「マンジャロを使うとうつ病になるって本当?」
マンジャロを使っている方、これから使おうと考えている方の中には、ネットやSNSで「GLP-1受容体作動薬は精神面に悪影響がある」「うつ病になる可能性がある」といった情報を見て、不安になった方もいるのではないでしょうか。
実際、GLP-1受容体作動薬と精神医学的な問題との関連を調べた研究はあり、なかには「5年間で39.64%に精神医学的なアウトカムがみられた」という、一見すると驚くような数字を報告した研究もあります。
しかし、この数字だけを見て「マンジャロを使うとうつ病になる」と考えるのは適切ではありません。
39.64%という数字は、うつ病になった人の割合を示しているわけではなく、また、この研究だけでマンジャロやGLP-1受容体作動薬が精神疾患を引き起こすことが証明されたわけでもありません。
さらに、その後に発表された大規模な研究では、GLP-1受容体作動薬によって精神医学的な有害事象が増えることを支持する明確な結果は確認されていません。
この記事では、マンジャロとうつ病・不安症などの精神面への影響について、気になる「39.64%」という数字の意味から最新の研究結果まで、できるだけわかりやすく解説します。
「マンジャロを使っても大丈夫なの?」と心配している方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
この記事の執筆者

石川 聡司
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)
北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。品川美容外科にて美容外科医として3年間の研鑽を積み、2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。
婦人科全般の診療のほか、美容医療では美肌治療、美容整形をはじめ脱毛・アートメイクなど幅広く対応する。
マンジャロを使うとうつ病になる?
「マンジャロを使うとうつ病になるの?」
この疑問に対する現在の結論は、マンジャロを使ったことによって、うつ病になると明確に証明されたわけではありません。
マンジャロ(チルゼパチド)は、GLP-1受容体とGIP受容体に作用する薬です。主に血糖値の改善や体重減少を目的として使用されます。
一方で、GLP-1受容体作動薬と精神面との関係については、これまでにもさまざまな研究が行われています。
なかには、GLP-1受容体作動薬を使用した人で、うつ病や不安症などの精神医学的な問題が多くみられたと報告した研究もあります。
そのため、
「GLP-1を使うと精神疾患が増えるのでは?」
という不安につながっています。
しかし、ここで重要なのが、「関連があった」ことと「薬が原因だった」ことは同じではないという点です。
たとえば、GLP-1受容体作動薬を使用している人は、もともと肥満や糖尿病などの健康上の問題を抱えていることがあります。肥満や慢性的な病気そのものが、うつ病や不安症などの精神面と関連することも知られています。
つまり、ある研究で「GLP-1を使用している人に精神医学的な問題が多かった」としても、
「GLP-1を使用したから精神疾患になった」
と単純に判断することはできません。
実際、その後に発表されたより大規模な研究では、GLP-1受容体作動薬によって精神医学的な有害事象が増加することを示す明確な結果は確認されていません。
そのため、現時点では、
「マンジャロを使うとうつ病になる」と過度に心配する必要はない
と考えられます。
ただし、マンジャロを使用している期間に気分の落ち込みや強い不安など、気になる変化があった場合は、薬のせいだと自己判断するのではなく、処方した医師に相談することが大切です。
次のセクションでは、なぜ「マンジャロやGLP-1を使うと精神疾患が増える」という情報が広まったのか、そのきっかけとなった研究について詳しく見ていきます。
患者さんマンジャロを使うとうつ病になるんですか?
Dr.石川現時点では、マンジャロがうつ病を引き起こすと明確に証明されたわけではありません。ただ、使用中に気分の変化があれば、自己判断せず医師に相談してください。
「39.64%」という研究結果は本当?
