエット用途に上記薬を使う場合に関しての記事です。糖尿病治療に関しては医師の判断となりますので、ご自身の主治医とご相談ください。
実は、どちらを選ぶか、また、薬を切り替える際には、いくつかの注意点があります。
「どちらが自分に合うのか?」、「薬を切り替えた場合、どんな影響があるのか?」と悩んでいる方は、この先を読むことで解決の糸口が見つかるかもしれません。
この記事では、マンジャロとリベルサスの違いを詳しく解説し、切り替え時に気を付けるべきポイントをわかりやすくお伝えします。
さらに、実際に切り替えを行った際の注意点や、よくある疑問にもしっかり答えます。
これを読めば、薬の選び方や切り替え方について自信を持てるようになり、あなたに合った最適な治療法を見つける手助けになるはずです。
マンジャロとリベルサスの違い
マンジャロとリベルサスの違いを以下の表にまとめました。
マンジャロ | リベルサス | |
---|---|---|
血糖降下作用 | 血糖値のコントロールが強力。インスリン分泌を促進し、血糖値を安定させる。 | 血糖値のコントロール効果は良好。インスリンの分泌をサポートし、血糖を下げる。 |
体重減少効果 | 強力な体重減少効果が期待できる。 | 体重減少効果があるが、マンジャロほど強くない。 |
使用方法 | 皮下注射、週1回の注射で済む。 | 飲み薬、毎日1回服用が必要。 |
効果の持続期間 | 1回の注射で効果が1週間続く。 | 毎日服用する必要があり、服用後効果が持続する。 |
副作用 | 消化器系の不調(吐き気、胃の不快感など)が出ることがある。 | 消化器系の不調(吐き気、食欲減退、下痢など)が報告される。 |
価格 | 保険適用時で比較的高価。 | 保険適用時で比較的高価。 |
痩せ始める期間 | 使い始めて1ヶ月以内に体重減少の兆しが見られることが多い。 | 使用開始から数週間で体重減少が現れることが多い。 |
次に、選ぶ際に参考にしていただきたい、それぞれのメリットとデメリットを紹介します。
マンジャロのメリットとデメリット
マンジャロ(一般名:チルゼパチド)は、2型糖尿病の治療薬として注目されているGLP-1受容体作動薬の一種です。特に、体重減少効果が高いことから、糖尿病治療だけでなく肥満治療の分野でも期待されています。
しかし、メリットが多い一方で、注射が必要であったり、副作用のリスクがあるなどのデメリットもあります。
ここでは、マンジャロの具体的なメリットとデメリットについて詳しく解説します。
メリット①体重減少の効果が高い
この薬のポイントは、食欲をコントロールする2つのホルモン(GLP-1とGIP)の働きを強めることにあります。
GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)とGIP(胃抑制ポリペプチド)は、もともと私たちの体内にあるホルモンで、食事をすると分泌される「満腹ホルモン」の一種です。これらは、次のような働きをします。
- 食欲を抑える:「お腹が空いた」と感じる回数を減らす
- 満腹感を持続させる:少量の食事でも、長時間満足できるようになる
- 血糖値を安定させる:糖の吸収を緩やかにし、急激な血糖値の上昇を防ぐ
マンジャロは、これらのホルモンの作用を人工的に強めることで、食事の量を無理なく減らし、長期間のダイエットをサポートします。
たとえば、こんな経験はありませんか?
