アフターピル(緊急避妊薬・緊急避妊ピル)を飲んだ後起こる出血である、「消退出血」。避妊成功のサインとも言われるので、いつ来るのか、どんな感じであるのか気にされる方は多いです。
この記事では、
- アフターピル後の消退出血はいつくるか
- 消退出血の色や期間などの特徴
- アフターピルを飲んだあと、消退出血がこない場合もあるのか
- 消退出血の期間が長い、量が多いときはどうすれば良いか
- 消退出血と着床出血、生理の違い
など、アフターピル服用後の消退出血について解説しました。アフターピルを飲んだあと、消退出血はいつくるか不安な方や、消退出血がこない方、色や量・期間について心配がある方はぜひ参考にしてください。
この記事の執筆者
石川 聡司 日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)
北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。
- 資格:日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医
- 所属:日本美容外科学会JSAS、日本女性医学学会、日本産婦人科学会、日本周産期新生児学会
アフターピル服用後の消退出血
アフターピル服用後、数日以降に起こる出血を「消退出血」といいます。アフターピルを飲むことにより体内で一時的に急激に増えた女性ホルモンが、いっきに減るために子宮内膜がはがれて起こる出血です1)。
消退出血が起こると、避妊に成功した可能性が高くなります。
アフターピル後にくる消退出血の特徴
消退出血は個人差が大きいものですが、主な特徴は以下のとおりです。
- 消退出血はアフターピル服用後、数日~遅くとも3週間以内に起こります。
- 出血は数日間続き、軽い出血から通常の生理と同様の出血までさまざまです。
- 血液の色は、薄いピンクから濃い茶色、赤とさまざまです。
- 下腹部痛が通常の生理と同様に現れる場合もあります2)。
アフターピルを飲んだ後の消退出血はいつ来る?
研究によると、アフターピル服用後の約半数の女性が3日以内に消退出血を経験している一方で、7日以上経ってから消退出血があった人もいます2)。
消退出血がくるかこないか、影響を与える可能性のある要因は以下のとおりです。
- アフターピルの服用が月経開始予定日に近いほど、消退出血は早く起こる可能性があります。
- 子宮内膜を厚くするエストロゲンの濃度が高い方は、消退出血が早く起こる可能性があります。
- 着床のため子宮内膜を安定・維持させるプロゲステロンの濃度が高い方は、消退出血が早く起こる可能性があります。
- 健康状態や肥満度、ストレスレベルにより、消退出血がくるタイミングは変化します3)。
アフターピルを飲んだすべての方に消退出血がくるわけではなく、消退出血がなかったからといって、アフターピルが無効だったと考えるべきではありません。
妊娠が予防できたかどうかは、次の生理が来たかどうかで判断できます。
消退出血は何日間続く?
アフターピル後の消退出血は、数日から1週間程度続きます。多くの場合長くは続かず、2-3日程度です。
消退出血の期間が人によって異なるのは、アフターピルを服用した月経周期の時期、使用した緊急避妊薬の種類などが要因です。
2~3日間 | もともと月経周期が短い女性や、月経周期の早い時期にアフターピルを服用した場合。 |
3~7日間 | 通常の月経の長さに近い期間で消退出血が起こる場合もあります。 |
7日以上 | あまり一般的ではありませんが、ホルモンバランスの乱れや肥満度の高さ、ストレスなどの要因により、まれに出血が長く続く場合があります。 |
- BMI(体格指数)はホルモンの吸収と代謝に影響を与える可能性があり、BMIが高い女性は消退出血の期間が長くなる可能性があります4)。
- 高いストレスのある場合、月経周期に影響を与えるため消退出血の期間を長くする可能性があります5)。
消退出血があれば避妊成功?妊娠の可能性はあるのか
アフターピル後に消退出血が確認できれば妊娠の可能性は低いですが、必ずしも妊娠していないとは言えず、消退出血のあった女性がその後、妊娠検査で陽性となった例があります6)。
アフターピルの有効性は時間と共に低下し、性交渉から72時間以内に服用した場合の妊娠率は2.2%と報告されていて、72時間~120時間以内に服用した場合の妊娠率は2.5%に増加します7)。
消退出血が起こったとしても、アフターピルを服用した時間が遅い場合は妊娠の可能性を否定できません。
アフターピル後に消退出血を経験した後でも、次の生理予定日から1週間以上を過ぎても生理がこない場合は、妊娠検査が必要です8)。
アフターピル後の消退出血がこない場合はある?
アフターピルを服用しても、消退出血が起こらないケースはあります。
一般的にはほとんどの女性で消退出血は起こりますが、この出血がないからといって、すぐに心配する必要はありません。
消退出血が起こらない理由としては、以下の要因が考えられます。
- アフターピルを服用したタイミング
- 個々のホルモンバランスの違い
- 他のホルモン避妊薬を使用したことがあるかどうか
アフターピルを飲んだあとに消退出血が起こらないからといって必ずしも避妊に失敗したわけではなく、また、妊娠したと保証するものではありません。
消退出血がこない確率はどのくらいか
アフターピルのような緊急避妊薬の服用後に消退出血が起こるのはよくあることですが、では、消退出血がこない人はどのくらいいるのでしょうか。
具体的な確率について取り上げた研究はないため正確には言及できませんが、Glasierらの研究では、緊急避妊薬服用後3週間以内に、ほぼすべての女性が何らかの出血を経験したと報告されています9)。
また、Creininらの研究では、酢酸ウリプリスタル(UPA)を服用した女性の約74%、レボノルゲストレル(LNG)を服用した女性の87%が予定日から7日以内に月経を迎えたと報告があります2)。
このことから、大多数の女性がアフターピル服用後すぐに消退出血や月経を経験すると示唆されますが、服用直後に消退出血を経験する割合については、直接言及されていません。
消退出血が少なすぎると感じたら?
