眼瞼下垂治療のいろは。眼瞼下垂の基本をこの1記事で理解する

眼瞼下垂 症状 イラスト説明

東京で美容外科医をしている齋藤隆文(形成外科専門医)です。当サイトで、美容コラムを担当しています。この記事の一番最後に、現在の東京での診療案内を載せていますので、受診希望の方は私のホームページの問い合わせフォームからお問い合わせください。

まぶたが重くて困っている、目が疲れやすくなった、肩こりや頭痛がある、おでこのシワがひどくなった、などの症状でお悩みではありませんか?もしかするとその原因は眼瞼下垂(がんけんかすい)かもしれません。

この記事では、私が専門の一つとしている眼瞼下垂治療についてご紹介します。

眼瞼下垂の原因や治療についてまとめてあるウェブサイトは山のようにありますが、結局理解していなければならないことは何なのか?についてわかりやすく説明してくれている記事にはなかなか巡り合えません。

この記事の要点は、以下の3点です。

  1. まぶたが重い、見えづらいと感じたら、指でまぶたを持ち上げてみてください。改善したら、眼瞼下垂と考えます。
  2. 原因の診断はドクターに任せましょう。この時に、大事な病気の心配はないですか?の一言だけ確認すればOKです。
  3. 眼瞼下垂になるとおでこと眉毛とまぶたが老けた印象になります。ここに老いを感じたら、手術での改善も検討しましょう。

これらについて詳しく解説していきますので、この記事を読めば、自分は眼瞼下垂なのか、治療をすれば何が改善するのかが理解できます。

眼瞼下垂(がんけんかすい)手術と言っても、そのやり方は外科医によって実に様々です。

わずか4cm四方程度の領域に実に複雑な構造が構築されており、曲線により形作られた3次元的でダイナミックな臓器を正確に操作し、見た目も機能も美しい上まぶたを目指して丁寧に治療しなければなりません。

手術をお願いする先生が、どのように考えて治療をしているのかを知っておくことは、自分が手術後にどうなるのかを理解する助けになると思います。

私が普段行っているまぶた治療については、他の記事でも詳しく紹介しています、ぜひ合わせて読んでいただけたら嬉しいです。

目次

まぶたを指で持ち上げて楽になる人は、眼瞼下垂かもしれません

さて、眼瞼下垂(がんけんかすい)については、改めて説明しなくても、ネットで検索すればとても丁寧な解説サイトがいくらでも出てきます。

形成外科や眼科の専門医が説明しているものを読めば、その概要はだいたい理解することができます。

ここでは、私が普段患者さんに説明している言葉でできるだけ簡単に、説明してみたいと思います。

私のところに眼瞼下垂かも?と受診される患者さんは、主に

  • まぶたが重い
  • 見えづらい


のどちらか、あるいは両方で困っておられる方がほとんどです。

まぶたが重い、開けづらい、という方はその時点でまず眼瞼下垂(がんけんかすい)を疑います。”見えづらい”ことで困っている場合には、指で上まぶたを持ち上げて、”見えやすく”なれば、それも眼瞼下垂を疑います。

眉毛を持ち上げる

このどちらかの方は、どうぞ相談にいらっしゃってください。

まぶたを持ち上げても改善しない場合には眼球そのものの問題の可能性が高くなりますので、まずは眼科の先生に診てもらいましょう。

眼瞼下垂(がんけんかすい)の術前に、隠れた病気を見落とされないようにしましょう

では次に、その原因です。私が所属している日本形成外科学会のガイドラインでは、眼瞼下垂を

  1. 神経原性:a. 中枢性(脳血管障害,脳腫瘍など),b. 動眼神経性(動眼神経麻痺,ギラン・バレー症候群など),c. 交感神経性(Horner 症候群など)
  2. 神経筋接合部性:重症筋無力症,ランバート・イートン症候群(LEMS),ボツリヌス中毒,ボトックス注射後など
  3. 筋原性:筋緊張性ジストロフィー(MD),顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー,眼咽頭筋ジストロフィー(OPMD),ミトコンドリア病,慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO)など
  4. 腱膜性
  5. 機械性:a. 皮膚弛緩症,b. 腫瘍性(眼瞼腫瘍など), c. 炎症性(眼部帯状ヘルペス,霰粒腫,結膜炎など),d. 瘢痕性(外傷性,Stevens-Johnson 症候群後など)
  6. 偽性下垂:皮膚弛緩症,後天性下斜視,眼球陥凹など7) その他:眉毛下垂性,心因性,開瞼努力欠如性など

