低用量ピルの副作用は?副効用や血栓症のリスクを解説

低用量ピル ラベルフィーユ ファボワール

避妊や月経困難症の改善を目的に低用量ピルを始めたい、と思ったとき、まず心配になるのは副作用の問題ではないでしょうか。

また、飲み始めるにあたって説明は受けたけれども、実際に飲んでから気になり始めた体調の変化は果たして副作用なのかな、と不安に思うこともあると思います。

ピルは女性ホルモンを含む薬であることから、体への負担が大きいなら躊躇してしまうというのは無理もないことです。薬から受ける体調の変化には個人差がつきものだと思います。

経口避妊薬としてピルが登場した当初は副作用が強かったことから、「ピル=副作用が強い薬」というイメージも残っているかもしれません。確かに、ピルが発明された当初は副作用がたびたび問題になり、配合されるプロゲスチンとエストロゲンの量や質について改良が繰り返されました。

その結果として、治療効果を高めることと同時に、副作用対策も改善されて現在の低用量ピルの開発につながっています。低用量ピルは、特別なリスクになる要素がない方にとっては、副作用の発生率がかなり低い薬になっています。

この記事の執筆者

石川 聡司 日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)

北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。

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目次

ピルの主な副作用と対処法 

  • 吐き気 
  • むくみ 
  • 頭痛・腹痛 
  • 眠気 
  • 血栓症 
  • 不正出血 
  • 気分の落ち込み・抑うつ症状 
  • 乳房の張り 

低用量ピルは、2種類の女性ホルモンである黄体ホルモン(プロゲスチン )と卵胞ホルモン(エストロゲン)を含んだ薬です。そのため、服用することで女性ホルモンの全体量が普段より増え、服用開始後まもなくして副作用の症状が出現することがあります。多くの場合は1−2ヶ月間程度続くことがあります。 

副作用は女性ホルモンの影響で出現するので、主に生理前後に経験するような症状がみられます。服用して数日間後から、吐き気や悪心、むかつき、むくみ、頭痛・腹痛、眠気、不正出血、乳房の痛み、気分の落ち込み、などがみられることがあります。 

低用量ピルの副作用のうち、最も注意が必要なものは血栓症です。それ以外の症状の多くはマイナートラブルで、服用継続とともに次第に収まっていくことが多いため、3ヶ月間程度は服用を継続して様子をみていても良いといわれています1)

経過とともに症状が落ちつかない場合や不安などがあれば、医師に相談してください。 

吐き気・悪心 

低用量ピルを服用してから強い吐き気によって吐いてしまうことがあります。程度の差はありますが、1.2-29.2%程度の方に見られる症状です。吐き気や悪心はエストロゲンによる副作用と考えられます。多くの場合、生理周期の初めの数日間に吐き気をもよおすことが多く、3ヶ月後あたりには弱まってくるといわれています2) 。 

なかには、服用直後に強い吐き気があって吐いてしまう方もいます。このような場合には、服用してからどのくらいの時間で吐いたのかがポイントです。

①服用してから2時間を超えてから吐いた
この場合、低用量ピルはすでに体内に吸収されているため、問題ないといわれています。

②服用してから2時間以内に吐いてしまった
この場合、低用量ピルはまだ体内に吸収されておらず、効果が十分発揮されない可能性があります。できる限り速やかにもう1錠を服用してください。

また、24時間以上続く嘔吐が続く場合には、一度低用量ピルの服用を中止することが勧められます。回復してから再開することになります。

もしも、以前服用したときに強い吐き気があった方や、嘔吐をする心配のある方は、医師にその旨を伝えて、低用量ピルと一緒に吐き気止めも処方してもらい、一緒に服用されることをおすすめします。 

それでもなお、吐き気が気になる際には、医師に相談しましょう。低用量ピルの種類を変更することで解決できることがあります。 

気分の落ち込み・抑うつ症状 

服用後数日してから気分が落ち込んだり、不安に駆られたり、よく眠れなくなったりすることがあります。0.1-0.6%の方が経験するといわれますが、見逃すことのできない症状の一つです。以前から精神的に不安定な症状がある人は、なりやすいといわれています。

低用量ピルの服用期間が長くなると、症状が軽快する傾向にはありますが、中には長期間続く人もいます。 うつ状態の発症や自殺の発生などについては、いろいろな報告があり、結果は一定ではありません。以下にその一部を紹介します。 

