アフターピルの効果時間はいつからいつまで?緊急避妊薬の種類と避妊率

レボノルゲストレル1.5mg

アフターピルとは、望まない妊娠を避けるための緊急避妊薬です。

避妊をせずに性交渉をしてしまったとき、避妊に失敗してしまったとき、あるいは、万が一犯罪に巻き込まれて性暴力を受けてしまったとき、女性であれば真っ先に心配になるのが妊娠の問題ではないでしょうか。

望まない妊娠を未然に防ぐために、どのような行動をとればいいのか、なかなか現実の世界で身近に相談できる場所や人がある方は少ないと思います。

この記事では、婦人科医である石川(日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医・新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック院長)が、

  • アフターピルの効果が得られる持続時間(いつからいつまでに飲むのか)
  • 受精後もアフターピルの効果は得られるのか
  • アフターピル服用後の性行為に効果はあるのか
  • 生理中でもアフターピルは必要なのか

など、アフターピルの効果について解説しています。

この記事の執筆者

石川 聡司 日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)

北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。

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目次

アフターピル(緊急避妊薬)の効果

アフターピル

アフターピルとは緊急避妊薬・緊急避妊ピルのことであり、「モーニングアフターピル」や「後のみピル」とも呼ばれます。

避妊せずに性交渉をした、あるいは避妊に失敗した、レイプ等の犯罪に巻き込まれた、などの場合に引き続いて起こる望まない妊娠を避けるための最後の避妊手段です。

アフターピルを服用すると正常な排卵を抑制・遅延させ、避妊効果が得られます。

アフターピルが必要になるのは、下記のような場面が考えられます。

  • 性暴力の被害にあったとき
  • コンドーム(避妊具)が破れてしまったとき
  • 避妊せずに性交渉や中出しをしてしまったとき
  • ちゃんと避妊できたか心配なとき
  • 低用量ピルを服用し忘れていたとき

アフターピルの避妊の仕組み

排卵日と基礎体温の変化
アフターピルは正常な排卵過程を阻害する

アフターピルの作用機序は十分に解明されていませんが、主に排卵の抑制あるいは遅延によるものと考えられています。

アフターピルを卵胞期(排卵前)に使用すると、正常な排卵過程を阻害します。

LHサージ(排卵が起こりそうなサイン)前にアフターピルが投与されるとLHサージの消失や遅延が起こり、効果持続期間は約80%の女性で5日以上です。

したがって、アフターピルを排卵前に投与すると、その後5~7日間排卵が抑制され、その期間に女性の性器内に侵入しているすべての精子が受精能力を失い、避妊が成立すると考えられています1)

また、アフターピルは既存の妊娠を終了させる(堕胎作用)ものではなく、服用前にすでに妊娠している場合は効果がありません。

アフターピルの効果時間~いつからいつまでに飲めば良いか

時間

アフターピルは、ノルレボの場合は性交から72時間以内の服用で、95%以上の避妊率を得られます

持続期間は何日かについてですが、エラワンの場合ですと性行為から120時間(5日間)後までアフターピルの効果は有効とされ、時間が経つにつれてその効果は減少していきます。

アフターピルは避妊に失敗した性行為を1回行った後の妊娠を予防するためのもので、定期的な避妊のために使用したり、既存の妊娠を終了させるものではありません。

アフターピルの種類ごとの服用方法・服用時間

アフターピルの服用方法は下記の3種類があります。

レボノルゲストレル法
(商品名ノルレボ、レボノルゲストレル
性交後72時間以内に1回1錠(1.5mg)を服用する
エラ性交後120時間以内に1回1錠(30mg)を服用する
ヤッペ法ノルゲストレルとエチニルエストラジオールの配合剤を性交後72時間以内に初回2錠、12時間後に2錠服用する

アフターピルとして日本で最も一般的に行われてきたヤッペ法ではありますが、1998年にWHO が行ったレボノルゲストレル法群と ヤッペ法群を比較した試験によると、有効性、安全性ともにレボノルゲストレル法群の優位性が確認されています2)

