「葉酸サプリは飲まない方がいい」は事実?デメリットや注意点は

「葉酸サプリは飲まない方がいい」「葉酸サプリは危険」こんな声がある一方で、「葉酸摂取はサプリがおすすめ」「葉酸サプリは飲むべき」という情報も多く見られます。

いったい、どちらが正しいのでしょうか。

この記事では、「葉酸サプリは飲まない方がいい、というのは事実なのか?」をテーマに、その真偽やなぜ葉酸サプリの悪い噂があるのか、葉酸サプリのデメリットや注意点を解説します。

葉酸サプリへの疑問や不安が少しでも解消されましたら幸いです。

この記事の執筆者

石川 聡司 日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)

北海道大学医学部卒業後、北海道大学病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。

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目次

「葉酸サプリは飲まない方がいい」という声があるのはなぜか

葉酸サプリは飲まない方がいい!こんな声はなぜあるのでしょうか。その理由や葉酸サプリにまつわる悪い噂でよくあるものは、下記の3つです。

葉酸サプリのよくある噂

  1. 安全性のデータ不足なのでは?という懸念
  2. 「日本で葉酸サプリの健康被害が起こっている」との情報
  3. 過剰摂取するとよくない
Dr.石川

実際のところ、噂は正しいのでしょうか。下記で解説します。

安全性のデータ不足

データ

葉酸サプリの摂取による、妊婦や胎児への安全性に関するデータが不足しているという指摘があります。

しかし、世界では妊婦の葉酸摂取による効果に関する研究が数多く行われており、葉酸の安全性や有用性が確立されています※1。そして、その実験の多くでは、葉酸サプリが用いられています。

葉酸サプリを用いたリスク調査例

スクロールできます
研究対象者方法と期間結果結果を踏まえたコメント
1981年ウェールズ/Laurenceら
無作為割付介入研究
以前にNTDの既往歴のある妊婦葉酸4㎎または偽薬
少なくとも妊娠1ヵ月以上前から妊娠3ヵ月まで
NTDは葉酸摂取60例中2例、擬似薬では51例中4例60%リスク軽減
1991年ハンガリー・英国/Waldら
無作為割付介入研究
共同研究
以前にNTDの既往歴のある妊婦葉酸4㎎または偽薬
少なくとも妊娠1ヵ月以上前から妊娠3ヵ月まで
NTDは葉酸摂取593例中6例、擬薬では602例中21例72%リスク軽減
1983年英国/Smithellら
介入研究
共同研究
以前にNTDの既往歴のある妊婦0.36㎎の葉酸のサプリメント
総合ビタミン
妊娠1ヵ月以上前から妊娠3ヵ月まで
NTDは葉酸摂取454例中3例、葉酸を摂取しなかった場合は519例中24例86%リスク軽減
1990.年キューバ/Vergelら
介入研究
以前にNTDの既往歴のある妊婦5㎎の葉酸のサプリメント
妊娠1ヵ月以上前から妊娠3ヵ月まで
NTDは葉酸摂取81例中0例、
葉酸を摂取しなかった場合は114例中4例
完全に予防
1991年ハンガリー/Czeizel・Dudas
無作為割付介入研究
妊娠を計画している女性毎日0.8㎎の葉酸のサプリメントと総合ビタミン 
少なくとも妊娠1ヵ月以上前から2回目の生理予定日まで
NTDは葉酸摂取2104例中0例、
葉酸を摂取しなかった場合は2052例中6例
完全に予防
出典:「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に関する情報提供要領」厚生労働省

この他にも葉酸サプリを用いた研究は多く行われてきていて、膨大な数の対象者が調査に携わっており、30年以上の年月が経過している調査も少なくありません。

万が一、葉酸サプリを摂取した妊婦や胎児の安全性に問題があるのであれば既に問題提起がなされているはずですが、未だそのような報告は挙がっていません。

このことから、葉酸サプリの摂取により妊婦や胎児に安全性のリスクがある可能性は非常に低いと考えられます。

諸外国では、1990年代から妊婦への葉酸サプリが推奨され始めました。

日本では葉酸サプリの使用を慎重に見極めた上、2000年になって初めて厚生労働省から妊娠1カ月前~妊娠3カ月までの妊婦に対して、健康食品等サプリメントからの葉酸摂取を推奨するに至りました。

