エレクトロポレーションは、電気の力を利用して肌に通り道をつくり、美容成分を届ける治療法です。
導入する薬剤によって、保湿や美白・シミの改善などさまざまな効果が期待できます。
今回は、エレクトロポレーションの効果や行う頻度・料金について詳しく解説。
また、副作用や痛みが心配な方のために、エレクトロポレーションの危険性やデメリットについてもまとめましたので、施術を受ける前にぜひご参考ください。
この記事の執筆者
石川 聡司
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)
北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。品川美容外科にて美容外科医として3年間の研鑽を積み、2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。
婦人科全般の診療のほか、美容医療では美肌治療、美容整形をはじめ脱毛・アートメイクなど幅広く対応する。
エレクトロポレーションとは
エレクトロポレーションとは、特殊な電気の力を用いて、化粧品の有効成分を肌の深部まで浸透させる施術です。
“針のいらないメソセラピー”とも呼ばれており、肌を傷つけずにリフトアップやシミ・しわの改善、美白、肌質改善などさまざまな効果が期待できます。
皮膚に微弱な電流を流すというやけどなどの合併症の可能性が極めて低い治療のため、美容クリニックだけではなく、エステなどでも行われています。
エレクトロポレーションの原理
短い電気パルスによって細胞膜に微小な穴(電子孔)を空け、その穴から有効成分を送り込む仕組み。
エレクトロポレーションは、もともとはがん治療のために開発された遺伝子導入の技術です。
抗がん剤を効率よく細胞内部に投与する方法として用いられています。
この技術を美容医療に応用し、細胞膜に形成した電子孔を通じて、肌の基底層や真皮層へ美容有効成分を届けることが可能となりました。
これまでは針を使用しなければ導入が難しかった、ヒアルロン酸やトラネキサム酸・コラーゲンのような分子の大きい成分も、より効率的に肌の奥に浸透させる効果が期待できます。
また電子孔は、電気が流れている間のみ形成され、すぐに修復するため、施術後に穴が残ることはありません。
赤みや腫れが出にくく、ダウンタイムがほとんどない点もメリットです。
イオン導入との違い
エレクトロポレーションと同様、電気の力で肌に美容成分を浸透させる施術に「イオン導入」があります。
イオン導入とエレクトロポレーションでは、導入できる成分が大きく異なります。
イオン導入は、弱い電流を肌に流し、美容成分をイオン化させて肌の深部に届ける仕組みです。しかし、イオン導入で扱える成分には限りがあります。あくまでイオン化された分子の小さい成分のみが対象です。
ビタミンCやトラネキサム酸は分子が小さいためイオン化が可能ですが、ヒアルロン酸やコラーゲンなどの高分子成分はイオン化できないため、肌に浸透させることはできません。
さらに、両者は浸透力においても大きな差があります。
エレクトロポレーションの浸透力はイオン導入の約20倍と言われており、美容成分をより肌の深部に浸透させる効果が期待できます。
エレクトロポレーションは痛い?
“肌に電気を流す”というと、痛みが心配な方もいるかもしれませんが、エレクトロポレーションは痛みの少ない施術です。
施術中、わずかにピリピリとした刺激を感じる場合がありますが、耐えられないほどの痛みはないでしょう。
刺激が強い場合は、電圧を調整できます。
また、針を使用しないため、術後に赤みや腫れが生じにくいのも安心して受けられるポイントです。
エレクトロポレーションの効果と持続期間
エレクトロポレーションの効果は、導入する美容成分によって異なります。
以下では、エレクトロポレーションで導入できる代表的な成分と効果について解説。
クリニックのなかには、複数の成分を組み合わせたオリジナルの薬剤を用意しているところも多いです。
肌の悩みや状態に合わせて導入する成分を選びましょう。
美容成分 | 期待できる効果 |
ヒアルロン酸 | 保湿・ハリや弾力アップ・皮脂の過剰分泌を防ぐ |
トラネキサム酸 | シミやくすみの予防・改善・肝斑や色素沈着の改善 |
ビタミンC誘導体 | 美白・ニキビやニキビ跡の改善・シミやくすみの予防・改善 |
コラーゲン | 保湿・ハリや弾力アップ・シワやたるみの予防・改善 |
プラセンタ | 保湿・シワやたるみの予防・改善・ターンオーバーの正常化・肌の若返り |
グリシルグリシン | 毛穴の引き締め・キメを整える |
効果の持続期間は?
