東京で美容外科医をしている齋藤隆文(形成外科専門医)です。当サイトで、美容コラムを担当しています。この記事の一番最後に、現在の東京での診療案内を載せていますので、受診希望の方は私のホームページの問い合わせフォームからお問い合わせください。
いわゆるプチ整形が流行し、今では埋没法で手軽に二重まぶたを手に入れることができる時代になっています。しかしながら、手術にはやっぱり抵抗がある人もまだまだ多いです。
ネットやyoutubeで検索すると、このような人に向けた、アイプチやマッサージで二重まぶたが作れる!というような手軽に試せそうな方法がたくさん並んでいます。
ですが、手軽にできるこういった二重まぶたの作り方には、少々注意が必要です。具体的には、まぶたの開きを悪くしてしまったり、老化を早めてしまうリスクがあるんです。
これからまぶた整形を考えている方や、アイプチやマッサージで二重まぶたを作り、その後まぶたに何かしらの違和感を覚えている方にはぜひ読んでいただきたいと思っています。
この記事では、アイプチで作った二重まぶたのデメリットと、こういったデメリットの解決策について、実際のお写真を見ていただきながら解説しています。
まぶたの手術のやり方は外科医によって実に様々です。
わずか4cm四方程度の領域に実に複雑な構造が構築されており、曲線により形作られた3次元的でダイナミックな臓器を正確に操作し、見た目も機能も美しい上まぶたを目指して丁寧に治療しなければなりません。
手術をお願いする先生が、どのように考えて治療をしているのかを知っておくことは、自分が手術後にどうなるのかを理解する助けになると思います。
アイプチによるたるみが出てきた人は、切開法が効果的。
実はアイプチのこういったリスクはwikipediaでも取り上げられています。
Wikipediaでアイプチ、と検索すると、
長時間、あるいは繰り返し使用すると肌の荒れや炎症を起こすこともある。まぶたに負担がかかり、皮がのびたり、跡が残ったりすることがあるので、注意が必要である。
Wikipedia
と書かれています。そうです、アイプチには皮膚が伸びてしまうリスクがあるんです。いわゆる、たるみリスクです。
アイプチに使われている、ふたえのりが皮膚のバリア機能を壊したり、アレルギーのもとになり、皮膚に炎症が起こることで痒みの原因になります。
二重になるためには穿通枝(せんつうし)という構造が必要になります。この穿通枝が無かったり弱かったりする人に対して、無理やり皮膚にのりを塗って二重まぶたを作ろうとするわけです。
二重まぶたになることを邪魔している皮膚や脂肪などの抵抗する負担を皮膚に一手に背負わせるわけです。こうなると、炎症がおきてかゆくなった皮膚を頻繁にこすってしまったり触ってしまい、皮膚のたるみがどんどん進行してしまいます。
同じ理由で、やはりマッサージも皮膚のたるみを進行させてしまうリスクがあるわけです。
これは皮膚科の先生方の間でも問題視されており、注意喚起がされています。わかりやすい例として、記事の最後に、皮膚科の先生からのアイプチによる皮膚炎の報告を引用しておきました。
ちなみにこの報告のオチは、最終的に美容外科で二重まぶたにしたことでアイプチを使わずに済み、症状が改善した、というものです。美容外科は、時にこういった機能的な要素も持ち合わせているのです。
世の中には、手術をしないお手軽プチ整形と称した様々な商品で溢れています。これらは使い方によっては非常に効果的な物もあるのだろうとは思います。しかしながら、このアイプチのように、思わぬ副作用を持ち合わせているケースもあったりします。正しい知識を身につけることが大事です。
簡単に説明すると、
- 埋没法により、皮膚とまぶたを開くための筋肉の間を繋いであげることで穿通枝(せんつうし)のような役割を作ってあげる
- 二重まぶたを作るのを邪魔する皮膚や脂肪の要素が大きい場合には、必要に応じて切開法も選択し、これらの要素を取り除いてあげる。
ということになります。
まぶたの重さの原因は皮膚と脂肪が主役です
さて、外来をしていると、職業病なのか、患者さんのお顔の様々な不調や老化のサインが見えてしまいます。
ここで一例。先日、アイプチを使ってまぶたが重くなっていることを僕に指摘された患者さんがいらっしゃいました。なぜ僕私は、この方がまぶたが重いだろうと判断したのでしょうか?まぶたの開きを見て判断したのではないんです。
① まぶたを開ける時に眉毛が一緒に上がる
お話していると、瞬きをする度に眉毛(まゆげ)が上がっていました。これはまぶたを開けづらいため、それを補助するために眉毛が上がってしまうのです。
一つは、皮膚のたるみがある場合にこういった眉毛の動きが出ます。あとは、二重の線が弱い、穿通枝(せんつうし)が弱い場合にも、うまく二重の線が折れてくれないため重いと感じやすくなります。
正面視の術前写真は、まぶたを開ける瞬間を捉えていますが、下を見ている時にも眉毛が上がってしまっていることは、まぶたの重さが眉毛に影響を与えていることを示しています。
② まつ毛の根本にお肉が乗っている
