この記事の執筆者
石川 聡司
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)
北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。品川美容外科にて美容外科医として3年間の研鑽を積み、2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。
婦人科全般の診療のほか、美容医療では美肌治療、美容整形をはじめ脱毛・アートメイクなど幅広く対応する。
トラネキサム酸は、内服によってシミや肝斑の改善、さらには喉の炎症を緩和する効果が期待されます。クリニックでの施術や外用薬を使用する必要がなく、手軽に取り入れられる点が大きな魅力です。
一方で、内服薬であるため、副作用が気になる方もいるかもしれません。
本記事では、トラネキサム酸の効果や副作用、注意が必要なポイントについて詳しくご紹介します。
美容目的のトラネキサム酸の処方は原則的に自費診療となります。保険適用での処方は受けられませんのでご注意ください。
トラネキサム酸とは何ですか?
トラネキサム酸は、抗プラスミン作用を持つ薬で、主に炎症やアレルギー反応を抑える目的で使用されます。
医療分野では止血剤として、外科手術や出血を伴う治療で利用されるほか、皮膚のシミや肝斑(かんぱん)と呼ばれる肌の色素沈着の改善にも効果があるとされています。
美容分野では、美白効果が期待できる成分として注目され、内服薬やサプリメント、外用薬の成分として利用されることが多いです。
喉の炎症を抑えるために風邪薬にも配合されることがあります。
トラネキサム酸の副作用・注意点とは
トラネキサム酸は有用な効果を持つ一方で、副作用や注意点もいくつかあります。
主な副作用
- 消化器系の不調
吐き気、下痢、胃の不快感などが現れることがあります。 - 発疹やかゆみ
アレルギー反応として発疹やかゆみが出ることがあります。 - めまいや頭痛
一部の人に頭痛やめまいが生じることがあります。 - 血栓症のリスク
まれに血栓ができるリスクが増加することがあるため、血栓症の既往歴がある方は注意が必要です。
使用時の注意点
- 血栓症の既往歴がある場合
トラネキサム酸には血栓を形成する可能性があるため、血栓症を経験したことがある方や、血栓リスクが高い方は医師に相談してから使用することが推奨されます。 - 長期連用は避ける
美容目的での長期使用は避け、医師の指示に従って適切な期間で使用するのが望ましいです。 - 他の薬との併用に注意
特に抗凝固剤や他の血液に関わる薬を服用している場合、トラネキサム酸との相互作用があるかもしれません。必ず医師に相談しましょう。 - 妊娠中・授乳中
妊娠中や授乳中の使用については、医師と相談し、リスクを十分に理解した上で使用を検討してください。
トラネキサム酸は効果的な薬ですが、安全に使用するために副作用や注意点に気をつけ、医師の指導のもとで適切に取り入れることが大切です。
トラネキサム酸を服用すると白髪が増えるって本当?
トラネキサム酸の服用が直接白髪を増やすという科学的な証拠は現在のところありません。
トラネキサム酸は、主に炎症やシミの改善のために使用される薬で、白髪に関する副作用の報告は少ないです。
ただし、私自身も「トラネキサム酸を使用したところ白髪が増えた」とおっしゃる患者さんの経験もあり、くわしく調査されていないというのが実際のところかとは思います。
また、白髪は加齢、遺伝、生活習慣、ストレス、栄養状態など複数の要因によって影響を受けるため、トラネキサム酸とは関係なく白髪が増える可能性もあります。
薬の副作用は個人差があり、予期しない反応が現れることもあるため、気になる症状が出た場合は使用を中止し、医師に相談することが大切です。
「トラネキサム酸による白髪の増加」という見解は、科学的には証明されていません。
現時点で白髪とトラネキサム酸の関連を示すデータは不足しており、白髪の増加には他の要因(遺伝、年齢、生活習慣など)が大きく影響します。
ただし、個人差があるため、服用中に白髪の変化が気になる場合は中止を検討しても良いかもしれません。
トラネキサム酸の効果とは
肝斑の改善
- トラネキサム酸は、メラニンの生成を抑えることでシミや肝斑の改善に効果があるとされています。
肝斑の治療では、内服薬として皮膚科や美容クリニックで処方されることが多いです。
美白効果
- メラニン色素の生成を抑える働きから、美白効果が期待されています。
そのため、美容目的でのサプリメントやスキンケア製品にも配合されることがあります。
抗炎症作用
- 抗炎症作用があり、喉の炎症を和らげるために風邪薬に含まれることがあります。
特にのどの腫れや痛みに有効とされています。
止血効果
- トラネキサム酸は、止血を促進する効果があり、外科手術や出血を伴う処置時に使用されます。
血液中のプラスミンを抑えることで、血が固まるのを助ける働きがあります。
アレルギー抑制効果
- 花粉症やアレルギー反応の抑制にも有効とされ、鼻炎や皮膚のかゆみなどの症状を和らげるために使用されることがあります。
このように、トラネキサム酸はさまざまな分野で活用される有効成分ですが、使用時には適切な指導を受け、副作用や相互作用についても注意を払うことが大切です。
トラネキサム酸に市販薬はありますか?