1996年から2013年にかけてデンマークで行われた調査では、ピルを使ったことのない人に比べて、ピル使用者の自殺未遂危険度は約2倍、自殺危険度は約3倍に高まっていました。その危険度は、年代別では15−19歳で最も高く、期間別では服用開始から1−2ヶ月間までが最もが高く、時間経過とともに減っていきました。

また、うつ状態の発症については、ピル使用者がうつ状態になり抗うつ剤使用に至る危険度は、全体で1.23倍とやや高くなり、最も危険度が高い世代は15−19歳(1.8倍)でした3)  

方で、1994年から2008年にかけてアメリカで行われた調査では、ピル使用者は使ったことのない人に比べると、抑うつ症の発症や自殺企図の発生は低かったと報告されています4) 。 

低用量ピルが精神面に影響する可能性は少なからずありますので、家族や親しい友人、パートナーなどに伝えておくことは大切です。生活リズムを整えたり、食事のバランスに注意したり、適度な運動を心がけたりすると、少し気持ちが楽になることもあります。

気分の落ち込みなどで悩む場合には、一度医師へ相談してみましょう。 

不正出血 

生理 不正出血 ピル副作用

低用量ピルを服用して数日後から出血することがあります。生理のとき以外の時期に起こる性器出血を不正出血と言います。

不正出血は低用量ピルを服用する方の20%程度に見られるといわれます。多くの場合、服用を継続していくと、時間経過とともに出血量が徐々に減って、3ヶ月後程度で治まるといわれています。 

低用量ピルの飲み忘れや飲み遅れによって出血する場合もあるので、毎日決められた時間に服用し続けることは大切です。 服用してから3ヶ月以降も不正出血が続いている場合には、医師へ相談してください。 

乳房の張り 

乳房の張り ピル 副作用

生理前に胸が張ってくるのと同じような感覚が起こることもあります。乳房の痛みや不快感を感じる症状で、0.1-20%の方が経験するといわれています。

服用してから数日以内に症状が出現し、徐々に軽快して、3ヶ月程度で解消してくることが多いと言われます1) 。なお、文献によっては18ヶ月後まで続く場合もあるようですので、症状の続く期間には個人差があると考えられます5, 6) 。 

まずは様子を見てもいい症状ですが、痛みが強くなった、あるいはなかなか痛みが治らないといった際には、医師に相談しましょう。低用量ピルの種類を変更することで解決できる可能性があります。 

眠気 

低用量ピルを服用して数日後から眠気が強くなったり眠りが浅くなったりしてしまうことがあります。眠気はプロゲスチンによる副作用と考えられます。0.3-1.2%の方が経験するといわれます。

もともと、通常の生理周期では、プロゲスチンは生理2週間前から分泌が増えて、基礎体温が高くなります。この時期は体温のリズムに変化がないため、眠気が起こりやすくなります。 

低用量ピルにはプロゲスチンが含まれているため、ホルモンバランスが変わり、一時的に眠気の症状が強まることがあります。他の多くの症状と同じように、服用を続けるとホルモンバランスが整ってくるため、次第に眠気が弱まり、3ヶ月後程度にはなくなることが多いといわれています。 

眠気症状が出ても、まずは低用量ピルを服用し続けて3ヶ月間程度様子を見るのが良いでしょう。 

日常生活に支障が出るほどの眠気がある場合や、時間が経っても眠気が弱まらない場合などは、医師に相談してください。 

血栓症 

血栓症 ピル 副作用

服用後3ヶ月以内に発症する危険性が高いといわれる重篤な副作用が血栓症です。 

血栓症とは、血液が固まって、血液の塊(血栓)が血管を詰まらせてしまい、その先への血流が途絶えるため、臓器が正常に機能しなくなり、さまざまな障害を引き起こす病気です。 

以下のような症状があれば、すぐに医療機関を受診してください。 

  • 激しい腹痛 
  • 激しい胸痛、息苦しい、押しつぶされるような痛み 
  • 激しい頭痛 
  • 見えにくい所がある、視野が狭い、舌のもつれ、失神、けいれん、意識障害 
  • ふくらはぎの痛み・むくみ、握ると痛い、赤くなっている 