「GLP-1受容体作動薬を5年間使うと、39.64%の人に精神的な影響が出る」という情報を見て、不安になった方もいるかもしれません。
実際に、2024年に発表された大規模なコホート研究では、GLP-1受容体作動薬を使用した肥満患者の5年間の精神医学的アウトカムの累積発生率が39.64%だったと報告されています。
研究では、GLP-1受容体作動薬を使用した約16万人と、使用していない約16万人を比較しています。
その結果、5年間で「何らかの精神医学的疾患」が確認された割合は、
- GLP-1受容体作動薬を使用したグループ:39.64%
- 使用していないグループ:23.38%
でした。
数字だけを見ると、「GLP-1を使うと精神疾患になる人が約4割もいるの?」と驚いてしまいますよね。
しかし、ここには非常に重要な注意点があります。
39.64%=うつ病になった人の割合ではありません
この研究で使われている「any psychiatric disease」は、うつ病だけを意味するものではありません。
研究では、うつ病だけでなく、不安症などを含む複数の精神医学的なアウトカムをまとめて評価しています。
実際、報告された主な内訳は、
- うつ病:約7.02%
- 不安症:約30.03%
- 自殺念慮・自殺企図:約3.64%
となっています。
つまり、「マンジャロを使った人の39.64%がうつ病になった」という意味ではありません。
ここは、インターネット上で数字だけが切り取られて紹介される場合に、特に誤解されやすいポイントです。
さらに、この研究だけで「GLP-1が原因」とは言えません
もう一つ重要なのが、この研究が**観察研究(コホート研究)**であることです。
観察研究では、実際の患者さんのデータを追跡して「薬を使用した人と使用していない人で、どのような違いがあったか」を調べることはできます。
しかし、
「GLP-1受容体作動薬を使用した」
↓
「その結果、精神疾患になった」
という因果関係まで証明することはできません。
GLP-1受容体作動薬を使用する人と、使用しない人では、もともとの健康状態や生活背景などに違いがある可能性があるためです。
したがって、この研究結果から言えるのは、
「GLP-1受容体作動薬を使用したグループで、精神医学的アウトカムが多く確認された」
というところまで。
「GLP-1受容体作動薬が精神疾患を引き起こした」と結論づけることはできません。
では、なぜ使用群ではこのような差がみられたのでしょうか?
次のセクションでは、「39.64%」という数字だけでは判断できない理由を、もう少し詳しく見ていきます。
患者さん39.64%も精神疾患になったって聞いて、怖いです……。
Dr.石川ここは注意が必要です。39.64%は『うつ病になった人の割合』ではありません。精神疾患に関する複数のアウトカムをまとめた数字なので、この数字だけでマンジャロが危険とは判断できません。
39.64%だけでマンジャロが原因とは言えない理由
「GLP-1受容体作動薬を使用した人のほうが精神医学的な問題が多かった」という研究結果を見ると、どうしても、
「GLP-1を使ったから精神的な問題が増えたのでは?」
と考えてしまいます。
しかし、医学研究では、2つの出来事が一緒に起きているからといって、必ずしも一方がもう一方の原因とは限りません。
今回の研究結果を理解するうえでも、ここは非常に重要なポイントです。
肥満そのものが精神面と関係している可能性
マンジャロは、糖尿病や肥満症などの治療に使用されます。
一方で、肥満のある人では、うつ病や不安症などの精神面の問題を抱えているケースもあります。
そのため、
「マンジャロを使った人に精神医学的な問題が多かった」
という結果が出ても、それがマンジャロの作用によるものなのか、それとももともとの健康状態によるものなのかを完全に区別するのは簡単ではありません。
GLP-1を使用する人と、使用しない人は同じではない
また、観察研究では、薬を使用する人と使用しない人を研究者が完全に同じ条件にそろえることはできません。
年齢や性別だけでなく、
- 肥満の程度
- 糖尿病などの基礎疾患
- これまでの治療歴
- 生活習慣
- もともとの精神状態
- 医療機関を受診する頻度
など、さまざまな違いが存在する可能性があります。
こうした要因を交絡因子と呼びます。
たとえば、GLP-1受容体作動薬を使用している人は、健康上の問題を抱えているため医療機関を受診する機会が多く、その結果として精神面の症状も発見されやすくなっていた、という可能性も考えられます。
「関連」と「原因」は違います
医学研究を読むときには、
「AとBに関連があった」
ことと、
「AがBを引き起こした」
ことを分けて考える必要があります。
今回の研究からわかるのは、GLP-1受容体作動薬を使用したグループで、精神医学的アウトカムが多く確認されたという関連性です。
それだけで、
「マンジャロがうつ病を引き起こす」
とは判断できません。
むしろ、薬の安全性を評価するときには、こうした観察研究だけではなく、より条件をそろえて比較できるランダム化比較試験(RCT)や、それらをまとめたメタ解析など、複数のエビデンスを総合して判断することが重要です。
そして、実際にGLP-1受容体作動薬の精神面への影響については、より大規模な研究も行われています。
では、そうした研究ではどのような結果が出ているのでしょうか?
次のセクションで詳しく見ていきます。
患者さんじゃあ、その研究だけではマンジャロが原因とは言えないんですね?
Dr.石川はい。観察研究なので、『薬を使ったから精神疾患になった』という因果関係までは証明できません。もともとの健康状態や生活環境など、ほかの要因も考える必要があります。
大規模な研究ではマンジャロ・GLP-1の精神面への影響は?