ただし効果の感じ方には個人差があり、導入する薬剤によっても変わってきます。
保湿効果や肌質の変化は直後から感じやすいですが、シワやたるみ・ニキビの改善には期間を要するケースが多いです。
やりすぎは良くない?行う頻度
必要な頻度は、肌質や症状によって異なります。
一度の施術でも効果を実感できる方は多いですが、継続して施術を受けることで、よい状態を長くキープできるでしょう。
ただし、刺激の少ない施術とはいえ、エレクトロポレーションのやりすぎは逆効果で、肌に負担がかかったり、栄養が過剰に届きすぎたりして、肌荒れを引き起こす原因になります。
頻繁に行ったからといって効果が高まるわけではないため、2週間〜3週間のペースをきちんと守りましょう。
なお、エステや家庭用のエレクトロポレーション機器であっても、毎日行ったり、長時間続けたりすると、肌に強い刺激を与えてしまうため、やりすぎには注意してください。
エレクトロポレーションの料金相場
導入する薬剤の種類によっても料金は異なるため、詳しくはカウンセリング時に確認してください。
また、より確実に効果を得るためには、継続して施術を受ける必要があり、その分費用がかかる点も理解しておきましょう。
危険性やデメリット・副作用等の注意点
痛みやダウンタイムがほとんどなく、安全な点がメリットのエレクトロポレーションですが、危険性や副作用がまったくないわけではありません。
施術を受ける際には、次のようなリスクも伴います。
アレルギー反応を起こす
導入する薬剤に対してアレルギー反応を起こし、以下のような症状がでる場合があります。
- 発赤
- 熱感
- 痒み
- ヒリヒリ感
- 腫れ、むくみ
- 発疹
クリニックでは医師が施術前に肌の状態や体質を確認してから導入薬剤を決めるため、アレルギー反応を起こすケースは非常にまれですが、クリニックであれば、万が一異常がみられた場合でも迅速な対応が可能です。
赤みやほてり・かゆみが出る
アレルギー反応ではなくても、電気の刺激によって施術後一時的に赤みやかゆみ・軽いほてり感が生じるケースも。
通常は数時間から数日で自然におさまりますが、気になる場合は濡れタオルや保冷剤で冷やすと症状がやわらぐ可能性があります。
肌トラブルが生じる
肌に合わない薬剤や、添加物が多く品質の悪い薬剤を使用すると、肌トラブルを引き起こすおそれがあります。
とくに敏感肌の方や、炎症性のニキビがある方、過度の日焼けをした直後は、肌が刺激を受けやすいため注意が必要です。
エレクトロポレーションを受けられない人
次の症状がある方は、基本的にエレクトロポレーションの施術は受けられません。
- ペースメーカーを装着している方
- 妊娠中の方
- 心臓病を患っている方
- 極度の肌荒れや傷がある方
- インプラントや金属が入っている方
- 免疫系の障害やてんかんがある方
カウンセリングで注意点をよく確認して、これらの事項に該当する場合には必ず医師に伝えましょう。
副作用やリスクを防ぐための対策
副作用をできるだけ防ぐために、押さえておきたいポイントをご紹介します。
施術後の保湿ケア・紫外線対策を徹底する
施術後は肌が普段よりもデリケートな状態になっているため、しっかりと保湿ケアを行いましょう。
また紫外線を浴びると、赤みやほてりが悪化したり、肌が乾燥したりするおそれがあります。日焼けをしないよう、UVケアを徹底してください。
エステではなくクリニックで受ける
エレクトロポレーションはエステサロンでも施術を行っていますが、使用する機器や美容液がクリニックとは異なります。
また、施術前には医師が診察を行うため、肌の状態に合わせた施術を受けられます。万が一肌トラブルがあらわれた場合にも、すぐに対応してもらえるでしょう。
カウンセリングを十分に行う
肌の悩みや希望する効果などについて、しっかりと医師と話し合いましょう。導入する薬剤の品質や純度を確認することも重要です。
また、アレルギーや既往歴は正しく伝えるようにしてください。納得のいくまで丁寧にカウンセリングを行ってくれるクリニックを選ぶと安心です。
施術の主な副作用・リスク
痛み:痛みはほとんどありません。個人差がありますが、電気刺激による軽い痛みを感じる方も。
ダウンタイム:ダウンタイムはほとんどありません。施術後、メイクも可能です。
腫れや赤み:腫れや赤みはほとんどありません。
注意事項:
・効果には個人差があるため、場合によっては効果を感じにくい場合も。
・施術後、洗顔やメイクをすることも可能ですが、施術した部分を強くこすったりしないように気を付けてください。
・紫外線による日焼けは色素沈着を起こす場合があるので、施術後はしっかりと保湿して日焼け止めなどの対策を。
・妊娠している方、ペースメーカーを挿入中の方は施術を受けることができません。