さらに、レボノルゲストレル製剤が国内では唯一緊急避妊薬として承認されているため、レボノルゲストレル法を第一選択とすることが推奨されます。

アフターピルは、性交渉からできるだけ早い服用が大切です。服用までの時間が早ければ早いほど、避妊成功率が高くなる研究結果が出ています。

受精後のアフターピル服用は、受精前より効果が低下する

受精後の緊急避妊薬の正確な効果については現在も研究・議論が続いていますが、一般的には受精後は受精前よりも効果が低下することがわかっています。

「ノルレボ」などのレボノルゲストレルベースのピルの効果は、主に排卵を防止または遅延させるものです。

つまり、卵巣から卵子が放出されるのを阻止し、受精が最初に起こるのを防ぎます。

また、レボノルゲストレルは、子宮内膜を変化させ、受精卵が着床し成長する可能性を低くします3)

「エラワン」などウリプリスタール系ピルも、排卵を遅らせたり抑制したりすることで効果を発揮するほか、排卵が起こった後でも有効である可能性が示唆されています4)

どちらのタイプのアフターピルも受精後の妊娠を防ぐ可能性がありますが、主なアフターピルの効果は「受精の発生を防ぐ」である点には注意が必要です。

また、どちらのタイプのピルも既存の妊娠を終了させることはできません。

受精後の妊娠を予防できる効果がある可能性はありますが、受精前のアフターピル使用がより効果的です。

Dr.石川

避妊に失敗した性交渉のその時から、できるだけ早くアフターピルを服用する必要があります。

アフターピル服用時間ごとの妊娠率

アフターピルは、性交渉から72時間以内の正しい服用で95%以上の避妊率が得られます。

ノルレボでは、避妊をしなかった性交渉から服用するまでの時間が早ければ早いほど高い避妊率が期待できます。

避妊失敗から服用するまでの時間ノルレボの妊娠率5)エラワンの妊娠率4, 6)
直後~24時間1.7%1.6%
24時間~48時間0.7%2.1%
48時間~72時間2.5%2.3%
72時間~96時間1.1%2.1%
96時間~120時間4.8%1.3%
服用時間ごとの妊娠率

排卵日付近(危険日)の妊娠阻止率

妊娠阻止率:妊娠の可能性がある時期(排卵日付近・危険日)の性行為後に内服したときの妊娠しなかった割合

ノルレボエラワンヤッペ法
服用時間性行為後72時間以内性行為後120時間以内1回目:72時間以内
2回目:その12時間後
妊娠阻止率85%95%57%

アフターピルは、月経周期のどのタイミングで服用するかにより、その効果が変わってきます。排卵日に近いほど、アフターピルの速やかな服用がより重要です。

生理周期と排卵日

「ノルレボ」などのレボノルゲストレルベースのピルの場合、すでに排卵が起こっている場合は効果が低くなります。

ある研究では、排卵日または排卵後にアフターピルを服用した場合、妊娠予防効果が著しく低下することが示されました7)

一方、「エラワン」などウリプリスタール系ピルでは、排卵が起こりそうなサインである黄体形成ホルモン(LH)が上昇し始めた後でも、排卵を遅らせることができます8)

よって、排卵日近くにアフターピルを服用した場合、ウリプリスタール系ピルの方がレボノルゲストレル系ピルよりも効果が高くなる可能性があります。※ただし効果には個人差があることに留意する必要があります。

排卵日付近(危険日)に緊急避妊を行う場合の注意点
  • できるだけ早くアフターピルを服用する:緊急避妊薬の効果は時間の経過とともに低下し、すでに排卵が起こっている場合は効果が著しく低下する。
  • 「エラワン」などウリプリスタール系ピルは、黄体形成ホルモン(LH)が上昇後も排卵を遅らせることができるため、より良い選択肢となる