ここまで読んで、
「では、実際にGLP-1受容体作動薬を使った人の精神面には、どのような影響があるの?」
と気になる方も多いでしょう。
そこで重要になるのが、複数の臨床試験をまとめて分析した研究です。
2025年に『JAMA Psychiatry』に掲載された系統的レビュー・メタ解析では、GLP-1受容体作動薬の精神面への影響について、80件のランダム化比較試験、10万7,860人のデータが解析されました。
ランダム化比較試験(RCT)は、薬を使用するグループとプラセボなどを使用するグループを比較することで、薬による影響をより評価しやすい研究方法です。
精神医学的な有害事象は増えていなかった
このメタ解析では、GLP-1受容体作動薬を使用したグループとプラセボ群を比較したところ、
重篤な精神医学的有害事象のリスクに有意な差は認められませんでした。
また、重篤ではない精神医学的な有害事象についても、GLP-1受容体作動薬による有意な増加は確認されませんでした。
つまり、少なくとも現在までに蓄積されているランダム化比較試験のデータからは、
「GLP-1受容体作動薬を使うことで、精神医学的な副作用が増える」
という明確な結果は出ていません。
うつ症状についても悪化は確認されていない
さらに、この研究では抑うつ症状についても解析されています。
その結果、GLP-1受容体作動薬を使用したグループとプラセボ群との間で、抑うつ症状の変化に有意な差は認められませんでした。
これは、「マンジャロを使うとうつ病になるのでは?」と心配している方にとって、重要なポイントです。
もちろん、これだけで「マンジャロを使えば絶対にうつ病にならない」と言えるわけではありません。
しかし、
「マンジャロなどのGLP-1受容体作動薬が、うつ病や精神疾患を引き起こす」という説を裏付ける十分な証拠は、現時点では確認されていない
と考えるのが適切です。
精神面のQOLが改善したという結果も
さらに興味深いことに、このメタ解析では、GLP-1受容体作動薬によって精神的な健康に関連するQOL(生活の質)が改善したという結果も報告されています。
もちろん、これは「GLP-1がうつ病を治療する」という意味ではありません。
体重減少や糖代謝の改善などによって、身体的な健康状態や生活の質が改善し、それが精神面にも良い影響を与えている可能性など、さまざまな要因が考えられます。
また、この研究で扱われたGLP-1受容体作動薬には、リラグルチドやセマグルチドなど複数の薬剤が含まれており、マンジャロ(チルゼパチド)だけを対象とした研究ではありません。
そのため、この結果をそのまま「マンジャロについて完全に証明された」と考えるのではなく、GLP-1受容体作動薬全体についての現在のエビデンスとして捉えることが大切です。
では、さらに気になる「自殺念慮や自傷行為」についてはどうなのでしょうか?
次のセクションでは、GLP-1受容体作動薬と自殺念慮・自傷行為との関係について、最新の研究結果を見ていきます。
患者さんもっと大きな研究では、どうだったんですか?
Dr.石川複数の臨床試験をまとめた研究では、GLP-1受容体作動薬によって精神医学的な有害事象や抑うつ症状が明らかに増えるという結果は確認されていません。
マンジャロで自殺したくなる?自殺念慮との関係
「マンジャロを使うと、うつ病だけでなく自殺したくなることもあるの?」
ここまで心配する方もいるかもしれません。
GLP-1受容体作動薬については、過去に自殺念慮(自殺したいと考えること)や自傷行為との関連が問題になったことがあり、安全性について調査が行われてきました。
しかし、現在までに行われた研究では、GLP-1受容体作動薬が自殺念慮や自殺行動のリスクを増加させるという明確な証拠は確認されていません。
大規模な研究でもリスク増加は確認されていない
2025年に発表された系統的レビュー・メタ解析では、GLP-1受容体作動薬と自殺・自傷行為との関係について、複数のランダム化比較試験などのデータが検討されています。
その結果、GLP-1受容体作動薬の使用によって、自殺念慮や自殺行動のリスクが明らかに高くなるという結果は得られませんでした。
つまり、
「マンジャロを使うと自殺したくなる」
という情報を、そのまま事実として受け取る必要はありません。
ただし、これは「マンジャロを使っている人には自殺念慮が絶対に起こらない」という意味ではありません。
もともと精神的な不調を抱えている方や、強いストレスを感じている方などでは、薬とは別の理由で気分が大きく変化することもあります。