我が国において葉酸摂取による神経管閉鎖障害の発症リスク低減を行う必要性について(一部抜粋)

・諸外国で行われた複数のいわゆる栄養補助食品を用いた疫学研究の結果において、 葉酸が神経管閉鎖障害の発症リスクを低減するというほぼ一致した成績が得られていること。

・欧米諸国を中心に1990年代より葉酸摂取による神経管閉鎖障害の発症リスクの低減対策が実施されていること。

出典:「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に関する情報提供要領」厚生労働省
Dr.石川

総合的に見ても、葉酸サプリの有効性や安全性は十分に裏付けられていると判断できるでしょう。

「日本で葉酸サプリの健康被害が起こっている」との情報

葉酸サプリの摂取によりアナフィラキシーショックや肝機能障害が起こった報告が上がっていることから、「葉酸サプリは危険」と認識されている方もいらっしゃるようです。

稀ではありますが、サプリメントなどの健康食品を摂取し、身体がアレルギー反応を起こすことがあります。これを薬害性肝機能障害と呼びます。

しかし、薬害性肝機能障害は葉酸サプリメントのような人工物だけでなく、ウコンやクロレラなど自然界に存在する食物でも起こりうるものです。

人工物だから良くない、サプリメントだから良くないと安易に判断できるものではありません。

健康食品素材の中にはアレルギーや薬剤性の肝障害を引き起こす成分もあります。アレルギーを引き起こす成分としてはユーカリ、松樹皮抽出物、プロポリス、ローヤルゼリー、サフラン、コンドロイチン、サイリウム、レッドクローバーなどがあり、天然由来の原材料で多くみとめられています。

出典:健康食品による健康被害の未然防止と拡大防止に向けて 厚生労働省/日本医師会/独立健康・栄養研究所

健康な人が健康食品を利用する上では、健康被害はほとんど起こらないとされています。※2

Dr.石川

体調に不安がある方や持病をお持ちの方がサプリメントを利用したい場合は、事前にかかりつけの医師と相談してから服用すると良いでしょう。

過剰摂取するとよくない

葉酸サプリは摂取すればするだけ良いというものでなく、過剰摂取により副作用を起こす可能性があります。このことから「葉酸サプリは危険」だとみなされているケースもあるようです。

しかしながら、過剰摂取が危険なのは葉酸サプリに限ったものではありません。

サプリメントに限らず、どんな栄養素も過剰摂取は身体に良い影響を与えません。1日あたりの耐容上限量を守ることで過剰摂取は回避できます。

Dr.石川

食べ物以外から摂取する葉酸一日の耐用上限量は、12歳~29歳:900㎍、30歳~64歳:1000㎍です。葉酸サプリはこれを超えないようにつくられています。

厚生労働省は妊娠の1ヵ月以上前から3ヵ月まで、葉酸サプリの摂取をすすめている

厚生労働省は、食事からの葉酸摂取にプラスして、サプリメントなどから+400㎍の葉酸を摂取するようすすめています。

妊娠の1ヵ月以上前から3ヵ月までは、食事からの葉酸摂取に加えて、サプリメントなどから1日に400μgの葉酸摂取がすすめられています。

出典:厚生労働省/平成29年度子ども・子育て支援推進調査研究事業発行「ママのための食事BOOK」

葉酸摂取の時期や量を詳しく見る

「飲まない方がいい葉酸サプリ」はある

厚生労働省が妊婦に対して葉酸サプリを推奨していることから見ても、サプリメントからの適切な葉酸摂取は問題ないと言えますが、葉酸サプリに全く副作用の可能性が無いわけではありません。

ただ、これは葉酸サプリに限ったものではなく、他のサプリメントや健康食品はもちろん、自然界に存在するあらゆる食べ物において同じことが言えます。

食品に対するアレルギーや肝機能障害はいつでも誰にでも起こりうる可能性があるもので、どんな栄養素でも過剰摂取すれば身体にとって良くありません。

また、葉酸サプリには様々な種類があります。中には人体に安全とは言えない添加物を用いていたり、妊婦用なのにもかかわらず、妊婦が積極的に摂取すべきでない成分が配合されていたりするものが存在する可能性はあります。

Dr.石川

安全性や生産体制が不明瞭な葉酸サプリは、もちろん飲むべきではありません。

葉酸サプリのデメリットはある?

