東京で美容外科医をしている齋藤隆文(形成外科専門医)です。当サイトで、美容コラムを担当しています。この記事の一番最後に、現在の東京での診療案内を載せていますので、受診希望の方は私のホームページの問い合わせフォームからお問い合わせください。
ここ数年で手術を受ける人が大きく増えた術式の一つに、眉下切開まゆしたせっかい手術があります。眉毛下皮膚切除術びもうかひふせつじょじゅつとか、眉下リフト、といった言い方もありますが基本的にはすべて同じ手術です。
治療内容は実にシンプルで、眉毛の下にある皮膚を切除することで、上まぶたのたるみを改善させたり、二重幅を広く見せる効果があります。
この手術の最大のデメリットとして、傷跡きずあとが目立つ、と言われることがあります。これにはいくつかのポイントがあり、これを間違えると傷跡が本当に目立ってしまうことがあります。
この記事では、以下のようなことを解説しながら、眉下切開手術について解説していきたいと思います。そして最後に、工夫をしても赤みが強く出てしまった方の、長期経過写真を提示しています。
- 眉下切開は術後シミュレーションが行いやすいので、術前に仕上がりがどうなるかのイメージをドクターにきちんと聞きましょう。どこまで改善してもらえるか、ドクターのデザイン力がわかります。
- ダウンタイム、赤みを最小限に抑えるためには、皮膚切除幅のデザインに無理がないか、皮下縫合の方法、ボトックスの効果的な使用、などを検討しながらプランを建てる必要があります。
- 術後のリスクとしては、吊り目変形が一番多い。他にも、縦じわ、外側の皮膚のふくらみドッグイヤー変形ともいいます、おでこのシワが減って目周りのシワが増えた、などがあります。
眉下手術は診断とデザインが重要。デザインを終えた時点でその傷跡を眉毛に隠してもらえるかも決まる
皮膚を葉っぱ型、いわゆる紡錘形ぼうすいけいに切除することで上まぶたのたるみを改善させたり、二重幅を広く見せる効果のある眉下皮膚切除手術ですが、まず一番のポイントは診断とそれに基づくデザインということになります。
葉っぱ型に皮膚を切除して縫い寄せることになるので、眉毛の中心部から外側あたりの皮膚切除幅が一番おおきくなることになるので、たるみが外側を中心に強い方に一番良い手術ということになります。
また、切除のデザイン位置によって、うまく、眉毛に隠れるような傷跡になるケースと、全く眉毛に隠れずに傷跡がとても目立ちやすくなるケースがあります。どこに傷跡ができて、眉毛との位置関係はどうなるのかを事前に確認しましょう。
その患者さんの上まぶたのたるみがどこに強く出ていて、どの部分のたるみをどのバランスで切除すれば効果的で自然な仕上がりになるのか、という診断力、そして傷跡を目立たないように設定するデザイン力が要求されることになります。
また、美容的な目的とは別に、眼瞼下垂がんけんかすいの治療として眉下皮膚切除術が提案されることがあります。これについては注意が必要です。
まぶたの開きが悪い場合には、開く力が弱くなっているのが原因であるケースと、まぶたのたるみが強くて開くことができていないケースがあり、眉下切開は後者を改善させることしかできません。
赤みが出るのは体質にも影響を受ける。正しい皮下縫合により赤みが出る期間を最小限に抑える
正確な診断を受けて、ていねいにデザインをしてもらったあとは、実際の手術ということになります。
通常は、痛みのみをとって行う局所麻酔か、ご不安の強い方にはうとうとと眠たい状態で治療を受けられる静脈麻酔を使いながら治療を始めていきます。
手術の流れは、まずデザインに沿って正確にメスを入れて、皮膚および皮下の必要な組織切除を行います。メスを入れる角度一つでも傷跡に大きな影響を与えます。基本的なことですが、一つ一つの丁寧な手技の積み重ねで仕上がりが変わります。
そして状態に応じてその下にある眼輪筋がんりんきんという筋肉に操作を加えることがあります。
このあたりは少しマニアックなので、ドクターに直接質問するのがよいと思いますが、眉毛が下がってくるのを予防してできるだけ眉下切開のメリットが多く得られるような効果が期待できます。
そしてあとは正確な皮下および縫合となります。皮膚を縫う前に、傷が開こうとする力を効果的に減らす適切な皮下縫合が行われているかどうかが、大事なポイントの一つとなります。
あとは、必要に応じてボトックス注射を併用することもありますが、キズアトに負荷がかからないような工夫をしっかりと取り入れながら手術を進めていきます。
こういった工夫を十分に組み込んで行うことで、ダウンタイムは最小限に抑えられます。が、ごく一部の方で赤みが強く出てしまうことがあります。
しかし、雑な手術ではなく、細やかな治療を受けることで、その赤みも最小限に抑えられていると考えることが大事です。