アフターピル(緊急避妊薬)の種類と避妊確率

アフターピルには次の3つの種類ごとに、避妊確率を解説します。

  • レボノルゲストレル法(ノルレボ)
  • エラ(エラワン)
  • ヤッペ法(プラノバール)

いずれも避妊を目的としたアフターピルの処方は自費診療となります。

性犯罪事件などの被害者を対象とする費用の公費負担について

性犯罪事件などの被害者となってしまった方の場合は、初診料や治療費などを公費で負担する公的支援制度(警察庁. 犯罪被害給付制度. https://www.npa.go.jp/higaisya/kyuhu/index.html, https://www.npa.go.jp/higaisya/kyuhu/pdf/hankyuukinP.pdf )があります。

対象となる費用は、初診料や診断書料、性犯罪被害に係る性感染検査費用、緊急避妊に要する費用、一時避難が必要な場合の宿泊費等です。

また、性犯罪の被害にあっても、「恥ずかしくて誰にも相談できない」、「どうしたらいいのか分からない」という方のために、性犯罪被害相談電話窓口(警察庁. 性犯罪被害相談電話 「#8103(ハートさん)」. https://www.npa.go.jp/higaisya/seihanzai/seihanzai.html ) も用意されています。

アフターピルの種類ごとの違いは下記表のとおりです。

レボノルゲストロル法エラワンヤッペ法
性行為から服用までの時間72時間以内120時間以内72時間以内
72時間以内の避妊率97.5%97.7%96.8%
120時間以内の避妊率95.2%98.7%
妊娠阻止率85%95%57%
主要成分レボノルゲストレルウリプリスタール酢酸エステルノルゲストレル
エチニルエストラジオール
副作用の強さ弱い弱い強い
安全性
主な薬ノルレボ
レボノルゲストレル
エラワンプラノバール
服用回数1回1回2回
1回の服用錠数1錠1錠2錠
金額(当院)10000円10000円
主なアフターピルの違い

妊娠阻止率は緊急避妊薬を使用した場合に妊娠した数と予測される妊娠数との比率で計算されます。

避妊率は緊急避妊薬を飲んだ全体の数のうち妊娠しなかった人の割合ですので、排卵日(いわゆる危険日)などの妊娠しやすい日以外の日の内服が多数含まれています。そのため避妊率は妊娠阻止率よりも高く計算されます。

妊娠阻止率は“危険日に緊急避妊薬を飲むことで避妊できる確率”と考えてもらうとわかりやすいです。

レボノルゲストレル法

レボノルゲストレル1.5mg 緊急避妊薬

レボノルゲストレルという黄体ホルモンを内服する方法です。

避妊に失敗した性交渉後から72時間以内にレボノルゲストレル単剤1.5mg錠を1錠服用します。できるだけ速やかに服用したほうが、妊娠率は低くなります。

後述するヤッペ法に比べて1回の服用で済むため簡便であり、避妊効果が高く、副作用も少ないという研究結果が得られています2)

また、日本では唯一緊急避妊薬として承認されており、一番多く使われているアフターピルです。

現在日本で発売されているレボノルゲストレルには2種類あります。

  • ノルレボ®(一般名:レボノルゲストレル):日本初の緊急避妊薬
  • レボノルゲストレル®(一般名:レボノルゲストレル):ノルレボの後発薬品(ジェネリック薬品)

他に、日本未承認薬が個人輸入サイトで複数みられます。

エラ(エラワン)

エラ(エラワン)は、主成分がウリプリスタール酢酸エステルであるアフターピルです。

ウリプリスタール酢酸エステルは選択的プロゲステロン受容体調節剤であり、排卵を送らせたり抑制する効果があります8)

