東京で美容外科医をしている齋藤隆文(形成外科専門医)です。当サイトで、美容コラムを担当しています。この記事の一番最後に、現在の東京での診療案内を載せていますので、受診希望の方は私のホームページの問い合わせフォームからお問い合わせください。
眼瞼下垂(がんけんかすい)や美容目的のまぶた手術を受けた後に、開きの改善が不十分だったり、二重のラインに左右差が出たりすることがあります。
手術をするのは人間ですから、必ず成功する手術というのはありません。初回手術を受ける前にも、もし再手術が必要になった場合にはどんなことがポイントになるのかを知っておくのは大事なことです。
そんなまぶたの修正手術のご相談をいただく時に必ずと言っていいほど聞かれる質問が3つあります!
その3つの質問とは、以下の3つです。
- いつから可能なのか、再手術をする時期について
- 術後の腫れは1度目よりもひどくなるのか?いわゆるダウンタイムについて
- 一度目の手術と比べてリスクは高いのか?
こちらの記事では、眼瞼下垂(がんけんかすい)の代表的な治療術式と、一度目でうまくいかなかった場合の再手術について、実際のお写真を見ながらご紹介していきます。そして後半では、これら3つの質問について一つ一つ丁寧にお答えしています。
眼瞼下垂(がんけんかすい)手術と言っても、そのやり方は外科医によって実に様々です。
わずか4cm四方程度の領域に実に複雑な構造が構築されており、曲線により形作られた3次元的でダイナミックな臓器を正確に操作し、見た目も機能も美しい上まぶたを目指して丁寧に治療しなければなりません。
手術をお願いする先生が、どのように考えて治療をしているのかを知っておくことは、自分が手術後にどうなるのかを理解する助けになると思います。
私が普段行っているまぶた治療については、他の記事でも詳しく紹介しています、ぜひ合わせて読んでいただけたら嬉しいです。
眼瞼下垂の手術は再発率が高め。将来も修正可能な、丁寧な初回手術が重要です。
今回は、他院でうまくいかなかった、とぼくの外来へご相談にいらっしゃった患者さんです。特に、右のまぶたが重そうですね。
この患者さん、見た目の改善に色々と工夫をして仕上げていて、当初はそのお話をしようとお写真を整理していました。ですが、今回はそれよりも先にお伝えすべきことがあるなあと思い、作り直しました。
手術をしたけどうまくいかなかった、というトラブルについてのお話です。
実は、眼瞼下垂(がんけんかすい)治療は、再手術率が比較的高い治療の一つとされています。
私が所属している形成外科学会のガイドラインでも、再手術率が高いことに触れられており、実際に手術を受ける前にはもう少し細かく、そのリスクについて説明しています。
もちろん私もその例外ではなく、再手術をさせていただいた経験はありますし、ないという先生がいたら、それは明らかな経験不足を自分で公表しているようなものだと思います。
さて、術後の不満となる形成外科的な観点としては、
- まぶたが繊細(せんさい)で、やや複雑な構造をしているため、ミリ単位の変化で印象が変わりやすい
- 左右にあり、かつ動きのあるものを対象にした手術のため、細かな左右差が術後に気になる
- 眉毛の位置、まつ毛の向き、など、開き以外にも考慮しなければいけない部位がある
などが細かな見た目のポイントとして挙げられます。
なのですが、、、、、、
単純に、術後もまぶたの開きが変わらない、ということで再手術を希望していらっしゃる方も多いんです。
眼瞼下垂手術で確実なのは切開による挙筋前転法と考えています。私の考えです。
この方、糸だけの切らない眼瞼下垂(がんけんかすい)矯正術、という手術を受けたそうです。
まぶたの裏からアプローチして、皮膚を切らない方法というのは、ガイドラインでも有効であることが記載されている、ちゃんと治療方法として確立された術式です。
切らない〜、ってなんとなく胡散臭かったりするんですが笑、そんなことありません。