また、3ヶ月程度続いてしまったとしても最終的には赤みは必ず引いてきますので、刺激を与えずに静かに経過を見守ることも重要です。
赤みが強く出てしまった実際の症例の術後経過について
このお写真は、眉下皮膚切除まゆしたひふせつじょ前のモニター患者様です。まぶたの開きも少し落ちており、場合によっては眼瞼下垂症手術がんけんかすいしょうしゅじゅつが提案されることもあるケースです。
ご本人は印象変化があまり出ないことをご希望されましたので、眉下リフトの方針となりました。先に述べたような手術により抜糸までトラブルなく経過しましたが、術後の赤みが強く出てしまいました。
ここまで赤みが強くなることは通常ありませんが、その場合でも最終的にはきれいに治るということをご理解いただくためにあえてお写真を提示させていただきました。
ネット上にはうまくいった症例ばかりで溢れていますが、実際には、スムーズにいかないケース、ダウンタイムが長引いたケースなども存在します。
こういったゴールに回り道をすることになるパターンも予め知っておくことで、万が一起きても冷静に対処することができます。
なお、こちらのお写真はすべてノーメイクとなっています。特に術後1ヶ月目は赤みが強めに出ていますが、お化粧を工夫していただくことにより、外出時にはほとんで目立たせずにお過ごしになれます。
見えなくなっていたまつげのラインがきれいに出て、自然にたるみが取れていることがわかります。また、まぶたの開きが変わっていないことも重要なポイントです。優しい、柔らかなお目元の印象になりましたね。
ただ皮膚を切って縫うだけでもこんなにある。術後の吊り目変形や縦じわなどのリスクについて
比較的リスクの低い手術として広まっている眉下切開まゆしたせっかいですが、いくつか知っておきたいリスクがあります。
まずは、外側の皮膚のふくらみ、ドッグイヤー変形です。これは眉毛の長さと比較して、皮膚を多く切除した場合にリスクが高くなってきます。
特に、たるみは強いけれど眉毛の外側に傷が出ないように手術をしてほしい、という方は注意が必要です。傷跡は眉毛の下に収まったけれど、眉毛の外側に変なふくらみが残ってしまった、ということになりかねません。
次に、吊り目変形です。眉下切開は主にまぶたの外側にたるみが強い人に適している手術で、外側のたるみがしっかりとれるデザインになることが多いです。なので。元々吊り目がちなまぶたの形の人は、より吊り目が強調される可能性があります。
こういった場合には、皮膚の縫い方の方向を調整することで吊り目変形をおこなさないように工夫をする必要があります。
あとは、皮膚をたくさん切除するケースで注意が必要なのが、術後の縦じわ変形、引きつれです。
ポイントは、内眼角部、いわゆる目頭が動かないということが関係しているのですが、このあたりも考慮したデザインにしないと、縦じわ、斜めジワが強く出て変なひきつれとして術後に悩まされることとなります。
あとは最後に、上まぶたのたるみが改善すると眉毛が下がってくることがあります。
また、皮膚のとりすぎでも眉毛が下がってきます。眉毛が下がるとおでこのシワが消えるというメリットがありますが、目周りのシワが悪化したり、不機嫌そうな印象になるというリスクもあります。このあたりについても、事前の相談が必要です。
まとめ
眉下切開まゆしたせっかい、眉下リフトについての大事なポイントを、実際の症例写真を混じえながら解説いたしました。
今回取り上げた内容はごくごく一般的なレベルであり、かつ全てについてきちんと注意した上で手術に臨まなければ思わず術後トラブルに巻き込まれかねないポイントです。
世の中には信じられないような手術後遺症で苦しんでいる方が本当に存在します。
限界を超えた皮膚切除幅で眉下切開をされ、目がきちんと閉じられずドライアイの治療を受けるケースや、不適切なデザインにより、眉下切開にも関わらず不自然な印象変化が起きてしまったケースなどは、修正が非常に難しくなります。
特に美容目的で治療をご検討されている場合には、上記に書かれているような内容はきちんと理解していただいた上で、担当するドクターがそれらについて配慮をしながら治療をしてくれるかを判断していただくことが大事だと思います。
- 患者さんの個人情報の保護のため、ご本人とのお話の内容は一部変えています。あくまで、一般的な治療の流れを理解していただくための、イメージだと考えてください。
- 治療の効果には個人差があります。主治医から十分な説明を受け、リスクや副作用についても納得してから手術を受けましょう。
術式: 眉毛下皮膚切除術
費用: 35万円
*モニター制度を利用する場合はこちらの金額から減額される場合があります
リスク: 内出血 感染 左右差 後戻り 傷跡 など
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