✔ 「食べてもすぐにまたお腹が空いてしまう」
✔ 「甘いものがやめられない」
✔ 「夜になるとつい食べすぎてしまう」
これらは、脳が「食欲ホルモン(グレリン)」を過剰に分泌してしまうことで起こります。
マンジャロは、GLP-1とGIPの働きを強めることで、この「無駄な空腹感」を抑え、食事の量を自然と減らせるようにします。
実際に、マンジャロを使用した人の体重減少率は、平均で12~15%1)とされています。
これは、たとえば以下のような変化に相当します。
体重60kgの人 → 約7.2~9kgの減量
体重80kgの人 → 約9.6~12kgの減量
体重100kgの人 → 約12~15kgの減量
(※数値は海外の臨床試験データをもとにした平均値です。)
一般的な食事制限や運動だけでは、3~6ヶ月で体重の5%程度しか減らないことが多いため、マンジャロの減量効果は従来のダイエット方法の2~3倍に相当すると言われています。
「ダイエットを頑張っても思うように減らない」と感じている方には、マンジャロが一つの選択肢になるかもしれません。
メリット②血糖値の上昇を抑える作用が強い
マンジャロは、血糖値を下げるために、2つの働きをします。
① インスリンの分泌を助ける
マンジャロは、食事をしたときに膵臓から出るインスリンを増やすように作用します。これにより、糖が細胞にしっかり取り込まれ、血糖値がスムーズに下がるようになります。
たとえば、糖尿病の人が食事をした際、本来であればインスリンが足りずに血糖値が急上昇してしまいます。しかし、マンジャロを使うと「もっとインスリンを出して!」と膵臓に指令を出すため、血糖値の上昇を抑えることができます。
② 血糖値を上げるホルモン(グルカゴン)を抑える
実は、体内には血糖値を上げるホルモンも存在します。それが「グルカゴン」です。
グルカゴンは、主に空腹時に血糖値を維持するために働くホルモンですが、糖尿病の人はこのグルカゴンが必要以上に分泌されることがあり、食後の血糖値をさらに上げてしまうことがあります。
マンジャロは、この「不要なグルカゴンの分泌」を抑えることで、血糖値が急上昇するのを防ぎます。
デメリット①週1回の皮下注射が必要
注射という言葉を聞いただけで不安を感じる方も多いと思いますが、実際には自己注射用のペン型器具があり、自宅で簡単に注射することができます。
以下に、マンジャロ皮下注射のポイントをまとめます。
針が短く、痛みも少ない
個人差がありますが、マンジャロの注射は針がとても短く、痛みが少ないとされています。
自分で簡単に打てるペン型注射器
針を見なくても、ペンをお腹や太ももの皮膚に当ててボタンを押すだけで注射が完了します。針を見ずに注射ができるので、怖さを感じにくくなります。
初めての方でも注射指導などのサポートがあるケースも
初めて注射をする際は、クリニックで医師や看護師の指導を受けながら行うことも可能です。自宅で自己注射をする前に、サポートを受けて安心して始められます。
注射は初めてだと少し不安に感じるかもしれません。個人差があるものの、自己注射は慣れてしまうとそれほど難しくなく、負担にも感じにくくなるようです。
もし「注射がどうしても怖い」と感じる場合は、初めての注射をクリニックで医師や看護師の指導のもとで行うことも可能です。
その後は、自宅で自分で注射をしていけるようになります。慣れると、毎週1回の注射が、簡単に感じることが多いです。
デメリット②消化器症状などの副作用が強い
マンジャロは胃の動きを遅くする作用があります。具体的には、マンジャロは胃の中の食べ物を消化する速度を遅くし、食べた物が胃に長く留まるようにします。
この仕組みによって、食欲を抑えたり、食後の血糖値の上昇を抑える効果が期待されますが、その副作用として消化器系に不調が現れることがあります。
胃が重い:胃に食べ物が長く留まることで、消化が遅れ、満腹感が長時間続き、胃が重く感じることがあります。
吐き気:胃の動きが遅くなることで、食べ物が消化されにくくなり、吐き気を感じることがあります。
お腹がゆるい:消化がうまくいかず、便が軟らかくなったり、お腹が痛くなることがあります。
これらは、マンジャロが働きかける胃の動きの変化によるもので、薬を使い始めて最初の数週間に多く見られる症状です。
症状が強い場合は医師に相談しましよう。また、体調が改善するまで、無理せず少しずつ体を慣らしていくことが大切です。
リベルサスのメリットとデメリット
リベルサス(一般名:セマグルチド)は、GLP-1受容体作動薬の中でも、初めて経口薬(飲み薬)として開発された薬です。
マンジャロのような注射薬と比べると手軽に始められる一方で、体重減少効果はやや劣るなどの特徴があります。
ここでは、リベルサスのメリットとデメリットについて詳しく解説します。
メリット①比較的安価で、内服のみのため始めやすい