このミュラー筋短縮術という治療は、手術時間も短く、皮膚にもキズが残らない、比較的手軽な手術として、とりわけ“軽度の眼瞼下垂”に多用されています。
しかしながら、これは医療者側から見た場合に違う側面も持ち合わせています。以前のポストでもご説明したように、私の施設では、挙筋前転術(きょきんぜんてんじゅつ)という、
“皮膚を切開して、けんばんと筋肉を直接見て固定し直す”
という術式を用いています。この治療は、皮膚を切らないといけないのですが、論理的には、軽度の眼瞼下垂の方のほとんどに確実に効果がある、と考えることのできる術式です。
なので、もし軽度の眼瞼下垂で初回手術の治療効果が乏しかった場合も、この術式であれば改善が期待できます。
ただ、この術式は技術的に、切らない眼瞼下垂、よりも複雑なため、切らない眼瞼下垂治療はやるけど、挙筋前転術はしない、というポリシーの先生もいます。こうなると、少し状況がややこしくなるわけです。
軽度の眼瞼下垂で、治療効果が期待できるのに、初回手術で効果が乏しくて、残念、他に手がありません。と治療を諦めてしまうケースがあったりします。
どんな手術にも、正確な診断と、適切な術式選択と、効果をきちんと出す技術、が必要です。
眼瞼下垂(がんけんかすい)については、挙筋前転術でダメでも、さらに提案できる治療法がありますし、診断によっては最初からそちらを選択することもあります。診断から治療まで、が大事です。
改善の期待できる患者さんに、見た目も含めて確実に結果を出す、ためにも、挙筋前転術をご提案させていただいています。
ここで、医師が簡便に治療効果を予測する方法として使っているものを一つご紹介したいと思います。
顔を動かさず、下を見た時の上瞼のまつげの位置が、上を見たときにどれくらい引き上がるか、というものです。10mm以上動けば正常値とされており、これが正常なら、初回手術で治療効果が期待できると考えることができます。
実際には10mmを切っていても、追加の処置をたくさん加えることで改善できるケースも多いのですが、一つの目安としてぜひ参考にされてください。
眼瞼下垂治療の再手術の時期は?腫れる?リスクは?
眼瞼下垂の修正、いわゆる再手術を検討されている方からの質問で多いのが、
- いつから可能なのか、再手術をする時期について
- 術後の腫れは1度目よりもひどくなるのか?いわゆるダウンタイムについて
- 一度目の手術と比べてリスクは高いのか?
というようなものです。今回はこの3つについて解説します。
①いつから可能なのか、再手術をする時期について
結論から申し上げますと、
- 術後すぐは2週間以内!!
- それ以降は最低でも3ヶ月、できれば半年!!
です。
これは術者によって差がある内容ですので、あくまで斎藤ならこう考える、という程度に読んでください。
私のSNSにはよく、「昨日手術を受けたんですが、」とか「1ヶ月前に手術を受けたんですが、」という始まりの、いわゆる修正相談がきます。
眼瞼下垂(がんけんかすい)の初回手術の効果を正しく判断しようとする場合は、”最低でも3ヶ月、できれば半年!!”の経過観察が原則だと考えています。
なぜなら、手術後には腫れや傷の一時的な硬さ、手術による内部の筋肉などの損傷の治癒に一定期間の時間がかかるため、これらが十分に回復していない状態では正しく最終的な結果が予測できないからです。
特に、術後にすごく腫れた、真っ青になった!というご相談の方は、手術中に内部の損傷が酷かったり内出血が強く起こっている可能性があるため、極めて判断が難しいと思われます。
なので、安全に再手術、修正を行う場合は半年待った方がいいんだな、と覚えてください。
こうお話すると、
ほな術後すぐの2週間以内ってゆ〜のはどういうこと?一番腫れてて難しいんじゃないの?
という質問が返ってきます。その通りです、腫れや内出血があると、この時期の修正はとても面倒です。
が!!!