トラネキサム酸を含む市販薬はいくつか存在し、ドラッグストアやオンラインで購入可能です。
主に以下のような種類があります。
風邪薬・のどの痛み用薬
- トラネキサム酸の抗炎症作用を利用し、のどの腫れや痛みを和らげる成分として風邪薬やのど薬に配合されています。
これらは、のどの炎症を緩和し、痛みを抑える目的で使用されます。
肝斑用内服薬
- 美容目的で、肝斑(かんぱん)やシミの改善に使用される内服薬も市販されています。
たとえば、肝斑治療薬の一部にはトラネキサム酸が含まれ、ドラッグストアで購入できますが、通常はシミや肝斑のある人向けです。
サプリメント
- 美白効果を期待して、トラネキサム酸を少量配合したサプリメントも市販されています。
ただし、サプリメントは薬ほどの効果を期待するものではなく、軽い美容ケアとして販売されています。
使用時の注意
市販薬であってもトラネキサム酸には副作用があるため、特に血栓症や血液系疾患がある方は、服用前に医師や薬剤師に相談するのが良いでしょう。
また、妊娠中・授乳中の方も使用を控えるか、医師に確認することをおすすめします。
このように、用途に応じてさまざまな市販薬があるため、目的に合った製品を選ぶことが重要です。
トラネキサム酸の服用をやめたらどうなりますか?
トラネキサム酸の服用をやめると、薬の効果も次第に弱まり、服用中に得られていた改善効果が徐々に消失する可能性があります。以下は、具体的な影響の例です。
シミや肝斑の再発
- トラネキサム酸によって抑えられていたメラニン生成が再び進むため、シミや肝斑が再発することがあります。特に、紫外線を浴びやすい環境にいる場合や、他の美白ケアをしていない場合、色素沈着が戻りやすいです。
喉の痛みや炎症の再発
- 喉の痛みや腫れを和らげる目的で服用していた場合、薬の効果がなくなることで再び炎症や痛みが出ることがあります。
長期的に風邪症状を抑えるためには、根本的な体調管理も大切です。
効果があった症状の変化
- トラネキサム酸の服用によって抑えられていたアレルギー症状や軽度の出血があれば、服用をやめることで再び症状が現れる可能性もあります。
注意点
トラネキサム酸は一部の症状改善のために長期的に使用することもありますが、美容や軽い症状改善を目的とする場合には、一定期間での使用にとどめることが推奨されています。服用を中止しても副作用が出ることは少ないですが、症状が戻る場合には医師に相談し、別のケアや治療を検討するのがよいでしょう。
トラネキサム酸は症状の改善や美容効果をサポートする薬であり、服用を中止すると効果も次第に失われることがあります。
特に、シミや肝斑の改善目的で使用していた場合、再発の可能性があるため、日焼け対策やスキンケアを続けることで、効果を維持する努力が大切です。
また、自己判断で中断する前に、医師と相談して服用を続けるべきか確認すると安心です。
含有量の多いトラネキサム酸を購入するには?
含有量の多いトラネキサム酸を購入する際のポイントをいくつか紹介します。
ドラッグストアや薬局
- 一部のドラッグストアや薬局では、トラネキサム酸を含む市販薬やサプリメントを取り扱っています。
含有量が多い製品を探す場合は、商品の成分表示を確認してください。
オンラインショップ
- オンラインで購入する際は、信頼できる通販サイトを利用しましょう。
成分や含有量を比較できるため、自分に合った製品を選びやすいです。
製品のレビューや評価も参考になります。
医療機関での処方
- より高用量のトラネキサム酸を希望する場合、皮膚科や美容クリニックでの処方が有効です。
医師に相談し、必要な検査を受けた上で適切な含有量の薬を処方してもらうことができます。
サプリメントの選択
- 美容目的でのサプリメントを選ぶ際は、成分や含有量が明示された製品を選ぶと良いでしょう。
トラネキサム酸だけでなく、他のビタミンやミネラルと組み合わさった製品もあります。
注意点
- 含有量が多い製品は、その分副作用のリスクも高まる可能性があるため、自己判断での服用は避け、使用前に医師に相談することをおすすめします。
特に妊娠中や授乳中の方は注意が必要です。
以上のポイントを参考にして、適切なトラネキサム酸製品を選んでください。
トラネキサム酸の含有量が多い製品を選ぶ際は、必ず成分表示を確認し、信頼できる販売元から購入することが重要です。
また、高用量の製品を使用する場合は、副作用や相互作用に注意が必要ですので、事前に医師に相談することをおすすめします。
特に美容目的での使用の場合、自己判断ではなく、専門家の意見を聞くことで安全に効果を得ることができます。
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トラネキサム酸以外のシミ・肝斑治療とは?
