子宮がん検診とは
子宮下部の管状の部分を子宮頸部、子宮上部の袋状の部分を子宮体部と呼び、それぞれの部位に生じるがんを「子宮頸がん」、「子宮体がん」といいます。一般的には、子宮がん検診は「子宮頸がん検診」を指します。
20代・30代の女性が罹るがんの中で最も多いのが子宮頸がんです。
子宮頸がんは、初期では自覚症状がほとんどない病気ですが、定期的な検診により初期の段階で発見されることが多いです。また、がんになる前の段階「子宮頸部異形成」という状態で発見することで、がんに進行する前に対処します。
1年から2年に1度程度、定期的に検診を受けましょう。
子宮頸がんとは?
子宮頸がんは子宮がんのうち約4割程度を占めます。以前は約7割が子宮頸がんでしたが、子宮体がんの増加により割合は減少しています。
最近は20~30歳代の若い女性に増えてきており、30歳代後半がピークとなっています。国内では、毎年約1万人の女性が子宮頸がんにかかり、約3000人が死亡しており、また2000年以降、患者数も死亡率も増加しています。
子宮頸がんは早期発見できれば30分かからない程度の小手術だけで治療がおわることも多く、命にかかわることはほとんどありません。しかし、進行してしまうと長時間の手術や、放射線治療、抗がん剤治療が必要となることがあり、残念ながら治療に反応しないこともあります。子宮頸がんで亡くなっている方のほとんどは、進行した状態でがんが発見された方です。そのため、がん検診による早期発見とワクチンによる予防が非常に重要なのです。
子宮頸がんの発生のほとんどすべてはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が関与しているといわれています。HPVの感染そのものは稀なことでなく、感染しても子宮頸がんの前がん病変をおこすのはそのごく一部だけですが、そのごく一部にあてはまってしまう可能性はだれにでもあるのです。
検査方法は子宮の頸部を柔らかいブラシで擦って細胞を採取します。
痛みはほとんどありませんが、検査の後、少量の出血がみられることがあります。
1年から2年に一度、定期的に検診をうけることをお勧めします。
*がん検診で陽性となった方はコルポスコピーによる検査が必要となることがあります。当院ではコルポスコピーによる組織検査は行っておりません。コルポスコピーによる組織検査が必要な方は、他院でのご相談をおすすめいたします。
子宮頸がんワクチン(シルガード9)
がん検診を毎年することはもちろんのこと、さらに発症のリスクを下げるためには、子宮頸がんワクチンの予防接種をお勧めします。特に性交渉のない方におけるワクチンの予防効果は高いといわれています。
従来の子宮頸がんワクチン(ガーダシル)では、約65%のカバー率にとどまっていましたが、2021年に新たに発売されたシルガード9では、子宮頸がんの原因の90%をカバーできることになりました。
シルガード9について
- ヒトパピローマウイルス 6/11/16/18/31/33/45/52/58型を含む、9価ヒトパピローマウイルスワクチンです。
- ガーダシル®(4価ヒトパピローマウイルスワクチン)に含まれるHPV6/11/16/18型に加え、HPV31/33/45/52/58型のVLP(ウイルス様粒子)を含みます。
- 子宮頸がんの原因となるHPV型の約90%をカバーしています。
- アジア人に特に感染が多くみられるHPV52/58型のVLPを含み、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス型の約90%をカバーします。
- 海外ではこのワクチンが主流です。
子宮頸がんの前がん病変に対する優れた予防効果
- ガーダシル®による予防効果に加え、新たに追加された5つのHPV型に関連したグレード2以上の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN2/3)、上皮内腺がん(AIS)、外陰上皮内腫瘍(VIN2/3)および腟上皮内腫瘍(VaIN2/3)の発生率に対するシルガード®9の予防効果は96.7%でした。 (海外データ)
副反応
- 国際共同試験(001試験、16~26歳女性、ガーダシル®対照)承認時
- 注射部位の副反応は、本剤接種後5日間に7,071例中6,414例(90.7%)に認められます。
- 主なものは疼痛6,356例(89.9%)、腫脹2,830例(40.0%)、紅斑2,407例(34.0%)、そう痒感388例(5.5%)、内出血137例(1.9%)、腫瘤90例(1.3%)、出血69例(1.0%)でした。
接種料金(税込)
子宮頚がんワクチン(シルガード9) | 33,000円/回 (99,000円/3回) |
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接種方法
9歳以上の女性に、1回0.5mLを合計3回、筋肉内に注射します。通常、2回目は初回接種の2か月後、3回目は6か月後に同様の用法で接種します。トータルで、3回接種が必要です。
子宮体がん
子宮体がんは、子宮内膜から発生することから、子宮内膜がんとも呼ばれます。
この他に、子宮の筋肉の層から発生する良性腫瘍を子宮筋腫といい、悪性のものを子宮肉腫(がん肉腫や平滑筋肉腫など)といいます。子宮肉腫は子宮体がんと比べて発生頻度はまれで、悪性腫瘍ですが子宮体がんとは異なるものです。
子宮体がんは、日本全国で1年間に約16,000人が診断されています。子宮体がんと診断される人は40歳ごろから増加し、50歳から60歳代でピークを迎えます。
子宮体がんの患者の90%に不正性器出血がみられます。出血は褐色の帯下(おりもの)だけの場合もあるので注意が必要です。不正性器出血がなんども続く場合や、閉経後に出血がみられる場合などは子宮体がん検診(子宮内膜細胞診)を受けることが重要です。
検査方法は子宮の中まで細胞を採取する細い器具を使用します。ご出産の経験のない方、ご高齢の方は子宮の入り口が狭くなっていることが多いので採取することが困難な場合もあります。
このような方は超音波検査で子宮内膜の厚みを計測して、判断することもありますが、初期のがんを検出できない可能性もあります。