日本では子宮筋腫の治療薬として製造販売申請中です。海外ではアフターピルとしても使用されています。

最大の特徴として、性交から120時間以内に服用できれば高い避妊の効果を得ることができる9) という点があります。

一刻を争う緊急避妊法にとって、レボノルゲストレル法では72時間であったタイムリミットが120時間まで延びるのはとても大きな利点になります。

日本ではまだ未承認ですが、欧米では主流のアフターピルになっています。

アフターピルとしての使用は未承認であるため、取り扱いのあるクリニックはまだ少数です。

ヤッペ法

ヤッペ法とは1970年代からある緊急避妊法で、かつては日本で最も一般的なアフターピルでした。

ヤッペ法は中用量ピルを使った緊急避妊法で、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの成分を含む中用量経口避妊薬(ノルゲストレル+エチニルエストラジオール)を性交渉があったタイミングから72時間以内に2錠服用し、さらにその 12 時間後に2錠服用するという方法です。

アフターピルとして日本で最も一般的に行われてきたヤッペ法ではありますが、最近のWHOの比較試験により、レボノルゲストレル法のほうが避妊率も安全性も優れているという結果がでています2)

日本産婦人科学会の緊急避妊法に関する指針でも、レボノルゲストレルを第1選択とすることが推奨されており、ヤッペ法は他の緊急避妊法が利用できない場合に限り使用することとされています1)

アフターピルの効果を確認できるサインは消退出血と生理

出血

アフターピルを服用し次の生理がしっかりと確認できれば、避妊に成功したということになります。

アフターピルを服用すると生理が通常の周期より早まったり遅くなったりしますが、概ね次の生理予定日1週間後までには生理が来ます。

予定より1週間以上遅れて生理がみられない場合は、妊娠の可能性も考え、病院を受診するか、妊娠検査薬を使用してください。

また、生理よりも少量で期間が短い「消退出血」が起こるケースもあります。

消退出血が起こると成功?来ないパターンもある

アフターピル服用後、数日以降に起こる出血を消退出血といいます。

アフターピルにより急激に増えた女性ホルモンが、急激に減るために子宮内膜がはがれて起こる出血です。

通常の生理よりも期間が短く、出血量も少ないと言われています。

消退出血が起こると避妊に成功した可能性は高いです。また、消退出血が起こらない人もいますが、その場合も避妊に失敗してしまったわけではありません。

また、消退出血だと思った出血が、不正出血や妊娠初期の出血である場合もあります。

いずれにしても避妊が成功したかどうか確実に判断できるのは次の生理がきてから、ということになります。

アフターピル服用後は女性ホルモンのバランスが崩れるため、生理の周期が不安定になり、生理は予定より早くなったり遅れたりする場合があります。

また、アフターピル服用後もさらに排卵する可能性があり、妊娠の可能性は残ります。

次の生理がくるまで性交渉を控えるのがおすすめですが、どうしても難しい場合は、医師と相談の上、低用量ピルの服用をすぐに始める方法もあります。

次の生理がくると成功!

服用して3週間程度で生理による十分な量の出血がみられれば避妊に成功したということになります。

生理予定日を1週間過ぎても生理がこない場合には、妊娠している可能性があるため、病院を受診するか、市販の妊娠検査薬でのチェックをおすすめします。

また、生理が来た場合は避妊に成功したと言えますが、アフターピルはあくまで緊急的な避妊方法であり、頻繁な使用は避けるべきです。

この機会に、低用量ピルなど自分に合った確実な避妊方法を検討し、望まない妊娠を防ぐ対策を行うのがおすすめです。

アフターピルの副作用

吐き気 ピルの副作用

アフターピルの起こりやすい副作用として、嘔吐がありますが、服用後2時間以内に吐き戻してしまった場合は再度受診し、できるだけ速やかにもう一度服用する必要があります1)

嘔吐を繰り返す場合は、別の緊急避妊法として銅付加子宮内避妊具(Cu-IUD)による避妊を考慮します。

服用後2時間以降に嘔吐してしまった場合は、十分に薬剤が吸収されているため、追加投与は不要です1)