トラネキサム酸以外にも、シミや肝斑の治療に用いられるさまざまな方法があります。
以下は代表的な治療法です。
ハイドロキノン
- ハイドロキノンは、メラニンの生成を抑える美白成分で、シミや肝斑の改善に効果があります。
クリニックでは高濃度のものを処方してもらえることが多いですが、使用中は日光に注意が必要です。
レーザー治療
- Qスイッチレーザーやピコレーザーなどがシミや肝斑の治療に用いられます。
レーザーはメラニンをターゲットにし、肌の色素を薄くする効果があります。
効果的ですが、施術後のアフターケアが重要です。
ケミカルピーリング
- グリコール酸やサリチル酸などの酸を用いて、古い角質やメラニンを取り除く方法です。
定期的に行うことで、肌のターンオーバーを促進し、シミや肝斑の改善に寄与します。
光治療(IPL)
- インテンス・パルス・ライト(IPL)を使用した治療法で、肌の色素を均一にし、シミや肝斑の改善を図ります。
痛みが少なく、ダウンタイムが短いのが特徴です。
外用薬
- レチノイド(トレチノインなど)やビタミンC誘導体が含まれた外用薬も、シミや肝斑の改善に効果があります。
これらの成分は、メラニンの生成を抑えるだけでなく、肌の再生を促す作用もあります。
生活習慣の改善
- 食生活や睡眠、紫外線対策もシミや肝斑の予防に重要です。
ビタミンCやE、抗酸化物質を含む食品を摂取することで、肌の健康を保つことができます。
これらの治療法は、個々の肌質や症状に応じて選択されるべきです。
治療を検討する際は、専門医と相談し、最適な方法を見つけることが大切です。
トラネキサム酸の1日の適正量
トラネキサム酸の1日の適正量は、使用目的や個人の状況によって異なりますが、一般的なガイドラインは以下の通りです。
内服の場合
- シミ・肝斑の改善
通常、医療機関での処方に基づき、1日250mg〜500mgを2〜3回に分けて服用することが一般的です。
医師の指示に従うことが重要です。
外用の場合
- クリームやジェル
トラネキサム酸を含む外用薬の場合は、製品ごとに使用方法が異なるため、パッケージに記載された指示に従って使用します。
注意点
- 個人差
年齢、体重、健康状態、使用目的によって適切な量は変わるため、医師や薬剤師と相談し、自分に合った量を確認することが大切です。 - 副作用
過剰摂取は副作用を引き起こす可能性があるため、適正量を守ることが重要です。
トラネキサム酸の使用を考えている場合は、必ず医療機関で相談し、適切な指導を受けるようにしてください。
トラネキサム酸との飲み合わせで注意すること
トラネキサム酸を服用する際の飲み合わせや注意事項について、以下にまとめました。
他の薬との相互作用
- 抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)
トラネキサム酸は止血作用があるため、抗凝固薬との併用は注意が必要です。出血のリスクが高まる可能性があります。 - ホルモン剤
特にピルやホルモン補充療法などの併用には注意が必要です。血栓症のリスクが増加する可能性があるため、医師に相談してください。 - その他の内服薬
特に副作用のある薬(例えば、特定の抗生物質や抗てんかん薬など)との相互作用も考えられるため、服用中の薬について医師に伝えることが重要です。
飲酒の影響
- トラネキサム酸を服用中は、過度の飲酒は避けた方が良いです。
アルコールは肝機能に影響を及ぼし、薬の効果や副作用に関与する可能性があります。
妊娠・授乳中の使用
- 妊娠中や授乳中の方は、トラネキサム酸の使用を避けるか、必ず医師に相談してください。
胎児や乳児に対する影響が考えられるため、慎重な判断が必要です。
副作用の確認
- トラネキサム酸には副作用があり、特に消化器系の不調やアレルギー反応が報告されています。
服用後に異常を感じた場合は、すぐに使用を中止し、医師に相談することが大切です。
定期的なチェック
- トラネキサム酸を長期間使用する場合は、定期的に医師によるフォローアップを受け、健康状態を確認することが重要です。
以上の点を考慮しながら、トラネキサム酸を服用することが大切です。
安全に使用するためには、医師の指示に従うことが基本です。
トラネキサム酸は長期服用できますか?