アフターピルに含まれる成分が子宮内膜の厚さを減少させ、その結果、消退出血が軽くなる可能性があることがわかっています10)。
消退出血が少なすぎる場合も心配する必要はありませんが、生理予定日から1週間以上過ぎても生理が来ない、または出血が異常に軽い場合は妊娠検査を受けてください。
消退出血と着床出血・生理の違い
生理の出血は一般的に3日以上続き、ドロっとした粘度のある赤黒い血であるのが特徴です。それに対して消退出血や不正出血は、サラサラとした血であるとされています。
消退出血 | 生理 | |
---|---|---|
時期 | アフターピル服用から3-10日程度 | アフターピル服用から3週間以内 |
出血の期間 | 2-3日 | 3日以上 |
血液の様子 | 少量、サラサラとした血 | 多い、ドロっとした血 |
着床出血は受精卵が着床するときに子宮内膜が傷つき起こる出血で、量や期間は通常の生理よりも少なく短いのが特徴です。
出血の様子に不安がある場合は、アフターピルを処方したクリニックを再度受診することをおすすめします。
アフターピルを飲んだ後の生理については、以下の記事を参考にしてください。
消退出血前後の性交渉は控えましょう
アフターピル服用後は、次の生理までなるべく性交渉を控えてください。
アフターピルはあくまでも一時的な避妊手段であるため、服用後から次の生理までの間も排卵したり、妊娠してしまう可能性が残ります。
性交渉を控えることができない場合は、ほかの確実な避妊方法を使うか、低用量ピルの服用開始をおすすめします。
また、消退出血前後の性交渉は血液により感染のリスクが高まったり、血液が腹腔内に逆流し、子宮内膜症の原因となる可能性があるため、避けてください。
出血の量が多い・鮮血の場合は受診を
消退出血は通常の生理の出血より量が少ないのが特徴で、アフターピル後の出血がとても多い、いつまでも止まらないなどの場合は、不正出血や妊娠初期の出血である可能性があります。
また、大量の真っ赤な鮮血は、合併症のサインである可能性も。原因として考えられるのは以下のとおりです。
- 早期流産の可能性
- 子宮筋腫、ポリープなど婦人科系の基礎疾患の可能性
特に、出血に激しい腹痛を伴う場合は子宮外妊娠の可能性もあります6)ので、早急に医療機関の受診が必要です。
まとめ
アフターピル後の消退出血について解説しました。
- アフターピルを飲んだ後、数日~1週間以内に消退出血が起こる
- 消退出血は数日~1週間程度続くと言われるが、多くの場合は2~3日程度で消失する
- アフターピル後に消退出血がこない場合もある
- 消退出血の期間が長引いたり、量が多い場合もある
- ただし、あまりに長引く場合や大量に出血している、痛みを伴う場合は受診する
アフターピル服用後の消退出血は一般的な現象であり、薬が正常に作用した証拠です。ただし、消退出血が起こるかどうかは個々の体質やピルを服用したタイミングによるため、必ず起こるわけではありません。
出血が多量であったり、鮮血が出る、期間が長い、痛みを伴う場合は婦人科疾患のサインである可能性もあるため、医療機関への相談をお勧めします。
アフターピル後の消退出血に関するよくある質問Q&A
参考文献
1) Gemzell-Danielsson K, Berger C, Lalitkumar PG. Emergency contraception — mechanisms of action. Contraception. 2013;87(3):300-308.
2) Creinin MD, Schlaff W, Archer DF, et al. Progesterone receptor modulator for emergency contraception: a randomized controlled trial. Obstetrics & Gynecology. 2006;108(5):1089-1097.
3) Farris M, Bastianelli C, Rosato E, Brosens I, Benagiano G. Pharmacodynamics of combined estrogen-progestin oral contraceptives: 2. effects on hemostasis. Expert Rev Clin Pharmacol. 2017;10(10):1129-1143.
4) Edelman AB, Cherala G, Blue SW, Erikson DW, Jensen JT. Impact of obesity on the pharmacokinetics of levonorgestrel-based emergency contraception: single and double dosing. Contraception. 2016;94(1):52-57.
5) Brantelid IE, Nilsson PM, Alehagen S. Stress, anxiety and depression among women in an urban area, before and after a natural disaster. Scandinavian journal of public health. 2014;42(8):728-734.
6) Cleland K, Raymond E, Trussell J, Cheng L, Zhu H. Ectopic pregnancy and emergency contraceptive pills: a systematic review. Obstet Gynecol Int. 2010;2010:364526.
7) Task Force on Postovulatory Methods of Fertility Regulation. Randomised controlled trial of levonorgestrel versus the Yuzpe regimen of combined oral contraceptives for emergency contraception. Lancet. 1998;352(9126):428-433.
8) Trussell J, Rodriguez G, Ellertson C. Updated estimates of the effectiveness of the Yuzpe regimen of emergency contraception. Contraception. 1999;59(3):147-151.
9) Glasier A, Cameron ST, Blithe D, Scherrer B, Mathe H, Levy D, Gainer E, Ulmann A. Can we identify women at risk of pregnancy despite using emergency contraception? Data from randomized trials of ulipristal acetate and levonorgestrel. Contraception. 2011;84(4):363-367.
10) Taskin O, Yalcinoglu AI, Kucuk S, et al. The effects of postcoital contraception with levonorgestrel on the menstrual cycle. Contraception. 1994;49(6):561–568.