まつ毛の生え際から二重の線までの皮膚のたるみ、お肉の量も重要です。ここのボリュームが多い場合も、二重の線が折れづらい原因となるため、アイプチで無理やり折れるように作った場合はまぶたを開くときの負担となっています。
これはやや複雑な原理になるため、まつ毛の根元はスッキリ見えた方が良いと覚えていただけるだけで良いと思います。
アイプチのふたえのりは二重の線に合わせて塗るため、痒くなって擦るのもここの部分になります。当然、ここの皮膚を何度も擦ることになるため皮膚のたるみは二重の線の近くに出てきます。
術前写真を見ると、二重の線からまつ毛の間の皮膚にたくさんのシワがあるのが見てとれます。これが、皮膚のたるみです。
こういったことが起きてしまっており、まぶたが重いなと感じている方は、しっかり続きを読み進めてくださいね。
アイプチによるたるんだまぶたを自然にきれいに改善する全切開ふたえ手術
こういった、まぶたの開きを邪魔する要素を“開瞼抵抗”(かいけんていこう)と呼びます。開瞼抵抗になるのは、皮膚のたるみだけでなく、眉毛や脂肪の位置や量、まぶた内部の構造的な問題など他にも色々な原因があります。
今回は、皮膚のたるみと穿通枝(せんつうし)の弱さが主な原因と診断しました。
実際には、埋没法でも多少改善が期待できる可能性がありましたが、皮膚のたるみが明らかなこともあり、一度ですっきりよくしましょうということで、全切開での開瞼抵抗の調整を行うこととしました。
切開でまぶたの構造を一つ一つ丁寧に確認し、出血させないようにしながら必要な操作を進めていきます。この時に同時に大事なのが、まぶたを開く力のチェックと調整もしてもらうことです。
まぶたの開く力だけをピュアに確認する方法があるので、これでチェックしてもらい、自分で鏡を見て開きがちょうど良いかを相談します。この方は、開きの調整は希望されませんでした。
たるんだ皮膚を切除し、穿通枝を手術的に作る操作を丁寧に仕上げて、二重の線をきれいに作り直しました。術前後のお写真です。
術後の写真では、
- 正面だけでなく、全ての方向で眉毛が上がらず楽にまぶたを開けられるようになり、おでこのシワもきれいになりました。
- まつ毛の上のお肉のたるみがとれ、まつ毛の根元がスッキリきれいに見えるようになりました
そして、術後の外来では、
手術してから頭痛がなくなって痛み止めを全く使わなくなりました〜!!びっくりです!!
と、見た目以上に機能的な改善にご自身も驚かれていました。
実際には、全員の方が同じように症状が改善するとは限らないため、やはり術前の診察をしっかり受けて、どれが改善しそうか、どれは残りそうか、など術前に効果が期待できることについて担当医の先生ときちんとお話してから治療に進むことが大事になります。
まとめ アイプチは薄くてたるみのないまぶたでなければやめましょう。
今回のたるんだアイプチまぶたの治療を通してお伝えしたいことは、
- アイプチは、穿通枝(せんつうし)も開瞼抵抗(かいけんていこう)もどちらも改善してくれないよ
- 埋没法は穿通枝を補助する役割しかないよ
- 腫れぼったい厚い皮膚、脂肪などの開瞼抵抗がある場合には、埋没法に脱脂を追加したり切開法を選択する必要があるよ
ということです。
もちろんこれが全てなわけではありませんが、理想のまぶたを手に入れるための一助となれば幸いです。
- 患者さんの個人情報の保護のため、ご本人とのお話の内容は一部変えています。あくまで、一般的な治療の流れを理解していただくための、イメージだと考えてください。
- 治療の効果には個人差があります。主治医から十分な説明を受け、リスクや副作用についても納得してから手術を受けましょう。
施術内容:眼瞼下垂症手術(挙筋前転法)
費用:今回のような保険治療の場合 3割負担で約5万円 ・ 美容目的の場合 約50万円(モニター制度あり)
リスク:腫れ、内出血、痛み、違和感、左右差や後戻り、ドライアイ、眼瞼痙攣、霰粒腫、など
- 加藤クリニック麻布 月曜日水曜日土曜日 初診外来 予約制
- 聖路加国際病院 形成外科 金曜日 初診外来 予約制
*HPトップページに予約可能なお日にちとクリニックのカレンダーを掲載しています
この記事を書いた人
引用)
二重瞼用接着剤による上眼瞼皮膚炎(いわゆるアイプチ皮膚炎)の1例 治療法の選択肢としての重瞼術について(原著論文/症例報告)
Author:藤本 美津夫 他(自治医科大学 皮膚科学教室)
皮膚科の臨床 (0018-1404)47巻6号 Page819-822(2005.06)
23歳女.数年前から二重瞼用接着剤(以下接着剤)を使用しており,上眼瞼部にしばしばそう痒,紅斑を生じていた.今回,痛みを伴うようになったため受診した.両側上眼瞼は軽度腫脹し,粃糠様鱗屑を伴う紅斑と苔癬化,色素沈着を認めた.使用中の接着剤”as is”についてパッチテストを行ったが陰性であり,皮疹の原因は繰り返し加わった外力によりテープストリッピングの原理で皮膚のバリア機能が障害されたことではないかと考えられた.いずれにしても接着剤使用と皮疹との関連は明白であり,使用を中止するよう指導したが,理解を得られなかったため,問題解決の選択肢の一つとして手術療法について説明した.後日,紹介医療機関の美容外科医院で埋没式重瞼術を受け,本人の満足が得られた