海外の規制当局も安全性を評価している
GLP-1受容体作動薬と自殺念慮・自殺行動の関係については、海外の規制当局も調査を行っています。
米国食品医薬品局(FDA)は2026年1月、入手可能なデータを評価した結果、GLP-1受容体作動薬が自殺念慮・自殺行動のリスクを高めることは確認できなかったとして、関連する警告表示の削除を求めました。
これは、GLP-1受容体作動薬の精神面への安全性を考えるうえで重要な動きです。
ただし、医学では「リスクがゼロ」と証明することは簡単ではありません。
そのため、
「自殺念慮のリスクが増えるという明確な証拠はない」
という現在のエビデンスと、
「使用中に実際に精神状態が変化した場合には、きちんと医師へ相談する」
という実際の対応は、分けて考える必要があります。
もしマンジャロを使用しているときに、強い気分の落ち込みや、自分を傷つけたいという気持ちなどが出てきた場合は、薬のせいだと自己判断して我慢せず、できるだけ早く医療機関に相談してください。
特に自分を傷つける可能性があるほど切迫している場合は、一人で抱え込まず、周囲の人や医療機関、地域の救急サービスなどにすぐ助けを求めることが大切です。
次のセクションでは、実際にマンジャロを使い始めてから「なんとなく気分が落ち込む」「メンタルが不安定になった気がする」と感じた場合に、どのように考えればよいのかを解説します。
患者さんマンジャロで自殺したくなることはあるんでしょうか?
Dr.石川現在の研究では、GLP-1受容体作動薬によって自殺念慮や自殺行動が明らかに増えるとは確認されていません。ただし、実際にそのような気持ちが出た場合は、研究結果に関係なく、すぐに医療機関へ相談してください。
マンジャロを使ってから気分が落ち込む場合はどうすればいい?
ここまでの研究結果を見ると、マンジャロを含むGLP-1受容体作動薬が、うつ病や自殺念慮を増加させるという明確な証拠は確認されていません。
では、実際にマンジャロを使い始めてから、
「なんとなく気分が落ち込む」
「以前より不安を感じる」
「精神的に不安定になった気がする」
という変化を感じた場合は、どうすればよいのでしょうか。
「マンジャロのせい」と決めつけないことも大切
薬を使い始めたタイミングと、気分の変化が起こったタイミングが重なると、「マンジャロが原因なのでは?」と思ってしまいます。
しかし、気分の変化にはさまざまな要因が関係します。
たとえば、
- 食事量が大きく変化した
- 急激に体重が減った
- 睡眠不足が続いている
- 仕事や家庭などで強いストレスがある
- もともと不安や気分の落ち込みがあった
- 他の薬を服用している
などです。
そのため、マンジャロを使っているからといって、気分の変化がすべてマンジャロによるものとは限りません。
一方で、「薬が原因ではないだろう」と自己判断して放置するのもおすすめできません。
気になる症状が続く場合は医師に相談
マンジャロの使用中に気分の落ち込みや不安などが続く場合は、処方した医師に相談しましょう。
医師に相談することで、
- マンジャロとの関連性
- 他の薬との関係
- 体重減少や食事量の変化
- 睡眠や生活習慣
- もともとの精神状態
などを含めて、総合的に判断してもらえます。
必要に応じて、投与量や治療方針を見直すこともあります。
「副作用かもしれないから、今日から自己判断でマンジャロをやめよう」
とするのではなく、まず医療者に相談することが大切です。
特に注意したいのは、強い気分の落ち込み
一時的な気分の変化であれば、生活環境や体調など別の要因が関係している可能性もあります。
しかし、
- 強い気分の落ち込みが続く
- 何をしても楽しいと感じられない
- 日常生活に支障が出ている
- 強い不安が続いている
- 自分を傷つけたい気持ちがある
といった場合には、軽く考えないようにしましょう。
特に自分を傷つけたい、自殺したいという気持ちがある場合は、マンジャロとの因果関係を自分で判断する必要はありません。
できるだけ早く医療機関などに相談し、緊急性が高い場合には救急サービスを利用してください。
マンジャロが原因かどうかを判断することよりも、今起きている精神的なつらさに適切な対応をすることが優先されます。
では、実際にマンジャロを使用する際には、どのような精神面の変化に注意しておけばよいのでしょうか。
次のセクションで、具体的なチェックポイントを整理します。
患者さんマンジャロを始めてから気分が落ち込むようになったら?