サプリメントイメージ

葉酸サプリに限らず、世の中のあらゆる食べ物や健康食品にはメリットとデメリットが存在します。葉酸サプリのデメリットは、次のようなものがあります。

副作用の可能性がゼロではない

葉酸サプリにはいくつかの副作用が報告されています。副作用といっても、その多くは過剰摂取によるものや、葉酸サプリ以外の健康食品や食品でも起こりうる薬害性肝機能障害を起因としたものです。

葉酸サプリの副作用の例

ビタミンB12欠乏症の診断が困難になる葉酸欠乏症とビタミンB12欠乏症は症状が似ていることから、葉酸の過剰摂取によりビタミンB12欠乏が鑑別できなくなる。
神経症状の発現・悪化狭義の葉酸を1日5000㎍以上摂取した場合に多い。(5000㎍以下の摂取では件数が大幅に下がっている。)
薬害性肝障害の可能性
(倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸、発疹、気持ち悪くなる、おう吐、かゆみなど)
自身の体質や体調に大きく関わるため、年齢問わず誰にでも起こる可能性がある。
※狭義の葉酸を過剰に摂取した場合
※食事性葉酸は過剰摂取の可能性が低いため耐容上限量が設けられていない

副作用の予防策は下記の3点です。

  • 過剰摂取をしない
  • 利用時に不安がある場合はかかりつけ医に相談する
  • 利用時に違和感を感じた場合は直ちに使用を中止し医師の診断を受ける

商品が多いため「選ぶ力」が必要になる

葉酸サプリ

現在、実に多くの葉酸サプリ商品が出回っており、品質・値段・特徴に幅があります。そのため、粗悪な葉酸サプリを選んでしまうとかえって健康を損ねてしまう可能性もあります。

通常の身体では摂取しても何の問題もない成分でも妊婦には好ましくないものがありますし、体質や持病により摂取してはいけない成分もあります。

また、劣悪な環境で製造や保管された葉酸サプリは品質に問題があったり、葉酸成分が適切に機能しなかったりといったことも考えられるでしょう。

葉酸サプリを利用する際には、値段の安さや聞こえの良い宣伝文句に振り回されるのではなく、自分に合った・飲む時期に合ったサプリメントを選ぶ必要があります。

良質な葉酸サプリを選ぶ基準

  • 消費者に必要な情報をきちんと明記しているか (摂取目安量、配合している葉酸の種類など)
  • 不適切な成分が添加されていないか (妊婦にとって好ましくない成分など)
  • 品質や安全性に配慮しているか (厚生労働省のお墨付きである証のGMPマークがあると安心)
  • 適切な価格で提供されているか

葉酸サプリを詳しく見る
時期別に解説しています

葉酸サプリを飲む時に守りたい注意点

葉酸サプリを利用するにあたって、注意すべき点は下記のとおりです。

過剰摂取にならないようにする

過剰摂取のイメージ

葉酸サプリは過剰摂取すると副作用を招く可能性があります。1日の目安量を守り、過剰摂取にならないよう注意しましょう

厚生労働省により食べ物以外から摂取する葉酸(狭義の葉酸)1日の耐容上限量が定められているため、確認しておきましょう。

葉酸の耐容上限量

年齢
男女共
1日あたり耐容上限量
※狭義の葉酸※
12~14歳900㎍
15~17歳900㎍
18~29歳900㎍
30~49歳1000㎍
50~64歳1000㎍
65~74歳900㎍
出典:日本人の食事摂取基準(2020年版)

薬を服用している場合は医師に相談する

医師への相談

葉酸は、ある特定の薬と飲み合わせると交互効果を引き起こす場合があります。特に次の薬を処方されている方は注意が必要です。

フェニトイン製剤(抗てんかん薬)     効薬の減弱
葉酸代謝拮抗薬(抗がん剤)効薬の減弱
フルオロウラシル、 カペシタビンなど(抗がん剤)効薬の増強
引用元:健康食品の手引きp8.
引用元:医薬品との併用に注意のいる健康食品 | 薬事情報センター | 一般社団法人 愛知県薬剤師会
Dr.石川

