ニキビは治ったのに、ニキビ跡が残ってなかなか消えないと、鏡を見るたびに憂鬱になってしまいますよね。
ニキビ跡にはいくつかの種類がありますが、クレーターやしこりなどの目立つ跡が残ってしまうと、セルフケアでの改善は非常に困難です。
今回は、ニキビ跡の種類と原因や、効果が期待できる市販薬、皮膚科での治療法などについて解説していきます。今あるニキビ跡の状態を正しく把握して、最適な治療とケアを行いましょう。
この記事の執筆者
石川 聡司
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)
北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。品川美容外科にて美容外科医として3年間の研鑽を積み、2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。
婦人科全般の診療のほか、美容医療では美肌治療、美容整形をはじめ脱毛・アートメイクなど幅広く対応する。
ニキビ跡の種類と原因
ニキビ跡とは、ニキビの炎症によって周囲の組織がダメージを受け、瘢痕を形成した状態です。
何度も同じ部分にニキビができると、皮膚の再生がうまく行われなくなり、炎症が治まっても跡として残ってしまいます。
ニキビ跡は、症状によって大きく以下の5種類に分けられます。
- 赤み
- 色素沈着
- クレーター
- しこり
- ケロイド(肥厚性瘢痕)
それぞれの特徴と原因について見ていきましょう。
赤み
ニキビの炎症が治まり、皮膚が平らになった後に赤みだけが残っている状態です。
ニキビのダメージによって皮膚が薄くなり、血管や筋肉が透けて見えるために起こります。
とくに、炎症の強いニキビが繰り返し続くと、皮膚の下の毛細血管が増えて赤みが目立ちやすく。
多くは、時間の経過とともに自然に消えていきますが、赤みの程度によっては半年〜1年程度かかる場合もあります。
色素沈着
色素沈着は、盛り上がりのない茶色や黒っぽいシミのような跡です。このニキビ跡の主な原因は、メラニンの過剰生成です。
ニキビの炎症が長引くと、シミの元となるメラノサイトが刺激され、メラニンが過剰に生成されます。
正常な肌であれば、肌のターンオーバーとともにメラニンが排出されます。しかし、ニキビの炎症により不安定になった肌は、ターンオーバーがスムーズに行われず、メラニンが肌内部に蓄積して、色素沈着として表面にあらわれてしまうのです。
クレーター
ダメージが肌の奥にある真皮層まで及び、まわりの組織が破壊されると、ニキビの炎症が治まった後に凸凹ができたり、皮膚が陥没したりする場合があります。
これが一般的にクレーターと呼ばれる状態です。
炎症の強いニキビが繰り返しできると、クレーター状のニキビ跡が残りやすくなります。
また、ニキビを自分で潰すことも原因のひとつです。一度クレーターになってしまうと自然治癒はしにくく、セルフケアでの改善も困難と言われています。
しこり
炎症していた部分が硬く盛り上がり、しこりとして残った状態です。
ニキビが治まった後、体が肌を修復しようとするあまり、肌細胞を過剰に生成してしまうのが原因でしこりが生じます。
痛みやかゆみはほとんどありません。ただし、皮膚が盛り上がっているためメイクではカバーしにくく、改善するにはクリニックでの治療が必要です。
ケロイド(肥厚性瘢痕)
炎症の強いニキビが同じ箇所に繰り返し生じたために、過剰なコラーゲン増殖が起こり、皮膚が赤く盛り上がってケロイドができてしまう場合があります。顔にできる事は少ないですが、首や背中、デコルテなどはケロイドの好発部位(良くできる部分)です。
人によっては、赤みや盛り上がった部位に痛みやかゆみを伴います。
ケロイドが生じる原因は明らかではありませんが、体質的な要素が強く、重度のニキビが発生しやすいフェイスラインやアゴ下に多く見られます。
ニキビ跡に有効な市販薬
ドラッグストアや薬局では、ニキビ跡の改善や予防が期待できる医薬品が市販されています。
製品によって配合成分やタイプが異なるため、症状に合わせて選びましょう。ここでは、薬の種類と代表的な有効成分について解説します。
飲み薬
飲み薬には、以下のような有効成分が配合されていることが多いです。
ビタミンC(アスコルビン酸)
色素沈着やシミの原因となるメラニンの生成を抑制する働きがあります。
また、抗酸化作用により皮膚細胞の老化を防いだり、コラーゲンを増加させて肌のハリや弾力を向上させたりする効果も見込めます。
L-システイン
メラニンの生成を抑制し、排出を促す作用を持つ成分です。ターンオーバーを正常化して、皮膚の生まれ変わりをサポートします。
ニキビ跡の赤みや色素沈着を目立たなくするほか、ニキビの炎症を抑える効果も期待できます。
