ピルの服用を止めるタイミングとは?やめた後の体調変化も解説

考える 女性

院長の石川(産婦人科専門医)です。

低用量ピルの服用を始めたのは良いけれど、やめるときはどうすれば良いのか、疑問に思ったことはないでしょうか。

そもそも低用量ピルを服用する目的は、人それぞれですので、回答は一つというわけではありません。避妊のため、月経困難症や子宮内膜症の治療、黄体機能不全などの不妊治療に対して、など低用量ピルは多くの場面で使われる薬です。

今回の記事は、避妊を目的に低用量ピルを始めたかたに対する回答を中心に、低用量ピルの服用をやめるタイミングについて、説明していきたいと思います。

この記事の執筆者

石川 聡司 日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)

北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。

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ピルの服用をやめようと考えるときとは

悩む 女性

低用量ピルの服用を始めると、吐き気や頭痛、不正出血などの副作用に悩まされたり、通院する時間が取れなかったり、思ったよりも費用がかかったりなど、さまざまな理由により服用の中止を考える方もいます1)

避妊の目的で低用量ピルを服用しているため、服用を中止する理由が妊娠を希望しているから、ということであれば、服用をやめることに対して特別大きな問題はないでしょう。

ただし、避妊を続けたいということであれば、すぐにやめてしまう前に、服用を継続することも検討してみてはいかがでしょうか。

吐き気や頭痛、不正出血というような低用量ピルの副作用は服用開始後、3ヶ月程度の間によく起こります。この時期を乗り切ると、副作用は徐々に減っていくことが多いといわれています。

あまりにも吐き気が強くて服用できないなど、症状の出現度合いは個人差があると思います。副作用が原因で低用量ピルの中止を考えているかたは、やめる前に一度医師に相談することをおすすめします2)

オンライン診療 女性

また、仕事などの都合で定期的な通院を行う時間が取れない、という方もいると思います。このような場合には、通院しなくても処方可能なオンライン診療を活用する、という方法があります。

初診や検査を行う際には来院する必要がありますが、処方のみであれば予約を取ってオンラインで完結するという便利さが魅力です。

避妊目的に対する低用量ピルの処方は、自由診療の扱いになりますので、思っていた以上に費用が高くなってしまったと感じる方もいると思います。

自由診療であるため、取り扱っている低用量ピルの種類や値段は、各医療機関で異なります。服用をすぐにやめる前に、通院先を変更することも検討してみるのも一つの方法だと思います。

  • 副作用が強いのは最初の3ヶ月
  • 医師に薬の変更を相談することもできる
  • 時間がない人にはオンライン診療がおすすめ
  • 自由診療でのピルの値段は病院によってまちまち

ピルの服用をやめるタイミングとは

ピル カレンダー

低用量ピルの服用をやめる必要がある場合、1シートをすべて服用し終わった時点が、やめるタイミングです。低用量ピルは女性ホルモン製剤であるため、やめることで大きな支障はありません。

多くの場合は、服用を中止して3ヶ月程度で正常な月経周期に戻るといわれています。

1ヶ月ほどで生理が来る人もいれば、半年程度かかってから生理が来る人もいて、個人差が見られます。

ピルの服用をやめた後、生理が来ない場合に考えられること

妊娠、生理不順、その他の理由が考えられます。順に説明していきますね。

妊娠した

低用量ピルをやめた後に排卵があって、性交渉のタイミングが合うと、最初の生理が来る前に妊娠する可能性があります。

妊娠すると、基礎体温の高い状態が続きます。また、吐き気や眠気、胸が張る、体がほてる、といった、いわゆるつわりの症状を自覚することがあります。このつわりの症状は、妊娠だけに特有ではありませんので、基礎体温を計測することや、妊娠検査薬で確認するのが良いでしょう。

生理不順

もともと生理不順があった方では、低用量ピルの服用をやめた後に生理周期が不規則のままの状態に戻ることがあります。

  • 過剰なストレス、不眠
  • 無理なダイエット、極度にやせている
  • 肥満である
  • 日常的に激しい運動を行っている
  • 甲状腺疾患、子宮内膜症などの持病

上記のような状態は、生理不順の原因になります2)

生殖可能年齢の女性にとって、低用量ピルなどの薬を服用していない状態で生理が来ないことは、何らかの問題がある可能性があります。

低用量ピルの服用をやめた後に、生理が再開しない場合には、婦人科で診察を受けるようにしてください。

その他

他の病気や、薬を服用している場合も、生理が来なくなることが考えられます。

代表的なものとしては、他の病気に対して用いられている薬剤による薬剤性無月経が考えられます。

例えば、ドパミン拮抗薬や、三環系抗うつ薬などの向精神薬を服用している場合には、高プロラクチン血症のために生理が来なくなります3)