Dr.石川マンジャロだけが原因とは限りません。食事量の変化、体重減少、睡眠、ストレスなども関係します。症状が続くなら、薬を自己判断で中止する前に医師へ相談しましょう。
マンジャロ使用中に注意したい精神面の症状
現在の研究では、マンジャロを含むGLP-1受容体作動薬が、うつ病や自殺念慮などを増加させるという明確な証拠は確認されていません。
そのため、マンジャロを使用しているからといって、必要以上に精神面への影響を心配する必要はありません。
ただし、マンジャロを使っている期間に明らかな心身の変化を感じた場合は、薬との関係を含めて医師に相談することが大切です。
こんな変化があれば相談しましょう
たとえば、次のような症状が続いている場合です。
- 気分が落ち込む日が増えた
- 何をしても楽しいと感じられない
- 不安や焦りを強く感じるようになった
- イライラすることが増えた
- 夜眠れない、または眠りすぎる
- 食事や仕事など、普段の生活に影響が出ている
- 以前とは明らかに気分が違うと感じる
これらの症状があるからといって、必ずしもマンジャロが原因とは限りません。
しかし、「マンジャロを使い始めてから変化した」と感じるのであれば、そのことも含めて医師に伝えてみましょう。
特に注意が必要なのは「自分を傷つけたい」という気持ち
最も注意したいのは、
「消えてしまいたい」
「自分を傷つけたい」
「死にたい」
といった気持ちが出てきた場合です。
このような場合は、「マンジャロの副作用なのかどうか」を自分で判断する必要はありません。
薬との関係が明らかでなかったとしても、精神的につらい状態そのものに対して適切なサポートが必要です。
できるだけ早く医療機関や周囲の信頼できる人に相談してください。
切迫した危険を感じる場合には、一人で抱え込まず、地域の救急サービスなどを利用して、すぐに助けを求めることが大切です。
「念のため相談する」は悪いことではありません
マンジャロを使っていて精神面の変化があったとき、
「こんなことで病院に相談していいのかな?」
と迷う必要はありません。
症状が軽いうちに相談することで、マンジャロとの関連だけでなく、睡眠や食事、体重変化、他の薬、生活環境なども含めて原因を確認できます。
また、マンジャロを続けるか、投与量をどうするかといった治療方針についても、医師と一緒に検討できます。
大切なのは、ネット上の情報だけで「マンジャロが原因だ」と決めつけたり、逆に「絶対に薬とは関係ない」と考えたりしないことです。
気になる変化があれば、医師に伝える。
これが、マンジャロを安心して使い続けるための基本的な考え方です。
患者さんどんな症状に注意すればいいですか?
Dr.石川気分の落ち込み、強い不安、イライラ、不眠などです。特に日常生活に支障が出るほどの変化や、自分を傷つけたい気持ちがある場合は、早めに医療機関へ相談してください。
マンジャロで精神面が改善する可能性はある?
ここまで読むと、「マンジャロは精神面に悪影響がないの?」という疑問が残るかもしれません。
実は、GLP-1受容体作動薬については、精神面に悪影響を与える可能性だけではなく、精神的な健康や生活の質にプラスの影響を与える可能性も研究されています。
もちろん、マンジャロはうつ病を治療するための薬ではありません。
ここでいう「精神面へのプラスの影響」は、主に体重や健康状態の改善などを通じた影響として考える必要があります。
体重が減ることで生活の質が改善することも
肥満がある場合、体重そのものだけでなく、
- 外出するのがおっくうになる
- 体を動かすのがつらい
- 人目が気になる
- 服を選ぶのが嫌になる
- 健康状態への不安がある
など、日常生活のさまざまな場面でストレスを感じることがあります。
マンジャロによって体重が減少し、身体を動かしやすくなったり、健康状態が改善したりすることで、結果的に生活の質(QOL)が良くなる可能性があります。
そして、生活の質が改善することが、精神的な状態にも良い影響を与えることがあります。
研究でも精神的なQOLの改善が報告されている
GLP-1受容体作動薬について複数の臨床試験をまとめた研究では、精神的な健康に関連するQOLについても評価されています。
その結果、GLP-1受容体作動薬を使用したグループでは、プラセボ群と比較して精神的な健康に関連するQOLが改善したことが報告されています。
ただし、これは、
「マンジャロを使えば、うつ病が治る」
という意味ではありません。
また、この研究では複数のGLP-1受容体作動薬が対象となっているため、結果をそのままマンジャロ単独の効果と考えることもできません。
あくまで、GLP-1受容体作動薬による体重や身体的な健康状態の改善が、生活の質や精神面にも良い影響を与える可能性があるという程度に捉えるのが適切です。
「精神に悪い薬」と決めつける必要はない
マンジャロについてネットで情報を調べていると、「うつ病」「不安」「自殺念慮」など、不安になる言葉が目に入ることがあります。
しかし、医学的なエビデンスを総合すると、現在のところ、
「マンジャロを使うと精神状態が悪化する薬である」
と一括りに考えることはできません。
一方で、マンジャロを使用している間に実際に気分の変化を感じた場合には、その症状を無視する必要もありません。
大切なのは、
「マンジャロは危険」でも「絶対に問題ない」でもなく、現在わかっている研究結果をもとに冷静に判断すること
です。
では最後に、ここまでの内容を整理して、「マンジャロを使うとうつ病になるの?」という疑問に対する答えをまとめてみましょう。
患者さん逆に、マンジャロで気持ちが楽になることもありますか?
