医療脱毛で扱われる医療レーザー機器には「熱破壊式」(ショット式)と「蓄熱式」があり、脱毛方式が異なります。
「熱破壊式の方が効果がある」との情報がインターネット上にあり、本当なのかどうか気になる方も多いのではないでしょうか。
実際のところ、熱破壊式でも蓄熱式でも「正しく」照射がされていれば最終的な脱毛効果に違いはありませんが、従来から使用されていて実績があるのは「熱破壊式」です。
また、蓄熱式の脱毛を受ける場合は知っておくべき注意点があります。
当ページでは、従来の脱毛方式である「熱破壊式」をクローズアップし、脱毛効果や蓄熱式との違いをはじめ、うぶ毛への効果の有無、熱破壊式が向いている人を解説しています。
熱破壊式の機械を扱うおすすめクリニックも掲載していますので、ぜひ参考にしてください。
この記事の執筆者

石川 聡司
(新さっぽろウィメンズ ヘルス&ビューティークリニック 院長)
北海道大学医学部卒業後、北海道大学医学部附属病院、帯広厚生病院など地域の中核病院に勤務。品川美容外科にて美容外科医として3年間の研鑽を積み、2021年に婦人科・美容外科を併設した当院を開業。
婦人科全般の診療のほか、美容医療では美肌治療、美容整形をはじめ脱毛・アートメイクなど幅広く対応する。
- 所属:日本美容外科学会JSAS、日本女性医学学会、日本産科婦人科学会、日本周産期新生児学会
「熱破壊式(ショット式)脱毛」と「蓄熱式脱毛」の違い
医療レーザー機器の脱毛方式には「熱破壊式(ショット式)」と「蓄熱式」があり、それぞれ脱毛方式や効果の出方、痛みの感じ方が異なります。
それぞれの特徴や違いを下記に分かりやすくまとめました。

医療レーザー脱毛は、メラニンに反応するレーザーを肌に照射し、発熱させて毛の成長にかかわる組織を破壊します。これは、「熱破壊式」であっても「蓄熱式」でもどちらも同じです。
脱毛方式の違い
強力なエネルギーを1発で照射して高温を発生させ、毛乳頭・毛母細胞・バルジ領域を破壊する熱破壊式。
一方、蓄熱式は弱いエネルギーを複数回連射して、じっくりと熱を溜め込み発毛にかかわる組織を破壊します。



「1発で強いエネルギーを照射するのか」「弱いエネルギーを複数回照射するのか」が大きな違いです。
熱破壊式


- 医療レーザー脱毛の初期から使用されている方式
- 1発の出力が強い
- レーザー1発で発毛組織を破壊する
- 「ショット式」と呼ばれることも
蓄熱式


- 2000年以降に出てきた新しい方式
- 1発ごとの出力は弱い
- レーザーを5~10発ほど当てて発毛組織を破壊する
- 「SHR」とも呼ばれる
効果の出方(毛が抜けるまでの期間)の違い


医療脱毛してしばらくすると毛が自然に抜け落ちますが、効果の出方には大きな違いがあります。
熱破壊式では1~2週間、蓄熱式では3~4週間ほどで効果が出始め、毛がポロポロと抜け落ちていく特徴があります。
SNSやWebサイトなどで「熱破壊式の方が効果がある」「蓄熱式は効果がない」とよく言われますが、効果の出方(毛が抜け落ちるまでの期間)に違いがあるためそう思われがちな面があるのです。



早く毛が抜け落ちる熱破壊式のほうが効果が感じやすいのですが、熱破壊式であっても蓄熱式であっても、正しい出力で照射すればどちらも最終的な脱毛効果に違いはありません。
痛みの感じ方の違い


医療レーザー照射時の痛みは、蓄熱式よりも熱破壊式のほうが感じやすい傾向があります。
痛みの度合いは、熱破壊式では「ゴムでバシッと弾かれる痛み」と例えられ、蓄熱式では「じわじわと熱を感じる」と言われることが多いです。
疼痛の評価1)
使用した機械 | 疼痛評価(10段階中) |
---|---|
蓄熱式ダイオードレーザー(ソプラノXL) | 平均2.7 |
熱破壊式ダイオードレーザー(ライトシェア・デュエット) | 平均3.6 |
もちろん痛みの感じ方には個人差があり、部位によっても痛みを感じやすい部位と感じにくい部位があります。
熱破壊式脱毛の痛みについて不安がある方は、ぜひ下記の記事もご覧ください。