L-システインとビタミンCが配合された代表的な製品としては、「ハイチオールCホワイティア(エスエス製薬)」や、「チョコラBBルーセントC(エーザイ株式会社)」が挙げられます。
トラネキサム酸
炎症薬や止血剤としても使用されているアミノ酸の一種です。
メラニンの生成を抑え、炎症を引き起こす「プラスミン」の働きを阻害する作用があり、ニキビ跡やシミ・肝斑の改善や美白効果が期待できます。
主成分にトラネキサム酸を配合している製品には、「トランシーノⅡ(第一三共ヘルスケア)」があります。
塗り薬
ニキビ跡の塗り薬に配合されている代表的な有効成分としては、ヘパリン類似物質が挙げられます。
ただし市販の塗り薬は、医薬品ではなく医薬部外品が多いです。表示を確認してから購入しましょう。
ヘパリン類似物質
人の体内で生成される「ヘパリン」と似た作用を持つ、親水性・保水性にすぐれた成分です。また、抗炎症作用や血液の流れを促進する効果もあります。
皮膚の奥深くまで水分を浸透させるとともに、皮膚の基底細胞に働きかけて新しい細胞の誕生を促します。
ニキビ跡の赤みや色素沈着・乾燥による肌荒れ改善のほか、新たなシミやそばかすの発生を防ぐ効果も期待できるでしょう。
ヘパリン類似物質配合の代表的な塗り薬には「アットノン(小林製薬)」があり、第2類医薬品に分類されます。
※医薬品と医薬部外品の違い
医薬品は、厚生労働省より、配合されている有効成分の効果が認められたものです。主に「治療・予防」を目的として用いられます。
医薬品は、大きく「要指導医薬品」と「一般用医薬品」に分類され、さらに一般用医薬品は第1類医薬品〜第3類医薬品の3つに分けられます。
場合によっては、薬剤師による指導や文書での情報提供が必要です。
一方で、医薬部外品は「防止・衛生」を目的としています。
有効成分が一定の濃度で配合されており、医薬品よりも効果が穏やかな点が特徴です。
“薬用”と表示されている化粧品は、医薬部外品に含まれます。
クレーターやしこりは市販薬での改善は難しい
市販の飲み薬や塗り薬が有効なニキビ跡は、赤み・色素沈着に限られます。
皮膚の真皮層までダメージが及んでいるクレーターやしこり・ケロイドは、セルフケアでは改善が難しく、美容皮膚科などでの専門的な治療が必要です。
また、赤みや色素沈着も程度によっては、改善までに長い期間を要するでしょう。
なかなかニキビ跡が消えずに悩んでいる方は、一度、美容皮膚科、美容外科の医師に相談するのがおすすめです。
スキンケアでニキビ跡を消す方法はある?
軽度のニキビ跡であれば、日々のスキンケアでも改善できる可能性があります。
新たなニキビ跡を防いだり、シミやたるみをできにくくしたりする効果も期待できるため、以下の方法をぜひ実践してみてください。
保湿ケア
肌をしっかりと保湿して乾燥から守ることで、バリア機能が維持されてターンオーバーが整い、ニキビ跡の解消につながります。
とくに洗顔後の肌は、水分が失われて刺激を受けやすい状態のため、すぐに保湿ケアを行いましょう。
メラニンの生成を抑える「ビタミンC誘導体」や、ターンオーバーを活性化させる「レチノール」などの美容有効成分が配合されている化粧品であれば、ニキビ跡改善により高い効果が期待できます。
また乾燥が気になるときは、保湿力の高いクリームやパックでの集中ケアもおすすめです。
UVケア
肌への紫外線ダメージが蓄積すると、メラニンが過剰に生成されて、ニキビ跡の悪化につながるリスクがあります。
日焼け止めや日傘・帽子などを活用して、紫外線から肌を守りましょう。
日差しが強い夏場だけではなく、紫外線は一年中降り注いでいます。季節を問わず、UVケアを徹底してください。
ニキビ跡をなくす美容皮膚科の治療法
短期間でより確実にニキビ跡を解消するには、美容皮膚科での治療がおすすめです。
治療法によっては、セルフケアでは消すのが難しかった重度のニキビ跡への効果も期待できます。
以下では、美容皮膚科で受けられる代表的なニキビ跡治療をご紹介しています。症状に合わせて最適な方法を選択しましょう。
- ピーリング
- フラクショナルレーザー
- ダーマペン
- PRP治療(再生治療)
ピーリング
薬剤を肌に塗布して古い角質を取り除き、肌質改善を目指す治療法です。ターンオーバーを整えて、肌の生まれ変わりを促します。
ニキビ跡の改善のほか、炎症しているニキビの暖和や、毛穴の黒ずみの除去、シミやくすみの改善などさまざまな美肌効果が期待できます。
また、ピーリングの後にイオン導入を行うと、美容成分が浸透しやすくなり、より高い効果が期待できるでしょう。
ピーリングは、使用する薬剤によって、以下のような種類に分けられます。
- グリコール酸ピーリング
- サリチル酸マクロゴールピーリング
- マッサージピール(コラーゲンピール)
- ミルクピール
それぞれ効果が異なるため、肌質や症状に合わせたピーリングを選ぶことが大切です。
フラクショナルレーザー