アフターピルの副作用として主に以下のようなものがあります。

  • 吐き気や悪心
  • 不正出血・生理周期の乱れ
  • 頭痛・下腹部痛
  • 眠気・倦怠感
  • 下痢
  • めまい
  • 乳房痛

副作用は、服用から24時間程度でおさまる場合が多いです。また、全く副作用が出ないかたもいます。

服用後、上記のような副作用が出現しても、1日程度安静にしていれば軽快します。

万が一、呼吸困難や激しい嘔吐などあまりにも強い副作用がでたり、いつまでたっても症状がおさまらない場合は、処方したクリニックにご相談ください。

また、繰り返しにはなりますが、アフターピルを飲んで2時間以内に吐いてしまうと、薬が吸収される前であり、十分な避妊効果が得られなくなってしまいます。

その場合は、すぐに医師と相談し、もう一度処方・服用をする必要があります1)

下痢の場合も、2時間以内で何度もくだしてしまった場合は相談が必要ですが、アフターピルは胃や小腸から吸収されるため、基本的には問題ありません。

喫煙者のアフターピル服用リスク

緊急避妊薬は、定期的に飲む経口避妊薬(COCP)とは異なり、1回または短期間の服用であるため副作用が起きる可能性を大幅に低減できます。

レボノルゲストレル系ピル、ウリプリスタルアセテート系ピル、どちらも非喫煙者と比べて喫煙者へのリスク増加は確認されていません。

ただし、喫煙は一般的に健康リスク、特に心血管リスクの上昇と関連しているため、緊急避妊薬が特定のリスクをもたらさないとしても、健康のために禁煙をすべきです。

アフターピル服用後の性行為に避妊効果はない

  • アフターピル(緊急避妊薬)は、避妊できなかった性行為の後に1回だけ使用するように設計されています。
  • アフターピルの効果は、性行為後の時間の経過とともに減少します。
  • アフターピルは、その後の性交渉に対する避妊効果はありません。

アフターピルの効果は、使用前の避妊できなかった性行為の1回に限定され、その後の性行為にはいかなる避妊効果もありません9)

また、アフターピルの効果は時間の経過とともに低下します。

例えば「ノルレボ」などレボノルゲストレル系ピルは性行為から72時間以内、「エラワン」などウリプリスタル系ピルは120時間以内に服用する必要があります。

アフターピルのような緊急避妊薬の使用は緊急措置としてとらえるべきで、服用後の性行為は妊娠リスクがあるものとして対処すべきです。

コンドームのようなバリアー法の使用など、通常の避妊方法を行うようにしてください。

生理中のアフターピルの効果は?飲む意味はあるのか

生理カレンダー

卵巣から卵子が放出される「排卵」は、一般的に月経周期の中間に起こり、生理が来た日(月経初日)が新しい周期の始まりとなります。

妊娠の確率は、排卵日までの数日間と排卵日を含む数日間が最も高いといわれています10)

生理は妊娠していない状態で子宮内膜が剥がれ落ちることを意味するため、月経中の緊急避妊の必要性は低いです。

これは、受精卵が存在しないため、この時期に妊娠する確率が極めて低いためです11)

ただし、生理中に妊娠する可能性はゼロではない

生理中は妊娠の可能性は低いとはいえ、決してゼロではありません。

一般的に排卵は28日~30日周期で起こりますが、排卵は個人差や体調の変化により変動する場合があり、予測不可能な場合があります。

また、精子は女性の体内で最大4~5日、場合によっては1週間程度生存できます。

性交後数日で排卵が起これば、残留している精子が卵子と受精し、妊娠に至る可能性があります。

生理中であってもアフターピルを服用すると安心

生理中に避妊せずに性交した場合は、望まない妊娠を防ぐため、アフターピルを使用しましょう。

また、生理中の性交は、次の排卵のタイミングに影響を与える可能性があり、その後の月経が遅れたり、来なくなったりすることも。

細菌感染のリスクが高いだけでなく、性感染症のリスク増加や子宮内膜症のリスクもあるため、生理中の性行為は避けていただくのが良いでしょう。

アフターピルで失敗するケース

アフターピルの避妊率は非常に高いですが、まれに失敗してしまうこともあります。失敗する理由としては、以下のような場合が考えられます。

  1. 服用のタイミングが遅かった
  2. 正しく服用しなかった
  3. 副作用で嘔吐してしまった
  4. 肥満のため効果が出にくかった
  5. 個人輸入の薬のため、薬自体に問題があった(偽薬、成分が違うなど)
  6. 飲み合わせにより効果が落ちる薬と併用した(結核の薬、てんかんの薬など)
  7. アフターピル服用後に避妊せずに性交渉した