通院の間隔はどちらも同じ



熱破壊式も蓄熱式も通院間隔はどちらも同じ。毛周期に合わせての通院が効果的です。
毛周期とは、成長期⇒退行期⇒休止期といった、毛の生え変わるサイクルです。


「蓄熱式だから短い間隔で通える」「蓄熱式だから成長期・退行期・休止期どの時期でも反応する」といった表記をするクリニックもありますが、どちらも毛のメラニン(黒い色)に反応され熱を出しますから、毛周期に合わせての通院が大切です。
たしかに蓄熱式は肌へのダメージが少ないため、肌への負担といった面だけ捉えれば熱破壊式よりも短い間隔で通おうと思えば通えます。
ただ、熱破壊式であっても蓄熱式であってもメラニンに反応させて発毛組織を破壊する仕組みは同じなので、成長期の毛がしっかりと生えそろっていなければムダな照射となってしまい、そのぶん回数がかかってしまいます。
クリニックから見れば早くコース回数を消化してもらったほうが良いのですが、脱毛を受ける側からすればお金も時間もムダにしてしまう結果となります。
脱毛したあと毛が抜けて、そのあと再び毛が生え揃ったときが次の脱毛照射をする最適なタイミングというのは、どちらの方式でも変わりません。
毛周期に合わせた通院間隔とは?
部位 | 通院間隔の目安 |
---|---|
顔 | 1~2カ月 |
VIO | 2~3カ月 |
全身 | 3~4カ月 |
短い間隔で通えればそれだけ早く脱毛が完了するので、蓄熱式の方が短い間隔で通えると聞けば、とても魅力的に感じますよね。
しかし、脱毛は毛周期を無視して通うことはできませんので、絶対的に必要な間隔というのがあります。



どちらの方式を選択しても、同じように毛周期に合わせた間隔で通いましょう。


熱破壊式脱毛機は産毛には反応しにくい?
熱破壊式はメラニンの多い剛毛に良く反応し、逆にメラニンが少ない産毛には反応しにくい特徴があります。
では、熱破壊式では産毛を脱毛するのは不可能なのでしょうか。



熱破壊式でも産毛を全く脱毛できないわけではありませんが、あまり効果が期待できないのが正直なところです。
産毛のような細く色が薄い毛では熱破壊式脱毛レーザーは反応しにくいので、結果的に脱毛が困難です。
もしもメラニン量が少ない産毛の発毛組織をしっかりと破壊しようとするならば、通常の毛の数倍の出力が必要です2)。
しかし、ただ出力を上げればいいのかというとそういうわけでもなく、やけどや毛嚢炎のリスクが増し、痛みも強くなってしまいます。
- 熱破壊式はメラニンの少ない産毛に反応しにくい
- 出力を上げれば脱毛できるが、リスクと痛みが増す(そのため上げられる出力に限界がある)
- 結果的に熱破壊式は産毛の脱毛が苦手
二の腕・太もも・背中・おしりなどの産毛までしっかりと脱毛したい方は、蓄熱式脱毛がおすすめです。
熱破壊式がおすすめの人
ここまでは熱破壊式の特徴や蓄熱式との違いを解説してきました。ただ、実際に脱毛を始めるときに問題なのは「自分に合った方式か否か」ですよね。
蓄熱式は取り扱うクリニックが年々増えていますし、蓄熱式脱毛を行うクリニックは脱毛料金が安いですから、どうしても悩んでしまうかと思います。



熱破壊式がおすすめな人を下記にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。


効果を早く実感したい方
※ここでいう「効果の実感」は、脱毛後に毛が抜け落ちるまでの期間のことです(正しく照射すればどちらも脱毛完了までに必要な回数・期間は変わりません)。
「効果の出方(毛が抜けるまでの期間)の違い」の項目で解説したように、熱破壊式の方が早く効果を実感できる傾向があります。
脱毛後は「早く毛が抜けて欲しい」と思うものですが、毎日毛の状態を観察していると抜けるまでの期間が長く感じます。



自然に抜け落ちる期間が短い方が良い方は熱破壊式がおすすめです。


VIO・ワキなど剛毛な部位を脱毛する方
熱破壊式はメラニンの多い毛に良く反応する性質をもっています。
- 太い毛
- 色の濃い(黒い)毛
毛の長さはメラニン量に関係しませんが、長い毛の方が太い傾向がありますので、長く伸びる毛もメラニン量が多いといえます。



