ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)|皮膚科での治療と経過

肌の状態をチェックする

シミの一種であるADM(後天性真皮メラノサイトーシス)をご存じでしょうか?「美白ケアをしているのに、シミが改善しない」「ファンデーションを塗ると余計に目立つ気がする」、それはADMかもしれません。

ADMは、通常のシミよりも皮膚の深い部分に存在し、セルフケアでの改善は難しいと言われています。

当記事では、ADMの特徴や見分け方・原因・治療法・料金についてまとめました。

この記事の執筆者

石川 聡司
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)

北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。品川美容外科にて美容外科医として3年間の研鑽を積み、2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。

婦人科全般の診療のほか、美容医療では美肌治療、美容整形をはじめ脱毛・アートメイクなど幅広く対応する。

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目次

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)の特徴・見分け方

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)は、皮膚の深い部分(真皮層)に現れる色素班です。シミのひとつですが、医学的には後天性のアザの一種とも考えられています。

通常、数ミリ程度の灰褐色や茶褐色・青紫色の斑点が散在して、頬の上辺りに左右対称に出現します。

他のシミと比べてメラニン色素が深い層にあるため、表皮との距離によっては色が変化して見える場合も。一般的にメラニン色素は、皮膚の奥にあるほど青っぽく、表皮に近いほど褐色に見える傾向にあります。

また、ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)は女性の方が男性より10倍ほど発症しやすいのも特徴です。

発症する年齢には個人差がありますが、20代前半から30代がピークと言われています。日本や韓国・中国などの東アジアの人種に多く見られる疾患です。

そばかす・肝斑との違い 

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)は、そばかすや肝斑と似ている部分があるうえ、混在しているケースも多く、見分けが非常に難しいです。

それぞれの特徴と見分けポイントをまとめました。

シミの種類特徴見分けポイント
そばかす
(雀卵斑)
・メラニン色素が表皮に存在する
・目鼻周りと頬に生じやすいが、紫外線が当たる全身に現れる
・幼少期に現れ、思春期に目立ちやすい
・細かく小さな薄茶色の斑点
・横一線に広がるように現れる
肝斑・メラニン色素が表皮に存在する
・主に頬や額、鼻下、下あごなどの顔面に現れる
・30代〜40代の女性に多い
・左右対称
・輪郭のはっきりしない薄褐色のシミがモヤっと広がる
・色が抜けたように見える場合もある
ADM
(後天性真皮メラノサイトーシス)
・メラニン色素が真皮層に存在する
・頬や下まぶた周辺にできやすい
・アザの一種とも言われる
・10代後半〜30代の女性に多い
・左右対称
・灰褐色や青紫色のくすんだ色調
・パラパラとした斑点状のシミが集まっているように見える
・ファンデーションで隠そうとすると逆に目立ちやすい

ADMを見分ける1番のポイントは「色味の違い」です。そばかすや肝斑は薄褐色のものが多いのに対して、ADMは茶褐色や灰褐色・青紫色などさまざまな色調でくすんだように見えます。

ファンデーションやコンシーラーを塗ると、逆に色が浮いたように見えてしまう場合は、ADMの可能性があるでしょう。

シミを気にする女性

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)の原因 

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)の原因ははっきりとはわかっていませんが、主に以下の要素が関係していると考えられます。

  • 遺伝
  • ホルモンバランスの変化
  • 紫外線ダメージ
  • 摩擦による刺激

これらの影響によって、真皮層に存在するメラノサイトが活性化し、過剰にメラニン色素が生成されて発症します。

しかし、原因が明確ではないうえに皮膚の深い部分に現れるため、予防やセルフケアでの改善は非常に難しいです。皮膚科での適切な治療が必要となります。

皮膚科での治療方法 

真皮層にメラニン色素が蓄積するADM(後天性真皮メラノサイトーシス)に対しては、通常のシミ・そばかす治療によく用いられる光治療(IPL)やピーリングはほぼ無効と言われています。

高い出力で皮膚の深い部分まで届くQスイッチレーザーやピコレーザーが効果的でしょう。ただし、一般的なシミと比べると、治療期間が長引く傾向にあります。

施術の主な副作用・リスク:赤み、かゆみ、腫れ、ひりつき、発疹などの肌の炎症

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Qスイッチレーザー

高い出力のレーザーを短時間で照射して、皮膚へのダメージを最小限に抑えながらメラニン色素を破壊し、シミやアザを改善。Qスイッチレーザーは波長(レーザー光の長さ)によっていくつかの種類に分けられます。