通常、若い女性では血栓症をほとんど発症しませんが、低用量ピルを服用することで静脈血栓症を起こす人は、1万人あたり3-9人ほどいるといわれています。

肥満や喫煙者、40歳以上の女性、炎症性腸疾患患者、親戚内に血栓症を発症したことのある人がいる場合、などは発症リスクが高まるといわれています。 

血栓症の予防としては、日頃からこまめに水分を補給することや、長時間にわたって座ったままでいないこと、アルコールを飲み過ぎないこと、などの対策が挙げられます。足首の運動や背伸び、膝の屈伸運動なども足の血流を良くするため効果的です1)

低用量ピルを飲むなら知っておくべき「血栓症」リスク 

血栓症とは、先ほども述べた通り、血管の中を流れている血液が固まって塊(血栓)となり、血管を詰まらせてしまう病気です。詰まった血管から先への血流が途絶えてしまい、臓器が正常に機能しなくなり、さまざまな障害を引き起こします。

例えば血栓が脳の血管で詰まると脳梗塞になり、心臓の血管で詰まると心筋梗塞になります。命に関わる重篤な状態になることもあります。静脈血栓症の発生時期は、服用開始後4ヶ月以内に多いといわれています。 

静脈血栓症を発症しても適切な治療を行えばほとんどの症例の血栓は消失します。しかし、まれに肺の血管まで血栓が移動して肺血栓塞栓症を発症することがあり、そのうち100に1人が致死的な結果になるといわれています。 

低用量ピルを服用していない人の静脈血栓症の発症頻度は年間1万人あたり1-5人であるのに対して,低用量ピル服用者は年間1万人あたり3-9人に上昇することが報告されています。 

肥満や喫煙者、40歳以上の女性、炎症性腸疾患患者、親戚内に血栓症を発症したことのある人がいる場合、などは発症リスクが高まるといわれています1) 。 

血栓症のリスクが高い人 

可能性はとても低いですが、命に関わるような重大な症状を引き起こすこともあるため、低用量ピルの最も注意すべき副作用は血栓症であるといえます。

血栓症になりやすい要因をお持ちの方は、低用量ピルを服用することができない(禁忌)、またはデメリットよりもメリットが勝る場合に投与を考慮する(慎重投与)、ということになっています。

どんな治療薬でも副作用の可能性は多少なりともあるため、服用開始にあたっては、副作用について正しく理解することや、自分自身が低用量ピルを服用しても良いのかどうかを知ることが大切です。 

下記に当てはまる場合には、血栓症発症リスクがとても高い状態です。服用にあたっては、医師に相談し、状況に応じて検査をうける必要があります7) 。 

  • 40歳以上 
  • 肥満(BMI 30以上) 
  • 喫煙者 
  • 高血圧 
  • 糖尿病 
  • 片頭痛 
  • 肝臓疾患 
  • 産後(4週以内の非授乳女性) 
  • 手術後 
  • 心疾患 
  • 血栓性素因あり 
  • 自己免疫性疾患
  • 炎症性腸疾患 など 

血栓症の予防法 

飛行機に長時間乗ったり、自動車の中で車中泊したりすると、長時間同じ姿勢でいることが多く、血栓ができてしまい、エコノミークラス症候群を発症するというニュースを聞いたことがあるでしょうか。 

エコノミークラス症候群は肺血栓塞栓症のことで、長時間にわたって体全体、特に足を動かさないことで足の血管に血栓ができてしまい、それが肺の血管に移動して肺の血管をつまらせてしまう恐ろしい病気です。 

長時間同じ姿勢であるとことで血栓が作りやすくなるため、これが最も良くないことなのです。 

そのため、低用量ピル服用中の血栓症の予防としては、長時間にわたって同じ姿勢のままでいないことを意識することが大切です。また、日頃からこまめに水分を補給することや、アルコールを飲み過ぎない、などの対策が挙げられます。

足首の運動や背伸び、膝の屈伸運動なども足の血流を良くするため効果的です1) 。 

低用量ピルの薬の種類による副作用の違い 

低用量ピルといっても、たくさんの種類があって、何がどう違うのか、わからないという声がよく聞かれます。 

低用量ピルは、2種類の女性ホルモンである黄体ホルモン(プロゲスチン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)が配合されている薬です。 これらの女性ホルモンの種類や配合量、錠剤の数量などによって、それぞれのもつ特徴が異なります。 