熱破壊式は剛毛な部分を得意とする方式ですので、VIOやワキ、膝下など濃く太い毛をを脱毛したい方に向いています。
ただし、「痛みが苦手だけど麻酔を使用したくない」と考えている方は、熱破壊式は痛みが強い脱毛方式ですから、蓄熱式脱毛の選択が良いでしょう。
ジェルの不快感が苦手な方
ジェルによる不快感が苦手な方は、熱破壊式が向いています。
蓄熱式ではジェルを塗った上から滑らせるように照射していくので、特有の不快感を感じる場合があります。
また、ジェルを塗る瞬間のひんやり感が苦手な方もいらっしゃいますし、拭き取る際の肌を擦られる感じが苦手な方も多いです。
蓄熱式のジェル使用で起こりがちな不快感
- 塗布の際、冷たい
- 時間が経つと寒い
- 拭き取るときに肌が擦られる感じがする
- ふき取ってもべたつく
ただし、ジェル自体に肌への保湿成分を含むものを使用するクリニックもあり、一概にデメリットばかりなわけではありません。



熱破壊式の機械は基本的にジェルが必要ありませんので、ジェルによる不快感がないのがメリットです。
さらに、ジェルをふき取る時間が必要ないので、短い時間での施術が受けられるのも嬉しいポイント。
ジェルを不快に思うか否かは体験してみないと分からないところではありますが、全身脱毛の場合は施術時間が長いので、不快に思う可能性がある方は熱破壊式での脱毛がおすすめです。
日焼けや色素沈着がない方



熱破壊式はメラニンに良く反応するので、日焼け肌・色素沈着で肌のメラニン量が多い方の場合は、肌のメラニンにもレーザーが反応し肌に大きなダメージを与える可能性があります。
熱破壊式での日焼け・色素沈着への脱毛は禁忌とされていて、レーザーのエネルギーが分散してしまうので、脱毛の効果が減ってしまうことも。
肌のメラニン量が多い方は、ある程度の日焼け肌や色黒肌、色素沈着がある肌でも照射できる蓄熱式が向いています。


熱破壊式の機械の種類
熱破壊式脱毛機の代表的な7機種を紹介します。
- ジェントルレーズプロ
- ジェントルマックスプロ
- ジェントルヤグ・プロ
- ライトシェア・デュエット
- スプレンダーX
- ベクタス
- エクセルHR
サンダーMT、クリスタルプロ、ラシャ、ソプラノチタニウムなど1台で熱破壊式・蓄熱式の切り替えができる機械もありますが、今回は熱破壊式のみの代表的な脱毛機をピックアップしました。
ジェントルレーズプロ


導入しているクリニックの多い機械です。-26℃の冷却ガスを噴射するので、痛みを抑えた脱毛が可能です。アレキサンドライトを利用した機械のため、脱毛と同時に美容効果も期待。照射速度が従来機の2倍なのでスピーディーな照射ができます。(従来機はジェントルレーズ)
ジェントルマックスプロ


ジェントルレーズプロと同様に、-26℃の冷却ガスを噴射しながらレーザー照射を行う機械です。アレキサンドライトレーザーとヤグレーザーの2波長切り替えができるので、剛毛だけでなく根深い毛にも対応。日焼け肌にも照射ができます。(従来機はジェントルマックス)
ジェントルヤグ・プロ


波長の長いヤグレーザーを利用した機械のため、根深い毛が得意な機械です。直径1.5~18mmと照射サイズが豊富で口周りなどの細かい部分への照射も可能。背中などの広範囲への照射には向きませんが、色黒・日焼け肌にも照射できます。(従来機はジェントルヤグ)
ライトシェア・デュエット


皮膚表面を吸引しながら照射するため、効率良くメラニンにアプローチする機械です。「スポッ」といった肌を軽く吸引されている感覚が特徴。2つのハンドピースを部位ごとに使い分け、顔やVIOなどの凹凸の多い部位も得意です(小さいハンドピースはジェルを使用します)。
スプレンダーX


2つの波長のレーザーを同時照射するので、幅広い毛質や肌質に対応できます。冷風と接触による2つの冷却システムで肌ダメージを抑えた施術が可能。照射口が広いため広範囲の脱毛に向いている機械です。(2022年1月に厚生労働省の薬事承認を取得)
ベクタス


メラニンチェッカーを搭載、皮膚のメラニン量を客観的に把握してマシンが最適な照射レベルを選択する機械です。23×32mmと照射口がかなり広いので、照射時間を短縮できます。アトピー肌や敏感肌の方への照射も可能です。
エクセルHR


2種類のレーザーを切り替えて照射できる機械です。ナビゲーションシステムで肌の色に合った施術が可能。色黒肌・日焼け肌にも照射できるメリットがあります。照射前・中・後の冷却で肌を保護しながら脱毛します。
通う回数は何回がおすすめ?