Dr.石川体重減少や健康状態の改善によって、精神的な満足度や生活の質が改善する可能性はあります。ただし、マンジャロはうつ病を治療する薬ではありません。
マンジャロを使うとうつ病になる?この記事のまとめ
「マンジャロを使うとうつ病になるのでは?」という不安について、現在わかっている研究結果を整理しました。
GLP-1受容体作動薬については、5年間の観察研究で精神医学的アウトカムの累積発生率が39.64%だったという報告があります。
しかし、この39.64%という数字は**「うつ病になった人が39.64%いた」という意味ではありません。**
また、この研究は観察研究であるため、GLP-1受容体作動薬の使用と精神医学的な問題との関連は示せても、薬が原因で精神疾患が起こったという因果関係まで証明することはできません。
さらに、2025年に発表された大規模な系統的レビュー・メタ解析では、80件のランダム化比較試験、10万人以上のデータが解析され、GLP-1受容体作動薬による精神医学的有害事象の明確な増加は確認されませんでした。
自殺念慮や自殺行動についても、現在の研究ではGLP-1受容体作動薬によってリスクが増加するという明確な証拠は確認されていません。
そのため、
「マンジャロを使うと、うつ病や精神疾患になる」
と過度に心配する必要はないでしょう。
ただし、マンジャロを使用している期間に、気分の落ち込みや強い不安など、明らかな精神面の変化を感じた場合は、自己判断で原因を決めつけず、処方した医師に相談することが大切です。
マンジャロの使用を検討している方も、ネット上の一つの研究結果だけで判断するのではなく、現在の健康状態や服用中の薬などを含めて、医師と相談しながら治療を進めていきましょう。
「39.64%」という数字だけで、マンジャロを怖がる必要はありません。
研究結果を正しく理解したうえで、自分に合った治療かどうかを医師と一緒に判断することが大切です。
患者さん結局、マンジャロは精神面についてどう考えればいいんですか?
Dr.石川『マンジャロを使うとうつ病になる』と考える十分な根拠は、現時点ではありません。ただし、使用中に気分の変化があれば、我慢せず医師に相談することが大切です。
マンジャロの使用が心配な方へ
「マンジャロを使ってみたいけれど、精神面への影響が心配」
「ネットでいろいろな情報を見て、本当に使って大丈夫なのかわからなくなった」
そんな場合は、自己判断で使用を決めたり、中止したりするのではなく、医師に相談することをおすすめします。
マンジャロが自分に適しているかどうかは、体重や血糖値だけでなく、現在の健康状態やこれまでの病歴、服用している薬などを総合的に確認したうえで判断する必要があります。
また、すでにマンジャロを使用していて、
- 気分の落ち込みが続いている
- 強い不安を感じる
- 以前と比べて精神状態が変わった気がする
- マンジャロを続けてよいのか不安
と感じている場合も、処方した医師に相談してみましょう。
マンジャロが原因なのか、それとも別の要因が関係しているのかを自分だけで判断する必要はありません。
医師に相談しながら、安全性を確認したうえで治療を続けていくことが大切です。
マンジャロは、正しく使用すれば体重管理や血糖コントロールに役立つ薬です。
「精神面への影響が怖いから」という理由だけで、必要以上に不安になる必要はありません。
気になることがあれば、一人で悩まず医師に相談してみましょう。
患者さん使ってみたいけど、やっぱり不安です……。
Dr.石川不安なまま自己判断で始める必要はありません。マンジャロが自分に合っているか、持病や服用中の薬なども含めて、まず医師に相談してみましょう。
患者さん通院する時間がない場合はどうすればいいですか?