なお、低用量ピルと併用するのを控える必要のある薬は、抗てんかん薬と抗結核薬、抗HIV薬です。これらは低用量ピルの避妊効果を弱める作用があります。 服用にあたっては、医師と相談し、自分の体にあった薬を選ぶことが必要です。 

・第一世代~第四世代 

低用量ピルに含まれるエストロゲンは、エチニルエストラジオールという種類のもので、どの薬にも含まれています。主に異なるのは、プロゲスチンです。プロゲスチンの種類と開発順によって4世代に分類されます。 

第一世代:ノルエチステロン 

最初に製造承認された低用量ピルです。生理の出血量が減りやすく、生理痛の緩和効果に優れ、子宮内膜症の治療効果も高い特徴があります。また、ニキビや肌荒れの改善効果もあります。 

シンフェーズ®、ルナベル®LD/ULD、フリウェル®LD/ULDに含まれています。 

第二世代:レボノルゲストレル 

子宮内膜が安定するため、不正出血の頻度が他の低用量ピルに比べて低く、休薬期間中の生理もきちんと起こることが多いという特徴があります。 

トリキュラー®、ラベルフィーユ®、アンジュ®、ジェミーナ®に含まれています。 

第三世代:デソゲストレル 

他の低用量ピルに比べて男性ホルモン(アンドロゲン)の作用が抑えられているという特徴があります。ニキビや多毛症の改善効果が期待できます。 

マーベロン®、ファボワール®に含まれています。 

第四世代:ドロスピレノン 

低用量ピルの中で、唯一抗ミネラルコルチコイド作用を有するという特徴があるため浮腫(むくみ)が起こりづらい薬です。また、ホルモン変動の少ないことから、月経困難症や子宮内膜症の改善効果が期待できます。 

ヤーズ®、ヤーズフレックス®に含まれています。 

・21錠タイプ/28錠タイプ 

服用周期は28日間を1周期として数えますが、1シートに21錠あるいは28錠封入されている薬があります。 

21錠タイプ

有効成分が含まれている薬(実薬)だけを服用して休薬期間を設けます。

 具体的には、1日1錠を毎日一定の時刻に定められた順に21日間連続で服用して、7日間休薬します。 

28錠タイプ

実薬を服用した後、休薬期間にも有効成分が含まれていない薬(プラセボ薬)を服用し続けます。飲み忘れを防ぐ目的があります。 

具体的には、1日1錠を毎日一定の時刻に定められた順(多くは錠剤の色が異なるため識別可能)に28日間連続で服用します。 

→21錠タイプも28錠タイプもどちらもこの28日間を1周期として、29日目から次の周期の錠剤を投与し、以後同様に繰り返します。 

・1相性/3相性 

配合されているエストロゲンとプロゲスチンの含有パターンによる分類です。 

1相性ピル

1回の服用周期に含まれるエストロゲンとプロゲスチンの量が一定量である薬です。

3相性ピル

1回の服用周期に含まれるエストロゲンとプロゲスチンの量が数日間ごとに3段階に変化された容量である薬です。ホルモン濃度を変動させるのは、身体の自然のリズムに合わせることで、副作用の発生リスクを減らすためです。 なお、2相性ピルは、日本で取り扱われていません。 

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世代 ピルの名称 1相性/3相性 主な副作用 
第一世代 フリウェル®配合錠 1相性 血栓症、アナフィラキシー 
第一世代 ルナベル®配合錠 1相性 不正性器出血、希発月経、過多月経、下腹部痛、過少月経、頻発月経、頭痛、乳房痛、乳房不快感、悪心、上腹部痛 
第二世代 トリキュラー®錠 3相性 悪心、乳房痛、頭痛 
第三世代 マーベロン® 1相性 頭痛、乳房痛、悪心 
第三世代 ファボワール®錠 1相性 血栓症 
第四世代 ヤーズ®配合錠 1相性 悪心、頭痛、凝固検査異常、性器出血、月経痛、不正子宮出血、下腹部痛、トロンビン・アンチトロンビンIII複合体上昇、プラスミノーゲン上昇、トリグリセリド上昇、血栓症 
主な低用量ピルの一覧

フリウェル配合錠 8)