ピルの服用をやめるべきケースとは

血栓症

患者さん個人の希望とは別に、医学的にピルの服用をすぐにやめるべきというケースがあります。

低用量ピルの重篤な副作用に血栓症があります。

持病を持っていない方であれば、高い頻度で起こることはありませんが、心血管系の病気がある方、日常的に喫煙する方、高血圧である方などの場合には、発症の危険度が高まります。

また、40歳以上の方も40歳未満の方と比べて心血管系の病気を発症しやすくなることから、ピルを服用するかどうか医師とよく相談する必要があります。低用量ピルは閉経まで投与可能ですが、50歳以降は服用できない薬です。

なお、血栓症を疑う注意すべき自覚症状があります。

激しい腹痛や胸痛、頭痛、見えにくさなどの視覚障害、ふくらはぎ痛やむくみなどです。このような症状がある際には、日中であればかかりつけの婦人科へ連絡し、夜間休日であれば救急病院へ連絡し、すぐに受診して治療しなければいけません。また、低用量ピルを中止する必要があります2)

妊娠が確認された場合には、低用量ピルの服用を止める必要があります。妊娠初期に、妊娠に気づかず低用量ピルが服用され続けている可能性もありますが、胎児への明らかな影響はないといわれています2)

仮に、何らかの病気のために、手術を受けることになる場合には、手術の4週間以上前から低用量ピルの服用を止める必要があります2)

手術を受けるほどでなくても、低用量ピルを服用していると、他の薬と併用する際に薬の効き目に影響があることもあります。低用量ピルを服用中であることは、婦人科以外の治療の際にも必ず担当医へ申告してください。

低用量ピルの中止を検討するケース
  • 持病があるかた
  • 40歳以上のかた
  • 血栓症の疑いがあるかた
  • 妊娠したかた
  • 手術を受けるかた
  • 他の薬を服用する必要があるかた

妊娠したい場合に、いつピルをやめるか

赤ちゃん 家族

妊娠を希望する場合は、そのタイミングで低用量ピルの服用を中止して構いません。

妊娠を希望して低用量ピルの使用をやめる場合、低用量ピルの使用をやめてすぐに妊娠できる人もいれば、きちんと排卵が起こり、正常な月経周期に戻ってからようやく妊娠できる人もいて、個人差が出やすいところです。

低用量ピルの服用をやめてから、90%程度の方が3か月以内に元のような生理の状態に戻り、妊娠できるようになります。なお、低用量ピル服用による胎児への影響はないといわれています。つまり、服用中止後すぐに妊娠した場合でも問題ありません。

また、長期間服用し続けたことで、妊娠への明らかな悪影響はないともいわれています2)

ピルの服用をやめることによる体の変化

ニキビ 女性 鏡

低用量ピルの服用をやめた場合、多くの方は3ヶ月以内に正常な月経周期に戻ります。しかし、以前のホルモンバランスに戻ることで、今まで軽減されていた生理痛や月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)などの月経に伴う諸症状に再び悩まされてしまう場合があります。

月経に伴う諸症状としては、他に、肌荒れやニキビが悪化することも考えられます。また、低用量ピルの服用を中止することでエストロゲンが急激に減少し、毛周期に影響することで抜け毛が増えることもあります。分娩後の脱毛症と同じ状態と考えられるため、多くの場合、抜け毛の症状は一時的で、自然に改善されるといわれています4, 5)

低用量ピルの服用をやめる際には、あらかじめどんな変化が起きるのか確認しておくのが良いでしょう。

ピル中止で起こる可能性のある変化
  • 生理が再開する
  • 月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)
  • 肌荒れやニキビ
  • 抜け毛

まとめ

いかがだったでしょうか。避妊のために低用量ピルを服用していて、妊娠を希望して低用量ピルをやめる場合には、ご自身のタイミングで服用をやめても良いと思います。ただし、他の理由で低用量ピルをやめようかと考えるときには、医師に相談して解決できる場合もあります。

低用量ピルの服用をやめるかどうかを決断することに関して、不安な点がある場合、また、服用をやめた後に、生理予定日をすぎても生理が来ない場合には、ぜひ一度婦人科に相談してください。

参考文献

  1. 種部恭子. 経口避妊薬の服薬指導. 産科と婦人科: 適正な避妊を目指して 経口避妊薬の服薬指導 51(11):1375-1381, 2021
  2. OC・LEPガイドライン 2015年度版. 日本産科婦人科学会編. http://www.jsog.or.jp/news/pdf/CQ30-31.pdf
  3. 小川真里子ら. 心身医療を行う上で、知っておきたい月経関連症状 薬剤性無月経. 心身医学 60(6):509-514, 2020
  4. 後藤奈保子ら. 経口避妊薬により生じたと思われる脱毛症の1例. 皮膚の科学 1(6):400-403, 2002
  5. 植木理恵. 分娩後脱毛症. 皮膚科診療プラクティス 毛と爪のオフィスダーマとロジー 8:18-19, 2000
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