リベルサスは飲み薬タイプで、錠剤として提供されます。これが、リベルサスを試しやすい大きな理由です。注射が苦手な方にとって、注射を避けられる点は安心できます。
特に、糖尿病治療薬や体重管理薬においては、毎日の注射が負担になりがちですが、リベルサスなら毎日1回の服用だけで済むため、非常に手軽です。
例えば、忙しい日常を送っている方や、仕事で時間が限られている方にとっても、リベルサスは他の薬と一緒に飲むだけというシンプルな方法なので、生活に取り入れやすいです。
毎朝、食事の前に水で飲むだけでOKという点は、大きなメリットと言えるでしょう。
メリット②血糖値の上昇を抑える作用がある
リベルサスは、糖尿病の治療薬として血糖値のコントロールに非常に効果的です。血糖値は、食事を摂ることで上昇しますが、リベルサスは食後の血糖値の急激な上昇を抑える働きがあります。これは、リベルサスがインスリン分泌を促進するためです。
インスリンというのは、血糖値を下げるホルモンで、膵臓(すいぞう)から分泌されます。糖尿病の方はインスリンの分泌が不足しているため、血糖値が高くなりがちです。
リベルサスは、インスリン分泌を助けることで、血糖値を安定させます。また、食後の血糖値が急激に上昇することを防ぎ、長期的に見ると、血糖値のコントロールが安定しやすくなるというメリットがあります。
デメリット①体重減少効果があるが、マンジャロよりは弱い
リベルサスは、体重を減らす効果も期待されている薬ですが、マンジャロほど強い体重減少効果はないとされています。体重減少を期待している方にとっては、この点が少し物足りなく感じるかもしれません。
リベルサスを使った場合、体重が平均して5〜8%減少するとされています1)。例えば、体重が80kgの人であれば、4〜6.4kgの減量が見込めます。この数値は、マンジャロと比べると若干控えめです。
薬の種類 | 体重減少率 | 特徴 |
リベルサス | 5〜8% | 飲み薬で簡単に始められるが、体重減少効果はやや控えめ |
マンジャロ | 10〜15% | 皮下注射が必要だが、強い体重減少効果が期待できる |
リベルサスの体重減少効果は確かにありますが、マンジャロのように一度に大きな変化を求める場合には物足りないと感じることもあるでしょう。
ただし、食事や運動と組み合わせることで、より効果的に体重管理ができる可能性はあります。
デメリット②消化器症状などの副作用がある
リベルサスは服用方法に少しルールがあります。これを守らないと十分な効果が得られにくくなるため、少し注意が必要です。
リベルサスは空腹時に飲むこと、つまり、朝起きたらすぐに飲むのが理想です。また、服用後30分間は飲み物や食べ物を控える必要があります。
このルールを守らないと、リベルサスの効果が十分に発揮されないことがあります。
マンジャロからリベルサスに切り替える際の注意点
マンジャロからリベルサスに切り替えることを考えている方、ちょっと不安や疑問もあるかもしれませんね。しかし、少しだけ注意すべきポイントを知っておけば、スムーズに切り替えることができますよ。
ここでは、リベルサスに切り替える際に気をつけておきたいことを、わかりやすくお伝えします。ちょっとしたコツを知って、より健康的に生活できるようにしていきましょう。
血糖値が上がる可能性がある
マンジャロを使っていた時は、血糖値がしっかり下がっていると感じていた方も多いかもしれません。しかし、リベルサスに切り替えると、血糖値のコントロールが少し難しくなる可能性があります。
リベルサスは血糖値を下げる効果がありますが、マンジャロほど強力ではありません。特に、食後の血糖値が上がりやすくなることがあるので、「あれ?血糖値が少し高くなったかも?」と感じることもあります。
もし血糖値が思うようにコントロールできないと感じたら、食事や運動を見直すのがポイントです。例えば、食後に散歩をして血糖値を下げる、野菜を増やして糖質を減らすなどの工夫をすることで、リベルサスでもしっかりと血糖値を管理することができます。
気になる場合は、すぐに医師に相談して調整してもらいましょう。
・食後の散歩で血糖値を下げる
・野菜を増やして糖質を減らす
体重増加する可能性があるため、食事や生活を見直す必要がある
マンジャロを使って体重が減った方も多いと思いますが、リベルサスに切り替えると、体重の減少がやや控えめになることがあります。
リベルサスでも体重は減少しますが、マンジャロほどの効果はないので、体重が少し増えやすくなるかもしれません。特に、食事内容や運動習慣がそのままだと、体重が増加してしまう可能性があります。
食事や運動を少し工夫することで、体重の管理は十分にできます。
例えば、こんなことを心がけてみましょう:
- 食事の見直し:糖質を控えめにし、野菜やたんぱく質を中心にした食事を摂るようにする。
- 運動を増やす:毎日の散歩や軽いジョギングなど、少しだけ運動を取り入れてみる。
これらを実践することで、リベルサスでも健康的な体重管理が可能になります。