低用量ピル フリウェル
フリウェル®ULD

フリウェル®配合錠は、ルナベル®配合錠のジェネリック(後発医薬品)です。第一世代1相性のピルで、月経困難症などの治療に使用されます。 

ピル製剤の中でジェネリックは少数であるため、フリウェル配合錠は比較的安価な治療薬です。 

フリウェル®配合錠LDとルナベル®配合錠LD、フリウェル®配合錠ULDとルナベル®配合錠ULDの有効成分は同様です。

ルナベル®配合錠と同様に、フリウェル®配合錠LD(低用量ピル)と、フリウェル®配合錠ULD(超低用量ピル)に分類されます。 

フリウェル配合錠LD/ULDともに、21錠タイプの薬です。 

フリウェル LDULD 有効成分
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主に、血栓症やアナフィラキシーが重大な副作用として挙げられていますが、ジェネリックであるため、使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していません。 

一方で、薬物動態試験を行い、フリウェル®配合錠LD/ULDは、ルナベル配合錠LD/ULDの有効成分と生物学的同等性が確認されたことから、ジェネリックとして認められています。 

低用量ピルの中では数少ないジェネリックであるため、比較的安価に処方を受けられます。 

ルナベル配合錠 9)

ルナベル 低用量ピル
ルナベル®ULD

ルナベル®は第一世代1相性のピルで、月経困難症などの治療に使用されます。 

ルナベル®配合錠LDとルナベル®配合錠ULDの2種類があります。プロゲスチンの一種であるノルエチステロンはいずれも1mgと同用量ですが、エストロゲンの一種であるエチニルエストラジオールの用量が異なることで、LDは低用量ピルに、ULDは超低用量ピルに分類されます。 

ルナベル配合錠LD/ULDともに、21錠タイプの薬です。 

ルナベルLDULD 有効成分
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主な副作用は、不正性器出血、希発月経、過多月経、下腹部痛、過少月経、頻発月経、頭痛、乳房痛、乳房不快感、悪心、上腹部痛などです。 

月経困難症の治療に対するルナベル®配合錠LD及びULDの有効性と安全性は、それぞれの国内第III相試験の結果から、確認されています。 

ルナベル®配合錠ULDは、エチニルエストラジオールを超低用量化したことで、血栓症の発現リスクが低く抑えられる効果があります。 

一方で、ルナベル®配合錠ULDは、ルナベル®配合錠LDよりも不正性器出血が多く出現するといわれるため、症状や治療目標に合わせて薬を選択する必要があります。 

トリキュラー錠 10)

トリキュラー 低用量 ピル
トリキュラー®錠21

トリキュラー®は第二世代3相性のピルで、避妊の治療に使用されます。 

トリキュラー®錠21とトリキュラー®錠28の2種類があります。これらの有効成分は同じホルモンです。プロゲスチンの一種であるレボノルゲストレルと、エストロゲンの一種であるエチニルエストラジオールとが含まれています。それぞれの配合量が服用日によって3種類に分かれています。 

トリキュラー®錠21は21錠タイプ、トリキュラー®錠28は、28錠タイプの薬です。 

トリキュラー 21 有効成分
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トリキュラー 28 有効成分
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主な副作用は、悪心、乳房痛、頭痛などです。 

避妊を希望する女性を対象とした国内臨床試験で、投与1周期以上の総計924例(13862周期)で、薬剤効果不十分による妊娠例はありませんでした。 

飲み忘れがあった362例(943周期)のうち、3錠以上を飲み忘れた4例で妊娠が認められました。 

50.9%に何らかの副作用が認められましたが、周期数別に副作用が発生する頻度は、周期が進むにつれて減少していました。 

マーベロン 11)

マーベロン 低用量ピル
マーベロン®

マーベロン®は第三世代1相性のピルで、避妊の治療に使用されます。 

マーベロン®21とマーベロン®28の2種類があります。これらは、プロゲスチンの一種であるデソゲストレルと、エストロゲンの一種であるエチニルエストラジオールとが含まれています。 

マーベロン®21は21錠タイプ、マーベロン®28は28錠タイプの薬です。 

マーベロン 21 有効成分
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マーベロン 28 有効成分
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主な副作用は、悪心、乳房痛、頭痛などです。