Dr.石川オンライン診療に対応している医療機関もあります。忙しい方は、そうした選択肢を利用するのも一つの方法ですよ。
ここでお知らせをさせていただきます。
GLP-1注射薬「マンジャロ」がオンラインで購入できるクリニック「レバクリ」のご紹介です。
近隣にマンジャロを取り扱っているクリニックがない、クリニック受診に抵抗がある、多忙で受診する時間がない、安くマンジャロを手に入れたい、そんな方におすすめです!






























マンジャロとうつ病に関するよくある質問
- マンジャロを使うとうつ病になりますか?
-
現時点では、マンジャロを使用するとうつ病になると明確に証明されていません。
GLP-1受容体作動薬について精神医学的な問題との関連を調べた研究はありますが、観察研究の結果だけから「薬がうつ病を引き起こした」と判断することはできません。
その後に行われた大規模な研究でも、GLP-1受容体作動薬による精神医学的有害事象の明確な増加は確認されていません。
- 「5年間で39.64%」という数字は何ですか?
-
これは、GLP-1受容体作動薬を使用した人における**「何らかの精神医学的アウトカム」の5年間の累積発生率**として報告された数字です。
39.64%の人がうつ病になったという意味ではありません。
うつ病だけでなく、不安症など複数の精神医学的な問題が含まれているため、数字だけを見て「4割近くがうつ病になる」と考えるのは誤りです。
- マンジャロを使っていて気分が落ち込んだら?
-
気分の落ち込みが続く場合は、処方した医師に相談してください。
マンジャロとの関連だけでなく、睡眠、食事量、急激な体重変化、生活上のストレス、他の薬など、さまざまな要因を確認する必要があります。
自己判断で薬を中止するのではなく、医師と相談しながら対応しましょう。
- マンジャロで自殺したくなることはありますか?
-
現在の研究では、GLP-1受容体作動薬が自殺念慮や自殺行動のリスクを増加させるという明確な証拠は確認されていません。
ただし、使用中に「死にたい」「自分を傷つけたい」などの気持ちが出てきた場合は、薬との因果関係を自分で判断する必要はありません。
そのような場合は、できるだけ早く医療機関や周囲の人に相談してください。
- 精神的な病気がある人でもマンジャロを使えますか?
-
精神疾患の治療歴があるからといって、必ずしもマンジャロを使用できないとは限りません。
ただし、現在の症状や治療内容、服用している薬などによって判断は変わります。
マンジャロの使用を検討している場合は、自分の判断だけで使用を始めず、医師に現在の治療状況を伝えたうえで相談することが大切です。
マンジャロとうつ病について押さえておきたいポイント
ここまで見てきたように、「マンジャロを使うとうつ病になるのでは?」という不安については、現時点でマンジャロがうつ病を引き起こすと明確に証明されたわけではありません。
一方で、マンジャロを使用している期間に気分の落ち込みや不安感などを感じる人がいる可能性は否定できません。
大切なのは、症状が出たときに「マンジャロのせい」と決めつけることでも、「薬とは関係ない」と我慢することでもありません。
「39.64%」という数字だけで判断しない
SNSやインターネットでは、研究結果の一部分だけが切り取られて紹介されることがあります。
特に「39.64%」という数字は注意が必要です。
この数字は、GLP-1受容体作動薬を使用した人における精神疾患関連のアウトカム全体の累積確率であり、「39.64%の人がうつ病になった」という意味ではありません。
また、この研究で調査された薬剤はリラグルチドやセマグルチドであり、マンジャロ(チルゼパチド)そのものを5年間使用した人を調べた研究ではありません。
最新の研究では「明確な悪化」は確認されていない
一方、複数の臨床試験をまとめた研究では、GLP-1受容体作動薬によって精神医学的な有害事象や抑うつ症状が明らかに増えるという結果は確認されていません。
ただし、こうした研究の多くはマンジャロだけを対象にしたものではなく、使用期間も比較的短いものが中心です。
そのため、
「マンジャロは精神面に絶対に影響しない」
とまで言い切ることも適切ではありません。
気分の変化があれば医師に相談する
マンジャロを使い始めてから、
- 気分が落ち込む
- 何をしても楽しいと感じない
- 強い不安を感じる
- イライラしやすくなった
- 眠れない、または眠りすぎる
- 食事や仕事など日常生活に支障が出ている
といった変化が続く場合は、自己判断で様子を見続けるのではなく、処方した医師に相談しましょう。
特に「消えてしまいたい」「自分を傷つけたい」といった気持ちがある場合は、研究結果を気にして我慢する必要はありません。できるだけ早く医療機関に相談してください。
マンジャロによる体重減少だけでなく、食事量の変化、睡眠、生活環境、もともとの精神状態、他に使用している薬など、さまざまな要因を含めて判断することが大切です。
結局、マンジャロはどう考えればいい?