アフターピルはその後の避妊を保証するものではありません。服用後も次の生理まで効果的な避妊法の使用、または性行為を避ける必要があります。

アフターピルよりも確実な避妊方法として、低用量ピルがありますので、その後は低用量ピルの継続服用をぜひ検討していただきたいです。

院長

服用方法について、できればクリニックで担当医からしっかりと説明を受けましょう。

アフターピルでは性感染症の治療はできない

アフターピルはあくまでも緊急避妊のための薬です。

性暴力などの被害にあい、無防備な性交渉をしてしまった場合は、妊娠だけでなく、性感染症の心配もあります。

アフターピルでは性感染症の予防や治療はできないため、万が一の場合はやはり病院で直接診察を受けることをおすすめします。

オンライン診療でも医師の診察は受けられますが、内診やエコー、血液検査などの詳しい検査はできません。

直接診察をうけたほうが確実に診断や治療を行えます。

アフターピルの入手方法は病院が安心で最速

病院 診察室

アフターピルの入手方法としては、病院での処方を最もおすすめします。

アフターピルは医薬品なので、医療機関を受診して処方してもらうのが安心な方法です。

基本的には、対面診療で服用に問題がないかどうかのチェックを医師から受けた後の処方をお勧めします。

受診した際に、ピルの服用に関する不安点などについても、医師へ相談することが望ましいと思います。

ただし通院が難しい場合はオンライン診療も行われており、通院せずにオンラインで診療を完結し、薬は後日郵送で届くシステムの病院もあります。

アフターピルの処方を行っていて、対面診療が可能な医療機関は以下のサイトにまとめられています。

緊急避妊薬を処方してもらえる医療機関一覧(厚生労働省)

また、インターネットで検索すると、通販も可能であり処方以外の入手方法もあると気がつかれると思います。しかし、そこには注意点もありますので、詳しくご説明します。

市販品はないから薬局・ドラッグストアでは買えない

日本ではアフターピルの市販品は認められていないため、薬局やドラッグストアでは購入できません。

産科や婦人科での処方が必要になりますが、保険適応はなく、自費での扱いになります。

日本でのアフターピルの使用は他の先進諸国にくらべて大きく出遅れています。先進諸国では、処方箋なしで薬局でアフターピルの購入が可能です。

日本でもアフターピルの市販薬化が検討されており、将来的には薬局やドラッグストアで購入できる可能性はあります。

通販で購入できるものは安心?

通販 ネットショッピング

輸入した医薬品等を他者へ販売したり譲ったりすることは認められていません。個人輸入での購入は輸入者自身の個人的な使用の場合のみ許可されています。

個人で使用するために輸入する場合は、輸入代行サイトなどを利用することになりますが、これには危険が伴います。

品質等の確認が行われていない医薬品は、期待する効果が得られなかったり、人体に有害な物質が含まれている場合があります。

また、日本では未承認のものや、不衛生な場所や方法で製造されたものかもしれません。正規のメーカー品を偽った、偽造製品かもしれません。

薬が偽物で避妊に失敗するばかりか、副作用が強く出てしまったり、有害な物質や違法な物質がふくまれていて、健康被害にあってしまう可能性も考えられます。

日本国内で医薬品医療機器等法を遵守して販売等されている医薬品については、健康被害が生じた場合に、その救済を図る公的制度(医薬品副作用被害救済制度)があります。

しかし、個人輸入された医薬品による健康被害については救済の対象となりません12, 13)

