ピーリングは、肌に溜まっている古い角質や汚れを取り除き、透明感のある肌へと導く治療法です。
では、ニキビに対してはどのような効果が期待できるのでしょうか。
今回は、ピーリング治療のニキビへの効果について詳しく解説していきます。
この記事の執筆者
石川 聡司
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)
北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。品川美容外科にて美容外科医として3年間の研鑽を積み、2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。
婦人科全般の診療のほか、美容医療では美肌治療、美容整形をはじめ脱毛・アートメイクなど幅広く対応する。
ニキビに対するピーリングの効果
ピーリングは、ニキビの治療に高い効果が期待できます。
どのような仕組みでニキビを改善に導くのか、ニキビができる原因とともに詳しく確認していきましょう。
ニキビができる原因
ニキビができる主な原因は、皮脂の詰まりとアクネ菌の繁殖です。毛穴の中に皮脂や角質がたまり、アクネ菌が増えることで炎症を起こします。
毛穴が詰まる原因は、肌のターンオーバーの乱れです。
不規則やストレス・肌の乾燥などによってターンオーバーが乱れると、本来自然にはがれ落ちるはずの古い角質が肌に残ったままの状態となります。
その結果、皮脂や角質が毛穴に蓄積しやすくなってしまうのです。
そのほか、ホルモンバランスの変化もニキビの発生に大きく影響し、ホルモンバランスが崩れると過剰な皮脂分泌が起こり、毛穴の詰まりをまねきます。
とくに10代によく見られる「思春期ニキビ」は、成長期で男性ホルモンの分泌量が増えることが原因です。男性ホルモンは男女問わず分泌されており、皮脂の分泌を活発化させる作用があります。
また、生理前になるとニキビができやすくなるのも、ホルモンバランスの崩れが原因といえるでしょう。
ピーリングがニキビに効果的な理由
ピーリングは、薬剤を用いて皮膚表面にある古い角質や汚れなどを取り除き、肌のターンオーバーを整える美容施術です。
ニキビの原因となる皮脂や古い角質の排出を促して、毛穴の詰まりを改善する効果が期待できます。
ピーリングによって、皮脂が詰まった状態である「白ニキビ」が改善されれば、炎症を起こしている「赤ニキビ」の発生も抑えられるでしょう。
また、肌のうるおいを保つのに欠かせないコラーゲンの生成を促して肌質自体を改善し、ニキビのできにくい肌へと導きます。
ニキビに効果的なピーリングの種類
ピーリングは、使用する薬剤によって特徴や効果が異なります。
ここでは、ニキビ治療として多く行われる、3つのピーリング法を紹介。
- サリチル酸マクロゴールピーリング
角質軟化・融解作用を持つサリチル酸(BHA)を、マクロゴールと呼ばれる基剤に混ぜ合わせた薬剤を肌に塗布して古い角質を除去するピーリング方法です。
従来のサリチル酸ピーリングよりも皮膚の深くまで浸透しない点が特徴で、赤みや痛みなどの副作用を抑えながらニキビを改善する効果が期待できます。 - グリコール酸ピーリング
グリコール酸(AHA)はフルーツ酸の一種です。表皮の基底層に働きかけて毛穴に詰まった角質や汚れを溶かし、ニキビの発生や悪化を抑えます。
グリコール酸は分子が小さく、皮膚への浸透性が高い点が特徴です。高い効果が期待できますが、比較的刺激はマイルドで、日本人の肌と相性がよいと言われています。 - 乳酸ピーリング
天然乳酸を主成分とした薬剤を使用するピーリング方法です。比較的分子が大きく、皮膚の浅い部分にアプローチします。
肌への負担がより少ないため、敏感肌でほかのピーリング剤が合わなかった方にも適しているでしょう。
ただし、刺激が少ない分効果も穏やかなため、重度のニキビに対しては十分な効果を得られないおそれがあります。
ニキビ跡や赤みにも効果がある?