現時点での研究結果をまとめると、
「マンジャロを使うとうつ病になる」と考えるだけの十分な根拠はありません。
ただし、マンジャロを使用している間に精神面の変化があった場合は、薬との関係を含めて医師に相談することが重要です。
研究結果の数字だけで怖がったり、逆に「安全だから大丈夫」と決めつけたりせず、自分自身の体調や気分の変化を確認しながら使用することが大切です。
まとめ
マンジャロを使うと「うつ病になるのでは?」と心配になる方もいるかもしれません。
しかし、現時点の研究では、マンジャロがうつ病を引き起こすと明確に証明されているわけではありません。
今回紹介した研究では、GLP-1受容体作動薬を使用した人で精神疾患関連のアウトカムが多かったという結果もありますが、これは観察研究であり、薬が原因で精神疾患が増えたことを証明するものではありません。また、その研究で対象となった薬剤はリラグルチドやセマグルチドで、マンジャロ(チルゼパチド)そのものを調べた研究ではない点にも注意が必要です。
一方、複数の臨床試験をまとめた最新の研究では、GLP-1受容体作動薬によって精神医学的な有害事象や抑うつ症状が明らかに増えるという結果は確認されていません。
つまり、現時点では、
マンジャロ=うつ病になる薬」と考える根拠はありません。
ただし、マンジャロを使用している間に気分の落ち込み、不安、強いイライラ、不眠などの変化が続く場合は、薬との関係を含めて医師に相談することが大切です。
特に、自分を傷つけたい、消えてしまいたいなどの気持ちがある場合は、我慢せず、できるだけ早く医療機関に相談してください。
マンジャロについて不安がある方は、インターネット上の情報だけで判断せず、医師に相談したうえで、自分に合った治療方法を選ぶことをおすすめします。
Dr.石川最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考文献
- Kornelius E, Huang JY, Lo SC, et al.
The risk of depression, anxiety, and suicidal behavior in patients with obesity on glucagon like peptide-1 receptor agonist therapy.
Scientific Reports. 2024;14:24433.
GLP-1受容体作動薬(リラグルチド・セマグルチド)と、うつ病・不安・自殺関連行動などの精神疾患リスクについて調査した大規模コホート研究です。
Scientific Reports(論文全文) - Pierret ACS, Mizuno Y, Saunders P, et al.
Glucagon-Like Peptide 1 Receptor Agonists and Mental Health: A Systematic Review and Meta-Analysis.
JAMA Psychiatry. 2025;82(7):643-653.
DOI: 10.1001/jamapsychiatry.2025.0679
GLP-1受容体作動薬と精神医学的有害事象、抑うつ症状、QOLなどについて、80件の無作為化臨床試験を解析したメタ解析です。
JAMA Psychiatry(論文全文) - Ebrahimi P, Batlle JC, Ayati A, et al.
Suicide and Self-Harm Events With GLP-1 Receptor Agonists in Adults With Diabetes or Obesity: A Systematic Review and Meta-Analysis.
JAMA Psychiatry. 2025;82(9):888-895.
DOI: 10.1001/jamapsychiatry.2025.0091
GLP-1受容体作動薬と自殺・自傷行為、自殺念慮との関連について、144件の研究を対象に検討したシステマティックレビュー・メタ解析です。
JAMA Psychiatry(論文全文) - Kamrul-Hasan ABM, Borozan S, Dutta D, et al.
Neuropsychiatric Effects of Tirzepatide: A Systematic Review and Meta-Analysis.
Endocrine Practice. 2025;31(5):703-706.
DOI: 10.1016/j.eprac.2024.12.017
マンジャロの有効成分であるチルゼパチド(tirzepatide)の神経・精神医学的影響について検討したシステマティックレビュー・メタ解析です。
PubMed(論文情報) - U.S. Food and Drug Administration (FDA).
FDA Requests Removal of Suicidal Behavior and Ideation Warning from Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonist (GLP-1 RA) Medications.
2026年1月13日。
FDAによる包括的な評価では、GLP-1受容体作動薬と自殺念慮・自殺行動のリスク増加は確認されませんでした。対象製品にはチルゼパチド製剤のZepboundも含まれています。
FDA公式発表




