近年、ダイエットに関心のある人々の間で話題になっている「マンジャロ(Mounjaro)」。
もともとは2型糖尿病の治療薬として開発されたものですが、その強力な体重減少効果が注目を集めています。
この記事では、マンジャロのダイエット効果を体重減少の作用機序から解説します。
マンジャロのダイエット効果
マンジャロは、主に以下の3つの作用によって体重減少を促進するとされています。
効果①:食欲を抑える
マンジャロは、体内で「GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)」と「GIP(胃抑制性ポリペプチド)」という2つのホルモンの働きを強化します。
GLP-1は脳の満腹中枢に作用するホルモンで、食欲を抑える効果があります。
さらに、GIPはインスリンの分泌を促進するホルモンで、血糖値の急上昇や急低下をなくして安定させるため、空腹感を軽減することができます。
ホルモン | 役割 | 主な効果 |
GLP-1 (グルカゴン様ペプチド-1) | 脳の満腹中枢に作用 | 食欲を抑える |
GIP (胃抑制性ポリペプチド) | インスリンの分泌を促進 | 血糖値の急上昇や急低下を防ぎ、空腹感を軽減する |
この2つのホルモンの働きが強化されることによって、
「以前より少ない食事量でも満足感を得られる」
「間食の頻度が減る」
といった変化が期待できます。
効果②:満腹感が持続する
マンジャロは、胃の内容物(食事として食べたもの)が腸へ移動する速度を遅らせる働きを持っています。
これにより、食べたものがより長く胃に滞在し、食事をした後の満腹感が長く続き、自然と食事の回数や量が減少すると考えられています。
ダイエットにおいて「食事のコントロール」は非常に重要ですが、空腹に耐えるのはストレスになりがちです。
マンジャロを使用することで、無理なく食事の回数や量を減らし、ストレスを感じることなくカロリー摂取を抑えられる可能性があります。
効果③:脂肪の分解を促進する
マンジャロは、血糖値を安定させることで脂肪が燃えやすい状態を作ります。具体的には、インスリンの分泌を調整し、体が余分な脂肪をエネルギーとして使いやすくする働きがあります。
体内の脂肪が分解され、燃焼しやすくなることで、体重の減少が促進されるのです。特に、食事の見直しや運動と組み合わせることで、より効果的な体脂肪の減少が期待できるでしょう。
体重減少につながる効果が期待される
これまでにあげた、マンジャロの3つの作用「食べる量が減る」「満腹感が続く」「脂肪が燃えやすくなる」という3つのメリットが組み合わさり、体重減少につながると考えられます。
ただし、効果には個人差があり、すべての人が同じスピードで痩せるわけではないことを理解しておきましょう。
マンジャロの効果はいつから出る?
マンジャロの効果が現れるタイミングは個人差がありますが、一般的には「数週間から数ヶ月」で体重の減少が実感できるとされています。
臨床試験のデータによると、使用開始から1ヶ月ほどで食欲の低下を感じる人が多く、3〜6ヶ月ほど継続すると目に見える体重減少が起こるケースが多いようです。1)
ただし、体質や生活習慣によって異なるため、過度な期待をせず、医師と相談しながら経過を見守ることが大切です。

薬だけに頼るのではなく、健康的な生活習慣を意識することが成功のカギとなるでしょう。
マンジャロの副作用
マンジャロには効果が期待できる一方で、副作用が生じる可能性もあります。
ここからは、特に注意すべき副作用の4つについて解説します。
吐き気や下痢などの消化器症状
マンジャロを使い始めたばかりの時期に、吐き気、嘔吐、下痢、便秘といった消化器系の不調を感じることがあります。これは、体が薬に慣れる過程で起こることが多く、多くの場合、数週間で自然に軽減されます。しかし、症状が強く日常生活に支障が出る場合や長期間続く場合は、医師に相談することをおすすめします。
対策としては、以下のポイントに気をつけると、症状を軽減できる可能性があります。
- 水分をしっかり摂る(下痢の際の脱水を防ぐ)
- 食事を少量ずつ、ゆっくりと食べる(一度にたくさん食べると吐き気を感じやすくなる)
- 脂っこい食事を避け、消化の良いものを選ぶ(胃腸への負担を減らす)
皮下注射の腫れや痛み
マンジャロは皮下注射で投与するため、注射を打った部分に腫れ、赤み、痛みが出ることがあります。これは、薬の影響や針を刺すことによる一時的な刺激によるものです。通常は数日で自然に治まることが多いですが、以下の場合は医師に相談することをおすすめします。
- 痛みや腫れが長引く、または悪化している
- 注射部位が熱を持ち、膿が出るなどの感染症の兆候がある
また、注射の負担を減らすために、毎回違う部位に打つ、注射の前に皮膚を冷やすといった工夫をするのも良い方法です。
疲れやすさ
マンジャロを使用することで、一部の人は強い疲れやだるさを感じることがあります。これは、食事量が減ることでエネルギー不足になったり、血糖値の変動が影響したりするためです。特に、もともと血糖値が低めの人や、普段から食事を抜きがちな人は注意が必要です。
対策として、以下の点に気をつけましょう。
- 1日3食をできるだけ規則正しく摂る
- 炭水化物を極端に減らしすぎない(エネルギー不足を防ぐ)
- 十分な睡眠と休息をとる

疲労感が長く続いたり、立ちくらみや動悸を感じたりする場合は、医師に相談してください。
マンジャロの危険性
マンジャロの使用にあたっては、以下のようなリスクも報告されています。特に異変を感じた場合は、すぐに医師に相談しましょう。
膵炎のリスク
マンジャロの使用によって、膵炎(すいえん)という膵臓の炎症を起こすリスクがあります。
膵炎の兆候として、次のような症状が現れることがあります。
- みぞおちから背中にかけての強い痛み
- 吐き気や嘔吐が続く
- 発熱や食欲不振
もしこれらの症状が現れた場合は、すぐに病院を受診してください。膵炎は放置すると重症化することがあるため、早めの対応が重要です。
甲状腺腫瘍のリスク
動物実験では、マンジャロの使用によって甲状腺腫瘍が発生する可能性が指摘されています。ただし、人間に対する影響はまだはっきりと分かっていません。
しかし、以下のような症状がある場合は、念のため医師に相談しましょう。
- 喉の腫れやしこりを感じる
- 声がかすれる、飲み込みにくい
- 首の違和感が続く
特に、甲状腺疾患の家族歴がある人は、定期的に医師の診察を受けることをおすすめします。
低血糖のリスク
マンジャロ単体では低血糖を引き起こしにくいとされていますが、他の糖尿病治療薬(インスリンやスルホニル尿素薬など)と併用する場合は、低血糖のリスクが高まります。
低血糖の症状として、以下のようなサインに注意しましょう。
- 冷や汗が出る、手が震える
- 異常な空腹感やめまい
- 意識がぼんやりする、集中力が低下する
低血糖の症状を感じたら、すぐにブドウ糖(または砂糖水やジュース)を摂取し、少し休むようにしてください。
特に運転中や仕事中に発生すると危険なので、対策として低血糖時の補食(飴やビスケットなど)を持ち歩くのも良いでしょう。
マンジャロに関するよくある質問
マンジャロ(一般名:チルゼパチド)は、2型糖尿病の治療薬として開発されました。しかし、その効果や副作用について疑問を持つ方も多いのではないでしょうか?
ここでは、特によく聞かれる質問にわかりやすくお答えします。
参考文献
1)2 型糖尿病患者における週 1 回投与のチルゼパチドとセマグルチドの比較、The New England Journal of Medicine、(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2107519)、(2025/2/26)