また、アフターピルは服用までのタイムリミットがあるため、個人輸入では輸送に時間がかかり、有効な期限までに薬を服用できないリスクも考えられます。

院長

やはり、病院で処方してもらうのが一番安全で確実であり、医師の立場としてはおすすめします。

まとめ

アフターピルの効果について解説してきました。

  • アフターピルの効果は、排卵を抑制・遅延させる妊娠予防(避妊効果)
  • 避妊に失敗してしまった性行為の後、できるだけ早く服用すると効果的
  • ノルレボは72時間以内、エラワンは120時間以内が効果が得られる時間
  • 受精後は受精前よりもアフターピルの効果が低下する
  • アフターピル服用後の性行為に避妊効果はない
  • 生理中であっても妊娠する可能性があるため、アフターピルの服用は有効

アフターピル(緊急避妊薬)は、避妊に失敗した後の望まない妊娠を防ぐための重要な手段です。

性行為から72時間以内の服用で効果を発揮し、早く服用すればするほど効果は大きくなります。

緊急という言葉が示すとおり、不測の事態のための方法であり、通常の避妊方法としては適していません。また、性感染症の予防もできません。

定期的な避妊や性感染症の予防に関しては、医療機関に相談し、最適な選択肢を検討してください。

アフターピルに関するよくある質問Q&A

院長

アフターピルに関するよくある質問にお答えします。みなさん気にされる点ですので、しっかりと確認してください。

アフターピルを服用して妊娠した赤ちゃんに影響はある?

アフターピルを服用した後に妊娠が発覚しても赤ちゃんに影響はありません。

妊娠初期に経口避妊薬を服用していた妊婦に関する複数の調査の結果、奇形などのリスクの上昇は認められていません14, 15)

アフターピルを使って避妊に失敗しても胎児への悪影響はないと考えられています。

友人からもらったアフターピルを使ってもいいの?

他人が処方をうけたアフターピルを譲ってもらうのは明らかな法律違反で、固く禁じられています。

「病院で処方してもらうのは恥ずかしい」という人も多いですが、アフターピルには服用上の注意点や副作用も多く、医師と相談して処方してもらうのが一番安全で確実です。

どうしても直接病院を受診するのがためらわれるという場合は、オンライン診療という選択肢もあります。

初診から薬の受け取りまで、自宅ですませることができるクリニックもありますので、検討してみてください。

アフターピル服用後に下痢を起こしたが、効果に影響はありますか?

軽度の下痢であれば、アフターピルの吸収や効能に影響はありません16)

ただし、アフターピルの服用後2時間以内に激しい下痢が起こった場合、ピルが十分に吸収されていない可能性があるため、医療従事者に相談の上、再服用を検討する必要があります17)

アフターピルの連続服用の可否とリスクを教えてください。

アフターピル(緊急避妊薬)と連続使用は有害ではありませんが、他の避妊方法と比較すると、効果的な妊娠予防法とは言えません。

さらに、繰り返しの使用は吐き気や嘔吐、頭痛や疲労感、不正出血などの副作用リスクが高まり、月経周期が乱れる可能性があります。

アフターピルは臨時の利用を目的としたもので、通常の避妊方法の代わりとなるものではありません。

服用は緊急時に限定されるべきであり、通常の避妊方法としては適していません。

使用期限切れのアフターピルに効果はある?

使用期限を過ぎたアフターピルは使用しないことが推奨されています。

期限切れのアフターピルを使用する最大のリスクは、効果が低下する可能性がある点です。

ほとんどの薬は有効期限を過ぎても安全で有効です18)が、これは一概には言えず、薬の種類、保管状況、有効期限をどれくらい過ぎているかなど、複数の要因によって有効性が異なります。

アフターピルのようなホルモン剤は、時間の経過とともに効力が失われ、効果が低下することが研究で示されています19)