日ごろから薬を服用されている方は、葉酸サプリを使用する前に医師へ相談してくださいね。

葉酸サプリ以外からも葉酸は摂取できる

葉酸は、食事からの摂取はもちろん、葉酸強化食品からも摂取できます。サプリメントなど健康食品からの葉酸摂取に抵抗がある方は、意識して野菜や葉酸を多く含む食品を摂りましょう。

食事からの葉酸摂取

葉酸を含む食材

葉酸は、野菜や果物を中心に、身近な食品に豊富に含まれている栄養素です。

バランスのよい食事に加え1日野菜を350g摂取すれば、400㎍程度の葉酸摂取は摂取可能とされています※1

葉酸を多く含む食品と葉酸量
(生100gに含まれる葉酸量)

食品葉酸量
ほうれん草210㎍
ブロッコリー210㎍
アスパラガス190㎍
納豆120㎍
枝豆320㎍
いちご90㎍
アボカド84㎍
さつまいも49㎍
のり(全形1枚)57㎍
出典:「赤ちゃんの元気にする栄養の話」大井静雄 ㈱保健同人社/発行 p14

ただし、現代人は野菜不足に加え、葉酸摂取も満足ではないという現状があります。女性の野菜摂取量平均値は、20代で212g、30代で223gと目標値である350gには届いていません。※3

また、葉酸摂取量も20~30代女性の平均値は約230㎍と、推奨量である240㎍(妊娠前~妊娠初期は+400㎍、授乳中は340㎍)には届きません。※4

Dr.石川

さらに食品に含まれる葉酸は水や熱に弱く、調理中にその半分近くが流失してしまいますので、食品からの葉酸摂取はなかなかに大変と言えるでしょう。

強化食品からの葉酸摂取

葉酸強化食品とは、食品に葉酸が付加されているものをいいます。葉酸強化食品はパン、クッキー、キャンディなどの加工食品に多く、こうした食べ物からも手軽に葉酸を摂取できます。

食材からの葉酸が少し足りないかなと感じた時には、葉酸強化食品を適宜取り入れるというのもよいでしょう。

ただ、葉酸強化食品は“食品”といっても、葉酸サプリのように人為的な葉酸(狭義の葉酸)が配合されている場合がほとんどです。

既出のとおり、狭義の葉酸には耐容上限量が設けられています。(野菜などから摂取する食事性葉酸には耐容上限量はありません。)

葉酸強化食品を大量に摂取し、葉酸の耐容上限量を越えてしまわないように気を付けましょう。

Dr.石川

葉酸強化食品にはパッケージに葉酸量が明記されていますので、利用する前にどれくらいの葉酸が含まれているのか確認するようにすると良いでしょう。

基本は食事で摂取し、足りない分は葉酸サプリを活用しよう

バランスの良い食事

基本的には野菜を中心としたバランスのよい食事を心がけ、食事性葉酸での葉酸摂取を。目標値にそれだけでは届かない可能性が高い方は、サポート的に葉酸サプリを取り入れるスタンスがおすすめです。

(推奨されている「一日野菜350g」を摂取できている20~30代は、わずか14.8%です。※3

サプリメントは人工的に作られたイメージが強く、妊娠中の服用に抵抗を感じてしまう方は多いのではないかな、と思います。

そこへこのページで紹介してきた噂を聞くと、ますます葉酸サプリの服用が怖いと感じてしまうのだと思いますが、妊娠前・妊娠初期の方に対して、健康食品等サプリメントからの葉酸摂取を厚生労働省もすすめています。

ただし、全ての葉酸サプリが適切というわけではなく、品質が悪い・製造や保管状況が不明瞭な粗悪品と呼べる葉酸サプリは飲むべきではありませんし、体調や体質によっては葉酸サプリが適さないケースもあります。

葉酸サプリを安全かつ効果的に利用するにあたっては、葉酸サプリのメリットとデメリットを理解し、時期によって適切な商品を選ぶようにしましょう。

Dr.石川

葉酸サプリメントは、厚生労働省が提示している耐容上限量や、商品の注意書きを守った上で利用してくださいね。

参考文献

  1. 神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に関する情報提供要領(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1212/h1228-1_18.html
  2. 健康食品による健康被害の未然防止と拡大防止に向けて 厚生労働省/日本医師会/独立健康・栄養研究所 https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dl/pamph_healthfood.pdf
  3. 令和元年国民健康・栄養調査結果の概要 p24.
  4. 令和元年国民健康・栄養調査結果の概要 p39.
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