毛質や部位、希望する仕上がりによって最適な回数は変わりますが、一般的にお手入れがラクになる程度の仕上がりでは5回、よりしっかりと脱毛したい方は8回程度を考えておくと良いでしょう。
部位 | おすすめの回数 |
---|---|
顔 | 8回 |
ワキ | 5回 |
VIO | 8回 |
全身 | 5回~8回 |
ワキは脱毛の効果を実感しやすい部位ですので、5回ほど通えば満足する方がほとんどです。一方、顔のような産毛が多い部位では8回以上と考えておく必要があります。
VIOは剛毛で効果を実感しやすい部位ですが毛が密集して生えているので、8回ほど通うと満足する方も多いです(ハイジニーナの場合は10回以上必要になるケースもあります)。



全身脱毛では最低でも5回が目安回数。希望する仕上がりによってさらに照射を重ねていく方も多いです。
熱破壊式の医療脱毛はどこのクリニックで受けられる?
熱破壊式の脱毛機を導入しているクリニックはとても多く、約2/3の医療脱毛クリニックで熱破壊式医療脱毛が受けられます。(今回調査した151クリニック中94クリニック:2022年6月現在)
ただし、全国に複数の院を展開しているような大手クリニックでは、蓄熱式脱毛を扱うクリニックが増えてきています。
また、熱破壊式脱毛機・蓄熱式脱毛機の両方を導入しているクリニックで、機械が選べないケースも増えてきているため、その場合は蓄熱式での脱毛となってしまう可能性があります。
熱破壊式脱毛を希望する際のチェックポイント
- 熱破壊式の機械が選べるか
- 料金は適正か(極端に安い・高いクリニックを避ける)
- 麻酔料(麻酔をご希望の場合)
- 通いやすさ(キャンセル料・クリニックの場所など)



確実に熱破壊式で施術を受けたい場合は、機械が選べるor熱破壊式のみ扱うクリニックを検討しましょう。
必ず熱破壊式で脱毛できるクリニック
ここでは、熱破壊式・蓄熱式のどちらも備えていても、機械が選べないクリニックや蓄熱式の機械で熱破壊式モードを搭載している機械を扱うクリニックは敢えて除外しました。
確実に熱破壊式で医療脱毛が受けられるクリニックだけを掲載しています。
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医院名 | ルシアクリニック | 湘南美容クリニック |
医院数 | 10院以上 | 20院以上 |
機械 | ジェントルレーズプロ ジェントルマックスプロ ベクタス | ジェントルレーズ |
全身脱毛 | 16万5000円(5回) | 15万8000円(6回) |
VIO脱毛 | 8万8000円(5回) | 5万4000円(6回) |
麻酔料 | 3300円 | 2200円 |
キャンセル料 | 前日18時まで無料 | 2日前23時まで無料 |
詳細 |



熱破壊式脱毛は、従来から使用されてきた実績のある脱毛方式です。今回ご紹介した情報を参考に、ぜひ検討してみてください!
参考文献
- A comparison of two 810 diode lasers for hair removal: low fluence, multiple pass versus a high fluence, single pass technique/National Library of Medicine
- 文光堂:葛西健一郎(2021)『基礎から学ぼう医療レーザー脱毛入門』pp103.
医療レーザー脱毛は、レーザーをメラニン(黒い色)に反応させることで発生する熱により、発毛組織を破壊し脱毛します。
レーザー照射後は、以下のような副作用があらわれる可能性があります。
- 赤み、腫れ
- やけど
- 毛嚢炎
- 硬毛化、増毛化
- 埋没毛(埋もれ毛)
- 皮膚や毛の状態によっては、赤いブツブツが出ることがありますが、数時間~数日で消失します。
- 脱毛部分に赤みがある時は日焼けを避けてください。通常脱毛3週間は外出の際、脱毛部を露出する服装を控えていただくか、日焼け止めクリームなどをご使用ください。それでも稀に色素沈着が生じたり、逆に色素が抜けたりすることがあります。
- 脱毛部位にあるホクロ・シミ・あざなどは、レーザー脱毛に伴い取れてしまったり薄くなったり、あるいは濃くなることがあります。
- 毛穴に残った毛が黒く見えることがありますが、徐々に外に出て行きます。毛抜きで抵抗感なく抜けるものは抜いて構いませんが、無理に取ろうとして先の尖ったピンセットなどで掘ったりしないでください。