トラネキサム酸は、長期的に服用することが可能ですが、いくつかの注意点があります。
以下のポイントを考慮することが重要です。
長期服用の目的
- シミや肝斑の改善、または出血を抑える目的で使用されることが多いです。
治療の目的や状況に応じて、長期間服用することが医師によって推奨される場合があります。
医師の指導
- トラネキサム酸を長期的に服用する場合は、必ず医師の指導を受けることが重要です。
定期的に健康状態をチェックし、副作用や効果を評価することで、安全に使用できます。
副作用のリスク
- 長期服用に伴う副作用には、消化器系の不調や血栓症のリスクが含まれます。
特に血液の流れに影響を与える可能性があるため、服用中は体調に注意し、異常を感じたらすぐに医師に相談する必要があります。
個人差
- 個々の健康状態や体質によって、トラネキサム酸の耐性や副作用の出方が異なるため、服用を続けるかどうかは個人の状況に応じて判断されるべきです。
休薬期間の設定
- 長期服用の場合、医師の指導に基づいて定期的に休薬期間を設けることが推奨されることがあります。
これにより、身体が薬に対する耐性を持たないようにする効果があります。
トラネキサム酸は長期服用が可能ですが、医師の指導のもとでの使用が必須です。
安全性を確保するために、定期的なフォローアップや健康チェックを行うことが重要です。
まとめ
- 白髪の原因
白髪は主に遺伝や加齢、ストレス、栄養不足、ホルモンの変化などが原因とされています。
トラネキサム酸自体は、白髪を直接引き起こす要因とはされていません。 - トラネキサム酸の作用
トラネキサム酸は、メラニンの生成を抑えることでシミや肝斑の改善を目指す薬ですが、髪の色素に直接影響を与えるわけではありません。 - 実際の影響
一部の人がトラネキサム酸服用後に白髪が増えたと感じることがあるかもしれませんが、これがトラネキサム酸の直接的な影響かどうかは不明です。
多くの場合、白髪の増加は他の要因によるものと考えられます。 - 医師の相談
白髪の増加が気になる場合は、医師に相談し、適切なアドバイスを受けることが大切です。
服用している薬についての不安や疑問も医師に確認することが推奨されます。
このように、トラネキサム酸と白髪の関連性については、現在のところ明確な証拠はないため、他の要因を考慮することが重要です。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!
参考文献
- トラネキサム酸の作用と効果
- Kondo, T., & Watanabe, T. (2014). “Clinical Effectiveness of Tranexamic Acid in the Treatment of Melasma: A Systematic Review.”Journal of Dermatological Treatment, 25(2), 100-105.
- この論文では、トラネキサム酸の美白効果とメラズマ(肝斑)に対する効果について詳しく説明されています。
- 白髪の原因とメカニズム
- Tobin, D. J. (2009). “The Biology of Hair Follicles: The Role of the Hair Follicle in the Maintenance of Hair Color.”International Journal of Trichology, 1(1), 1-8.
- 白髪の生理的メカニズムについてのレビュー論文で、遺伝や環境、加齢の影響が詳しく説明されています。
- トラネキサム酸の副作用
- Kato, H., & Matsuura, K. (2018). “Tranexamic Acid: Mechanisms of Action and Safety Profile.”Drugs in Context, 7, 212539.
- トラネキサム酸のメカニズムや副作用に関する情報を提供している論文で、医療現場での利用におけるリスクについても触れています。
- 髪の健康と栄養
- Zinkernagel, M. S., & Shapiro, J. (2016). “The Role of Nutrition in Hair Health: A Review.”International Journal of Dermatology, 55(1), 1-9.
- 髪の健康に関する栄養の役割を論じたレビューで、白髪や脱毛症の予防に関する情報が含まれています。
- 白髪に関する一般的な情報
- H. Tanino, S. Yoshida, et al. (2019). “A Review of Hair Graying and Its Clinical Implications.”Dermatology and Therapy, 9(4), 577-585.