正しい妊娠予防効果が得られない可能性があるため、緊急避妊として期限切れアフターピルの使用は望ましくありません。

アフターピルを含むすべての薬を使用する前に、必ず使用期限を確認してください。

参考文献

1) 日本産婦人科学会. 緊急避妊法の適正使用に関する指針(平成28年度改訂版)

2) Task Force on Postovulatory Methods of Fertility Regulation. Randomised controlled trial of levonorgestrel versus the Yuzpe regimen of combined oral contraceptives for emergency contraception. Lancet 1998; 352: 428-433 doi:10.1016/S0140-6736(98)05145-9

3) Marions L., Hultenby K., Lindell I., Sun X., Ståbi B., Gemzell Danielsson K. “Emergency contraception with mifepristone and levonorgestrel: mechanism of action.” Obstetrics & Gynecology, 2002.

4) Fine P., Mathe H., Ginde S., Cullins V., Morfesis J., Gainer E. “Ulipristal acetate taken 48-120 hours after intercourse for emergency contraception.” Obstetrics & Gynecology, 2010.

5) 独立行政法人医薬品医療機器総合機構. ノルレボ0.75mg. https://www.pmda.go.jp/drugs/2011/P201100047/39014900_22300AMX00483000_K101_1.pdf

6) An Update on Emergency Contraception. Am Fam Physician. 2014 Apr 1;89(7):545-550.

7) Novikova N., Weisberg E., Stanczyk F.Z., Croxatto H.B., Fraser I.S. “Effectiveness of levonorgestrel emergency contraception given before or after ovulation— a pilot study.” Contraception, 2007.

8) Brache V., Cochon L., Jesam C., Maldonado R., Salvatierra A.M., Levy D.P., Gainer E., Croxatto H.B. “Immediate pre-ovulatory administration of 30 mg ulipristal acetate significantly delays follicular rupture.” Human Reproduction, 2010.

9) Glasier AF, Cameron ST, Fine PM, et al. Ulipristal acetate versus levonorgestrel for emergency contraception: a randomised non-inferiority trial and meta-analysis. Lancet. 2010;375(9714):555–562. doi: 10.1016/s0140-6736(10)60101-8 

10) Wilcox AJ, Dunson D, Baird DD. The timing of the “fertile window” in the menstrual cycle: day specific estimates from a prospective study. BMJ. 2000;321(7271):1259-1262.

11) Fine PM, Mathé H, Ginde S, Cullins V, Morfesis J, Gainer E. Ulipristal acetate taken 48-120 hours after intercourse for emergency contraception. Obstet Gynecol. 2010;115(2 Pt 1):257-263.

12) 厚生労働省. 医薬品等を海外から購入しようとされる方へhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/index.html

13) 厚生労働省. 医薬品等の個人輸入についてhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/topics/tp010401-1.html

14) Bracken, MB. Oral contraception and congenital malformations in offspring: a review and meta-analysis of the prospective studies. Obstet. Gynecol. 76(3 Pt 2), 1990, 552-7.

15) Raman-Wilms, L. et al. Fetal genital effects of first-trimester sex hormone exposure: a meta-analysis. Obstet. Gynecol. 85(1), 1995, 141-9. doi: 10.1016/0029-7844(94)00341-a

16) Festin MP, Peregoudov A, Seuc A, et al. Effect of BMI and body weight on pregnancy rates with LNG as emergency contraception: analysis of four WHO HRP studies. Contraception. 2017;95(1):50-54.

17) World Health Organization. Emergency contraception. Fact sheet No. 244. Updated February 2018. Available at: www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/emergency-contraception.

18) Lyon RC, Taylor JS, Porter DA, et al. Stability profiles of drug products extended beyond labeled expiration dates. J Pharm Sci. 2006;95(7):1549-1560.

19) Becker D, Liver O, Mester R, Rapoport M, Ehrenfeld M, Zandman-Goddard G. The analgesic effect of amitriptyline on chronic facial pain, prophylactic effect on headache, and side effects. Acta Neurol Scand. 2008;118(5):301-9.

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