避妊を希望する女性992例について実施された臨床試験で、マーベロン服用後に妊娠した症例は1例みられ、避妊効果は99.9%という結果でした。 

ヤーズ配合錠 12)

ヤーズ 低用量 ピル

ヤーズ®配合錠

ヤーズ®は第四世代1相性のピルで、月経困難症などの治療に使用されます。 

ヤーズ®配合錠は28錠製剤で24錠の実薬(有効成分あり)とプラセボ薬(有効成分なし)の2種類があります。有効成分は、プロゲスチンの一種であるドロスピレノンと、エストロゲンの一種であるエチニルエストラジオールが含まれています。

1周期28日間を休薬なしで服用する薬ですが、他の薬と異なる点は、実薬(有効成分の含まれている薬)が24日間、プラセボ薬(有効成分の含まれていない薬)が4日間という休薬効果のある期間の短さです。

ヤーズ 有効成分
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主な副作用は、悪心、頭痛、凝固検査異常、性器出血、月経痛、不正子宮出血、下腹部痛、トロンビン・アンチトロンビンIII複合体上昇、プラスミノーゲン上昇、トリグリセリド上昇などです。 

日本国内での月経困難症の治療に対するヤーズ®配合錠の有効性と安全性は、第III相試験の結果から確認されています。 

ただし、イギリスで行われた調査および、デンマーク人女性を対象とした調査では、ドロスピレノン含有ピル(第4世代)はレボノルゲストレル含有ピル(第3世代)と比べて、静脈血栓症のリスクが2−3倍高いと報告されています13, 14) 。そのため、他の世代の低用量ピルに比べて血栓症リスクには注意する必要があります。 

避妊以外の低用量ピルの副効用 

低用量ピルは、高い避妊効果だけではなく、月経困難症などの症状改善も期待できる薬です。避妊目的のピル使用は自由診療になりますが、月経困難症の多くの症状の治療については、保険診療として受けることができます。 

体の状態によって、血栓症のリスクが高い場合や、他の病気の治療薬を服用中である場合などで、低用量ピルを服用することが難しいこともあります。服用にあたっては、必ず医師から十分に説明を受けましょう。 

生理痛の軽減 

生理痛 腹痛

生理が起こるときに、下腹部痛などの痛み(生理痛)を感じます。日常生活に支障のある痛みで、頭痛や吐き気、乳房痛などの全身症状を伴う場合には、月経困難症と呼ばれます。 

器質性月経困難症は、子宮内膜症などの病気が原因です。 

機能性月経困難症は、子宮に病気はありませんが、子宮内膜で産生されるプロスタグランジンなどによる生理時の過剰な子宮収縮が主な原因です。 

通常の女性の排卵周期では、排卵まではエストロゲンのみ作用しており、子宮内膜を厚くさせます。排卵するとプロゲスチンも作用することで子宮内膜は受精卵の着床準備を進めます。そして月経期に内膜が剥がれて出血するというホルモン変動があります。月経期のプロスタグランジンなどの内因性生理活性物質による子宮筋の過剰収縮が、痛みを引き起こします。 

低用量ピルにはエストロゲンとプロゲスチンの両方が含まれるため、排卵周期におけるホルモン変動が無くなります。エストロゲンのみが作用することがないため、子宮内膜が厚くならず、プロスタグランジンなども増えません。生理の際に剥がれる子宮内膜は厚くないため出血量が減り、原因物質も抑えることで痛みも緩和できる、という効果が現れるのです15) 。 

月経周期の安定化 

月経周期は28日前後が一般的ですが、25日未満で月経がくる場合や、40日を過ぎても月経が来ない場合を月経不順といいます。黄体機能不全、無排卵周期症などが原因です。

子宮や卵巣などの病気による影響もあり得ますが、急激なダイエットやストレスによるホルモンバランスの崩れ、不規則な生活による月経リズムの乱れによる影響も考えられています16) 。 

すぐに妊娠希望のない場合は、継続した低用量ピルを服用することで、月経周期もホルモンバランスも安定化することができます。軽度の黄体機能不全であれば、低用量ピルを服用して月経周期を正常範囲になるように調整したのちに、低用量ピルの服用を中止すると月経不順が治ることがあります。

月経周期の安定化を行うことは体調を整える効果も大きいのです。 

低用量ピルの副作用でよくある誤解 

これまで説明してきたように副作用の存在はいくつかあるものの、避妊の目的や月経困難症などの改善効果をはじめとして、低用量ピルは女性の強い味方であることがわかってきています。 

一方で、低用量ピルに関して誤って認識されている事柄がいくつかあります。

副作用として、低用量ピルを飲むと太るとか、不妊になる、という心配をされることがあるのです。しかし、実際には、そのようなことはありません。一つずつ解説していきます。 

Q:太るって本当? 