というように分類しています。もちろんこれでは全く理解できません。

患者さんのほとんどは4の腱膜性(けんまくせい)下垂がベースとなっています。多くは加齢によって起こりますが、コンタクトレンズを長期で使用していたり、まぶたをこする癖のある方はリスクが高いと言われています。ほとんどの患者さんがこれに当たります。

ここでお伝えしたい大事なことは、こんなにたくさんある分類の細かな内容ではありません。

それは、年齢のせいだと思っていたまぶたの重みが、別の病気が原因で起きていた場合にそれをきちんと診断してもらうことですこれはやはり、形成外科や眼科の専門医の先生にきちんと診察してもらうことが重要です。私の患者さんでも、お聞きした患者さんのお話からMRI検査をして脳に腫瘍が見つかったケースもあります。診断はネットの記事に頼らず、プロに任せましょう。

眼瞼下垂は、おでこと眉毛とまぶたを老けさせます

では、腱膜性眼瞼下垂(けんまくせいがんけんかすい)の患者さんには、“見た目”と“機能”にどんな変化が現れるのでしょうか。典型的な症状とイメージ図をお示しします。

見た目では、 、

眼瞼下垂 症状 イラスト説明

まぶたが開かなくなってくる(眠たそうな目)

眉毛でまぶたをあげようとする(高く上がった眉毛)

そのせいでおでこにシワがよる(おでこの深いシワ)

という変化が起こり、イメージ図のようになります。 瞼の中の機能としては、 、

眼瞼下垂 内部変化 イラスト説明

まつ毛の生えているまぶたの縁の辺りの皮膚の下に、けんばんと呼ばれる固い板があり、 これにまぶたを引き上げるための筋肉が付着しています。

この付着が緩んだり、筋力が弱くなることでうまく作用しなくなり、まぶたが開かなくなった状態が眼瞼下垂です。

あとは見た目の変化として上まぶたの脂肪が眉毛と一緒に上がっていくことに加え、けんばんから外れてしまった筋肉と一緒に、その上に乗ったまぶたの脂肪が眼球の奥の方に引き込まれるため、上まぶたが凹みます。いわゆる眉毛の下のくぼんだ影です。

このあたりになると、患者さんは、たしかに〜、とか、言われたまんまの顔してる、、、

とか、ご自身と照らし合わせて眼瞼下垂の理解が一気に深まる方が多いです。

その他に、頭痛肩こりのような種々の症状も起こってきます。特に、眉毛を引き上げる筋肉が緊張することが原因の一つとされている緊張型頭痛に対しては、眼瞼下垂の治療が有効となる場合があることが、ガイドラインでもはっきりと明記されています。

さて、ここまでが診断のお話でした。次に治療のお話に移ります。

手術の前に、見た目と機能に関わるリスクを理解しましょう。

タイトルに挙げた通り、眼瞼下垂(がんけんかすい)の治療では、この”見た目”と”機能”のトラブルを可能な限り元の状態に戻してあげることが目標となります。

眼瞼下垂の治療については、点眼薬の研究が行われていたり今後画期的な方法が開発される可能性はありますが、原則は手術です。ただし、これについても、手術適応(手術をすべきかどうかの判断基準)についてのガイドラインがあります。

手術治療を要する眼瞼下垂症の基準として,下記が推奨される。

定量的評価基準として;

  • 正面視時MRD 1 が2 mm 以下
  • 上方視野の欠損角が12 度ないしは24%
  • 下方視時のMRD 1 が2 mm 以下となる読字が困難となる下方視時の眼瞼下垂 

定性的評価基準として; 

  • 上眼瞼の下垂に起因する機能障害の患者側からの訴え
  • 上眼瞼に起因する視野狭窄(しやきょうさく:見える範囲が狭くなること)によってもたらされた顎上げ症状 
  • 上眼瞼に起因する視野狭窄によってもたらされた職業上の不都合や安全上の不都合 
  • 上眼瞼の下垂に伴う不快症状,目の緊張,視野狭窄

簡単に言えば、 、

Dr.齋藤

黒目の真ん中から上まぶたの縁まで2mmなかったら手術したほうがええよ!
まぶたが重くて辛いな~と思ったら先生に相談して、原因が眼瞼下垂やって診断されたら手術を考えてもいいよ!