ADMの治療には「Qスイッチルビーレーザー」と「Qスイッチアレキサンドライトレーザー」が適しています。約3ヶ月に1度、2〜3回の治療でほぼ完治できるでしょう。

・Qスイッチルビーレーザー

真皮層のメラニン色素を破壊するのに適した694nmの波長を持つレーザーです。

黒っぽい色素斑やアザ、タトゥーへの反応がよく、Qスイッチレーザーのなかでも少ない回数・期間で治療できるのが特徴。レーザーの機種にもよりますが、かさぶたや炎症後色素沈着が生じやすく、ダウンタイムは比較的長いです。

・Qスイッチアレキサンドライトレーザー

より皮膚の深い層まで届く、 755nmの波長を持つレーザーです。

メラニン色素の多い日本人の肌と相性がよく、シミ・ソバカスやアザ、タトゥー除去のほか、医療レーザー脱毛にも用いられます。

ピコレーザー

皮膚の浅いところにあるシミから真皮層にあるシミまで、あらゆる種類のシミに対応しているレーザーです。

衝撃波によりメラニン色素を粉砕するピコ秒で照射するため、正常な皮膚への負担を最小限に抑えながらADMを治療できます。

通常2〜5回の治療で完治でき、ダウンタイムは比較的少ないです。また、レーザー照射後の炎症後色素沈着の心配もほとんどありません。

レーザー治療の準備

術後の経過 

レーザー照射後は数時間赤みやヒリヒリ感が続きます。メイクは可能ですが、1週間程度は照射部位に保護テープを貼らなければいけません。

患部にはかさぶたが生じ、約1週間〜10日で自然に剥がれ落ちます。通常2〜3回の治療が必要となるため、完治までには6ヶ月〜1年程度かかると考えておきましょう。

また、ADMは他のシミよりも治療後の炎症後色素沈着が起こりやすいです。シミが広がったように見えてしまうため心配される方も多いですが、時間の経過とともに消失していきます。

レーザー機器によってもダウンタイムは異なりますので、カウンセリングで相談しながら自分に合う治療法を選んでください。

レーザー後にかさぶたができないとき

レーザー後にかさぶたができなくても、治療効果に影響はありません。特にADMのような皮膚の深い部分にできるシミは、表皮にかさぶたができないケースも比較的多いです。

治療後の注意点・アフターケア

レーザー治療後から数ヶ月間は、肌が通常より敏感な状態です。

刺激によって患部が治りにくくなったり、炎症後色素沈着が悪化したりするおそれがありますので、以下のケアを心がけましょう。

アフターケアをしっかりと行えば、より早い回数で治療できる可能性が高まります。

  • 紫外線対策を徹底する
  • 保湿ケアを行う
  • 衣服による摩擦や圧迫に気を付ける
  • メラニン色素の生成を抑える内服薬や外用薬を使用する

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)治療にかかる費用

クリニックによって値段に差はありますが、通常ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)の治療は照射範囲が広くなるにつれて値段も上がります。

1回の目安料金は以下の通りです。

<治療費の目安>

Qスイッチレーザー……約20,000円〜40,000円

ピコレーザー……約20,000円~55,000円

これに初診料、再診料、処方箋料などが追加されます。約2〜3回の治療を繰り返すとなると、完治まではおおよそ60,000円~150,000円かかると言えます。

保険適用される?

ADMはアザの一種とも考えられています。アザ治療のカテゴリーに含めることで保険適用が可能です。

3割負担の場合は、1回6,000円~12,000円程度だと理解しておきましょう。

すべての治療法に保険がきくわけではありません。保険が適用されるのは、QスイッチルビーレーザーとQスイッチアレキサンドライトレーザーの一部の機種のみです。また、クリニックごとに条件はさまざまですので、適用可能かどうかは事前に受診されるクリニックに確認してください。

美白化粧品で消すことはできる?

一般的に化粧品の有効成分は、肌の角質層までしか浸透しません。ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)は真皮層に存在するため、美白化粧品による改善は期待できないでしょう。

とはいえ、ADMは他のシミやそばかす・肝斑と混在しているケースが多いため、美白化粧品が100%無効であるとは言いきれません。

レーザーの治療効率を上げるためには、表皮のメラニン色素、つまり他のシミ・そばかすは少ない状態が望ましいと考えられるためです。

ADM自体の改善は難しいですが、表皮のメラニン色素の生成を抑えるためにも、積極的に美白化粧品を取り入れるとよいでしょう。

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