正しい服薬方法を守る
リベルサスを使う際には、服薬方法をしっかり守ることが大切です。特に、薬の効果を最大限に引き出すためには、服用のタイミングや方法に気をつける必要があります。
リベルサスを服用する際、基本的には空腹時に服用することが推奨されています。食事の前に服用することで、薬の効果をしっかりと得ることができます。
また、服用後は30分間は飲食を控えるようにしましょう。この時間を守ることで、薬の効果がちゃんと発揮されます。
もし服薬を忘れてしまった場合は、次の服薬時にまとめて飲むのはNGです。忘れた分は、次回の服用時にそのまま服用しましょう。
リベルサスからマンジャロへ切り替える際の注意点
リベルサスからマンジャロに切り替えることで、糖尿病のコントロールがさらに強化されると期待する方も多いでしょう。
しかし、切り替えにはいくつか注意すべきポイントがあります。特に、マンジャロは注射薬であるため、使用方法や副作用についてよく理解しておくことが大切です。
ここでは、リベルサスからマンジャロに切り替える際の注意点を詳しくご紹介します。
低血糖になりやすい
マンジャロは、インスリン分泌を促進して血糖値を下げる働きがあります。そのため、特に食事の量が少ない時や運動を過度に行った場合、血糖値が急激に下がりすぎる「低血糖」を起こすリスクが高くなります。
リベルサスでは比較的血糖値が緩やかに調整されるため、低血糖のリスクはそれほど高くありませんが、マンジャロに切り替えた場合は注意が必要です。
低血糖を防ぐためには
- 食事を抜かない:食事の間隔が空きすぎないように、定期的に食べることが大切です。
- 運動前後に血糖値をチェック:運動前や後に血糖値を確認し、必要に応じて軽食を摂るようにしましょう。
- 低血糖の症状に気をつける:ふらつきや汗をかく、手の震えなどの低血糖の症状に気づいたら、すぐに砂糖やジュースなどで対処しましょう。
これらの予防策を取ることで、低血糖を防ぎつつマンジャロの効果を最大限に活用できます。
副作用が強く出る場合がある
マンジャロには副作用があることが知られています。特に最初のうちは、吐き気やお腹の不快感、下痢などの消化器系の症状が現れることがあるため、切り替え直後は特に注意が必要です。
リベルサスでは、比較的副作用が穏やかだった方も、マンジャロではそれが強く感じることもあるので、最初のうちは少し不安に感じるかもしれません。
- 少量から始める:マンジャロの服用を始めるときは、少量からスタートし、徐々に量を増やしていくことで、副作用の強さを軽減できます。
- 食事と一緒に服用:食後に服用すると、消化器系への負担が軽減される場合があります。
- 水分をしっかり取る:体調に合った水分を摂取することで、便通や消化不良の症状を和らげることができます。
最初は不安な症状が出るかもしれませんが、これらの対策を実践することで、スムーズに体が馴染んでいくことが多いようです。
皮下注射で痛みや内出血が出ることがある
マンジャロは注射薬であるため、注射部位に痛みや内出血が生じることがあります。
リベルサスは錠剤タイプで服用が簡単なため、注射に不安がある方も多いでしょう
痛みや内出血が出る場合、注射の方法を見直したり、注射する部位を変えたりすることが大切です。
- 注射部位を変える:毎回同じ場所に注射しないように、腕やお腹など、異なる部位に注射をすることで痛みや腫れを軽減できます。
- 冷却してから注射する:注射前に冷たいタオルなどで皮膚を冷やすと、痛みを和らげることができます。
- 正しい注射方法を守る:注射の方法が間違っていると、痛みや腫れが悪化することがあるので、医師から指導を受けた方法で注射を行いましょう。
慣れるまでは不安に感じるかもしれませんが、少しずつ慣れていくケースが多いようです。
切り替える場合は、自己判断せず医師の指示に従いましょう
マンジャロへの切り替えは、必ず医師と相談した上で行うことが大切です。自分で「リベルサスでは効果が足りないから」といった理由で勝手に切り替えを決めてしまうと、予期しない副作用や血糖コントロールの不調が起こる可能性があります。
医師は、あなたの健康状態やこれまでの治療歴を考慮し、最適な治療法を提案してくれます。もし切り替えに不安を感じる場合は、医師にしっかりと相談し、疑問点を解消してから進めましょう。
また、切り替え後も定期的な診察を受けて、体調や血糖値の状態を確認していくことが重要です。どんな薬でも、自分に合った使い方をすることが一番効果的で安全です。
マンジャロとリベルサスに関するよくある質問
参考文献
1)2 型糖尿病患者における週 1 回投与のチルゼパチドとセマグルチドの比較、The New England Journal of Medicine,(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2107519)