っていう感じになります。なので、まぶたの重さで困ってたら基本的には手術を勧められることになります。

僕がここで大事にしていることは、

  1. 手術で起こるかもしれない機能のリスクを理解していること
  2. 手術で起こるかもしれない見た目のリスクを理解していること

の2点です。 機能については、“よく開く”ということの副作用のようなものです。今までよりもよく開くようになるので、乾きやすくなります。

今までよりも閉じにくくなるので眼の表面が傷つきやすくなります。なので、そういった症状がもし出てしまったら嫌だな、と思ったら主治医とよく相談して決めてください。

少しだけ瞼が重いだけでそこまで困っていないのに、術後に眼の違和感が残るのはとても辛いことです。

あとは、もともとドライアイがある人は、必ず眼科の先生ともよく相談してください。ぼくの患者さんは、必ず眼科の先生にOKをもらっていただくようにしています

見た目については、上記のような加齢性変化ともとれる症状が改善するので基本的には良い方向に向かいます。

ですが、一重の人が二重になるようなデザインや、二重の人の二重の幅を変更するようなデザインの場合は、ご自身の、いわゆる”あなたらしい”まぶたの印象が大きく変化する可能性があります。

どのような変化が起こるのかは主治医のデザインによって決まります。よく説明を受けてください。

僕は、まぶたの治療を習った尊敬する先生の教えを守り、

  1. 人間の、特に日本人のまぶたの構造をきちんと理解し、そこから自然と作られるふたえのラインを守ってデザインすること
  2. 可能なら、その人のまぶたがまだしっかりと開いていた時のお写真を見せてもらい、できるだけそれを再現できるように努力すること
  3. まぶたは左右ふたつあり、細かな左右差などで修正を要する可能性があるため、常に修正が可能な方法で治療すること

ということを大事にして治療に当たっています。

なので、基本的には”まぶたのふたえの線や自然なシワに沿ったラインで切り、まぶたの中を丁寧に確認、上記のような板と筋肉の付着を調整することでまぶたの開きを改善、それ以外は中の構造はできるだけ崩さないで閉じてくる“よう努力しています。

聖路加国際病院での治療パンフレット

最後に、僕が所属している聖路加国際病院で患者さんへの説明のために作成したパンフレットをお示しします。基本的なスケジュールと、よくあるご質問についても載せていますのでぜひ参考にしてください。

聖路加 眼瞼下垂 パンフレット
聖路加 眼瞼下垂 パンフレット

まとめ

記事のおさらいです。眼瞼下垂(がんけんかすい)かも?と疑ったら、まず指でまぶたを持ち上げてみましょう。見えやすくなったら、これはまぶたの問題ですので、眼瞼下垂の可能性が非常に高いです。

次に、ドクターにかかったら、”私は何かの病気で眼瞼下垂になってるわけではないんですね?”と聞きましょう。そうですよ、と言われたら、あとは手術を受けるのみです。

最後に、手術に関わる見た目の機能のリスクをしっかりと説明してもらいましょう。術後に別人のようなまぶたになってしまったり、目が乾いて目薬が手放せなくなったら嫌ですよね?しっかり記事を読んで理解しておいてくださいね。

次回の記事では、実際の患者様のお写真を元に眼瞼下垂(がんけんかすい)の治療について説明したいと思います。

こちらの患者様のまぶた、眉毛、おでこのしわ、先ほどご紹介した眼瞼下垂の症状が強く出ていますね。

眼瞼下垂 術前 典型例 説明

手術を経てどうなっていくのでしょうか、、

具体的な診療の流れが知りたい!

という方は、ぜひ次の記事も参考にしてくださいね。

ご注意いただきたいこと
  • 患者さんの個人情報の保護のため、ご本人とのお話の内容は一部変えています。あくまで、一般的な治療の流れを理解していただくための、イメージだと考えてください。
  • 治療の効果には個人差があります。主治医から十分な説明を受け、リスクや副作用についても納得してから手術を受けましょう。

治療についてのご相談や受診のお問い合わせについては、当HPトップページの予約フォームからご連絡ください。

今回の治療の内容について
  • 施術内容:眼瞼下垂症手術(挙筋前転法)
  • 費用:今回のような保険治療の場合 3割負担で約5万円 ・ 美容目的の場合 約50万円(モニター制度あり)
  • リスク:腫れ、内出血、痛み、違和感、左右差や後戻り、ドライアイ、眼瞼痙攣、霰粒腫、など
齋藤隆文医師には下記の医療機関で受診できます。HPトップページからご予約ください。
  • 加藤クリニック麻布 月曜日水曜日土曜日 初診外来 予約制
  • 聖路加国際病院 形成外科 金曜日 初診外来 予約制
    *HPトップページに予約可能なお日にちとクリニックのカレンダーを掲載しています

この記事を書いた人

齋藤 隆文(さいとう たかふみ)
日本形成外科学会認定専門医
神戸大学医学部医学科卒
現在は加藤クリニック麻布、聖路加国際病院に所属。専門はお顔の美容外科、特に鼻の治療。

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