太る 肥満

低用量ピルを服用してから太ったなと感じる方がいます。 

体重増加や見た目の変化を感じるからだろうと思われますが、低用量ピルを飲んだことで体重増加するという副作用はありません。これは、大規模な臨床試験でも証明されていて、低用量ピルを服用した人と服用していない人とでは、体重変化には差がなかったという報告が複数あります。 

では、他に何が原因として考えられるのかといえば、低用量ピルの副作用の一つであるむくみ(浮腫)や食欲増進が挙げられるでしょう。 

低用量ピルの主成分の一つであるエストロゲンは、腎尿細管に作用しナトリウムを貯留する働きがあります。そのため、場合によっては下腿や顔面に浮腫を起こして体重が増加することもあります。これは、水分のために一時的に体重が増えることはあっても、脂肪がついて太る、ということではありません。 

また、もう一つの主成分であるプロゲスチンは、食欲が増進する作用があるため、結果的に体重が増加することも考えられます。 

ただ、体重増加はもともと高用量ピルや中用量ピルの副作用に挙げられていたもので、低用量ピルが主流になっている現在では、ピルが直接的に体重を増加させることはほとんどみられません。 

浮腫や食欲増進で体重増加することは一時的にあってもわずかなものと思われますので、心配する必要はありません。 

Q:服用を長期間続けると不妊になりやすい? 

不妊 赤ちゃん

低用量ピルの服用によって将来の妊娠の可能性には影響を及ぼさないことが知られています。 

妊娠の希望があって、低用量ピルの服用を中止した人たちのうち妊娠が認められたのは、最初の1周期目で21.1%、3周期目で45.7%、1年後で79.4%、2年後で88.3%という報告や、1年以内に84-88%が妊娠できたという報告もあります1)

妊娠の割合は、低用量ピルを服用していない女性の妊娠成立率と変わらないといわれています。また、低用量ピルの使用期間と妊娠率とは関連がないということもいわれています。 

このように、低用量ピルの服用によって、将来不妊になりやすいということはいわれていません。不妊が心配でためらっているのであれば、それは間違いです。避妊を目的に低用量ピルを使用するメリットが大きいと判断されれば、いつからでも服用を検討するのが良いでしょう。 

吐き気がひどいときの対処法 

吐き気 ひどい

低用量ピルの最もみられやすい副作用の一つに吐き気や悪心が挙げられます。その理由は低用量ピルに含まれるエストロゲンによるものと考えられています。なかには、強い吐き気があって吐いてしまう方もいますが、そのような場合には、服用してからどのくらいの時間で吐いたのかによって、以下のような対処が必要です2) 。 

①服用してから2時間を超えてから吐いた 

この場合、低用量ピルはすでに体内に吸収されているため、問題ないといわれています。 

②服用してから2時間以内に吐いてしまった 

この場合、低用量ピルはまだ体内に吸収されておらず、効果が十分発揮されない可能性があります。できる限り速やかにもう1錠を服用してください。

また、24時間以上嘔吐が続く場合には、一度低用量ピルの服用を中止することが勧められます。回復してから再開することになりますので、早めに医療機関に相談するようにしましょう。 

まとめ 

低用量ピルの副作用や薬の種類による違いについて、詳しくまとめてみました。少しは疑問が解消され、不安が解けたでしょうか?いずれも、心配な副作用の症状が長く続く場合は、医師に相談してみることが大切です。

参考文献

  1. 低用量経口避妊薬、低容量エストロゲン・プロゲスチン配合薬ガイドライン 2015年度版. 日本産科婦人科学会編. http://www.jsog.or.jp/news/pdf/CQ30-31.pdf
  2. 北村邦夫. 産婦人科救急マニュアル 婦人科領域 緊急避妊. 産科と婦人科 (78):232-239, 2011
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