ニキビの炎症が治まった後に、赤みや色素沈着が残ってしまうケースがあります。ピーリングは、軽度のニキビ跡の改善にも有効です。
肌のターンオーバーを活性化させてメラニンの排出を促すため、赤みや色素沈着を徐々に薄くする効果が期待できます。
ただし、ニキビ跡の状態がひどく、クレーターやしこりができてしまっている場合、ピーリングでの完治は難しいでしょう。
治療を続けることで多少改善される可能性はありますが、ほかの治療法との併用を勧められるケースが多いです。
重度のニキビ跡にはレーザー治療を
多くのクリニックでは、ニキビ跡の治療法としてレーザーも用いられています。
ピーリングとレーザーとどっちが良いか悩まれる人は多いですが、クレーター状になっている重度のニキビ跡には、レーザー治療が効果的です。
代表的なレーザー治療には、フラクショナルレーザーがあります。
炭酸ガスレーザーで肌に点状の微細な穴を空け、皮膚の自然治癒力を利用してニキビ跡の改善を目指す治療法で、皮膚の深い層までダメージが及んでいる肌トラブルにもアプローチが可能です。
また肌の状態に応じて、ピーリングとレーザー治療を併用するケースもあります。
まずは医師とのカウンセリングでニキビ跡の状態を確認して、最適な治療法を選択しましょう。
「ピーリングはニキビに効果なし」の声がある理由は?
ニキビ改善に有効とされる皮膚科のピーリング治療ですが、1回のみ施術を受けただけでは、満足のいく効果は期待できません。
一般的には約2週間〜1ヶ月に一度のペースで、5〜10回は施術を繰り返す必要があります。
「ピーリングはニキビに効果なし」の声があるのは、1回の施術で効果がなかったと感じて治療をやめてしまったことが原因かもしれません。
ニキビの重症度によっても必要な期間は異なりますが、信頼できる医療機関で根気よく治療を続ければ、完治できる可能性は高まるでしょう。
ニキビが悪化・増えることはある?
ピーリングを行ったあとに、ニキビが悪化したり増えたりするケースがあります。これは「好転反応」と呼ばれ、肌トラブルが治る過程で一時的に状態が悪くなる症状です。
ニキビ治療の場合、毛穴に詰まっていた皮脂や古い角質が排出されるために、ニキビが目立ちやすくなります。
肌の状態が悪化すると不安に感じてしまうものですが、好転反応はピーリングが効果を発揮している証拠のためほとんど心配はいりません。
繰り返し治療を受けて肌質自体が改善していけば、症状は徐々に治まるでしょう。
ニキビが悪化・増えた場合の対策
しかし、ニキビの悪化・増加の原因がかならずしも好転反応とは言えません。
使用する薬剤が体質に合わなかったり、ピーリング後のセルフケアが不十分だったりすると、逆に肌荒れがひどくなってしまうおそれがあります。
ピーリング後の肌は敏感で刺激を受けやすい状態のため、紫外線にはとくに注意が必要です。
原因がわからないときは、早めに皮膚科を受診しましょう。
また、ニキビの悪化をできるだけ防ぐためにも、施術後のアフターケアについてはしっかりとカウンセリングで確認しておいてください。
ピーリングしすぎるとニキビができる?
ピーリングによって古い角質が除去された肌のは、乾燥しやすい状態です。
そのため、頻繁にピーリングを行うと乾燥がさらに進んでしまい、逆に皮脂分泌が過剰に起こるおそれがあります。その結果、新たなニキビの発生につながってしまうのです。
また、肌の水分が失われることで、バリア機能が低下してダメージを受けやすくなり、炎症や色素沈着・シミなどの肌トラブルを招く危険性もあるでしょう。
ピーリングは、肌の状態に合わせた適切な間隔で行わなければなりません。
やりすぎを防ぐためにも、自宅でのセルフピーリングは避け、美容皮膚科などで施術を受けるのがおすすめです。
施術の主な副作用・リスク
・施術中、お肌の状態によってピリピリ感やヒリヒリ感などの刺激を感じることがあります。
・ダウンタイムはほとんどありませんが、赤みがでる方もいらっしゃいます。
・赤みは数時間で消失する場合が多いですが、肌が敏感な方は数日間残る場合もあります。