炭酸ガスレーザーで肌に点状の微細な穴を空け、皮膚の自然治癒力を利用してニキビ跡や傷跡の改善を図ります。
機器によって効果は若干異なりますが、治療を続けることで、クレーター状のニキビ跡の改善も期待できます。
正常な組織へのダメージを最小限に抑えながら照射するため、肌への負担はほとんどありません。
ただし、赤みやかゆみが数日間続き、その後は細かいかさぶたができるなど、ある程度のダウンタイムが生じます。
ダーマペン
髪の毛よりも細い超極細針を肌に刺し、一時的に微細な穴を形成して、肌の自然治癒力を高める治療法です。肌に刺激をあたえ自然治癒を促すという意味では、フラクショナルレーザーと同じ原理の治療です。
肌のコラーゲンやエラスチンの生成を促し、新陳代謝を促進する効果があります。
色素沈着のほか、クレーターやケロイドのような重症化したニキビ跡にもアプローチが可能です。
ただし、赤みのあるニキビ跡への施術には適していません。
赤みは、皮膚の下に炎症が残っている状態であるため、ダーマペンの刺激によって色素沈着を起こしたり、傷跡が残ったりするリスクがあります。
医師の診察を受け、ニキビ跡の状態をしっかりと確認してから施術を受けましょう。
CO2フラクショナルレーザーとダーマペンはどちらも、皮膚に刺激を与え、自然治癒力を高めるという目的の治療法であり、同じ原理の治療です。それでは、二つの治療の違いはどのように考えれば良いでしょうか?大きな違いは皮膚に開けられる穴の密度と深さです。フラクショナルレーザーの方がより深い層に刺激を与えられますが、開けられた穴の密度はダーマペンの方が高いです。そういったことから、クレーターなどが深い場合にはフラクショナルレーザーの方が効果的と考えられ、毛穴の開きや肌の滑らかさに対してはダーマペンの方が効果的と考えられます。ただし、どちらも一定の効果が得られますので、どちらの治療が優れているということではありません。
PRP治療(再生治療)
患者さん自身の血液から採取した、高濃度の血小板を含む多血小板血漿(PRP)を肌に注入する治療です。
傷を修復して肌を再生させる血小板の力を利用して、ニキビ跡やしわ・たるみ、毛穴の開きなどの肌トラブルを改善します。
とくに赤みや色素沈着・クレーター状のニキビ跡に高い効果を発揮します。
PRP治療は、肌の内側からアプローチして肌を若返らせる根本治療技術のため、効果が長続きする点がメリットです。
また、最近は同様の治療として他人の幹細胞を培養した際の培養液を再利用した培養上清などが使用されている場合もあります。
ニキビ跡の予防・対策
今あるニキビ跡を改善するだけではなく、新たなニキビ跡をつくらないための対策も欠かせません。
まずは、ニキビ跡の原因となるニキビができないように、生活習慣を見直して肌環境を整えましょう。
栄養バランスのよい食事をとる
ニキビのない健やかな肌を保つためには、体の内側からのケアも大切です。
とくにニキビやニキビ跡の予防・改善のために意識して摂りたいのが、「たんぱく質」や「ビタミンA(β-カロテン)」「ビタミンB群」「ビタミンC」です。
これらの栄養素が含まれた食べ物を積極的に取り入れつつ、バランスのよい食事を1日3食きちんととりましょう。
栄養素 | 多く含まれる食品例 |
たんぱく質 | 魚、肉、卵、大豆製品、乳製品 |
ビタミンA(β-カロテン) | 緑黄色野菜、牛乳、乳製品、レバー、うなぎ、卵 |
ビタミンB群 | 魚、豚肉、大豆、レバー、チーズ、緑黄色野菜など |
ビタミンC | 野菜、果物 |
脂肪分や糖分を過剰に摂ると、皮脂の分泌が活発化してニキビが増えるおそれがあるため、適度な量にとどめてください。
規則正しい生活を送る
不規則な生活リズムや睡眠不足は、ターンオーバーの乱れを招き、ニキビの発生だけではなくさまざまな肌トラブルにつながります。
できるだけ早寝早起きを心がけ、規則正しい生活を習慣づけましょう。
また、意識してリラックスタイムをつくったり、ゆっくりとお風呂に入ったりするのも、疲労やストレス解消に効果があり、肌によい影響を与えてくれます。
適度な運動をする
適度な運動は、肌のターンオーバーを整え、美肌に導く効果があると言われています。
とくにウォーキングやヨガ・スイミングなどの軽い有酸素運動がおすすめです。
1日10分〜20分程度でも、継続することで肌質が改善し、ニキビ予防につながります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ニキビ跡を消す方法 美容皮膚科の治療や市販薬でのケアを解説しました。ニキビ跡は治療することも可能ですが、一度できてしまったニキビ跡の治療はたくさんの時間や費用がかかります。ニキビ跡を残さないよう、ニキビの治療も大切ですので、ニキビにお悩みの場合はお気軽に皮膚科、美容皮膚科あるいは婦人科でのピルの処方など、早い段階での治療をおすすめします。