初回手術の際に、腫れないように、出血させないように、手術をすれば話は別です。
特に内出血は最悪です。とにかく手術中に出血が起きないように丁寧に手術をしてもらうことが大切です。
私の場合は手術後4日目で抜糸をしますが、この際に明らかな左右差や形の不整があった場合はその時点で修正をご提案することがあります。
このタイミングで修正が必要となるケースは、まぶたの開きを強めるための糸が緩んでいたり外れていたりすることが原因として予想されます。
初回手術で出血させないように努力しているので、ごく少量の麻酔だけで縫合している傷を丁寧に開くとスルスルと剥がれていきます。もちろん内部の内出血や血腫(血の塊)はほとんどありません。
こうなると、固定されている糸を確認して再調整するだけで修正がとても簡単に行えます。ですので、
”初回手術で丁寧に治療された場合は、術後2週間以内なら微調整や修正が可能です”
②術後の腫れは1度目よりもひどくなるのか?いわゆるダウンタイムについて
修正の時期と、初回手術の内容によって大きく変わる。はっきり言って、修正のあとのダウンタイムは初回手術の内容にとても大きく影響を受けます。
このイメージを、家を建てる作業を例にとって考えてみます。私の父は建築士でして、息子も造形の仕事を選んでしまっているあたり、DNAの濃さを感じずにはいられません。
さて、最初に建ててもらった家が、デザインも完璧、建築理論に則って(のっとって)組み立て方もとても理論的で安定している、そして支柱やネジなどの構造物も損傷がない状態。だったとします。
こんな家に対して、細かな点を修正したいです!となっても、簡単そうですよね?
初回手術がとても丁寧なオペで内部の瘢痕(はんこん)も最小限、デザインも希望していた形にほとんど合っているだけど少し修正してほしい。こんな条件であればダウンタイムは少なく抑えられます。
逆に、設計図もグチャグチャ、理論もほとんど考えずに床も傾いている、構造物も至るところに傷がある!なんてことになっていれば、どんなに優秀な建築家と熟練(じゅくれん)の大工さんがタッグを組んでもその修正は困難を極めそうです。
そして、もう一つ重要な点は、修正を依頼した場合の修正医の診断能力です。
術前に正確な診断がなされていれば、必要な修正箇所にストレートに到達し、無駄な操作をせずに必要最低限の仕事を終え、結果を出します。
術前に、今の状態の原因が何であり、どういった修正を行えば改善するのか、きちんと修正医に聞きましょう。 正しく診断できている外科医の説明ほど、わかりやすく、すんなりと納得できるものです。
③一度目の手術と比べてリスクは高いのか?
まずい外科医が行うと、リスクは格段に上がります!
上手な先生がやれば上手くいきます、とは言えなくても、下手な外科医がやればとんでもないことが起こり得ます。これは、本当です。
①、②を読んで、”修正を考える前に、初回手術を誰に頼んだかでその後のあらゆることが変わるんだな”
と気づいた方も多いかと思いますが、まさにその通りなのです。
初回手術で、丁寧に、無駄なく、きれいな手術をされていれば、修正手術はさほど困難なものではありません。もちろん、ミリ単位の美容的な希望が非常に細やかな方が何度も修正を依頼するケースもあるでしょうが、これは少数派です。
技術力のある、丁寧な仕事をする外科医に依頼すれば、もし修正が必要になった場合も安心して治療を頼むことができると考えています。
それでは、最後に、今回の再手術の患者さんの術前後写真になります。
- 患者さんの個人情報の保護のため、ご本人とのお話の内容は一部変えています。あくまで、一般的な治療の流れを理解していただくための、イメージだと考えてください。
- 治療の効果には個人差があります。主治医から十分な説明を受け、リスクや副作用についても納得してから手術を受けましょう。
施術内容:眼瞼下垂症手術(挙筋前転術
費用: 美容目的の場合 約50万円 保険治療の場合 3割負担で約5万円
*美容の場合はモニター制度があります
リスク:腫れ、内出血、痛み、違和感、左右差や後戻り、ドライアイ、眼瞼痙攣、霰粒腫、など
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